しばらく民法について書いていきたいと思います。相続や遺言については民法に規定されています。また私人間の契約関係や家族関係についても民法に規定されていますので、民法を学んでおくことは、相続の際にも役に立ちます。
民法は、私人間の生活関係を規律する私法の一般法であり、財産法と家族法からなります。全体は①総則②物権法③債権法④親族法⑤相続法の5つに分けて整理されています。
財産法である物権については、所有権絶対の原則が支配しています。私人は自己の所有物を自由に支配できるというものです。しかしこれにも唯一、公共の福祉の制約があります。
公共の福祉の制約は民法のみならず、憲法をはじめとしたあらゆる法律のベースにあるものです。その解釈についてはむつかしい争いがあるようですが、要はいくら自分が自由にできるといっても、公共(周りの人々)の権利や迷惑を冒してまでは認められませんよということですね。
自分の家の裏手の道路に障害物を置いて、住民の通行を妨害していた
おじさんが捕まりましたが、公共の福祉の制約は知らなかったようですね。また自分の家の木の枝が境界線を道路に思い切りはみ出して、いくら危険であっても、頑として枝を切らないじいさんがいましたね。民法の規定では、近所の人がこの空中に突き出た枝を自ら切ることはできなくて、切ってくれと要請するしかありません。境界線をはみ出した根っこの場合は、住民自ら切ることができますが。行政の怠慢ではありますが、この場合は道路法で対処するか、万が一この枝によって負傷した場合に管理責任を問うて損害賠償を請求するかですかね。
話が脱線しましたが、もうひとつ財産法には債権があります。債権関係は私的自治の原則というものが支配しています。
私人間の私的法律関係は個人の自由意思で形成されるものであり、国家は介入できないとされています。しかしこれには様々な制約があります。
今回の民法改正にもありましたが、債権は特に法律が強く関与しているため、時代や経済の要請によって変化して然るべきものでもあります。現代では経済的弱者(賃借人等)救済のための制約が種々設けられています。
一方の家族法について現在の民法では、戦前までの旧民法とは考え方において根本から変更されたものとなっています。
家族法の基本原理は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基礎として、家族は夫婦を中心としたもの規律されています。戦前までの民法における家族の考え方は、夫婦ではなく親子を中心とした考え方でした。これが家長制度の裏付けともなっています。
家族法はあくまで夫婦二人を主な対象としていますので、前述の財産法における自由な個人の権利義務とは相容れない部分もあります。ですので一般的に財産法の基本原理は家族法には適合しないものとなっています。
さて、民法のような「私法」とはどのようなものでしょうか。
私法とは、国家と国民の基本的な関係について定めた憲法のような「公法」に対し、「私人と私人との法律関係」を規律する法をいいます。言い換えると、社会生活上当然に生ずる私人間相互の関係を規律する法ということです。
私法によって保護される権利を「私権」といいます。私法は、法律関係を充足すると法律効果が発生するというスタイルをとりますが、私権の行使に関しては「制約原理」というものがあります。私権は法律で認められはしても、そこには一定のルールがありますということです。
1つめは先ほどの公共の福祉の原則です。2つめは「信義誠実の原則」といって、よく「信義則」という言葉で使われます。今の国会では特によく出てきますが、相手の信頼を裏切らないように行動しましょうということです。
これに関連しては、「禁反言の法理」や「クリーンハンズの原則」といった言葉も使われます。前者は自らの行為と矛盾した態度は許されないということ、後者は法を尊重する者のみが法の尊重を要求できるというものです。
3つめは「権利濫用の禁止」です。たとえ認められた権利であっても、社会性に反しての濫用は認められないというものです。濫用の基準は、得る権利と失う利益を比較検討して判断するとされています。
これら信義則や権利濫用については、表立って出されるものではなく、他の条文で決着しない場合に適用されるものとなります。
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今日は請負契約について書いていきます。
「請負契約」とは当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって効力を生じる契約を言います。これは有償であり、当事者双方の合意によって成立する契約になります。
