月別アーカイブ: 5月, 2018

遺贈と死因贈与

今日は遺贈と死因贈与についてもう少し詳しく書いてきます。

まず「遺贈」についてですが、遺贈される者を「受遺者」といいます。相続と同様、遺贈も被相続人の死亡によって開始されます。

受遺者になる要件はひとつ、遺言によって遺贈をする旨の内容が残されていることですが、被相続人の死亡時に遺贈をされる者が既に死亡していた場合は、受遺者となることはできません。また受遺者については代襲の定めはありませんので、この場合はその子等に権利が移ることもありません。遺贈はなかったことになります

一方、被相続人の死亡時には遺贈をされる者がまだ生存しており、その後すぐに死亡した場合については、遺贈の効果は有効となります。ですのでその財産は受遺者の子等に相続されることとなります。

遺贈には2つのものがあります。ひとつは「包括遺贈」とよばれるもので、財産の全部または一定の割合を指定してする遺贈です。この場合は具体的な財産は決められていないことになりますので、他の相続人がいる場合は、これらの者と一緒に遺産分割協議に参加しなくてはなりません

また包括遺贈の特徴は、相続同様プラスの財産のみならずマイナスの財産も含むことです。マイナスの財産が多い場合もありますので、これも相続同様、受遺者に受ける受けないの選択権が設けられており、3ヶ月の期間内に放棄することも認められています。放棄する場合は、家庭裁判所に申請をする必要があります。

もうひとつは「特定遺贈」とよばれ、特定の財産を指定してなされる遺贈です。特にマイナスの財産を指定して行われない限りは、プラスの財産のみの遺贈となります。特定遺贈では遺産分割協議への参加もする必要はなく、また遺贈の承認や放棄の意思表示の期間も特に定められてはいません。しかし他の相続人が協議をすすめる必要性もあるため、これらの者から早期に意思表示を求められる場合が多くなります。

遺贈の場合の税金については、贈与税ではなく相続税として申告する必要があります。また相続人ほどの権利は認められていませんので、不動産の場合は登記をしなければ第三者に対抗できず、農地であった場合は農地転用が必要となります。

遺贈には「負担付き遺贈」と呼ばれるものがあります。これは、与えた条件(負担)を履行した場合のみ遺贈が行われるという性質のものです。たとえば、被相続人の配偶者の面倒を見ることを条件に遺贈を行う、といった場合がこれに当たります。

では負担が履行されなかった場合はどうなるのでしょうか。

負担を履行しなかった場合には、多くは遺言執行者や相続人から、遺贈の取り消しを請求されることとなります。この場合の遺贈する予定だった財産は負担付き遺贈者には渡されず、他の相続人に渡ることとなります。相続人が複数いる場合は、この部分について再度分割協議が行われます。

では負担の大部分は履行したが、全部の履行は行われなかった場合はどうでしょうか。判例では遺贈が認められた場合があります。当然負担を行った程度だけではなく、様々な状況も異なると思いますので、個別具体的に判断する必要があるということでしょう。

「死因贈与」とはどのようなものでしょうか。財産を与える者を「贈与者」、受ける者を「受贈者」とよびますが、これはお互いの契約になりますので、受贈者が一方的に放棄することはできません。死因贈与の際に納める税金も遺贈同様、贈与税ではなく相続税になります。

なお死因贈与の場合も条件付きの贈与があり、これを「負担付き死因贈与」とよびます。負担付き贈与の場合は、受贈者が亡くなる前であれば一方的に破棄することができますが、負担が履行され始めた場合には撤回することはできません。

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ビールの鮮度について

今日は前回に続いてお酒の話し、ビールについて書いてみます。昔取った杵柄ですが、意外と知られていないことですので、初めて聞かれる方にとっては知っておいて損はないウンチクを選んでみました。

まずはビールの管理についてです。ビールは言わずもがな食品です。それとあまり認識されていませんが、生ものだということです。出荷されたその日から鮮度はどんどん落ちていきます。スーパードライや一昔前のキリンビール工場のCMもあって、出来立てが一番おいしいということは多くの方に知られています。

ビールは管理の仕方にもよりますが、日々鮮度は落ちていき、まずくなっていきます。これは飲み比べていただければよくわかります。冷蔵保存されていた場合も劣化の進行は遅くなりますが、まちがっても熟成しておいしくなることはありません。ビール工場に見学に行かれると出来たてのビールが飲めますが、それは本当に格別な味です。

