相続の際の後見制度 制限行為能力者について

今日は権利能力・意思能力・行為能力というものについて書いてみます。

まず権利能力とはどういうものでしょうか。権利能力とは、権利や義務の主体となりうる地位や資格のことであり、自然人である人間はもちろんのこと、法人も含む概念です。生まれた時に取得し、死亡した時に失います。相続の記事でも触れましたが、胎児については権利能力は認められませんが、相続や遺贈を受ける権利、また不法行為による損害賠償権は例外として、生きて生まれた場合にさかのぼって認められることになります。

次の意志能力とは、自分の行為の結果を理解(弁識)できるだけの精神能力のことをいい、一般的には10才程度の者であれば有するとされています。よく犯罪などで鑑定が行われますが、通常は意思能力を有するものであっても、泥酔している場合などは意思能力を有していないとされます。

意思能力は私的自治の前提となりますので、意思無能力者の行為はすべて無効となります。

行為能力とは、単独で有効な法律行為を出来る能力のことです。これは法律でその地位や資格が定められており、法律によって行為能力が制限されている者を制限行為能力者といいます。それらの人たちの行動を抑制するという趣旨ではなく、物事を単独で行ってしまった場合にその結果から守るという趣旨で、民法に明記されています。

制限行為能力者は未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4つが定められています。未成年を除く3者については、保護の必要性が大きい順に並べましたが、それらについて順に見てみましょう。

まず未成年者ですが、定義としては、20歳に満たない者を未成年者といいます。20歳になると成年となります。しかし婚姻をすれば成年擬制という制度によって、成年とみなされます。これは離婚してもその後も有効になります。成年擬制は法律のいろいろな場面で出てきますので、覚えておいたほうがよいです。

例えば養子をするのは成年でないとできませんが、成年擬制の場合はできます。また商法においても未成年は登録をしないと営業ができませんが、これも必要なくなります。

未成年者が契約等の法律行為を行う場合には、親権者などの法定代理人の同意が必要になります。そしてこの規定に反して行った行為については、本人または法定代理人が取り消すことができます。

例外としてはむつかしい表現になりますが、「単に利益を得、義務を免れる法律行為」は単独でできます。贈与を受けたり債務を免除されたりがこれに当たります。成年になると様々な権利義務が発生しますが、成年擬制の場合にも権利も発生しますが、反面法律で守られる場面も減るということです。権利と義務は表裏一体です。

未成年者の法定代理人(親権者等)の権限としては、代理権、同意権、取消権、追認権があります。法定代理人は未成年が行なった法律行為について、同意をしたり後から認めることによって、行った法律行為を有効なものにすることができます。

次は成年被後見人です。これは精神上の障害によって、「事理弁識(じりべんしき)能力を欠く常況」にあり、他の者の後見が必要な者のことをいいます。事理弁識能力とは物事の結果などについて認識することができ、それに対して有効な判断が出来る能力のことです。常況とはいつでもそういう状態にあるということです。一時的な場合には使われません。成年被後見人は、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者がなることができます。

成年被後見人の行った法律行為は取り消せます。これは成年後見人が同意した行為でも取り消すことができます。裏を返せば、成年後見人には同意権はないということです。ただし日常品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せません。成年後見人の権限は、代理権、取消権、追認権です。

次は被保佐人について見てみます。被保佐人は、精神上の障害によって、事理弁識(じりべんしき)能力が「著しく不十分」な者で、家庭裁判所の補佐開始の審判を受けた者をいいます。原則として単独で法律行為を行うことはできますが、不動産などの重要な財産の処分などは保佐人の同意が必要になります。

同意を欠いた場合は取り消すことができます。日常品の取り扱いに関しては取り消せません。保佐人の権限は民法13条1項に書かれている項目(不動産の処分や訴訟行為、相続に関すること等)についての同意権、取消権、追認権、代理権があります。この場合の代理権についてのみ、家庭裁判所の審判を受けるかどうかは本人自身の請求か同意が必要になります。本人が拒否すれば代理権は付与されません。