請負契約においては、「請負人」は仕事を完成する義務を負います。請負の目的が物の完成である場合には、物を完成させるだけでなく目的物を引き渡す義務も負うことになります。
なお請負人は自ら労務を提供しなくても、原則自由に補助者や下請負人に仕事をさせることができます。ただし下請負人等の責に帰すべき事由についても、請負人が責任を負うことになります。
一方双務契約ですので注文者にも義務は発生し、完成した仕事に同時に報酬を支払わなくてはなりません。同時履行の抗弁権については先に記事にしましたが、ここでいう同時履行とは目的物の完成ではなく目的物の引渡しになりますので、目的物の引渡しと同時に支払い義務が発生します。
引渡しが請負業務の完了となると、作成中あるいは完成した目的物の引渡しまでの所有権はどうなるのでしょうか。
民法にそれについての規定はありませんが、その所有権は判例から、材料の供給者が請負人である場合は、その所有権は引き渡すまでは請負人にあり、材料の供給者が注文者である場合には所有権は注文者にあるとされています。
では次に、請負人の「瑕疵担保責任」について見ていきましょう。
仕事の目的物に瑕疵があった場合は、注文者は請負人に対して「瑕疵の修補」を請求することができます。売買の際の瑕疵担保責任については「隠れた瑕疵」であることが要件とされましたが、請負については「隠れた瑕疵」でなくても請求することができます。
ただし目的物の瑕疵が重要なものではなく、かつ修補にかかる費用がそれ以上に掛かる場合には、注文者は修補を請求することはできず、それに代えて損害賠償を請求することになります。
前記の重要でない瑕疵以外の場合は、注文者は瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに損害賠償を請求することができます。請負人が損害賠償に応じない場合は、それが支払われるまで未払い報酬の支払いを拒絶することができます。
また注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬債権を相殺することもでき、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償を受けるまでは、その報酬全体の支払いを拒むこともできます。
目的物の瑕疵が重大であって契約の目的自体を果たすことができない場合は、注文者は契約の解除をすることができます。ただしこの場合でも建物等の土地の工作物については、額が非常に大きくなるため解除することはできません。
以上の瑕疵担保責任について、請求できる期間は原則引渡しから1年です。しかし土地工作物の場合は5年、堅固な工作物については10年になります。
最後に請負契約の終了について見ていきましょう。請負契約の終了は、法定解除や約定解除の他に次のような終了原因があります。
①仕事未完成の間における注文者の解除権
②注文者の破産による解除権
です。
①については、注文者は仕事が完成するまでは、「いつでも」損害を賠償して契約を解除することができます。完成した部分について利益があるときは、未完成部分のみ契約解除をすることもできます。
②について、注文者が破産手続開始の決定を受けた時点で、請負人または破産管財人が契約を解除することができます。
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今回は債務不履行について書いていきます。
債務不履行とは債務者が、正当な理由がないにもかかわらず「債務の本旨」に従った履行を行わないことを言います。債務の本旨とは、契約で定められた債務の内容を言います。
債務不履行があった場合は、債権者は債務者に損害賠償請求をすることができます。債務不履行には、
①履行遅滞
②履行不能
③不完全履行
がありますが、まず履行遅滞というものから見ていきましょう。
履行遅滞とは字のごとく、正当な理由がないのに履行が遅れることです。その要件としては次のものが挙げられます。
①履行が可能な状況であること
②履行期を徒過(とか:何もしないで決められた期間が過ぎてしまうことです)したこと
③履行遅滞が債務者の責任で発生したものであること
④履行遅滞が違法(正当化する理由がないことです)であること
です。③の債務者の責任についてですが、これは債務者本人だけでなく、履行補助者(同居する家族や業者の使用人等)の故意や過失も含まれます。例えば家族の者が重要な書類を受け取っていたのに債務者に渡し忘れ、履行が遅れた場合などです。
次の履行不能とはどのような状況を言うのでしょうか。履行不能の成立要件としては、
①契約成立後に履行が不能になったこと
②債務者の責任によって履行が不能になったこと
③履行不能が違法であること
