相続 失踪宣告

今回は失踪宣告について書いてみます。

失踪は婚姻関係の整理や相続の分野にも関わってくる事柄です。失踪の宣告はその者の行方が不明になった場合に、利害関係人が家庭裁判所に申請することによって行ないます。家族の者でなくても構いません。

失踪宣告の請求はいつでもできますが、失踪宣告がなされた場合は、最後に生存が確認された時点から7年間の期間満了後に死亡したとみなされます。行方不明になってから8年後に請求をした場合は、1年前の期間満了時にさかのぼって死亡したとみなされます。これを普通失踪といいます。

一方飛行機や船の事故などで行方不明になった場合には、その危難が去ってから1年を経たあとに失踪宣告がなされますが、この場合は危難が去った時点にさかのぼって死亡したものとみなされます。これを特別失踪といいます。

しかし失踪宣告されたからといって失踪者本人の権利能力まで否定されるものではなく、本人が生きていた場合は他で法律行為を行うこともできます。その場合には失踪宣告の取り消しが行われますが、死亡時が異なる場合もその日付での宣告は取り消されることとなります。

では取り消しが行われた場合はどのようになるのでしょうか。失踪宣告の取り消しが行われた場合には、宣告によって財産を得た者はその権利を失うこととなり、現存利益の限度で返還義務を負うこととなります。民法では現存利益の限度(範囲)という言葉がよく出てきますが、手元に残ったお金があれば返還するということです。

手元に残ったお金が返還すべき額を下回っていたとしても、その使ったお金が家計費などの自分の利益になるものに使った場合は、その分は補填しなければいけないということです。一方ギャンブルなどで浪費してしまった場合は利益として残っていないのですから、その分は返還する必要はないですというものです。一見理不尽に思えますが、そういう内容です。

宣告によって財産を得た者が、第三者と既に取引を行っていた場合はどのようになるのでしょうか。この場合は、取引の当事者双方が善意であれば取引行為は有効となります。ちなみに善意という言葉が法律用語として使われる場合は、「その事実について知らない」ということを意味し、対義語である悪意は「その事実について知っている」ことを意味します。

夫の失踪宣告後に別の男性と結婚していた場合はどうなるのでしょうか。この場合は、妻と現在の夫の一方または双方が悪意(失踪した夫が生存していることを知っている)であれば、前婚が復活し重婚関係となります。重婚は認められませんので、現在の結婚を生かす場合には前婚の離婚届けを出し、前婚を生かす場合には現在の婚姻を取り消します。妻と現在の夫の双方が善意であれば、前婚は復活しません。

相続で行方不明の方が問題となる場面は、共同相続の場合です。共同相続に際しては、必ず相続人全員参加の遺産分割協議が必要になりますので、行方不明者がいる場合は失踪宣告を請求する必要も出てきます。この場合も協議との兼ね合いで時間的猶予のないこともありますので、実際はまず不在者財産管理人選任を請求することとなります。この請求は、行方不明者が最後にいたであろう場所を管轄する家庭裁判所に行ないます。

不在者財産管理人の立場としては、遺産分割で不在者に不利な配分を求めることもできませんので、実際は法定相続分での決着が多いようです。

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今日は遺言について書いていきます。遺言については以前にも書きましたが、相続遺言に関する民法がこの7月に約40年ぶりに大幅改正されましたので、それも含めて見てみましょう。 遺言を残そうとされる目的の多くは、ご自分の作られた財産をきちんとご自分の手で、ご自分の意思で配分したいというところにあると思います。考えられるきっかけはちょっとしたことからかもしれませんが、その動機の多くは遺されるご家族のことを考え、円満でスムーズに相続を終えてもらいたいという気持ちから発せられるようです。 中には家族親族がいがみあっていたり、複雑な関係性であったり、また相続人がいないなどの理由からトラブル防止のための遺言を書かれる場合もあると思います。また事業承継にあっては、自ら思い描く将来のために、きちんと整理した形で財産を相続させる場合もあろうかと思います。 いずれにせよ遺言を残される以上、法的に効果のある遺言にしなければなりません。では法的に効果のある遺言とはどのようなものでしょうか。 遺言自体はどのような形でも残すことができます。口頭で伝える場合もあれば、録音やビデオで伝える場合もあります。また通常は皆さん考えられるところの書面で残すことが多くなります。しかし法的に効果のある遺言は、きちんと法律に従った形式で、書面として残さなくてはいけないものになります。 きちんとビデオに撮っていても、それがそれぞれの相続人が納得するものであれば問題ありませんが、争いになった場合は法的に根拠がないものとして認められないものになります。 昨日たまたまビデオで「激動の1750日」という映画を見ていて、三代目姐が「先代が言い残した」という一言で後継が決まってしまいました。実際に言い残してはいないので争いになった場合は法的根拠のないものとなりますが、特殊な世界であれ、「故人が言っていた」の一言で相続が決まってしまってはたまりません。そこかしこでトラブルが頻発するでしょう。そんなトラブルを起こさないためにも、法律が遺言の形式を定めています。 ここでの法律は「民法」になります。民法は、私人間の生活関係を規律する「私法」の一般法(国家等の公権力と私人の関係を規律する法である法律を「公法」といい、これには憲法・行政法・民事手続法・刑法・刑事手続法があります)であり、その内容は「財産法」(ここには物件法と債権法があります)と「家族法」に分かれます。 「家族法」には家族や親族の範囲や関係性について規定する「親族法」の部分と、相続や遺言について規定している「相続法」の部分があり、ここで遺言についても明確に規定してます。 では民法に規定する遺言について見ていきましょう。遺言の方式について、民法では「普通方式」と「特別方式」を定めています。我々が一般的に理解している遺言とは普通方式のものになりますが、簡単に特別方式の遺言について見てみます。 「特別方式」の遺言については滅多にお目にはかかれませんし、またそういう立場になっては困るのですが、緊急時に発する遺言になります。ここでは詳細は省きますが、災難がまさに降りかかっている際に発する「危急時遺言」と、世間から隔絶された場所にあるときに発する「隔絶地遺言」があります。 「危急時遺言」には「死亡危急者遺言」と「船舶避難者遺言」がありますが、前者は病気やけが、あるいは災害が差し迫っている際に発っするものであり、後者は船舶が遭難にあっている際に発するものになります。 また「隔絶地遺言」には、「伝染病隔離者遺言」と「在船者遺言」があります。前者は伝染病隔離施設や刑務所服役中などの場合、後者は遭難していない船舶の中で作成されます。 いずれも危難は迫ってはいませんので、本人が書く事になります。以上4種類が特別方式になりますが、それぞれ証人であったり検認であったり、その手続きは詳細に決められています。民法は約120年前に制定されましたので、情報の発達していない時代を背景としています。
