今回は債務不履行について書いていきます。
債務不履行とは債務者が、正当な理由がないにもかかわらず「債務の本旨」に従った履行を行わないことを言います。債務の本旨とは、契約で定められた債務の内容を言います。
債務不履行があった場合は、債権者は債務者に損害賠償請求をすることができます。債務不履行には、
①履行遅滞
②履行不能
③不完全履行
がありますが、まず履行遅滞というものから見ていきましょう。
履行遅滞とは字のごとく、正当な理由がないのに履行が遅れることです。その要件としては次のものが挙げられます。
①履行が可能な状況であること
②履行期を徒過(とか:何もしないで決められた期間が過ぎてしまうことです)したこと
③履行遅滞が債務者の責任で発生したものであること
④履行遅滞が違法(正当化する理由がないことです)であること
です。③の債務者の責任についてですが、これは債務者本人だけでなく、履行補助者(同居する家族や業者の使用人等)の故意や過失も含まれます。例えば家族の者が重要な書類を受け取っていたのに債務者に渡し忘れ、履行が遅れた場合などです。
次の履行不能とはどのような状況を言うのでしょうか。履行不能の成立要件としては、
①契約成立後に履行が不能になったこと
②債務者の責任によって履行が不能になったこと
③履行不能が違法であること
です。不能であるかどうかは、社会通念上妥当と思われるもので判断されます。上記要件のとおり、債務者の責任で契約の内容が履行できなくなってしまった状態ということです。
では3つめの不完全履行とはどのようなものでしょうか。これも成立要件を挙げると、
①履行はとりあえずなされているが、その状況が不完全であること
②債務者の責任によって履行が不完全になったこと
③不完全履行が違法であること
です。不完全履行は、履行が途中で中断されてしまった状況になります。また履行はすべて終えたんだけれども、その内容に不備があって完全な履行とは言えない状況も不完全履行に当たります。
注文の品をすべて納品したんだけれど、その一部が不良品であった場合などがこれに当たります。
これら債務不履行があった場合の責任については次回書いていきます。
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今日は動産について書いていきます。まずは動産物権変動についてです。
動産の物件譲渡は引渡しがなければ第三者には対抗できません。また動産の物件譲渡は、当事者の意思表示のみによって効力を生じます。
ここでいう第三者とは、「引渡しの欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者」になります。欠缺を~お馴染みの内容ですね。要はここでの第三者とは、引渡しの不備を主張することによって、何らかの利益を得る者になります。
引渡しの方法には次の4つのパターンがあります。
①「現実の引渡し」といい、占有移転の合意と事実的支配を移転することです。A○→B●になります(ここでは○を元あった場所、●を新たに置かれる場所とします)
②「簡易の引渡し」といい、事実的支配が譲受人Bにある場合に、AB間の占有移転の合意だけでなされます。A→B○●になります
③「占有改定」といい、事実的支配を譲渡人Aに残し、Aが以降Bのために占有する旨の意思表示をすることです。A○●→Bになります
④「指図による占有移転」といい、譲渡人Aが現在動産を占有している代理人Cに対して、以降譲受人Bのために占有する旨を命じ、Bがこれを承諾した場合です。この場合は占有している代理人Cの承諾は必要ありません。Bのみの承諾があれば問題ありません。以上によって占有が移転します。次は即時取得というものについて見てみましょう。
「即時取得」とは動産を、「取引行為によって平穏にかつ公然と動産の占有を始めた者は、善意でありかつ過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」というものです。
たとえ取引した相手が無権利者であっても、その者を真の権利者として信頼して取引した場合には、真の権利者とは関係なくその取引は成立するというものです。動産の真の権利者からしたらたまったものではないですが、これは公信の原則と呼ばれ、取引の安全性を確保するために作られた制度です。
即時取得の成立要件として次のものが挙げられます。
①目的物が動産であることです。不動産には登記制度があるため即時取得は成立しません
②取引相手が無権利者であることです。その者が真の権利者として信頼した場合ではなく、その者に代理権があると信頼した場合は、即時取得ではなく表見代理の方が問題となります