です。不能であるかどうかは、社会通念上妥当と思われるもので判断されます。上記要件のとおり、債務者の責任で契約の内容が履行できなくなってしまった状態ということです。
では3つめの不完全履行とはどのようなものでしょうか。これも成立要件を挙げると、
①履行はとりあえずなされているが、その状況が不完全であること
②債務者の責任によって履行が不完全になったこと
③不完全履行が違法であること
です。不完全履行は、履行が途中で中断されてしまった状況になります。また履行はすべて終えたんだけれども、その内容に不備があって完全な履行とは言えない状況も不完全履行に当たります。
注文の品をすべて納品したんだけれど、その一部が不良品であった場合などがこれに当たります。
これら債務不履行があった場合の責任については次回書いていきます。
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今日は共有について見てみます。
これも相続分野で頻出する言葉となりますが、「共有」とは、数人の者が共同所有の割合である「持分」を併せて1つの物を所有することを言います。単純に言えば、数人で1つの物を所有することですね。
「持分」とは今述べたように、共有物に対する所有権の割合のことです。持分の割合はそれぞれの意思表示や法律の規定(法定相続分等)により決まりますが、その割合が不明な場合は各共有者平等の持分であると推定されることになります。
持分は各共有者が原則自由に処分できます。共有目的物の利用については各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
例えば1台の自動車を3人で共有しているとしますと、3人それぞれがその自動車を自由に使用することができます。しかし異なる目的を同時に行うことはできませんので、必要な場合は各自の持分に応じた使用時間配分を決められるということです。自動車を購入するのにAさんがその代金50%、BさんとCさんが25%を出資していたとすると、その割合で使用時間を決められるということになります。
相続に当てはめると、配偶者と子供が2人いる場合は配偶者が50%の持分であり、2人の子供はそれぞれ25%ずつの持分ということになりますね。
また持分は、使用する共有者の1人がその持分を放棄した場合や、共有者が死亡した際に相続人がいない場合はその持分は他の者に帰属することとなります。
共有物には日々の利用についても制約がありますので、それらについても見ていきましょう。
共有物の利用については、その内容や利用状況から次の3つに区分されています。
①保存行為
②管理行為
③変更行為
になります。「保存行為」とは修理や修繕など、共有物の現状を維持する行為であり、各自が単独で行うことができます。なお現状維持という観点からの妨害排除請求や消滅時効の中断なども共同で行われる必要はなく、各自が単独で行うことができます。
次の「管理行為」とは、共有物の性質を変えることなく利用したり改良する行為とされています。これには共有物の賃貸やそれに関する解除や取り消し行為などがありますが、この場合は単独で行うことはできず、共有の過半数の合意が必要になります。
過半数とは人数が基準になるものではなく、持分の価格を基準にしての過半数になります。Aが10でBが20の持分価格を有していても、Cが50を有する場合には必ずCの承諾が必要になります。
「変更行為」とは共有物の性質や形状を変更することを言います。具体的には共有物を売却したりその全部に抵当権等を設定する場合がこれに当たりますが、この場合は共有者全員の同意が必要になります。
最後に「共有物の分割」について見てみましょう。共有物については、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができます。分割の方法は現物分割、代金分割、価格賠償の3つがあります。
ここでの「現物分割」とは現物そのものを分割すること、「代金分割」とは共有物を売却してその代金を分割する方法です。「価格賠償」とは共有物を分割した際に持分に満たない者に、超過した者からその金額を補填することを言います。
共有分割の協議が整わない場合は遺産分割協議同様、裁判所に分割を請求することになります。なお遺言書による場合が多いですが、共有物を5年を超えない期間で分割を禁止する特約を付けることもできます。
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今日は債権譲渡について書いていきます。
「債権」とは、特定の者が別の特定の者に、一定の給付を請求できる権利を言います。先に説明した物権と併せてこの2つを「財産権」と言います。