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今日は自筆証書遺言のメリット・デメリットについて書いていきます。 自筆証書遺言については手軽に書く事ができますので、一般的な遺言書としてまず思い浮かぶのは自筆証書遺言になると思います。この手軽さこそが諸刃の剣として、メリット・デメリットを生むことになります。 まずメリットについて見ていきましょう。自筆証書遺言のメリットは、 ①自分ひとりで手軽に作成できる ②作成に費用がかからない ③遺言書の内容を秘密にしておける シンプルですが、これらのメリットに尽きます。逆に言うと十分な知識があって、保管や亡くなった後の手続き等も万全な体制を取ることができれば、自筆証書遺言で作成することはメリットが大きいと思います。 デメリットはこれと裏腹になります。自分ひとりで作成することによるリスクが大きなものとなります。デメリットは、 ①要件が厳格であり、書き方を間違えると法的効果を生じない ②遺言者の死後遺言書が発見されないおそれがある ③遺言書を一部相続人により破棄、改ざんされるおそれがある ④遺産分割協議後に発見され、協議がやり直しとなる ⑤相続人が必ず家庭裁判所に「検認」手続きを行わなくてはならない ⑥本人が作成したことの証明がむつかしく、遺言書の内容の信ぴょう性が疑われる ⑦自筆である証明がむつかしい ⑧遺言書の内容が曖昧であったり、法律的な疑義が生じるおそれがある ⑨遺言書の内容が偏ったものになるおそれがある 等です。 これらはあくまでトラブルを起こす可能性を秘めていることであり、必ずしも起こるものばかりではありません。しかし発生した場合には遺言書が無効となるばかりではなく、遺言書の存在自体が相続人にとってとんでもない迷惑を掛けることになります。 基本的には、遺言者がひとりで書く事によるリスクになります。ひとつひとつ見ていきましょう。 ①については要件が極めて厳格であり、方式を間違えると遺言書自体が法的に無効になります。この場合は相続人全員が遺言者の意思を汲んでくれれば良いですが、相続人がひとりでも反対すれば、遺言書は無効とされます。遺言者の意思は反映されず、相続は遺言書がなかった場合の遺産分割協議が行われることになります。加除訂正の際の方式不備についても前回記事に書いたとおりになります。 次の②ですが、自筆遺言書は現状は保管制度がないため、基本ご自分が保管することになります。一般的にはご自宅や銀行の貸金庫等に保管されますが、これが発見されない場合があります。遺言書のない相続の場合は、相続人の方がまず遺言書を探しますが、見つからない場合は遺言書がなかったものとされます。相続人側から見れば当然そう考えます。 ③では遺言書が見つかった場合でも、その見つけた者によっては、悪意で破棄したり改ざんしたりする可能性も否定できません(破棄や改ざん等が判明した場合は、その者は欠格者として相続人の地位を失います)。 ④では、探しても見つからなかった場合は相続人全員で速やかに遺産分割協議を行い、各相続人の相続分を決めます。これには相続人全員の合意が必要ですのでやっかいなものになりますが、万が一後から法律効果のある遺言書が出てきた場合には、これまた厄介なことになります。遺言書によって有利な相続をされる者がいた場合は、その者の請求によって相続がやり直しになる可能性があります。 なお平成30年7月に相続遺言に関する改正民法が成立し、平成30年7月13日に交付されました。これによって新たに、法務局での自筆証書遺言書の保管制度が設けられ、公布の日から2年以内に施行されることになります。 詳細な内容は現時点では詰められていませんが、自筆証書が法務局に保管される制度であり、「検認」手続きも不要になります。これによって前述の②③④の問題解消が期待されます。⑤についても同様で、保管された自筆証書遺言については、相続人に負担の大きい「検認」制度が適用されないこととなりました。 では⑦についてはどうでしょう。自筆である限りついてまわる内容ですが、実際に筆跡鑑定には専門家が鑑定しても困難があるようです。疑義を持つ者がいた場合には裁判で争われることもあり、近年では有名な事件で本人直筆であることが覆されたこともあるようです。 ⑧および⑨については、本人がひとりで書く事によるトラブルです。法律を知らなかったり、感情が偏ったりしていた場合に起こり得る問題です。これらは専門家に作成を協力してもらうことで解決することはできます。 以上、自筆証書遺言についてはメリット以上にデメリットが大きく、トラブルが起こった際には、良かれと思って遺言書を書かれたこと自体が迷惑になってしまう場合もあります。 自筆証書遺言のメリットは大きなものですので、作成を否定するものではありませんが、作成する場合はくれぐれも慎重を期すことをアドバイスするとともに、できれば専門家の手を借りることが賢明であると付け加えておきます。
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遺言における付言について
今日は付言について書いてみます。 「付言」は「ふげん」と読みます。付言とは遺言書に自分のメッセージとして付け加える言葉です。付言自体には法的効果はありませんので、遺言書の方式を満たす要件にはなっていません。しかし多くの方が文面に残されているようですし、行政書士としても基本的にはおすすめをすることにしています。 また書面への付言という形ではなく、別途手紙という形で残される場合もあります。しかしこの場合は公正証書遺言のように公証役場で保管がなされず、またその真偽も定かではないため信ぴょう性が疑われることもあり、お勧めはできません。 付という文字がつくと、付記や追記という言葉が思い浮かんでしまいますが、もちろんこれらのように、後から付け加える(意図的な場合もあるでしょうが)という性質のものではありません。むしろその遺言書を書かれた本来の動機や目的から発する言葉だと考えます。 遺言を残す動機はいろいろあると思いますが、ひとつには自分が苦労して残した財産を、自分の意思で自分の思う通りに配分したいという考えです。これは自分がいなくなっても、その財産を有効に活用することのできる子を中心に相続させたいというような合理的な理由もあるでしょうし、今まで自分にしてくれた行為や与えてくれた愛情への論功行賞的な理由の場合もあるかも知れません。 また例えば子供ごとに異なるそれまでの支援状況も加味した上で、それらを差し引いてそれぞれ平等な相続額にという場合もあるでしょうし、それぞれの暮らしぶりから行く末を案じてということもあるかも知れません。 もうひとつの動機は、自分が亡くなったあとも、相続でもめることの無いようにとの家族への配慮や愛情から発せられるものです。遺言書を書こうか悩まれている方の多くは、むしろこちらの動機が強いのではないかと思います。 でもそのような愛情から発した遺言書も、内要によっては感情的なしこりを残す場合も出てきます。 