③有効な取引が存在していることです。相続の場合は適用されません
④取引者が、平穏・公然・善意・無過失であることです。裏を返せば、真の権利者が動産の権利を主張するためには、即時取得者の悪意有過失を証明しなければならないということになります
⑤取得者が占有を取得したこと
です。ここで問題になることは、引渡しがなされても、引渡しの方法によっては即時取得が成立しない場合が出てくることです。それは占有改定の場合です。占有改定では即時取得が成立しません。似たような場合でも、指図による占有移転の場合は成立します。
なお即時取得の特例として、取引相手が無権利者であっても、その動産が盗品または遺失物であった場合には、盗難または遺失のときから2年間に限って被害者や遺失者はその動産を取り戻すことができます。この場合には対価は必要ありません。しかし現在の動産占有者がその動産を市場を通じて善意で買い付けた場合には、その代価を弁償することが必要になってきます。
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今日は共同不法行為や正当防衛などについて書いていきます。
不法行為については先の記事に載せましたが、複数で行った不法行為を「共同不法行為」と言います。共同不法行為には、
①複数の者が共同で他人に損害を与えたとき(狭義の共同不法行為)
②共同行為者の中の誰が損害を与えたのかがわからない場合(加害者不明の共同不法行為)
があり、②の場合は直接損害を与えていなくても共同不法行為の責任を負います。
共同不法行為では、生じた損害全額について各自が連帯して責任を負います。
それぞれの共同不法行為の成立要件としては、狭義の場合は、
①各人の行為が不法行為の一般的要件を満たすこと
②共同行為者間に、社会的・客観的に見て数人の加害行為が一体と見られる関係にあること
であり、加害者不明の場合は、
①共同行為者であること
②各共同不法行為者が、因果関係以外の不法行為の一般的成立要件を満たしていること
③共同行為者のいずれかによって損害が発生したこと
になります。
次に「正当防衛」について見てみますが、同じ条項に同様の性質を有する「緊急避難」というものがありますので、対比して見てみましょう。
「正当防衛」とは刑事ドラマでも頻繁にでてくる言葉ですが、その定義は、他人の不法行為に対して自己または第三者の権利、または法律上保護される利益を防衛するために、やむを得ず行う加害行為を言います。
正当防衛が認められた場合は損害賠償の責任は負いません。ただしその被害者が損害賠償請求をすることはできます。
「緊急避難」では他人の不法行為は介在しませんが、他人の物から生じた差し迫っている危難を避けることを言い、それによって他人のその物を損傷した場合も正当防衛と同様の扱いになります。緊急避難の例としては、他人の飼い犬に襲われた際に、棒などでその犬に怪我を与えた場合などが考えられます。
民事上では法によらず自らの力で解決をはかる自力救済は禁止されていますが、正当防衛も緊急避難も自力救済ではありますが違法性は除かれ、不法行為には当たりません。
正当防衛の成立要件は次のとおりです、
①他人の不法行為が原因であること
②自己または第三者の権利または法律上保護される利益を守るためにすることであること
③やむを得ないものであること
④加害行為をしたこと
です。
緊急避難の成立要件は次のとおりです。
①他人の物から生じた急迫の危難が原因であること
②これを避けるためのものであること
③やむを得ないものであること
④その物を損傷したこと
になります。
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今日は債務不履行が発生した場合の、債権者の権利について書いていきます。
債務不履行の際に債権者が債務者に請求する方法としては、
①履行されていない債務を強制的に行わせること
②更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する
この2通りが考えられます。
まず債務を強制的に行わせることについて見てみましょう。債務不履行とは債務者が履行を完全に行わない場合に発生しますので、これを強制的に行わせましょうということになります。これを「強制履行」といいます。強制履行の方法としては次の3つになります。
①直接強制
②代替執行
③間接強制
です。
直接強制とは、裁判所への請求などによって、国家権力(執行機関)が債務者の意思にかかわりなく、直接的に債務内容の実現を図る方法になります。
代替執行とは、債権者や第三者によって、債務者に代って債務内容を実現させることです。特にこの場合は、実現にかかった費用は債務者から強制的に取り立てることとなります。