請求できる権利を持つ者を債権者といい、請求される側を債務者と言います。今回は債権の性質のうちのひとつ、譲渡について見ていきましょう。
債権というものは原則として、自由に譲り渡すことができる性質があります。これを債権の自由譲渡性と言いますが、目的としては次のことが挙げられます。
①履行期日の来る前の債権を換金するため
②融資などを受けるときの担保とするため
③債務の弁済の手段とするため
です。
また譲渡する際は、元の債権と同じ内容のまま移転されていきます。現行法では条文化はされていませんが、債権は過去に発生した権利に基づくものだけではなく、将来発生するであろう債権の譲渡もすることができます。例えば債務者に定期的に発生する、半年分の家賃収入債権を譲渡するなどということも可能になります。
このように譲渡可能な債権ですが、例外的に譲渡が制限される場合があります。それは次のような債権についてです。
①債権の性質上譲渡を許さない債権
②当事者同士が譲渡禁止の特約をした債権
③法律上譲渡が禁止された債権
です。
①の譲渡を許さない性質とは、例えば特定の人の肖像画を描いたり写真を撮ったりする権利です。これはその特定の人が、その債務者本人のみに許した権利の性質を持ちますので、債権者は他の者への譲渡はすることができません。
②の禁止の特約についてですが、この特約に違反して第三者に譲渡した場合は、制限とおりにその債権譲渡は無効になります。しかし第三者が「善意無"重"過失」だった場合には、債務者はその第三者には対抗することはできません。
なお債務者が債権者に、あらかじめ"特定の者"に譲渡することを同意していた場合には、譲渡後に債務者の承諾を得なくても、債権者は債務者に債権譲渡を対抗することができます。
ところで、今書いてきた債権譲渡の内容は、現行の民法に基づくものです。しかし民法は2020年4月1日より改正法が施行され、この債権譲渡の部分も見直されることとなりました。以下改正部分について触れておきます。債権譲渡の主な改正点は次のとおりです。
①譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられません(預貯金債権以外)
②債務者は譲渡人(元の債権者)への弁済をもって譲受人に対抗できます
③債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は譲受人に対して履行をしなければなりません
④将来債権の譲渡について明文化されました
⑤債務者があらかじめ譲渡に同意していた債権への抗弁権の条項は廃止されました
ということです。
①の譲渡制限特約債権の譲渡についてですが、現行法では善意の第三者に対しては有効ではありましたが、改正法では譲渡制限特約が付されていても、預貯金債権以外の債権譲渡についてはその効力は妨げられないこととなりました。つまり特約があっても、悪意・重過失の者に対する譲渡も有効であるということです。
これでは、弁済の相手方を固定化し無用なトラブルから債務者を守る、という現行法の意義を失ってしまいますが、それを②で補っています。どういうことかと言うと、譲渡制限付きの債権が他の第三者に譲渡されてしまっても、債務者はその第三者への弁済を拒絶し、元の債権者への弁済をすれば足りるということになるからです。
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今日は相殺というものについて書いていきます。
「相殺」とは、2人のものがお互いに同種類の債権債務を有している場合に、その債権債務を対等額で消滅させる、相殺する側の一方的な意思表示のことを言います。
相殺の効果は債権債務の現実の履行を省略することにあり、相殺適状を生じた時にさかのぼって抗力を生じます。お互いの債権が相殺の要件を満たしている状況を「相殺適状」と言います。
相殺には「する側」と「される側」がありますが、相殺する側の債権を「自働債権」(自動ではありません)と言い、相殺される側の債権(相殺する側の債務)を「受働債権」と言います。
相殺が成立するには次の5つの要件があります。
①2つの債権が対立していること
②双方の債権が同種の目的を有すること
③双方の債権が弁済期にあること
④双方の債権が有効に存在していること
⑤相殺を許す性質の債権であること
です。
要件③についてですが、受動債権(相殺される側)については債務者が「期限の利益」を放棄することができますので、必ずしも弁済期にある必要はありません。ですので条文にあるように双方が弁済期にある必要はなく、自働債権のみ弁済期にあることが必要になります。