最後の被補助人とはどのような者でしょうか。これは事理弁識能力が「不十分」であり、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます。本人自身が審判開始を請求するか、本人以外の者が請求をした場合は、本人の同意が必要になります。前2者と異なり、補助開始の審判をする場合は同時に同意見付与の審判と代理権付与の審判、この一方または両方の審判をしなければなりません。被補助人の権限ですが、代理権付与の審判を受けた特定の行為については代理権をもち、同意権付与の審判を受けた特定の行為については同意権、取消権、追認権をもちます。以上において各後見人はひとりでも複数でも構いません。法人でもなることができます。また必要な場合には後見人を監督する立場の監督人も付けることができます。また後見人は任意に契約する(任意後見人)することもできますが、任意後見の場合は代理権のみが付与され、同意権や取消権は付与することができません。

相続の場面では、共同相続人がいる場合には必ず遺産分割協議が行われます。この協議では相続人全員の参加と合意が必要となります。ですので、相続人の事理弁識能力に問題がある場合は代理人の選任が必須となる場合があります。その者がまだ代理人を有していない場合には、状況をみて家庭裁判所への選任請求をしなければなりません。また相続人に未成年がいる場合には、親との利益相反との関係から特別代理人の選任も請求しなければならないので、注意が必要です。特別代理人についてはあらためて別の記事で書いていきます。