缶ビールにも瓶ビールにも賞味期限が書いてありますが、日本の大手ビール会社の場合ですと9ヶ月となっています。これは別に法律に決められているわけではなく、あくまでも自主基準です。一応メーカーのトークとしては、賞味期限は「おいしく飲まれる期間です」ということになっていますが、実はそんなこともないんですよ。

9ヶ月に根拠があるわけでもないですし、10ヶ月目から格段にまずくなるわけでもありません。徐々に味の劣化が始まっており、そこまでいくとかなり味覚が落ちています。日付をご覧になって、鮮度のよいビールと6ヶ月たったビールを飲み比べていただければ一目瞭然です。明らかに違いがあります。

冷蔵庫に入れているから安心というものではありません。スーパーなどはメーカーが巡回して日付の入れ替えをしていますので、今ではそんなことはあまりありませんが、一昔前は奥のビールはいつも奥のままで、日付が古くなっていく一方という場合もありました。ビールを買われる際にはくれぐれも日付を確認して、新しいものを買うようにしましょう。間違いなくそこにある日付の古いものよりおいしいです。それと奥から取られる方も多いと思いますが、これも念のために日付を確認してください。お店で熟成されたものでないことをお祈りしています。

次にビンビールの保管についてですが、ビンビールは日光の影響を避けるために茶色くコーティングされています。直射日光に当たると影響が非常に大きいからです。しかしこの効果も直射日光の威力にはかないません。直射日光の強い場所に置いておくと、ものの30分程度で劇的に味覚が劣化します。ケモノ臭といいますが、臭をかぐと、狐のようなツンとした臭が鼻をつき、とても飲めたものではなくなってしまいます。

昔ビールの学校を開催していた頃はいつもあらかじめそのようなビールを作っておき、来られた方に飲んでいただいていましたが、もし1本無駄にしても良いと思われるようでしたら、1度お試しあれ。

私もキリンのビール教室で講師をしていましたが、その頃はそのような直射日光に当てたビールや日付の経過したビール、あるいは炭酸ガスを強くしたビールや気抜けビールを、当日の生徒さん(主に飲食店の店長さんや店員さんでした)に試飲をしていただいていましたが、飲酒運転の規制が厳しくなるとともに(今では当たり前ですが)試飲も行うことはなくなり、ビール教室も役目を終えました。まあその頃はラーメン屋さんなどの飲食店にランチビールのメニュー化を勧めていた時代ですので、今考えるととんでもないですね。2000年くらいまでですかね。

あと、一度凍ってしまったビールは成分が分離してしまって2度ともとの味には戻りません。気抜けしたビールになってしまいます。短時間で缶ビールをキンキンに冷やそうとして出し忘れてしまったり、冬場に屋外でビンビールを在庫しておいたりする場合です。寒い地方は注意が必要ですね。

もうひとつ、お店で出される生ビールについてです。これは見かけたことがあるかもしれませんが、10ℓ~20ℓの業務用の大樽に詰められています。これも口を開けて数日から長くても1週間で味が悪くなります。

この大樽の場合は管理温度が大きな問題で、35度以上になると目も当てられません。開栓していなくても、より短い日数で極端に味が劣化してしまいます。気の利いたお店では大樽の上に氷をおいていますが、夏場の生ビールには注意が必要です。冷蔵庫型のビールサーバーでしたら問題はありませんが、樽の収容量が多くても2つのため、大きなお店では使用できません。

最後にジョッキの管理についてです。ビールは繊細な飲み物ですので、油系を特に嫌います。ですので、ジョッキやグラスを洗う際もよく洗剤をすすぎ流してから、フキンを使わずに自然乾燥させるのがベターです。フキンなどにも油分が付着しているからです。

ここでお店のサービスの品質管理に関する意識がひと目でわかるものがあります。それはジョッキに付いた泡です。ジョッキのビールを一口を飲み終わると、ジョッキの内側にビールの泡の輪っかができます。これはエンジェルリングと呼びますが、一口飲むごとに順番に輪っかができていきます。

これが出来る店はきちんとグラスを洗浄しているお店です。輪っかができずにだらだらと流れるように泡がついているお店は、グラス洗浄に問題があるお店です。そうなるとビールの鮮度も心配になってきますね。今度お店に行かれた際には、注意してご覧下さい。