要件④の、双方の債権が有効に存在していなければならない、という要件についても例外があり、債権が時効によって消滅していた場合でも、その債権が時効消滅前に相殺することができる状態に既になっていた場合には、この債権を自働債権として相殺することができます。なお、お互いの債権が相殺の要件を満たしている状況を前述の「相殺適状」と言います。
要件⑤の相殺を許さない性質の債権についてですが、自働債権に「同時履行の抗弁権」などの抗弁権が付いている場合には相殺することができません。一方、受働債権に抗弁権が付いている場合には、相手方の利益を特に害することはないため、相殺することも許されます。
また自働債権が差し押さえられてしまった場合ですが、これは法律によって処分等が禁止されることになるため、相殺をすることができなくなります。
先に相殺は一方から相手方への一方的な意思表示と言いましたが、裏を返せば相殺の意思表示がない限りは相殺は行われず、債権は消滅しないことになります。また相殺する側の一方的な単独行為になりますので、相手方の同意は必要ありません。
なお相殺の意思表示には、条件や期限などを設けることはできません。
最後に相殺が禁止される場合について触れておきます。次のような場合は相殺が禁止されます。
①当事者が相殺禁止の特約をした場合
②受働債権が不法行為にもとづく損害賠償請求権である場合
③受働債権が差押禁止債権である場合
④受働債権が支払いの差し止めを受けた場合
です。
②について説明をしますと、例えば不法行為を受け損害賠償権を有した被害者が、その加害者に借金をしていた場合が挙げられます。この場合では、加害者側が被害者に貸していた100万円で、被害者側からの100万円の損害賠償権を相殺する、ということはできないということになります。
これは相殺がなされてしまうと、被害者側が現実の救済を受けられなくなってしまうことと、それがために報復などの不法行為を誘発するおそれがあることが理由になります。
なお立場を入れ替え、被害者側の債権を自動債権とし、被害者側から相殺することは判例から認められています。
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今日は養子縁組のうち、普通養子縁組について書いていきます。
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がありますが、通常行われる養子縁組が普通養子縁組になります。
「縁組」とは、養子とする行為を言います。「普通養子縁組」が成立する要件としては形式的要件と実質的要件がありますが、形式的要件は「届出」になります。婚姻などと同様に、養子縁組も「届出」を行わないと縁組は成立しません。
では実質的要件とはどのようなものでしょうか。実質的要件には次の2つがあります。
①縁組意思の合致
②縁組障害事由の不存在
です。
「縁組意思の合致」とは、養子縁組を行う当事者双方に、真に親子関係を形成して養子縁組を成立させようという意思があることを言います。この意思がなく、他の目的のために行う縁組は無効になります。他の目的とは、相続人になるためにすることなどが挙げられます。
次のような場合は縁組をすることができません。縁組をすることに障害となる事由があるということであり、「縁組障害事由の不存在」とは、縁組をすることに障害となる事由がない、つまり縁組をしても良いですよということになります。
①養親が未成年の場合は、縁組をすることができません。ただし未成年が婚姻をした場合には、「成年擬制」により養親となることができます。
②養子となる者が養親になる者より年長者の場合、または養親の尊属の場合は縁組をすることができません。
③後見人が被後見人を養子にする場合は、縁組をすることができません。ただし家庭裁判所の許可があれば認められます。
④配偶者のある者が未成年者を養子にする場合には、原則共同して縁組しなければなりません。ただし、配偶者の嫡出子を養子にする場合(再婚時の連れ子等)は共同でする必要はありません。
⑤配偶者のある者が養子になる場合、または配偶者のある者が成年者を養子にする場合は、配偶者の同意があれば単独で縁組をすることができます。
⑥養子となる子が15才未満の場合は、法定代理人が縁組の承諾をすることができます(代諾養子)。
⑦未成年者を養子とする場合には、自分や配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、原則家庭裁判所の許可が必要になります。
普通養子縁組が成立した場合には、次のような効果が発生します。
①養親の嫡出子たる身分
②法定血族関係
③養親の氏の取得
です。
「養親の嫡出子たる身分」は縁組の日から効果が生じます。養子が未成年者の場合は、養親が親権者になります。