https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry62.html

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相続 民法改正案について
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商法というもの
今日は商法のあれこれについて書いてみます。 商法は私法の一般法である、民法の特別法に位置づけられます。法律の場合は特別法が一般法に優先しますので、商法に記載のある項目は、基本的に民法に優先します。一方、商法に記載のない項目については、民法が準用されることになります。では商法で使われる用語を見ていきましょう。 まず「商人」とはどのようなものでしょうか。商法における商人とは、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」です。業(ぎょう)とするがポイントですが、これは営利目的で同種の業務を反復的・継続的に行うものになります。目的自体が実現されるかどうかは問われるものではなく、同種の業務を反復的・継続的に行っている事実があれば、業として行っているということになります。 商人は、自分自身が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体となりますが、必ずしも自身が現実に営業活動を行う必要はありません。他の者に命じて行わせても構いません。一方、営業主のために商行為を代理する者は、権利義務の帰属主体ではありませんので、商人には当たりません。 この商人という資格を得るための要件は、特定の営業を開始する「準備行為」をした者になります。営業自体を開始していなくても、準備行為をした時点で商人の資格は得られるものとなります。準備行為については相手方のみならず、それ以外の者にも客観的に開業準備と認められるものでなくてはなりません。 未成年者や成年後見人の代理の者が商人になる場合については、登記が必要になります。しかし未成年の場合でもその者が結婚をしている場合は、「成年擬制」といって成年と同等の立場とみなされ、登記は必要ありません。成年擬制については、婚姻が解消されても擬制が解かれることはありません。 個人の場合の商人の資格取得については以上の通りですが、会社の場合については、設立された時に商人資格を取得することとなります。商人資格を喪失する場合は、自然人は残務処理が終了した段階で商人資格を失い、会社は清算が終わった時に商人でなくなります。 次に「商行為」というものについて見てみましょう。商行為には、 ①絶対的商行為 ②営業的商行為 ③付属的商行為 があります。絶対的商行為とは営利性が強く、1回限りでも商行為として商法の適用を受けるものを言います。内容としては投機購買(1号)、投機売却(2号)、取引所においてする取引(3号)、手形その他商業証券に関する行為(4号)があります。 営業的商行為とはいわゆる一般的な商売や取引であり、営利目的で反復継続して行うものを言います。 付属的商行為とは営業のための補助的行為を言います。営業用の機器設備を購入するといった、開業のための準備行為などがこれに当たります。 では、「商業登記」について見てみましょう。 商業登記には次の9種類があります。 ①商号登記             ②未成年者登記 ③後見人登記 ④支配人登記 ⑤株式会社登記 ⑥合名会社登記 ⑦合資会社登記 ⑧合同会社登記 ⑨外国会社登記 商業登記の効力として、登記された後でなければ善意の第三者には対抗することができません。また登記の後でも第三者に正当な理由がある場合は対抗できません。なお故意または過失によるものについては不実登記といい、第三者に対抗することはできません。 次は「商号」というものについて見てみましょう。 商号とは商人が営業をするに際し、自己を表示するために用いる名称を言います。商号は商標やマークとは異なるものです。 商号には原則や制約がありますが、まず「商号選定自由の原則」というものがあります。商号は自由に決めてもいいですよという原則になりますが、会社法(もとは商法の一部でした)からは、会社の種類によって株式会社等の文字を用いなければならないとか、会社でないものは商号中に会社と誤認させる文字を使用してはならない、ということも規定されています。 また「商号単一の原則」というものもあり、ひとつの会社にはひとつの商号しか使用することはできません。個人商人の場合については「一営業一商号の原則」とされ、営業種ごとにひとつの商号が許されます。営業種を変えれば、別の商号をつけても良いよということになります。 商号の効力として、登記の有無にかかわらず、商号を選定した者に商号使用権と商号専用権を与えます。これらの効力によって、他の者が同一または類似した商号を不正に使用することは禁止され、この権利を侵害したり侵害するおそれのある者に対しては、侵害の停止または予防を請求することができます。この禁止に違反した者は100万円以下の過料に処されることとなります。 なお商号は商法だけでなく、不正競争防止法によっても守られています。 商号は譲渡することもできます。これは営業とともに譲渡するとき、または営業を廃止するときに限りすることができるものです。この譲渡については、当事者間では意思表示のみで効力が生じますが、登記をしなければ善意悪意を問わず、第三者には対抗できません。
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民法における事務管理