ビールの季節

そろそろビールが一段とおいしい季節になってきました。今週は暑さも一息ですが、そろそろビアガーデンもオープンしてきましたね。

以前は飲み会でも「とりあえずビール」が定番でしたが、10年ほど前からお酒の嗜好の多様化が進んだりあるいは若者の酒離れが進んだりして、ビール離れが進んできました。1杯目からまずはビールではなく、チューハイやハイボールやらが花ざかりです。

お酒をあまり飲まない方は、ビールの苦味(くみ)が苦手なんでしょう。先週サントリーさんの特定のウイスキー原酒が底をついたというニュースがありましたが、隔世の感があります。ジャパニーズウイスキーの原酒がなくなるなんて。

ウイスキー需要は2000年代後半までずっと継続して右肩下がりでしたので、貯蔵樽も多くあったようです。もちろん熟成には年数がかかりますが、工場の規模から言えば仕込むスペースなどしれているでしょうし、具体的な数字はわかりませんが、それだけ高額品の伸びるペースが予想外だったということでしょうか。

サントリーさんがハイボールに火をつけたのを皮切りに、ここにきて一層チューハイも度数が7-9%のものが多く発売されてきました。ひと頃は女性をターゲットにした3%ものが人気を博しましたが、完全にシフトチェンジした感があります。

業界ではチューハイ類を称して「低アル」カテゴリーと区分していましたが、これでは「高アル」と呼んだ方がふさわしいくらい。当方も飲み過ぎの感があるので、ノンカロリーで甘くないアル度の低いものを探しているんですが、これがないんですよ。

ウイスキーは一過性のブームではなく、今までは飲まず嫌いで飲んでいなかった、新しいお酒が加わったと認知されているのではないでしょうか。以前はオヤジの酒などと揶揄されて、あるいは度数の高いイメージから、最初から選択肢として加わっていなかったんですが。

ウイスキーはいわゆる甲焼酎同様、割ってしまえば強い癖もなくカロリーも低い。おまけに蒸留酒はビールやワインのような醸造酒とちがって、悪酔いしません。それに定番のジャパニーズウイスキーはスコッチやバーボンと違ってとにかく飲みやすい。角瓶などその最たるもので、ストレートで飲んでも飲みすぎてしまいます。裏を返せば個性がないというか。ひと頃はストレートでばかり飲んでいましたが、角瓶は飲みすぎてしまい非常に危険でした。

ストレートで喉の焼け付く感を味わうには、バーボンがおすすめです。バーボンはジャックダニエルやターキーが特に好きです。フォアロゼも粗野でチープな味わいが良いと思います。昔はヘンリーマッケンナが好きでした。

私もハイボールを飲みだしてから、ビールの苦味(くみ)が苦手になりました。昔はビールしか飲まなかったんですが。お酒をよく飲む男性にとっては、度数の低いお酒は「損した感」がありましたが、今は「得した感」ってやつですか。ただでさえ苦しいビールメーカーにとっては、痛し痒しの状況ですね。

お酒の中で一番おいしいと思うものはコニャックです。いまではあまり飲みませんが。あとダークラムとシェリーですね。って、どれも糖分が多くて今は自主規制です。バブルの頃は高価なワインも普通に売れていましたので、扱っていたシャトーワインの社内試飲会も行っていました。これも普通にシャトーマルゴーやロートシルトなどのビンテージもみんなで比較していました。味は忘れないもので、良い経験になっています。

もう時効ですが、この頃の課の旅行では地場の永田屋さんという酒卸さんからしこたまワインを買い付けて旅先で飲み明かしたこともありました。目玉はロマネコンティとラターシュでしたが、ビンテージは忘れましたが、ロマネが15万円、ラターシュが4万円でした。もちろん他のシャトーワインも色とりどりで。でも真打が登場する頃にはみんなベロベロで、価値などわかったものではありませんでした。

 

国交省 建設業者数調査について

建設業許可業者数調査の結果について、国交省より発表されています。平成30年末現在のものですが、今回調査での全国の許可業者数は464,889業者であり、昨年からは0.1%のマイナスと、ほぼ同様の規模となっています。許可業者数のピークは平成12年3月末時点(平成11年度)の600,980業者ですので、そこからは22.6%減となっています。新規許可業者数は21,035業者で、前年比4.0%の増加です。廃業は21,600業者と、昨年度より803業者減っています。リンクを貼っておきますので、国交省のサイトから確認ください。