多くの場合には相続財産は不動産など、簡単に分割できないものになります。また現に今どなたかが住まわれている家も相続財産(生前贈与されていても相続財産に加わります)になりますので、それを相続の段階で分割しようといってもなかなかできることではありません。 遺言書がなかった場合の相続では必ずおこる問題ですが、そもそもそういうゴタゴタでご家族の方に心身の負担をかけたくないという思いで遺言書を書かれたはずです。かといって実際にはその住まわれている家や不動産などの財産を均等に分けることは非常に困難なことですし、多少なりとも偏りが出てしまいます。そこにどなたかの不満がでないとも限りません。 遺言書というものは元来無味乾燥なものです。そこには相続人や相続財産などが淡々と記載されているだけで、ご本人の本来の意思など確認しようもありません。意思を読み取ったり推察することはできるでしょうが、誤解の生まれる余地も多分にあります。ましてや相続分に偏りがあった場合などは、相続分の少ない方からの不満はあって当然だと思います。 財産を偏りなく相続させることはとてもむつかしいことです。不動産が多い場合などはなおさらです。愛情の多い少ないで相続分を考えたのではなく、事情があってしたことであれば、その理由は伝えてあげた方が良いと思います。 付言はご自分の感情を伝える最後の方法であるとともに、ご遺族の方にとっても、あなたのご意思を知る最後の機会に違いありません。 最後にひとつ。くれぐれも愚痴や恨み言は残さないようにしましょう。 ご家族が円満に相続を終えていただくためにも、あなたが遺言書を書かれた動機や意図を伝えることが重要になります。付言とはそのときそこにいないあなたに代って、そのメッセージを伝える役割を担っています。 http://yuigon-souzoku-gunma.com/category2/entry21.html
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相続の承認について
今日は相続の承認について書いていきます。 相続は被相続人の死亡によって開始されますが、その時点で相続人が決まります。法定相続人は被相続人の配偶者や子、直系尊属および兄弟姉妹に限られますが、その中の配偶者と最優先順位の者が相続を受けることになります。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/412  相続人が決まれば次は相続する財産を確定させます。あらかじめ公正証書遺言などで財産目録を作成してあれば良いのですが、ない場合は不動産登記簿や金融機関への調査を行うことになります。どちらにしても不動産は名義を変えなければいけないですし故人の口座も閉鎖しなくてはなりませんので、相続人が複数いる場合は必要な書類を整えなくてはなりません。相続人関係図や遺産分割協議書と同様に、財産目録も作成しておきましょう。 不動産や現金預金を調べて、プラスの財産がマイナスの財産より多ければ普通は相続することになりますし、明らかに借金の方が多ければ相続についても考えなくてはならなくなります。そういう場合を想定して民法では相続を受ける方法を規定し、選択の余地を残しています。 ただ選択するのには3ヶ月という期間が定められており、その期間内に決定をしなければいけません。その期間を「熟慮期間」といいます。ではその選択内容について見ていきましょう。 相続を受ける承諾することを、「承認」といいます。「承認」には「単純承認」と「限定承認」があり、これに「相続放棄」を加えて、相続の方法には3種類が規定されています。 「単純承認」とは文字通り単純に相続を受けることをいいます。マイナスの財産も含めた相続財産を、相続人全員がそのまま受け入れるものです。ですので万が一マイナスの財産の方が多かった場合でも、単純承認を選択した場合にはその負債等も無限に負わなければいけません。 自ら選択した場合はもちろん、自ら単純承認を選択しない場合でも、承認の意思表示をしないまま3ヶ月を経過してしまった場合や、相続財産の全部または一部を処分してしまった場合も単純承認をしたとみなされてしまいます。これらは法定単純承認と呼ばれます。大きな債務等のあることがわかっている場合には、くれぐれも熟慮期間を意識し、早めに財産目録を作成しましょう。 「限定承認」とは、マイナスの財産が多かった場合でも相続財産の限度内において債務を弁済すればよいというものです。債務が相続したプラスの財産を超えた場合には、支払いの義務はありません。ただ限定承認の場合は手続きが非常に面倒なものとなります。 まず財産目録を用意し、これを家庭裁判所に提出して申請することになります。申請する場合には共同相続人全員一緒にしなければなりません。ひとりでも反対をしたり単純承認をしてしまった場合にはすることができません。ですので、一人が財産を処分してしまった場合には、残りの共同相続人も申請することはできなくなってしまいます。なお共同相続人のうちの誰かが相続放棄をした場合には、残りの相続人全員で限定承認を申請することができます。 「相続放棄」とはマイナス財産が超過している等の理由で、相続を受けない選択をすることです。相続放棄をした場合は、最初から相続人ではなかったものとみなされます。ですので欠格や廃除の場合と異なり、代襲相続も認められません。 ただ相続放棄がなされた場合でも、その債務等が当然になくなるわけではありません。他の相続人に相続されていきます。プラスの財産は遺言等によっては法定相続分通りには配分されませんが、マイナスの財産は法定相続分通りに配分されます。ですので残った債務や連帯保証人の立場などは、他の相続人間で法定相続分通りに相続されることとなります。 相続放棄をしても単純に債務から逃れられるという性質のものではありませんので、放棄する際には事前に他の相続人と相談をし、のちのちの関係を壊さないようにしたほうが賢明だと思われます。 http://yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry46.html
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今日は共同不法行為や正当防衛などについて書いていきます。 不法行為については先の記事に載せましたが、複数で行った不法行為を「共同不法行為」と言います。共同不法行為には、 ①複数の者が共同で他人に損害を与えたとき(狭義の共同不法行為) ②共同行為者の中の誰が損害を与えたのかがわからない場合(加害者不明の共同不法行為) があり、②の場合は直接損害を与えていなくても共同不法行為の責任を負います。 共同不法行為では、生じた損害全額について各自が連帯して責任を負います。 それぞれの共同不法行為の成立要件としては、狭義の場合は、 ①各人の行為が不法行為の一般的要件を満たすこと ②共同行為者間に、社会的・客観的に見て数人の加害行為が一体と見られる関係にあること であり、加害者不明の場合は、 ①共同行為者であること ②各共同不法行為者が、因果関係以外の不法行為の一般的成立要件を満たしていること ③共同行為者のいずれかによって損害が発生したこと になります。 