今日は民法における事務管理というものについて書いていきます。 「事務管理」というとピンときませんが、いわゆる人のためにする「おせっかい」のことです。良かれとおせっかいでしたことも、場合によっては費用や損害が発生してしまうこともありますので、民法では「事務管理」という用語で法律効果を与えています。 具体的にはAさんの旅行中に台風でAさん宅の窓が割れてしまった場合に、Bさんが見過ごすことができずに業者に頼んで窓を応急修理した場合などです。 ではあらためて見ていきます。「事務管理」とは、法律上の義務がないのに、他人のためにその事務を行う行為を言います。事務とは行った行為のことです。この行為は契約に基づくものでもありませんし私人間の行為なので、本来法律の立ち入る必要のないことではありますが、おせっかいをした者に一定の法的保護を与えるために設けられた規定になります。 その条項では、義務なく他人の事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い最も本人の利益に適合する方法によってその事務管理をしなければならない、としています。またその者が本人の意思を知っている場合や推し量れる場合は、その意思に従って事務管理をしなければならないとされています。要は一旦事務管理をした場合には、必ず適切な手段をもって対応しなさいということになります。 事務管理の成立要件として、次の4つが挙げられます。 ①法律上の義務がないこと ②他人の事務を管理すること ③他人のためにする意思があること ④本人の意志や利益に反することが明らかでないこと です。 これらの要件が満たされると事務管理の効力が発生しますが、この場合はその違法性や費用の発生などが問題になってきます。 まず違法性についてですが、事務管理については勝手に他人のことについてするものですので、ともすれば権利の侵害にあたる場合も出てきます。しかしこの場合は違法性が排除され、不法行為には当たりません。 事務管理が開始した場合には、管理するものは原則、遅滞なく本人にその旨を通知しなければなりません。次に事務管理について発生した費用が問題になる場合があります。管理する上で必要な費用が発生した場合には、本人に請求することができます。これは単なるかかった費用ということでなく、本人にとって必要な者であれば認められます。 なお事務の管理方法が不適切なために損害が発生した場合については、事務管理の不履行責任を問われる場合があります。事務管理をする者は、一旦管理を始めた場合は本人等が管理できるようになるまで原則、善管注意義務を負うこととなります。この義務に反した場合には損害賠償が発生することもありますが、危急の場合には悪意重過失の場合のみ賠償責任を負うこととなります。
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遺言における付言について
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7月1日民法一部改正(相続分野)施行
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相続の承認について
今日は相続の承認について書いていきます。 相続は被相続人の死亡によって開始されますが、その時点で相続人が決まります。法定相続人は被相続人の配偶者や子、直系尊属および兄弟姉妹に限られますが、その中の配偶者と最優先順位の者が相続を受けることになります。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/412  相続人が決まれば次は相続する財産を確定させます。あらかじめ公正証書遺言などで財産目録を作成してあれば良いのですが、ない場合は不動産登記簿や金融機関への調査を行うことになります。どちらにしても不動産は名義を変えなければいけないですし故人の口座も閉鎖しなくてはなりませんので、相続人が複数いる場合は必要な書類を整えなくてはなりません。相続人関係図や遺産分割協議書と同様に、財産目録も作成しておきましょう。 不動産や現金預金を調べて、プラスの財産がマイナスの財産より多ければ普通は相続することになりますし、明らかに借金の方が多ければ相続についても考えなくてはならなくなります。そういう場合を想定して民法では相続を受ける方法を規定し、選択の余地を残しています。 ただ選択するのには3ヶ月という期間が定められており、その期間内に決定をしなければいけません。その期間を「熟慮期間」といいます。ではその選択内容について見ていきましょう。 相続を受ける承諾することを、「承認」といいます。「承認」には「単純承認」と「限定承認」があり、これに「相続放棄」を加えて、相続の方法には3種類が規定されています。 「単純承認」とは文字通り単純に相続を受けることをいいます。マイナスの財産も含めた相続財産を、相続人全員がそのまま受け入れるものです。ですので万が一マイナスの財産の方が多かった場合でも、単純承認を選択した場合にはその負債等も無限に負わなければいけません。 自ら選択した場合はもちろん、自ら単純承認を選択しない場合でも、承認の意思表示をしないまま3ヶ月を経過してしまった場合や、相続財産の全部または一部を処分してしまった場合も単純承認をしたとみなされてしまいます。これらは法定単純承認と呼ばれます。大きな債務等のあることがわかっている場合には、くれぐれも熟慮期間を意識し、早めに財産目録を作成しましょう。 「限定承認」とは、マイナスの財産が多かった場合でも相続財産の限度内において債務を弁済すればよいというものです。債務が相続したプラスの財産を超えた場合には、支払いの義務はありません。ただ限定承認の場合は手続きが非常に面倒なものとなります。 まず財産目録を用意し、これを家庭裁判所に提出して申請することになります。申請する場合には共同相続人全員一緒にしなければなりません。ひとりでも反対をしたり単純承認をしてしまった場合にはすることができません。