間接強制とは、債務の履行をさせるために一定額の支払いを命じて、その心理的な圧迫によって履行をさせようという方法になります。例としては、一定期間内に目的物を渡さない場合に、一定額の支払いを命じる場合などがあります。
次に、更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する方法について見てみましょう。
損害賠償とは、履行されなかった契約で生じた損害分の埋め合わせをさせるものであり、これを目的として金銭を請求できる権利を「損害賠償請求権」といいます。損害賠償請求は、特に特定のものを指定する意思表示がない場合は、通常は金銭に換算して行われます。これを金銭賠償の原則といいます。
埋め合わせをする損害の範囲ですが、これは「通常生ずべき損害」とされています。債務不履行が原因で直接失われた損害分を指します。
例外としては、当事者が予見したりまたは予見することができた「特別な事情」から生じた損害も含めることができます。履行が行われていたら、土地の値上がりによってさらに利益が得られた場合などがこれに当たります。
なお特別な事情とはあくまで発生するであろう事実をいうものであって、その時点で特別な損害が発生している必要はありません。
債務不履行に関しては債権者に過失がある場合も考えられますが、債権者に過失があった場合はその過失分を賠償額から差し引くことができます。この制度は「過失相殺」といいます。
過失相殺の制度は交通事故などの不法行為の場合にも適用されますが(歩行者の飛び出し等)、不法行為の場合の過失相殺はこれが行われてもその行為自体が免責されるものではなく、責任が軽減されるに過ぎません。また過失割合についても必ず相殺されるものではなく、事案によって任意的に決められる性質のものとなります。
一方この債務不履行に関する過失相殺については、債務者の損害賠償責任自体を免責することもでき、また過失割合についてはすべての事案について必要的に、必ず適用されます。
債務不履行による損害賠償については事後的に算出されるものだけでなく、「違約金」などの名目で契約によって、あらかじめ当事者間で金額を決めておくこともできます。これを「賠償額の予定」といいます。この額を定めていた場合は、債権者は損害額を証明する必要はなくなり、当事者はこの額に拘束されることとなります。
債務不履行における債務については、いろいろなものがあります。例えば家の建築を請け負った場合なども、この請負は「債務」になります。また特に債務が金銭によるものである場合は、特別なルールが定められています。
金銭は万能であり融通性が非常に高いために設けられたルールで、これを「金銭債務の特則」といいます。「金銭債務の特則」とは次の3つになります。
ひとつめは、金銭債務が不履行と言われる場合は常に「履行遅滞」の状態にあるとされ、「履行不能」の状態にはならないことです。この特則によって債務者は、弁済の義務から免れないこととなります。
2つめは、債権者側の損害の有無は問題とされず、債権者は債務不履行の事実さえ立証すれば良いとされることです。これによって損害額のみならず、その期間の利息も当然に賠償する義務が発生します。
3つめは債務者は、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」ということです。これは自分に過失がないことを証明しても、責任からは免れることは許されないという意味です。
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今日は民法における委任契約というものについて書いていきます。
「委任」とは当事者の一方が「法律行為」をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力が生じる諾成契約になります。
「諾成契約」とは、当事者の意思表示のみで成立する契約のことを言います。ちなみに当事者の合意のみでは足らず、物の引渡しや給付を成立要件とする契約は「要物契約」と言います。
委託する側を「委任者」、承諾する側を「受任者」と言います。ここで委任とは法律行為を委託すると言いましたが、法律行為以外の事務の委託も当然あるわけで、それは「準委任」と言い委任の規定が準用されます。
委任をするにあたっては、委任者側にも受任者側にも義務や責任が発生します。
ではまず委任者側の義務について見ていきましょう。委任者は原則、受任者に経済的に負担をかけないという義務を負い、具体的には次のような義務が発生します。
①報酬支払い義務
②費用前払い義務
③立替費用償還義務
④債務の弁済または担保供与義務
⑤損害賠償義務