次に「正当防衛」について見てみますが、同じ条項に同様の性質を有する「緊急避難」というものがありますので、対比して見てみましょう。 「正当防衛」とは刑事ドラマでも頻繁にでてくる言葉ですが、その定義は、他人の不法行為に対して自己または第三者の権利、または法律上保護される利益を防衛するために、やむを得ず行う加害行為を言います。 正当防衛が認められた場合は損害賠償の責任は負いません。ただしその被害者が損害賠償請求をすることはできます。 「緊急避難」では他人の不法行為は介在しませんが、他人の物から生じた差し迫っている危難を避けることを言い、それによって他人のその物を損傷した場合も正当防衛と同様の扱いになります。緊急避難の例としては、他人の飼い犬に襲われた際に、棒などでその犬に怪我を与えた場合などが考えられます。 民事上では法によらず自らの力で解決をはかる自力救済は禁止されていますが、正当防衛も緊急避難も自力救済ではありますが違法性は除かれ、不法行為には当たりません。 正当防衛の成立要件は次のとおりです、 ①他人の不法行為が原因であること ②自己または第三者の権利または法律上保護される利益を守るためにすることであること ③やむを得ないものであること ④加害行為をしたこと です。 緊急避難の成立要件は次のとおりです。 ①他人の物から生じた急迫の危難が原因であること ②これを避けるためのものであること ③やむを得ないものであること ④その物を損傷したこと になります。
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大瀧詠一さんはご存知でしょうか。ええもちろんあの大瀧詠一さんです。ちょっと古い話になるので年齢が分かってしまいますが。 子供の頃三ツ矢サイダーのCMの歌が新鮮でしたが、手塚さとみさんの記憶が強かったんですね。でも調べたら大瀧さんの歌が使われていた年は、風吹ジュンさんと秋吉久美子さんのようですね。どちらもとても可愛くて記憶に残っています。 大瀧詠一さんを本格的に好きになったのはやはり1981年3月21日発売の「A LONG VACATION」からですが、今でもよく聞いています。その時々の思い出もよみがえり、今でも新鮮ですしとても甘酸っぱい(古いですが)アルバムです。 2年前に「DEBUT AGAIN」が発売されたときはアマゾンで予約して買いましたが、この中の「風立ちぬ」も想い出深く、今でもカラオケでは歌います。言うまでもなく松田聖子さんの歌ですが(一番好きな歌です)、「DEBUT AGAIN」の音源は、大瀧さんが一度だけコンサートで歌ったライブでのものですね。YouTubeでは聞いていた幻の音源ですが、1981年12月3日に渋谷公会堂で行われたあの伝説の「ヘッドフォン・コンサート」からのライブ音源です。 実はこのコンサートは見に行きましたので、今でも記憶に残っています。大学1年の暮れでしたか。全体の記憶はあいまいなんですが、この曲のファンだったこともありよく覚えています。かなり照れながらのMCでした。 席はステージをやや右手に見る2階席でした。と、このあといろいろ書こうと思って何気なしに検索したら、私の記憶より詳しく書いてあるブログがありましので、そちらを貼っておきます。 https://blogs.yahoo.co.jp/tsus_h/55958754.html?__ysp=5aSn54Cn6Kmg5LiAIOODmOODg%2BODieODleOCqeODsw%3D%3D 前振りが長くなりましたが、今日は遺言書の「後継ぎ遺贈」について書きます。 後継ぎ遺贈とは、「ある資産をAさんに遺贈するが、Aさんがもし亡くなった場合はAさんの相続人ではなく、第二次的に他のBさんに遺贈させる」というものです。 心情的にも実務的にもありがちだと思いますが、例えば、Aさんは普段からとても親しい間柄だし優秀なので資産を引き継がせたいが、もしもの場合にはその息子には引き継がせず、その資産を活かせる別のBさんに贈りたいという趣旨のものです。 この種の遺言の効力については諸説ありますが、結論からいうとその有効性をめぐって争いになる可能性が高く、できれば避けたほうが良いと思われます。理由として後継ぎ遺贈については、民法には法定相続のような規定がなく、是非の判断はその解釈に委ねられるからです。 どうしてもご自分で筋道を付けておきたい場合には、後継ぎ遺贈によって不確実なものやトラブルの種を残すより、信託等の別の方法を検討されることをアドバイスいたします。  
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本日は私のホームページ上に載せている遺言書についてのQ&Aについて書いてみます。といってもQ&Aページのものではなく、遺言を書かれる動機固めのイントロダクションになります。では順番に。Q:遺言書などを書いたら、子供たちにあらぬ詮索をされるかもしれない。今現在円満に暮らしているし、相続の話しで家族の中に波風を立てたくない。A:今現在ご円満だからこそ、円満なまま仲良く暮らしていって欲しいのではないですか。遺言書のことは皆さんに表立ってお伝えする必要はありません。行政書士と相談しながら、最善の方法で作成していきましょう。Q:自分の家族に対する愛情は平等だ。でも今の子供たちの暮らしぶりを考えて、財産の分け方を決めても良いのではないか。いやいや私が決めるよりも子供たちが決めれば良いことではないか。A:相続人当事者同士で、遺産分割が円満に成立する場合ばかりではないようです。お子様にもご家族や関係者が大勢いらっしゃり、お子様ご自身の意思だけで決められるとは限りません。そうなった時には行事役のあなたはその場にはいらっしゃいません。今現在の状況を客観的に判断されて、みなさんを円満にまとめられるのは、あなたを置いて他にはいらっしゃいません。Q:遺言書を書こうとは考えているが、どこから手をつけて良いかわからない。具体的に想いを形にしたいが。A:遺言書は「だれに、何を、どのように」になります。まず遺言書を残されようと思い立った動機をご自身が再確認し、その目的を達成する方法を考えれば良いと思います。Q:健康に不安はないし遺言や相続のことなどまだ当分先のことだから、今考える必要はないかもしれない。A:みなさんそうおっしゃいます。遺言書は別に今書く必要はないものです。ただ、いざという時には遺言を残せないかもしれません。法的効果のある遺言には要件があります。そうならないためにも、もし相続に多少なりともご不安があるのであれば、「思い立ったが吉日」ではありませんか。Q:誰に相談したらよいかわからないし、自分の思いを口に出すのは恥ずかしい。A:遺言書には皆さん、今まで言えなかったご家族への感謝の言葉を残されます。普段は気恥ずかしくて、面と向かってはなかなか言えないものです。でもこれは最後のメッセージになります。形にした時点でご自身の心のつかえもとれるでしょうし、そこから新たなものも見つかるかも知れません。ご遠慮なくお話しいただき、その想いを形にしていきましょう。Q:誰かに依頼すると費用が発生すると思い、ふんぎりがつかない。A:行政書士の報酬や、公証役場の手数料は決して安価なものではありません。