養子となった者は嫡出子と同様の、相続権や養親の扶養義務が発生することとなりますが、縁組前の実親やその血族との親族関係は存続しますので、実親も相続することができます。「普通養子」となった者は、実親と養親の両方を相続することができます。
「法定血族関係の発生」について、養親やその血族との間の法定血族関係も、縁組の日から発生します。
「養親の氏の取得」についても同様の効果となります。ただし婚姻によってその氏を改めた場合は、夫婦同氏の原則が優先します。
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今日は民法における委任契約というものについて書いていきます。
「委任」とは当事者の一方が「法律行為」をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力が生じる諾成契約になります。
「諾成契約」とは、当事者の意思表示のみで成立する契約のことを言います。ちなみに当事者の合意のみでは足らず、物の引渡しや給付を成立要件とする契約は「要物契約」と言います。
委託する側を「委任者」、承諾する側を「受任者」と言います。ここで委任とは法律行為を委託すると言いましたが、法律行為以外の事務の委託も当然あるわけで、それは「準委任」と言い委任の規定が準用されます。
委任をするにあたっては、委任者側にも受任者側にも義務や責任が発生します。
ではまず委任者側の義務について見ていきましょう。委任者は原則、受任者に経済的に負担をかけないという義務を負い、具体的には次のような義務が発生します。
①報酬支払い義務
②費用前払い義務
③立替費用償還義務
④債務の弁済または担保供与義務
⑤損害賠償義務
です。
まず①についてですが、民法においては委任というものは、原則無償委任になります。ですので、報酬の支払い義務が発生するためには報酬支払いの特約が必要になります。また特約があった場合でも、その報酬は原則後払いになります。
②では、委任された事務を処理するについての必要な費用について、事前に受任者から請求があった場合には前払いをする必要があります。あくまでも遂行に必要な費用の場合です。
③の立替費用とは、必要な費用が前払いされずに、受任者によって立替えられた費用のことです。この場合は立替えた費用を請求できるのみならず、支出以降の利息も請求することができます。
④の債務とは、委任事務を行うについての費用的なものに収まりきらず、受任者が債務を負った場合のものを言います。この場合の債務は必要と認められる範囲に限られますが、その弁済を自分に代わってするようにと、受任者は委任者に対して請求することができます。まだ弁済期の到来していない債務については、委任者に担保を請求することもできます。
⑤の損害賠償義務とは、受任者が自分に過失がないにもかかわらず損害を被った場合に、委任者に損害賠償を請求できる権利になります。この場合の委任者の責任は無過失責任(委任者に責任がなくても負う責任です)になります。
委任契約はその目的を完了したときに終了しますが、それ以外にも終了となる場合があります。
まず、理由がなくても当事者双方が一方的にいつでも解除が行える、「無理由解除」(告知と言います)というものがあります。もともと委任契約というものは無償契約が原則であるように、当事者間の信頼関係が基礎となるものになります。ですので、この信頼関係が崩れた時など、委任契約を継続することが難しいからです。
しかし関係が崩れたから一方的にというのも理不尽ではありますので、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方に不利な時期の解除については、損害賠償を条件に認められることとなります。
また告知以外でも、委任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたときや受任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたとき、あるいは後見開始の審判を受けた場合は、当然に終了します。
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今日は相続にも大きく関係してくる、親族というものについて書いていきます。
相続を受けることのできる者(相続人)は「相続人」である「配偶者」「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」になりますので、親族の範囲を見た上で、これらの者がどの位置にいるのかを見てみます。