遺贈と死因贈与について

今日は遺贈と死因贈与について書いていきます。

相続は相続人にしかすることができません。そもそも相続とは、被相続人が亡くなった場合に、法律で決まっている者に財産を承継させる制度です。相続人は配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹のみと民法で決まっており、これらが決められた順位で相続できるのみです。

もしこれらの者が一人もいない場合は、相続財産を管理する者として家庭裁判所から弁護士等が選任されることとなります。そこで本当に相続人がいないかの調査がなされ、それでも見つからない場合には家庭裁判所に認められた場合に限り、被相続人の世話を相当程度した者が一部の財産を譲受けることができます。それらが完了すると、最終的には財産はすべて国庫に帰属することとなります。

さて、相続人がいるいないにかかわらず、あなたがとても世話になった方がいるとします。その方の恩に報いるにはどうしたらよいでしょうか。ここからの話は相続人についてもすることができますが、相続人の場合は「寄与分」ということで、相続人間の協議において相続分の上乗せをすることができますので、ここでは除いて話を進めます。

あなたがもし遺言書を残さないで亡くなった場合には、相続人全員で相続財産の分配についての協議を行うことになります。この場合は参加できる相続人は当然法律によって定められた者のみ(あとで述べる包括受贈者を除いて)となりますので、たとえあなたがとてもお世話になり、心情的に財産を分け与えたい方でもそこには加わることはできません。

たとえば同居しているお子さんのお嫁さんなどがこれに当たります。ですのでもし相続以外で財産をあげたい場合は、あなたのその意思を明確に残す必要があります。当然法的効果のあるものでないと、他の相続人から否定された場合には、その者も権利を主張することができなくなってしまいます。ここで効果を発揮するものが一般的には遺言書ということになります

遺言書によって相続人以外の者(相続人にもすることができますが)に財産を与える場合には、「遺贈」という形をとります。これはあなたがその方に対してする、一方的な単独行為になります。自分が死んだらその者に財産をあげるという内容になります。一方的な行為ですので、遺贈する者に事前に伝える必要はありません。

遺贈とは別にもうひとつ、相続によらずに死亡を契機として財産を与える行為に、「死因贈与」があります。これは財産をあげる者とあらかじめ契約を交わしておき、自分が死んだらあげるというものです。契約といってもこれには特に方式はなく、契約書等も必要ありません。口約束だけでも効果を発揮します。しかし、証拠がない場合はトラブルのもとになる場合もあります。もし死因贈与をする場合には、文書等に記しておくことも考えたほうが良さそうです。

死因贈与は遺贈と異なり、あなたの亡くなる前から相手の方もその内容を承知していることになります。ここで別に遺言書が残されており、そこに書かれていた内容がその死因贈与契約と異なっていた場合はどうなるのでしょうか。

この場合は遺言書の効果と同様に、後からされたものが有効となります。遺言書の書かれた日付が後であれば、遺言書によって前の死因贈与契約が破棄されたこととなりますので、死因贈与契約は無効となります。逆も然りです。このように日付等の証拠の裏付けが必要になる場合もありますので、本当に必要な死因贈与の場合は、口頭ではなく文書で日付等を明記しましょう。この2つについて次回詳しくみていきます。

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遺産分割協議について

今日は遺産分割協議について書いていきます。

「遺産分割協議」とは、相続人全員で相続財産の配分や分割方法を決める協議をいいます。通常は遺言書がなかった場合に行われますが、遺言書があってもその相続分を変えるために行う場合もあります。

相続財産は分けることが容易である現金預貯金等だけでなく、通常は分けることが困難な家などの不動産である場合が多く見られます。そのような財産も相続税を納める等の都合もあり、定められた期限内にはその配分を決める必要が出てきます。

遺産分割協議は通常、相続人の代表者が中心となって進めていきます。代表者は多くの場合は一番たくさん財産を相続する者がなりますが、行政書士等の代理人の場合もあります。

協議の進め方は、概ね次のとおりになります。

①まず遺言書を探します

②相続人を確定し、「相続人関係図」を作成します。

③相続財産を確定し、「財産目録」を作成します。

相続人全員に連絡を取ります。

遺産分割協議案を作成します。

遺産分割協議開催の段取りをつけます。

⑦遺産分割協議書の案をもとに相続人全員参加の遺産分割協議を行います。

相続人全員の合意により相続分を決めます。

⑨遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書」を作成します。

⑩遺産分割協議書をもとに、金融機関の手続きや不動産の相続登記等を行います。

以上の段取となりますが、遺言書があれば基本はそれに従って相続を行うこととなります。協議を行ったあとで遺言書が発見された場合は、相続人の主張によっては相続のやり直しとなる場合もありますので、まずは遺言書を探します。