むしろ普段の生活の中では高額なものになります。しかし見返りに得られる価値は、決してお金に変えられるものではありません。ご負担になるようでしたらそれはご自分で書かれるのも良し、あくまで判断されるのはお客様ご自身になります。Q:自分で書こうと思ったが、書き方がわからない。自分で書いた場合のデメリットはあるのだろうか。A:このホームページに自筆遺言の書き方も載せてありますのでご一読ください。自筆遺言の最大のメリットは、もちろん費用がかからないことです。簡単に書く事も、書き直しもできます。今回の民法改正によって、自筆遺言のハードルも多少下がりました。デメリットは自筆遺言書自体がトラブルの原因になることです。簡単に書く事ができるために内容の裏付けがなかったり、保管が不十分であったり。ご予算等に合わせれば良いことですが、行政書士へのご依頼のほとんどが公正証書遺言であることもまた事実ですQ:遺言書を書いても保管方法がわからないし、もし相続が終わったあとに出てきたらトラブルのもとになってしまうかも知れない。A:上のご質問同様、自筆遺言の記載を確認ください。民法改正によって自筆遺言の保管や検認手続きなどについては使い勝手が良くなりましたが、多くのトラブルの原因が解消されるわけではありません。Q:遺言書を書いたあとに気が変わるかも知れない。気安く書かない方が良いのではないか。A:もちろん遺言書は気安く書かれるべきものではありません。慎重にご家族の将来を見据えて書かれるものですが、状況が変わることもありえます。そのような場合でも、遺言書は撤回することもできますし、それを破棄して新たなものを作成することもできます。遺言書は常に日付の新しいものが有効となります。Q:遺言書を書いてしまうと、自分の財産を自由に使えなくなるのではないか。A:ご自身の財産は、当然ご自身で自由に処分することができます。遺言書に縛られることはありませんし、日々の生活を見据えて書かれることだと思います。万が一状況が変わって大きな財産を処分することになっても、その際に考えれば良いことになります。ご心配はごもっともです。でもそのご心配を解きほぐし、一歩前にすすんでみませんか。
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今日は商法の続きを書いていきます。 前回は商号というものについて書きましたが、商号はその商号を定めた者しか使用できません。しかしその商号を定めた者が許可を与えた者については、その者の商号を使って営業をすることができます。これを「名板貸」といいます。 商号を貸した者を「名板貸人」と言い借りた者を「名板借人」と言いますが、お客さんや取引業者などが名板貸人の店と誤認して、その名板借人から不利益を被った者がいた場合は、名板貸人は名板借人と連帯して弁済する義務を負わなければなりません。 名板貸人の責任の成立要件としては次のとおりです。 ①名板借人が名板人の商号を使用しているという外観があること ②名板貸人が許可をしたという帰責事由があること(許可は黙示でも認められます) ③善意無重過失である第三者が誤認したこと です。なお、商号に付加された語句がある場合や商号が簡略化されている場合にも、第三者の誤認がある限り責任が発生します。ただこの場合には誤認された営業が、本来の商号である営業と同種であることが必要になります。 名板貸人に責任が及ぶ範囲としては、自分の商号を使って名板借人が行った、取引によって生じた債務になります。取引によって生じた債務については、名板貸人は名板借人と連帯して責任を負います。 この責任の範囲には、交通事故などの不法行為による損害賠償は原則として含まれません。しかし詐欺などの、取引行為と判断される不法行為については、責任の範囲に含まれるとされます。 では名板貸ではなく、営業を譲渡とした場合の責任についてはどうでしょうか。この場合は、譲渡される営業によって生じた債務は原則譲渡人が負いますが、譲受人が債務引受などをした場合については、譲受人も責任を負うことになります。また併せて譲渡人は、競業避止義務も負うこととなります。 次は「商業使用人」について見てみましょう。 「商業使用人」とは、雇用されて営業を補助する自然人を言います。商業使用人には、支配人や店舗の使用人などがあります。 「支配人」とは、商人や会社から営業所等の営業や事業を任された者を言います。支配人を選任した場合は、必ず登記をしなければなりません。 この支配人というものは商人等に代わる代理権を持ちますが、この代理権については営業や事業に関する一切の、裁判上または裁判外の行為に及びます。なお、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません。例えば支配人が行える業務を限定したとしても、通常に考えれば支配人の責任の範囲である、と考える善意の第三者には対抗できないということです。 では、支配人の義務についてはどうでしょうか。支配人は、雇用契約上の善管注意義務や報告義務などの責任を負っていますが、そのほか営業避止義務や競業避止義務というものも負っています。言い換えると、支配人は商人の許可を得なければ、次の4つをすることができないというものです。 ①自ら営業を行うこと ②自己または第三者のためにその商人の営業範囲内の取引を行うこと ③他の商人や会社、外国会社の使用人になること ④会社の取締役や執行役または業務を執行する社員になること です。以上支配人とは、商人から権限を付与された者になりますが、一方、表見支配人というものも存在します。表見という言葉は、民法の表見代理人の話に出てきましたね。それと同じようなものになります。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/date/2018/06/20   「表見支配人」とは、包括した代理権を与えられていない使用人であるにもかかわらず、支配人らしく思わせる名称を付けられた使用人のことを言います。例えば、責任権限を持っていない店員さんであるにもかかわらず、「お店責任者」などといった名札を付けられている場合がこれに当たります。 表見代理人は、裁判外の行為に関しては、善意の第三者に対しては支配人と同一の権限を有するとみなされます。権限がなくても、裁判上の行為を除き、善意の第三者に対しては支配人と同様の効力を有することとなります。責任権限がなくても、第三者に支配人と誤認させるような表示をさせている以上、裁判まで発展していない事案については、責任を持ちますよということになります。
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相続に関する改正民法成立