です。
まず①についてですが、民法においては委任というものは、原則無償委任になります。ですので、報酬の支払い義務が発生するためには報酬支払いの特約が必要になります。また特約があった場合でも、その報酬は原則後払いになります。
②では、委任された事務を処理するについての必要な費用について、事前に受任者から請求があった場合には前払いをする必要があります。あくまでも遂行に必要な費用の場合です。
③の立替費用とは、必要な費用が前払いされずに、受任者によって立替えられた費用のことです。この場合は立替えた費用を請求できるのみならず、支出以降の利息も請求することができます。
④の債務とは、委任事務を行うについての費用的なものに収まりきらず、受任者が債務を負った場合のものを言います。この場合の債務は必要と認められる範囲に限られますが、その弁済を自分に代わってするようにと、受任者は委任者に対して請求することができます。まだ弁済期の到来していない債務については、委任者に担保を請求することもできます。
⑤の損害賠償義務とは、受任者が自分に過失がないにもかかわらず損害を被った場合に、委任者に損害賠償を請求できる権利になります。この場合の委任者の責任は無過失責任(委任者に責任がなくても負う責任です)になります。
委任契約はその目的を完了したときに終了しますが、それ以外にも終了となる場合があります。
まず、理由がなくても当事者双方が一方的にいつでも解除が行える、「無理由解除」(告知と言います)というものがあります。もともと委任契約というものは無償契約が原則であるように、当事者間の信頼関係が基礎となるものになります。ですので、この信頼関係が崩れた時など、委任契約を継続することが難しいからです。
しかし関係が崩れたから一方的にというのも理不尽ではありますので、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方に不利な時期の解除については、損害賠償を条件に認められることとなります。
また告知以外でも、委任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたときや受任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたとき、あるいは後見開始の審判を受けた場合は、当然に終了します。
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今日は瑕疵ある意思表示の続きです。まず「錯誤」について見てみましょう。
民法第95条に錯誤について規定されています。「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない」という条文です。
錯誤とは表意者の意思と表示に不一致があっても表意者がそのことを知らない場合をいい、その意思表示は原則無効になります。この無効は第三者に対しても対抗できます。錯誤には「要素の錯誤」と「動機の錯誤」があります。
まず「要素の錯誤」とは法律行為の重要な部分についての錯誤であって、錯誤がなければ表意者だけでなく、他の人でもその意思表示をしなかったであろうと考えられる場合です。
例えばAさんがB土地を売るつもりが、C土地をB土地だと錯誤してしまってC土地を売ってしまった場合がこれに当たります。この場合はAさんはC土地を売ってしまったことを無効を訴えることができますが、Aさんに重大な過失がある場合は、無効を訴えることはできません。重大な過失とは文字通り、看過すべきでないほどの過失をいいます。
しかしAさんに重大な過失があった場合でも、相手方が悪意(表意者の錯誤に気付いていた)である場合や、当事者の双方が錯誤に陥っている場合は、重大な過失があったにせよ無効を訴えることができます。双方の錯誤とは今の例で言えば、Aさんとともに相手方のDさんもC土地をB土地だと勘違いして、お互いの契約を結んでしまった場合がこれに当たります。お互いが間違えていたということで、契約を無効にできます。
要素の錯誤とは別に、「動機の錯誤」というものがあります。要素の錯誤が意思表示そのものにあるのに対し、動機の錯誤とは意思を形成する動機が構成要素となり、表意者の動機と表示に不一致があっても表意者がこれを知らない場合の錯誤を言います。
AさんがB土地の近くにショッピングセンターが建設されることを聞いたため、値上がりを見越してB土地を購入をするといった場合では、ショッピングセンターの建設予定が動機になります。動機の錯誤とは、例えば建設予定は噂だけで実際は建設されないけれどもAさんはこれを知らない場合がこれに当たります。