ですので、一人が財産を処分してしまった場合には、残りの共同相続人も申請することはできなくなってしまいます。なお共同相続人のうちの誰かが相続放棄をした場合には、残りの相続人全員で限定承認を申請することができます。 「相続放棄」とはマイナス財産が超過している等の理由で、相続を受けない選択をすることです。相続放棄をした場合は、最初から相続人ではなかったものとみなされます。ですので欠格や廃除の場合と異なり、代襲相続も認められません。 ただ相続放棄がなされた場合でも、その債務等が当然になくなるわけではありません。他の相続人に相続されていきます。プラスの財産は遺言等によっては法定相続分通りには配分されませんが、マイナスの財産は法定相続分通りに配分されます。ですので残った債務や連帯保証人の立場などは、他の相続人間で法定相続分通りに相続されることとなります。 相続放棄をしても単純に債務から逃れられるという性質のものではありませんので、放棄する際には事前に他の相続人と相談をし、のちのちの関係を壊さないようにしたほうが賢明だと思われます。 http://yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry46.html
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民法改正後の遺言について
今日は遺言について書いていきます。遺言については以前にも書きましたが、相続遺言に関する民法がこの7月に約40年ぶりに大幅改正されましたので、それも含めて見てみましょう。 遺言を残そうとされる目的の多くは、ご自分の作られた財産をきちんとご自分の手で、ご自分の意思で配分したいというところにあると思います。考えられるきっかけはちょっとしたことからかもしれませんが、その動機の多くは遺されるご家族のことを考え、円満でスムーズに相続を終えてもらいたいという気持ちから発せられるようです。 中には家族親族がいがみあっていたり、複雑な関係性であったり、また相続人がいないなどの理由からトラブル防止のための遺言を書かれる場合もあると思います。また事業承継にあっては、自ら思い描く将来のために、きちんと整理した形で財産を相続させる場合もあろうかと思います。 いずれにせよ遺言を残される以上、法的に効果のある遺言にしなければなりません。では法的に効果のある遺言とはどのようなものでしょうか。 遺言自体はどのような形でも残すことができます。口頭で伝える場合もあれば、録音やビデオで伝える場合もあります。また通常は皆さん考えられるところの書面で残すことが多くなります。しかし法的に効果のある遺言は、きちんと法律に従った形式で、書面として残さなくてはいけないものになります。 きちんとビデオに撮っていても、それがそれぞれの相続人が納得するものであれば問題ありませんが、争いになった場合は法的に根拠がないものとして認められないものになります。 昨日たまたまビデオで「激動の1750日」という映画を見ていて、三代目姐が「先代が言い残した」という一言で後継が決まってしまいました。実際に言い残してはいないので争いになった場合は法的根拠のないものとなりますが、特殊な世界であれ、「故人が言っていた」の一言で相続が決まってしまってはたまりません。そこかしこでトラブルが頻発するでしょう。そんなトラブルを起こさないためにも、法律が遺言の形式を定めています。 ここでの法律は「民法」になります。民法は、私人間の生活関係を規律する「私法」の一般法(国家等の公権力と私人の関係を規律する法である法律を「公法」といい、これには憲法・行政法・民事手続法・刑法・刑事手続法があります)であり、その内容は「財産法」(ここには物件法と債権法があります)と「家族法」に分かれます。 「家族法」には家族や親族の範囲や関係性について規定する「親族法」の部分と、相続や遺言について規定している「相続法」の部分があり、ここで遺言についても明確に規定してます。 では民法に規定する遺言について見ていきましょう。遺言の方式について、民法では「普通方式」と「特別方式」を定めています。我々が一般的に理解している遺言とは普通方式のものになりますが、簡単に特別方式の遺言について見てみます。 「特別方式」の遺言については滅多にお目にはかかれませんし、またそういう立場になっては困るのですが、緊急時に発する遺言になります。ここでは詳細は省きますが、災難がまさに降りかかっている際に発する「危急時遺言」と、世間から隔絶された場所にあるときに発する「隔絶地遺言」があります。 「危急時遺言」には「死亡危急者遺言」と「船舶避難者遺言」がありますが、前者は病気やけが、あるいは災害が差し迫っている際に発っするものであり、後者は船舶が遭難にあっている際に発するものになります。 また「隔絶地遺言」には、「伝染病隔離者遺言」と「在船者遺言」があります。前者は伝染病隔離施設や刑務所服役中などの場合、後者は遭難していない船舶の中で作成されます。 いずれも危難は迫ってはいませんので、本人が書く事になります。以上4種類が特別方式になりますが、それぞれ証人であったり検認であったり、その手続きは詳細に決められています。民法は約120年前に制定されましたので、情報の発達していない時代を背景としています。
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婚姻の無効や解消について
相続 失踪宣告
相続 民法改正案について
商法というもの
民法における事務管理
遺言における付言について
7月1日民法一部改正(相続分野)施行
遺産分割協議の開催
相続の承認について
民法改正後の遺言について

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