本年平成30年7月6日の参院本会議で、相続分野に関する改正民法が可決成立しました。約40年ぶりの大幅見直しとなりますが、一部の条項を除き、1年を経過しない来年の7月までに施行される予定です。 今回の見直しについてはかねてより問題化されていた、超高齢社会における配偶者への居住権の確保等が主軸になっています。主な改正点は次のとおりです。 ①配偶者の居住権を保護するための方策 ②遺産分割等に関する見直し ③遺言制度に関する見直し ④遺留分制度に関する見直し ⑤相続の効力に関する見直し ⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策 になります。 では具体的に各内容について見ていきましょう。 第1の配偶者の居住権保護については、短期的な保護と長期的な保護の両面から確保されることとなりました。 まず短期的な方策について見てみましょう。現行法における配偶者の居住権については判例から、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していれば、原則被相続人と相続人の間で使用貸借契約が成立していたと推認され、そのまま居住することができます。しかし第三者にその建物が遺贈されてしまったり、配偶者が居住することに被相続人が反対の意思表示をしていた場合には、使用貸借が推認されずに居住が保護されないことになってしまいます。 その事態を回避すべく、「配偶者短期居住権」というものが設けられました。これは配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合について、 ①配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合は、居住建物の帰属が確定するまでの間の期間。ただし帰属が6ヶ月以内に確定した場合でも、最低6ヶ月は保障される ②居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄をした場合には、居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6ヶ月間、配偶者は居住建物を無償で使用する「配偶者短期居住権」を取得する というものです。 被相続人の建物に無償で住んでいなかった場合にはこの権利は取得できないことになりますが、権利を取得すれば必ず最低6ヶ月間は居住が保護されることになります。 長期的な方策では、「配偶者居住権」というものが新設されました。これは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間の配偶者の建物使用権を認める内容となります。配偶者居住権は「物権」であり、「登記」することもできます。しかし売買することや譲渡をすることはできません。 現行制度では遺言書がない相続でその相続財産の多くが土地建物等の不動産だった場合など、法定相続分の規定によって、配偶者が建物以外の預貯金等を取得できなかったり、あるいは建物を売って共同相続人に金銭を渡さなければならないケースも出てきます。 配偶者とその子供が1人いた場合を例に挙げますと、法定相続分は配偶者1/2、子1/2(複数いる場合はその子らで等分します)になりますので、相続財産が自宅(土地建物)2000万円、預貯金が2000万円の場合では総額4000万円となり、配偶者が自宅を相続すると預貯金の2000万円はすべて子の相続分となります。 預貯金が1000万円だったとしますと相続合計は3,000万円になりますので、1/2ですと1500万円になり、配偶者が自宅を相続した場合で子から請求があった場合は、子に500万円を支払わなくてはなりません。これでは相続によって配偶者が住む自宅を失いかねません。 それを解決するために設けられた制度が「配偶者居住権」になります。これは相続された自宅を、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分け、配偶者の自宅の相続額を低く設定する効果が生じます。 先の相続総額4000万円の例で言いますと、配偶者居住権が1000万円とされればその居住権をもって住み続けることが可能となり、残りの負担付き所有権を子が相続した場合には、配偶者の相続額は2000万円ですので、1000万円分の預貯金を相続できるという仕組みになります。子には負担付き所有権1000万円と預貯金1000万円が相続されることとなります。 どういうことかと言いますと、相続が開始した年齢にもよりますが、配偶者はその先何十年も生きることはないと仮定し、平均余命から割り出した住み続けられる間の価値が配偶者居住権になります。あるいは何年か後には老人ホームに移るので、自宅にはそれまでしか住まない、という選択肢もあるかもしれません。配偶者が亡くなった場合は自宅は子のものとなりますので、それが負担付き所有権となります。 この規定によって、現在の自宅の価値がまるまる配偶者の相続分になってしまい、その他の財産を相続する権利を失ってしまうことから回避されることになります。 とはいえこの改正内容については、負担付き所有権が付いている建物の資産価値の低下や売買する際の市場性の問題(買い手がいない)、配偶者居住権と抵当権の問題など権利関係が複雑になっており、実際の運用面では非常にやっかいな問題をはらんでいるようです。 相続人間でこのような制度を用いざるを得ない関係性があるようでしたら、遺言を残しておくことが最善策だと思われます。 これらの算出は個別具体的になされるものですが、単純に式で表すと、建物敷地の現在価値-負担付き所有権=配偶者居住権の価値ということになります。よろしいでしょうか。 では第2の遺産分割に関する見直しについて見てみます。これについては次の3つの内容が含まれています。 ①配偶者保護のための持戻し免除の意思表示推定規定の新設 ②仮払い制度等の創設・要件明確化 ③遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲 です。 ①については、婚姻期間が20年以上であれば、配偶者に居住用の不動産を生前贈与または遺贈した場合でも、原則として計算上「特別受益」(遺産の先渡し)を受けたものとして取り扱わなくてよいという内容になります。 現行制度では、被相続人が配偶者のためを思って自宅を生前贈与していた場合でも、「持戻し制度」というものによってその自宅は「特別受益」とされ、遺言による「持戻し免除」の表示がない限り、相続財産に合算されてしまいます。 どういうことかと言うと、先ほどの総額4000万円の例で見ますと、現行法では生前贈与された2000万円の自宅も相続総額に含まれることとなります。配偶者の相続分はこの自宅のみとなってしまい、残りの預貯金2000万円はすべて子に相続されることになります。 これでは生前贈与した意図が相続に反映されないこととなってしまいます。今回の見直しでは、20年以上法律上の婚姻期間がある者については、その貢献に報い、老後の生活を保障すべきものとして、「持戻し免除」の表示がなくても表示があったと推定して(被相続人の意思の推定規定)、遺産の先渡しとして扱わずに相続財産総額に含めないことになります。 先の例で言いますと、遺産総額は自宅を含まない預貯金2000万円となり、配偶者と子がそれぞれ1000万円ずつ相続することになります。 次に②の仮払い制度について、現行法では判例から、遺産分割が終了するまでの間は、相続人単独では預貯金の払い戻しをすることができません。