探すのは可能性の高いところから当たりますが、親しい知り合いに士業の方などがいた場合は、そちらに相談がなかったかの確認をとります。それから公証役場に行き、公正証書遺言の存在を確認します。そこでもない場合は銀行の貸金庫や自宅を探します。

遺言書があった場合は、基本的にはそれに従いますが、自筆遺言の場合は家庭裁判所に検認の手続きをとり、その後は遺言書の真偽や合法性を確認します。最初に相続人全員での協議が整えば、遺言書があってもその合意が優先すると書きましたが、遺言執行人がいる場合はその者の執行義務との兼ね合いもありますので、必ず遺言執行人と事前に打ち合わせを行ないます。また被相続人の意思を尊重するという意味からも、出来る限りは遺言書に沿う形の執行が望まれます。

次は相続人および相続財産を確定します。相続人については通常はわかっている範囲での協議になりますが、前妻の子や認知している非嫡出子も相続人となりますので、戸籍をたどって相続人関係図を作成します。相続手続きで必要となる場合がありますので、一般的には作成することをおすすめします。

財産については心当たりのある金融機関に問い合わせを行い、また不動産等の登記簿を確認します。こちらも財産目録を作成します。そしてこれらをもとに遺産分割の案を作成します。基本的には法定相続分をもとに、相続人の寄与分や不動産の実態(配偶者が自宅に居住している等)を鑑み配分を行います。

それからその案をもとに協議を行うことになりますので、まずは相続人全員に連絡をとり、遺産分割協議を開催します。ここで注意することは、遺産分割協議は相続人全員の参加が必要となることです。海外等に居住し参加できない者も原則は参加するものとなりますので、もし参加できない場合には事前に、他の意見に従う等の同意書を取得する必要があります。

やっかいなのは行方不明者がいた場合の措置であり、この場合は家庭裁判所に「失踪申告の申し立て」等を行うこととなります。また成年被後見人等の制限行為能力者がいる場合は後見人等の代理が必要となり、未成年がいる場合は「特別代理人」による代理が必要となります。

未成年は基本的に法律行為は行えませんので、その場合は代理人が必要になります。通常の代理人はその親がなることが一般的ですが、相続の場合はその親と子で同じ相続人という利益相反の立場となるため、代理人となることができません。そのため家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てを行うこととなります。

それらの者が整いましたら遺産分割協議を行い、原案をもとに協議を整います。協議が成立した場合は、その内容で遺産分割協議書を作成することとなります。金融機関等の相続において必要となるため、協議書はたとえ親子2人での協議の場合であっても作成します。協議が成立しなかった場合は家庭裁判所への調停の申し立てを行い、それでも整わなければ裁判ということになります。

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まちづくり三法 中心市街地活性化法について

今日は「まちづくり3法」の3つめの法律である、中心市街地活性化法について書いていきます。

みなさんの街でも商店街の空家対策として、空店舗に若手の起業家を誘致したり、商店街の活性化のために次代の経営者が懸命に打開策を見つけようとしています。先の記事に書いた犬山市の例にもあるように、これらは中心市街地活性化法のスキームを活用しています。

では中心市街地活性化法」とはどのようなものでしょうか。この法律は中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上、すなわち文字通りの中心市街地の活性化を目的としています。この法律は1998年に施行されましたが、期待したほどの効果が上がらなかったため、2006年にまちづくり三法として他の法律と関連しての改正が行われました。

改正の要点としては、より高い効果を発揮するために、内閣総理大臣を本部長、すべての閣僚を構成員とした中心市街地活性化本部が基本方針を策定し、それに基づいて各市町村が基本計画を作成するというスキームとなっています。

市町村が基本計画を策定する際には、行政のみならず地元商工会や株式会社等の法人といった多様な者が参加した協議会と協議を行い、より実現性の高い計画が策定されていきます。なおこの法律の支援する市街地とは、どのような都市であってもいいわけではなく、中心市街地として次の要件を備えていることとされています。

集積要件として相当数の小売業者が集積しており、市町村の中心として機能していること。

趨勢要件として、その市街地がないと、機能的な都市活動の確保や経済活力の維持に支障をきたすおそれがあること。

③広域効果要件として、当該市街地の発展が周辺地域の発展にとって有効かつ適切であること。

以上が必要になります。

なおこの法律を制定してもなお少子高齢化や商業や施設の郊外化に歯止めがかからず、依然として中心市街地の空き店舗対策にも効果が上がらなかったため、2014年にさらに一部が改正されています。