また今回成立した相続関係の民法改正において、「相続人以外の親族の貢献を考慮する方策」が加えられましたので、今まで以上に「親族」という言葉が使われる機会が多くなると思います。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html
「親族」とはどのようなものを言うのでしょうか。民法における「親族」とは、次の者を言います。
①6親等以内の血族
②配偶者
③3親等以内の姻族
です。
まず「血族」とは、血縁関係のある者相互間(誰から見てもお互いに)および、法的に血縁があると制度上みなされる(擬制)者相互間を言います。前者を「自然血族」、後者を「法定血族」と言います。
「自然血族関係」は出生によって生じ、死亡によって終了します。「法定血族関係」は養子縁組によって生じ、離縁や縁組みの取り消しによって終了します。
次の「配偶者」は、婚姻によって戸籍上の地位を得た者になりますが、配偶者は血族にも姻族にも属さず親等もありません。
「姻族」とは「配偶者側の血族あるいは血族の配偶者相互間」を言います。例えば配偶者の父や、本人の父の兄弟(叔父)の配偶者は姻族になります。「姻族関係」は配偶者を通じての関係になりますので、配偶者の一方の血族と他方の血族は姻族にはなりません。具体的に言うと、本人の父と配偶者の父は姻族関係には当たりません。
また姻族関係は婚姻によって生じ、離婚によって終了することになります。離婚した元配偶者の親とは知り合いではあっても、法的つながりはなくなるということです。これは離婚の場合であり、死別の場合は届出を行わない限りは姻族関係は当然には消滅しません。
では先に出てきた「親等」とはどのようなものでしょうか。
「親等」とは親族間の遠近度を比較する尺度であり、親族間の「世代」によって決まります。本人から見て「世代」がひとつ変われば1親等という数え方をします。
相続人に当てはめて見ますと、配偶者に親等はありません。子と直系尊属(父母)が1親等、孫や祖父母は2親等になります。兄弟姉妹は親を経由して下がりますので、これも2親等と数えます。本人の叔父や叔母は祖父母を経由しますので3親等、その子であるいとこは4親等になります。
親族については世代をまたがる垂直の広がりと、直系から枝分かれをした横への広がりがあります。
縦への広がりで見てみますと、本人から世代が上の者たちを「尊属」、世代が下の者たちを「卑属」と言います。ですので父は尊属、子は卑属になります。兄弟姉妹やいとこは世代が同じですので、尊属にも卑属にも当たりません。
横への広がりで見てみますと、本人から垂直に遡ることのできる父母や祖父母や曽祖父母、あるいは垂直に下がることのできる子や孫やひ孫などは「直系」になります。
縦横併せてマトリックスで見ますと、上の世代を「直系尊属」、下の世代を「直系卑属」と言います。垂直から枝分かれをした叔父叔母などは「傍系」と言います。これも上の世代を「傍系尊属」、下の世代を「傍系卑属」と言います。
整理してみますと、血族には直系血族と傍系血族があり、直系血族には直系尊属と直系卑属があります。また傍系血族にも傍系存続と傍系卑属があることになります。姻族にも同様の、直系傍系、尊属卑属の関係があります。
改正民法の特別寄与に関しては、具体的に権利の範囲にあるかは事案ごとに確認を要するとことになります。
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今日は抵当権について書いていきます。
抵当権は相続の場合に現れることも多いものです。内容によっては相続放棄ということもあるかも知れません。一応の知識は身につけておきましょう。
抵当権の定義としては、「抵当権者が、債務者または第三者(物上保証人)が占有を移転しない で債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」です。抵当権の特徴としては、
①抵当不動産の占有を債務者から移転しないで、債務者に占有させたままにすること
②抵当不動産の交換価値を把握する権利
であることにあります。債務者の住んでいる自宅や営業している店舗、工場などの占有を移転せずに担保の目的物として設定し、営業を継続しながらそこから生み出された利益を返済に充てるという効果的な制度になります。
抵当権は、債権者と抵当権設定者の合意のみで成立します(諾成契約といいます)。必ずしも債務者が抵当権設定者になるとは限らず、債務者以外の者が設定者になる場合もあります。この者を物上保証人といいます。
また抵当権の設定は債権発生の先でも後でも構いません。金銭貸借の場合に事前に手続きを行っても問題ありませんし、将来発生するであろう債権のために設定することも可能です。
抵当権は何にでも設定できるものではなく、不動産や地上権、永小作権といった、公示が可能なもの(登記)に限られます。抵当権は対抗要件(登記)を備えた場合は、第三者に対抗できます。