この場合は無効を主張できますが、通常の契約のたびに思い違いを理由に無効を主張されても困ってしまいます。民法では動機の錯誤を主張できる要件として、もう二つの要件を規定しています。
ひとつはその動機が相手方に明示されていなければならないということです。今の例で言えば、契約をする不動産会社に対し、「近くにショッピングセンターが建設されるから、土地の値上がりを期待して買う」ということを伝えている場合です。また明示でなく黙示であっても相手方がその意図を知ることができた場合もこれに当たります。意図を伝えず、心の中で思っていただけでは無効は主張できません。
もう一つは表意者に重大な過失がないことです。
「要素の錯誤」であっても「動機の錯誤」であっても、無効を主張できるのはあくまで意思表示をした当事者に限られます。他の者はすることはできません。民法の規定は意思表示者を保護するためのものですので、表意者自身が無効を主張しない場合は認められません。
しかし例外として、表意者が錯誤の事実を認めている場合でかつ債権保全の必要性がある場合には、第三者による主張も認められます。
今まで見てきた、無効にすることができる意思表示である「心理留保」「通謀虚偽表示」「錯誤」の他に、取り消すことのできる意思表示に「詐欺」と「脅迫」があります。
「無効」というのは法律上当然に効力がないということであり、いつでも誰でも(錯誤は本人のみですが)主張できます。一方の「取り消し」は、その法律行為が取り消されるまでは一応有効であることと、取り消された場合はその事実が起こった時点までさかのぼって無効になることが、「無効」と異なる点です。
本人のみならず、代理人などの特定の者もすることができます。また追認された場合は初めから有効になる性質があり、追認可能時から5年(発生から20年)で時効になります。
取り消すことのできる意思表示のひとつである「詐欺」ですが、取り消すことはできても善意の第三者には対抗できません。だまされた本人にも多少の責任はあるということです。また相手方以外の第三者が詐欺を行った場合には、相手方がその事実を知っていた場合に限り取り消すことができます。
もうひとつの「強迫」による意思表示も取り消すことができます。強迫は善意の第三者にも対抗できます。詐欺にあった者と違って、強迫をされた者に落ち度はないからです。
よく刑事ドラマなどで「脅迫」という言葉がでてきますが、「強迫」とは違うのでしょうか。「脅迫」は人を脅して何かを要求することですが、これは刑法上の法律用語になります。一方の「強迫」は民法上の法律用語になります。ややこしいですが、法律では独特の用語が使われます。漢字や読み方が普段使っている言葉と異なることも多いですね。遺言の「ゆいごん」「いごん」も同じようなものですね。
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今日は商法の続きを書いていきます。
前回は商号というものについて書きましたが、商号はその商号を定めた者しか使用できません。しかしその商号を定めた者が許可を与えた者については、その者の商号を使って営業をすることができます。これを「名板貸」といいます。
商号を貸した者を「名板貸人」と言い借りた者を「名板借人」と言いますが、お客さんや取引業者などが名板貸人の店と誤認して、その名板借人から不利益を被った者がいた場合は、名板貸人は名板借人と連帯して弁済する義務を負わなければなりません。
名板貸人の責任の成立要件としては次のとおりです。
①名板借人が名板人の商号を使用しているという外観があること
②名板貸人が許可をしたという帰責事由があること(許可は黙示でも認められます)
③善意無重過失である第三者が誤認したこと
です。なお、商号に付加された語句がある場合や商号が簡略化されている場合にも、第三者の誤認がある限り責任が発生します。ただこの場合には誤認された営業が、本来の商号である営業と同種であることが必要になります。
名板貸人に責任が及ぶ範囲としては、自分の商号を使って名板借人が行った、取引によって生じた債務になります。取引によって生じた債務については、名板貸人は名板借人と連帯して責任を負います。
この責任の範囲には、交通事故などの不法行為による損害賠償は原則として含まれません。しかし詐欺などの、取引行為と判断される不法行為については、責任の範囲に含まれるとされます。
では名板貸ではなく、営業を譲渡とした場合の責任についてはどうでしょうか。この場合は、譲渡される営業によって生じた債務は原則譲渡人が負いますが、譲受人が債務引受などをした場合については、譲受人も責任を負うことになります。また併せて譲渡人は、競業避止義務も負うこととなります。
次は「商業使用人」について見てみましょう。