主な改正点としては、

民間投資を喚起するために、新たな重点施策を設けたこと。

②中心市街地活性化への新たな措置を実施したこと。

が挙げられます。

①については、民間プロジェクトに予算措置の拡充や税の優遇制度導入を行い、無利子融資や大規模店舗の中心市街地進出の制度緩和を行いました。

②については、小売業の顧客増加や経営の効率化を目的としたソフト事業を支援する認定制度を設ける一方、イベントなどで道路を専有する特例措置を認めたり、通訳案内士の制度を設けたりしています。

中心市街地活性化法のスキームを活用した、日本全国の事例が載っていました。

http://machi.smrj.go.jp/about/index.html

まちづくり三法 大規模店舗立地法について

今日はまちづくり三法のうちの、大規模店舗立地法について書いていきます。

まちづくり三法はそれぞれ相互補完的な役割をなしています。先に書きました都市計画法では、それを補完する法律として建築基準法の改正もなされましたが、その改正点は大規模集客施設に関するものでした。

具体的には用途地域等における立地制限の見直しとして、次のものが主な改正点とされました。

①大規模集客施設の立地規制として、商業地域や近隣商業地域、準工業地域以外の用途地域での床面積1万㎡を超える劇場・店舗・飲食店の建築が禁止されました。

②近隣商業地域での建築物使用用途として、客席床面積200㎡以上の劇場・映画館・演劇場が緩和策されています。

では大規模小売店舗立地法とはどのようなものでしょうか。この法律は2000年に制定されましたが、もともとは大規模小売店法、いわゆる大店法として1974年に施行された法律がもとになりますが、これを2000年に廃止し、引き継いだ形で制定されました。

大店法は中小小売店の保護と発展を目的とした、大規模店舗の出店を規制する法律でしたが、大規模店舗立地法は、国際社会からの要請を反映した形で制定されました。つまり、アメリカをはじめとする諸外国から、我々も参入しやすい法律に変えてくれと言われたわけですね。そのため大店立地法は、大店法のような中小小売業保護の観点ではなく、大規模店舗の参入しやすい形へと変わっています。

それまでの「規制」を主眼とするものから、「配慮」を主眼とする内容に形を変えています。

まずその目的については、立地法の名のとおり大規模小売店舗の立地に関し、「周辺地域の生活環境の保持のために、施設の配置及び運営方法について適正な配慮がなされることを確保することにより、小売業の健全な発達を図り、もって国民経済及び地域社会の健全な発展並びに国民生活の向上に寄与する」こととされています。

この法律では店舗面積10,000㎡を超える大規模小売店舗がその対象となります。店舗面積には小売業を行うための施設が含まれますが、付随するものは除かれています。具体的には売り場やサービス施設(案内所や預かり所等)は含まれますが、飲食店やエレベーター・エスカレーター・売り場間通路、あるいはトイレや事務所、催場等は含まれません。

なお出店の届出については、都道府県や政令指定都市にすることとなります。店舗面積や開店閉店時刻、駐車場・駐輪場の収容台数、騒音や廃棄物等といった周辺への配慮を要するものが届出の内容となります。これらの内容については、少ない内容に変更があった場合にも届出を行う必要があります。

計画の段階では当然出店調査を行いますが、特に周辺環境に配慮するために休日の車の流れを調査したりと、来店ピーク時の環境を想定して行ないます。なお変更時の届出については、変更がより便利になされた場合は必要ありません。例えば駐輪場の台数を増やしたとか、ごみの収集台数を増やした場合は届出をしなくても良いことになります。買い物環境や周辺環境に悪い影響が想定される変更の場合には届出を行う必要があります。

この大店立地法においては、周辺環境への配慮を名目とした前述の駐車場などの台数規制等によって、大規模店舗と周辺環境の共存は果たすことができましたが、その出店地域については、用地の取得や出店条件を満たすことがしやすい郊外が中心となっていきました

用地取得や環境条件を整えるという要件から、大型店舗が中心部に出店することがますます困難となり、商業の郊外化に拍車がかかりました。

都市計画法の記事で書いたように、これらの大規模小売店舗については一旦すべての出店を禁止した上で、出店する場合はその内容について都道府県と市町村、地元住民が意見を交わし、届出を受理するという形式をとります。