債務者は同じ目的物について、ひとつだけでなく複数の抵当権を設定することができます。この場合は抵当権に順位が付けられますが、その順位は登記の先後によります。第1順位の抵当権は1番抵当権、次位は2番抵当権といいます。
では抵当権の効力などについて見ていきましょう。抵当権を発生させる非担保債権は、金銭債権でもその他の債権でも構いません。既に発生している債権でも、将来発生する債権のも設定することができます。
元本の債権は全額担保されますが、当然そこで発生した利息も抵当権から得ることができます。しかし利息についてはすべてを充てられるわけではなく、後順位の者や順位の付いていない一般債権者がいる場合は、直近2年分しか認められません。
抵当権は主として不動産を目的物としますが、その不動産は単独という場合だけではなく、建物や家具類、あるいは庭木といったものまで付いている場合が多くあります。この場合には、抵当権が及ぶものと及ばないものが規定されています。抵当権の及ぶものとしては、次のものが挙げられます。
①付加物(付加一体物)
②従物
③従たる権利
④果実
⑤分離物
です。付加物とは庭に植えられている木や、増築された部屋といった、土地や建物に固定されて一体になっているもののことです。
従物とは必ずしも分離ができないものではありませんが、その目的物に従って用をなしているもののことです。例としてはガソリンスタンドのタンクが挙げられます。
次の従たる権利とは、建物を目的物とした場合の敷地利用権などがこれに当たります。
果実とは、その目的物が生み出すもののことであり、駐車場の賃貸料等がこれに当たります。弁済の不履行があった場合は、果実にも抵当権が及ぶこととなります。
分離物とは抵当権の目的物と切り離せることのできる動産になりますが、この動産が抵当権の目的物となっている場合には、もしその動産が不動産等から持ち出された場合には、返還を請求できることとなります。
最後にここで、当事者以外の第三者が抵当権の目的物を破損させた場合はどうなるのでしょうか。抵当権設定権者は債務者の場合と同様に、この第三者に対しても損害賠償請求や妨害排除請求を行うことができます。
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今日は特別養子縁組について書いていきます。
「特別養子縁組」とは「普通養子縁組」の場合とは異なり、養子とする子に特別な事情が存在する場合の縁組になります。
その子が一定年齢に達しておらず、かつ実親による保護が事実上困難な場合に、家庭裁判所の審判により行われる縁組になります。では具体的に特別養子縁組の成立要件や効果について見ていきましょう。要件は次の3つになります。
①養子の要件
②養親の要件
③父母の同意
です。
①について、特別養子となる子は原則、縁組の申し立て時に6才未満であることが必要です。ただし例外として、養親となる者に6才前から看護養育を受けていた子は、8才未満まで認められます。
②について、養親になるには配偶者がある必要があります。また夫婦の一方が他方の嫡出子(連れ子)の養親となる場合を除き、原則夫婦共同で養親となります。また養親となる者は原則として25才以上でなければなりません。この場合も夫婦の一方が25才以上であれば、他方は20才に達していれば認められます。
③については、原則特別養子となる子の父母が同意していることが必要となります。この場合も後述の一定の理由がある場合は同意も不要になります。
縁組の方式は、養親となる者の申し立てに基づいて行われ、家庭裁判所の審判によって成立します。この際の審判の基準は次の2つになります。
①父母の子に対する監護が著しく困難であり、あるいは不適当であること
②その他特別の事情がある場合において、子の利益のために特に必要があると認めるとき
です。
これらの場合に、養親となる者が養子となる者を6ヶ月以上試験養育した内容で認められることとなります。
特別養子縁組の効果は次のとおりになります。
①普通養子縁組同様、縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得し、その血族とも法定親族関係を有することとなります。
②実の父母およびその血族との親族関係は終了します。これによって普通養子縁組とは異なり、実の父母方の相続権は消滅します。
③特別養子縁組の離縁については、原則認められません。ただし例外として、養子の利益のために特に必要であると認められる場合は、家庭裁判所の審判による方法を取ることができます。
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