相続される預貯金債権は相続人全員の共有債権になりますので、それぞれの相続分が確定するまでは生活費や葬儀費用、相続債務の弁済などの必要性があっても払い戻しができず、相続人が立替える必要がありました。 今回の見直しにおいてはこれが緩和され、2つの仮払い制度が設けられることとなりました。 ひとつは預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮処分の要件が緩和されます。従来も訴えにより認められることはありましたが、見直しによって、仮払いの必要性があると認められる場合は他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断(手続き)で仮払いが認められるようになりました。 もうひとつは、家庭裁判所の判断を経なくても払い戻しが受けられる制度が新たに設けられました。これは相続人としての相続分であれば、そのうちの一定額について単独で払い戻しが認められるという制度です。具体的には、(相続開始時の預貯金総額×1/3×払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分)まで、払い戻しが認められることとなります。 ③の相続開始後の共同相続人による財産処分についてですが、現行法では特別受益のある相続人が遺産分割前に遺産を処分してしまった場合には、他の共同相続人に不公平な結果が生じてしまいます。 例を挙げますと、配偶者がなく子が兄弟2人あったとします。相続される預貯金が2000万円で、長男に2000万円が生前贈与されていた場合には、この贈与分は持戻しとなり、相続総額は4000万円になります。長男にはすでに2000万円が渡されていますので、今回の預貯金2000万円はすべて次男に相続されることとなります。 しかしこの2000万円のうち1000万円分を長男がだまって引き出していた場合には、残りの預貯金が1000万円となってしまいます。すると相続預貯金総額はもち戻しを含めて3000万円となり、法定相続分にしたがって兄弟それぞれが1500万円ずつ相続します。ここでは長男はすでに2000万円を贈与されていますので相続分は0円となり、次男が預貯金総額の1000万円を相続することになります。 これでは長男が贈与分の2000万円と引き出し分の1000万円の合わせて3000万円を受け取ることになり、次男は1000万円しか受け取れず不公平な結果となってしまいます。この場合は裁判に訴えても、結論から言うと次男の受け取り分は本来の2000万円に届くことはありません。 その不公平を是正するために、遺産を処分した者以外の同意(この例では次男)があれば、処分したもの(長男)の同意を得なくても処分した預貯金(1000万円)を遺産分割の対象とすることができる、という法律上の規定が加えられることとなりました。 これによって、たとえ共同相続人の一人がこっそり分割前の預貯金を引き出してしまった場合でも不公平が起こらない制度となりました。今の例で言うと、相続財産の総額は4000万円とされ、次男は1/2の2000万円を相続することができます。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/   次に第3の遺言制度の見直しについて見てみましょう。これには次の3つの内容があります。 ①自筆証書遺言の方式緩和 ②遺言執行者の権限の明確化 ③法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(民法ではなく遺言書保管法によります) です。 ①について、現行法で自筆遺言に法的効果を生じさせるには遺言書の全文を自書する必要があり、財産が多数ある場合には相当な負担が伴いました。 今回の見直しでは、自書によらないパソコンなどで作成した財産目録を添付することができ、合わせて銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を添付することでも法的効果が生じることとなります。 ②の遺言執行者の権限の明確化については、遺言執行者の一般的な権限として、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずる、ということが明文化され、また特定遺贈又は特定財産承継遺言(遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における、遺言執行者の権限等が明確化されました。 ③について、現行法では自筆証書遺言の管理は遺言者に任されていましたが、見直しによって法務局という公的機関に保管できる制度が創設されました。 この制度では相続開始後に相続人が遺言書の写しの請求や閲覧をすることが可能となり(その場合は他の相続人にも遺言書の保管の事実が通知されます)、紛失や改ざんの恐れがなくなることになります。 保管については申請者が撤回することもできます。なおこの制度では現行自筆証書遺言で負担になっている、「検認」の規定は適用されません。 第4の遺留分制度に関する見直しについて見てみましょう。これも2つの内容からなります。 ①遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化する ②減殺請求がなされた場合に、請求された側が金銭を直ちに用意できないときは、請求された側である受遺者などが裁判所に請求することによって、金銭債務の全部または一部の支払いについて、相当の期限を与えられる というものになります。 ①の遺留分減殺請求の金銭債権化とは、現行法では請求がなされた際にその財産が金銭でなかった場合には、共有状態が生じてしまい事業承継などの支障になってしまいます。その状況を回避するために、減殺請求された債権は金銭で支払われることを明文化したものです。 ②については遺贈などされた財産の額が大きい場合であっても、実際に別途金銭を用意できるとは限りませんので、この内容も加えられています。 第5の相続の効力等に関する見直しですが、これは"相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができる"、ことについての見直しとなります。 どういうことかと言いますと、登記なくして第三者に対抗できるという内容自体は問題ないのですが、相続人の債権者において債務回収の差し押さえなどが発生する場合は、通常法定相続分を想定して計算することになります。ここで遺言によって法定相続分を下回る内容でしか相続されなかった場合は、債権者等の第三者の取引の安全が確保されないことになります。 この観点から今回の見直しにおいては、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないと改正されました。登記されれば債権者もその内容について知ることができますので、取引の安全性が確保されることになります。 法定相続分までは現行法とおり、登記なくして第三者に対抗することができます。 第6の相続人以外の者の貢献を考慮する方策ですが、相続は相続人にしかすることができません。相続人以外の者には、例えば親身になって世話をしてくれた長男の妻にも相続はなされません。