この課程において地元住民は、意見を申し出ることができ、周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼすと判断された場合は、行政が勧告を行いこれを公表することになっています。しかし雇用機会の増大や税収増加への期待から、誘致を否定する市町村は多くはありませんでした

以上のように国際社会からの要請とはいえ、大型店規制の緩和とも言えるこの大店立地法によって、大型店の郊外化が加速され、その影響から中心市街地の機能低下が懸念されたことから、中心市街地活性化法が制定されることともなりました。

まちづくり三法 都市計画法について

今日はまちづくり三法について書いてみます。

1980年代後半頃から大型店の郊外化が目立つようになり、中心市街地が寂れていきました。商店街に空家も目立つようになり、いわゆるシャッター街なる言葉が使われだしたのもこの頃です。

ちょうど私も社会人になった頃ですが、プラザ合意から円高不況になり、それもバブルによってあっという間に回復し、さらに行き過ぎてしまった時代。ちょうどその頃は洋酒の営業をしていましたので、横浜や関内、渋谷、銀座でコニャックを飲み歩いていました。飲んで売ってなんぼの時代ですから、いつも横浜からタクシーで川口の自宅までタクシーチケットで。と、この時代の話は尽きないのでやめておきます。

モータリゼーションにも拍車がかかり、みんなが車を持つ時代になりました。また横道にそれますが、その頃の若い人は、車が第一の時代でした。特にホンダの車は一世を風靡しましたね。プレリュード、インテグラ、CR-X、かっこよかった。

みんなが車に乗って出かけるものですから、一気に買い物の郊外化が進み、街の中心街の衰退が目立つようになっていきました。スプロール現象というものですね。

そのような事態に歯止めをかけるべく制定されたり改正されたりした、主な3つの法律が、「まちづくり三法」といわれるものです。

まちづくり三法」とは、「大規模小売店舗立地法」「中心市街地活性化法」「都市計画法」をいいます。では農地転用の話からですので、まず「都市計画法」について見てみましょう。

「都市計画法」とは、人口減少や超高齢社会にふさわしいまちづくりを実現するために制定された、都市づくりの基本法ともいうべき法律です。もともと1968年に制定された法律ですが、その内容は、商業の新しい業態が様々に発展していく中においては効果を発揮するものではなく、規制されているはずのほとんどの区域において、大規模小売施設が建設されていってしまいました。スーパーマーケットからディスカウントストア、カテゴリーキラーなどが出てきましたが、今ではスーパーセンターですね。それさえも過渡期を迎えてしまいましたが。

その影響もあって無秩序に都市機能が郊外に分散され、都市の中心部の衰退が目立つようになりました。そのような状況を変えることを目的として、都市機能の再生を図るべく生まれた法律が改正都市計画法になります。他の街づくりに関する法律と歩みを同じくして、2006年に大きな改正が図られました。

その目的は「都市の健全な発展と秩序ある整備、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進」とされています。都市計画法の内容は、「都市計画区域」に土地の整備開発の方針を定め、都市施設や市街地開発事業に関する計画決定を行う」ことにあります。言い換えると都市計画区域とは、「一連の地域として総合的に開発保全をする必要のある区域」ということになります。

これらの区域の決定は都道府県が行いますが、この都市計画区域は2つの区域に分類されています。それが「線引き都市計画区域」「非線引き都市計画区域」になります。線引き区域とは、その地区を用途ごとに区分けをして都市開発を行っていく地域のことであり、非線引き区域とはそれ以外の、都市計画の対象とされていない区域になります。

線引き区域とはさらに「市街化区域」と「市街化調整区域」の2つに分類されています。

「市街化区域」とは用途地域の指定が必須の区域であり、優先的に開発が行われるべき区域をいいます。農地転用の観点からみてみますと、ここにある農地については農地の維持よりも都市開発の方が優先されますので、農地の区分は行われません。転用の許可を要することはなく、届出のみでよいこととなります。

もうひとつの市街化調整区域」は市街化を抑制する地域のことであり、原則宅地化などの開発行為は禁止されます。都市計画の区域内ではありますが、原則用途地域は定めません

用途地域とは建築物の建築を用途や容積により指定する地域のことであり、工業地域や商業地域などを市町村が指定します。この用途地域の指定に絡んでは、2006年にあわせて建築基準法の改正もなされています。

ここでの改正は用途地域における立地制限の見直しについて、主に大規模集客施設の立地規制についての見直しが図られています。話を戻しますと、2006年に改正された都市計画法では無秩序に拡散していた都市機能再生を目的とし、機能をコンパクトに集約したまちづくりを進めることとしました。そこでは大規模小売施設の立地を一旦ほとんどの地域で禁止することとし、地域で議論を経た上で推進する制度とされました。

この件については大規模店舗立地法のところで触れていきます。

犬山城まちおこし

GWに岐阜の犬山城に行ってきました。もともと岐阜に嫁いだ長女と孫たちに会うための旅であり、特に観光の目的もなかったのですが、天守が現存している国宝のお城ということにつられて行ってみました。

混雑することも予想しての、途中ランチを食べての訪問でしたので、特に駐車場探しでイライラすることもなく現地近くまで到着しました。どうせ混んでいるだろうから駐車場はそこそこ遠くてもよいかなというところで探し始めましたが、城から1.5キロほどのところに早くも第3駐車場が現れました。

シャトルバスもなさそうなのになんでこんな遠くに駐車場があるのかしらといぶかしがっていたところ、スマホを見ていた娘が何やらそこから城まで観光街があるらしいことを見つけました。へえ、ということで、とりあえず犬山城を見てから観光街に行くことにしました。

第3駐車場も満車でしたので、待つまでもなくパスし犬山城近くまで車を進めました。ここなら城から近いだろうというところで車が道路端に列を作っていましたので、駐車場だろうと当たりをつけて並んでみました。

進むのにそれほど時間はかかりませんでしたが、左の視界に駐車場が見えてきたところで、駐車場取付道路の入口(そこを左折して100mほど行くと駐車所の入口になります)に立っていた交通整理のおじさんから、「道に車の列ができるとまた近所からクレームがくるから」と、駐車場に入るのをあきらめてくれないかみたいなことを言われましたが、あと1台進めば公道から取り付け道路に入られるところでしたので、ごめんなさいをして駐車場に入りました。

列を作らせないための方策であれば列の出来始めのところで注意をするとか、メッセージボードで目立つようにするとかの方法を取れば良いのにと思うとともに、おじさんの言うことを聞いて車列を離れてしまった方は、さぞかし人の良い方なのだろうとも思いました。アリバイ作りのための方策なのでしょうが、人の良さそうな係員さんでしたので逆にスカを引かされているんだろうなとも感じました。

さてその駐車場からは犬山城はすぐでした。ベビーカーを押しながらえっちらほっちら坂を上っていくと天守につきましたが、その間やけに若い人達が多いのに気づきました。年配のかたや家族連れが多いことを想像していましたが、ゆかたを着た若い女の子たちやカップルがあまりに多かったので、地元の祭りでもあるのかなと思いながら歩いて行きました。

そんなこんなで天守前の広場で景色を見たり写真を撮ったりしましたが、天守の中への入場は2時間待ちでしたので、さすがに内部の見学は断念しました。下から見上げると最上階を人がゆっくりと列を作って進んでいましたが、2時間並んでさえゆっくり景色を見れないんではと、思わず「あらら。。」という言葉が口をついて出てしまいました。

そんなこんなでのんびりしてから、犬山城から正面に続く通りを散策しました。そこには若い方たちが一段と多く歩いており、聞くと町おこしとして通りを活性化させたとのことでした。私も以前から町おこしには興味があり、大学の社会人講座に通って地域政策を勉強したり中小企業診断士の勉強からも学んでいましたので、ここも成功例のひとつなのかなと思いながらブラブラしました。

通りは五平餅などの串グルメやかき氷などの食べ物の店が中心でしたが、それぞれの店に小さな列ができていました。通りの出口(犬山城に向かっては入口に当たります)には着物ゆかたのレンタル屋さんがありましたので、なるほどと合点がいきました。

ちなみに観光人力車もありました。町おこしで有名なところでは伊勢のおかげ横丁などがありますが、どちらも風情があって各年代が楽しめますし、一度行かれてみてください。

http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/chiiki-joho/mmagazine/vol36.pdf#search=%27%E7%8A%AC%E5%B1%B1%E5%9F%8E+%E8%A6%B3%E5%85%89+%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96%27        

長くなりましたが、農地転用の説明の中で、市街化区域では許可ではなく届出のみでよいとの話をしましたので、その中の都市計画法やまちづくり三法を思い出し書いてみました。次回からはそのことについて触れてみます。