これらの者に財産を贈りたい場合には贈与によるか、遺言書による遺贈や死因贈与の方法をとります。 しかしこの遺言書がなかった場合には、どんなに被相続人に尽くした者であっても、遺産分割協議に加わることはできません。この不公平を見直すべく、特別の寄与の規定が設けられました。 これは相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合に、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払いを請求することができるという制度になります。請求できる親族とは6親等以内の血族および配偶者、3親等以内の姻族を言います。 遺産分割は現行とおり相続人だけで行われ、それとは別に特別の寄与があった者が相続人に請求を行ないます。これには算出式などありませんので、当事者同士の話し合いになります。 以上が改正の内容となりますが、現時点では改正法全体の具体的な施行日は決まっていませんが(公布の日から1年以内)、自筆証書遺言の方式緩和(自書以外の目録可)は平成31年1月13日に施行されます。また自筆証書遺言の保管制度は、公布の日から2年を超えない範囲内での施行とされました。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/
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商法というもの
今日は商法のあれこれについて書いてみます。 商法は私法の一般法である、民法の特別法に位置づけられます。法律の場合は特別法が一般法に優先しますので、商法に記載のある項目は、基本的に民法に優先します。一方、商法に記載のない項目については、民法が準用されることになります。では商法で使われる用語を見ていきましょう。 まず「商人」とはどのようなものでしょうか。商法における商人とは、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」です。業(ぎょう)とするがポイントですが、これは営利目的で同種の業務を反復的・継続的に行うものになります。目的自体が実現されるかどうかは問われるものではなく、同種の業務を反復的・継続的に行っている事実があれば、業として行っているということになります。 商人は、自分自身が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体となりますが、必ずしも自身が現実に営業活動を行う必要はありません。他の者に命じて行わせても構いません。一方、営業主のために商行為を代理する者は、権利義務の帰属主体ではありませんので、商人には当たりません。 この商人という資格を得るための要件は、特定の営業を開始する「準備行為」をした者になります。営業自体を開始していなくても、準備行為をした時点で商人の資格は得られるものとなります。準備行為については相手方のみならず、それ以外の者にも客観的に開業準備と認められるものでなくてはなりません。 未成年者や成年後見人の代理の者が商人になる場合については、登記が必要になります。しかし未成年の場合でもその者が結婚をしている場合は、「成年擬制」といって成年と同等の立場とみなされ、登記は必要ありません。成年擬制については、婚姻が解消されても擬制が解かれることはありません。 個人の場合の商人の資格取得については以上の通りですが、会社の場合については、設立された時に商人資格を取得することとなります。商人資格を喪失する場合は、自然人は残務処理が終了した段階で商人資格を失い、会社は清算が終わった時に商人でなくなります。 次に「商行為」というものについて見てみましょう。商行為には、 ①絶対的商行為 ②営業的商行為 ③付属的商行為 があります。絶対的商行為とは営利性が強く、1回限りでも商行為として商法の適用を受けるものを言います。内容としては投機購買(1号)、投機売却(2号)、取引所においてする取引(3号)、手形その他商業証券に関する行為(4号)があります。 営業的商行為とはいわゆる一般的な商売や取引であり、営利目的で反復継続して行うものを言います。 付属的商行為とは営業のための補助的行為を言います。営業用の機器設備を購入するといった、開業のための準備行為などがこれに当たります。 では、「商業登記」について見てみましょう。 商業登記には次の9種類があります。 ①商号登記             ②未成年者登記 ③後見人登記 ④支配人登記 ⑤株式会社登記 ⑥合名会社登記 ⑦合資会社登記 ⑧合同会社登記 ⑨外国会社登記 商業登記の効力として、登記された後でなければ善意の第三者には対抗することができません。また登記の後でも第三者に正当な理由がある場合は対抗できません。なお故意または過失によるものについては不実登記といい、第三者に対抗することはできません。 次は「商号」というものについて見てみましょう。 商号とは商人が営業をするに際し、自己を表示するために用いる名称を言います。商号は商標やマークとは異なるものです。 商号には原則や制約がありますが、まず「商号選定自由の原則」というものがあります。商号は自由に決めてもいいですよという原則になりますが、会社法(もとは商法の一部でした)からは、会社の種類によって株式会社等の文字を用いなければならないとか、会社でないものは商号中に会社と誤認させる文字を使用してはならない、ということも規定されています。 また「商号単一の原則」というものもあり、ひとつの会社にはひとつの商号しか使用することはできません。個人商人の場合については「一営業一商号の原則」とされ、営業種ごとにひとつの商号が許されます。営業種を変えれば、別の商号をつけても良いよということになります。 商号の効力として、登記の有無にかかわらず、商号を選定した者に商号使用権と商号専用権を与えます。これらの効力によって、他の者が同一または類似した商号を不正に使用することは禁止され、この権利を侵害したり侵害するおそれのある者に対しては、侵害の停止または予防を請求することができます。この禁止に違反した者は100万円以下の過料に処されることとなります。 なお商号は商法だけでなく、不正競争防止法によっても守られています。 商号は譲渡することもできます。これは営業とともに譲渡するとき、または営業を廃止するときに限りすることができるものです。この譲渡については、当事者間では意思表示のみで効力が生じますが、登記をしなければ善意悪意を問わず、第三者には対抗できません。
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民法改正後の遺言について
自筆証書遺言のメリット・デメリット
遺言における付言について
相続の承認について
共同不法行為と正当防衛
遺言書の後継ぎ遺贈について
遺言書についてのQ&A 遺言書を書かれる動機
商法 使用人について
相続に関する改正民法成立
商法というもの

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