「商業使用人」とは、雇用されて営業を補助する自然人を言います。商業使用人には、支配人や店舗の使用人などがあります。
「支配人」とは、商人や会社から営業所等の営業や事業を任された者を言います。支配人を選任した場合は、必ず登記をしなければなりません。
この支配人というものは商人等に代わる代理権を持ちますが、この代理権については営業や事業に関する一切の、裁判上または裁判外の行為に及びます。なお、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません。例えば支配人が行える業務を限定したとしても、通常に考えれば支配人の責任の範囲である、と考える善意の第三者には対抗できないということです。
では、支配人の義務についてはどうでしょうか。支配人は、雇用契約上の善管注意義務や報告義務などの責任を負っていますが、そのほか営業避止義務や競業避止義務というものも負っています。言い換えると、支配人は商人の許可を得なければ、次の4つをすることができないというものです。
①自ら営業を行うこと
②自己または第三者のためにその商人の営業範囲内の取引を行うこと
③他の商人や会社、外国会社の使用人になること
④会社の取締役や執行役または業務を執行する社員になること
です。以上支配人とは、商人から権限を付与された者になりますが、一方、表見支配人というものも存在します。表見という言葉は、民法の表見代理人の話に出てきましたね。それと同じようなものになります。
https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/date/2018/06/20
「表見支配人」とは、包括した代理権を与えられていない使用人であるにもかかわらず、支配人らしく思わせる名称を付けられた使用人のことを言います。例えば、責任権限を持っていない店員さんであるにもかかわらず、「お店責任者」などといった名札を付けられている場合がこれに当たります。
表見代理人は、裁判外の行為に関しては、善意の第三者に対しては支配人と同一の権限を有するとみなされます。権限がなくても、裁判上の行為を除き、善意の第三者に対しては支配人と同様の効力を有することとなります。責任権限がなくても、第三者に支配人と誤認させるような表示をさせている以上、裁判まで発展していない事案については、責任を持ちますよということになります。
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今日は寄託契約というものについて書いていきます。
「寄託」とは、当事者の一方が相手方のために「特定物」の保管をすることを約束して、その特定物を受け取ることによって効力を生じる契約を言います。保管する者を「受寄者」、預ける側を「寄託者」と言います。
寄託は無償で行う場合と有償で行う場合がありますが、無償で寄託を受けた場合は、"自己の財産に対するのと同一の注意義務"で保管すれば良いとされています。無償の場合は、日常自分の物を管理するのと同じくらいの注意で足りるということです。
一方有償の場合は、"善良な管理者の注意義務"、いわゆる「善管注意義務」を負います。
この2者の違いですが、前者は重過失の場合には損害賠償責任を負いますが、軽過失の場合は責任を負いません。これに対して善管注意義務がある場合は、軽過失でも責任を負うこととなります。
前回委任契約の義務について触れましたが、保管するのに必要な費用については委任の規定が準用され、寄託者に対して請求することができます。なお受寄者は寄託者の承諾なしには寄託物を使用することも第三者に保管させることもできません。無償であっても有償であっても同様です。
寄託契約は寄託物が返還されれば終了します。
返還についてですが、寄託者側は、たとえ当事者同士で返還の時期を定めた場合であっても、いつでも返還を請求することができます。一方の受寄者においては、返還の時期の定めがある場合には、やむを得ない事由がない限り期限前に返還することはできません。
では返還の定めがない場合はどうでしょうか。寄託者はいつでも返還の請求をすることができますし、受寄者においてもいつでも返還することができます。
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今日は民法の不法原因給付と言うものについて書いていきます。
前回は不当利得返還請求について書きましたが、それは正当な理由で給付したものの返還を請求する権利でした。特則にもあったように、みずからが不合理な行為でした給付については、保護も図られないものです。
今回の「不法原因給付」とはその給付が不法な原因であるものを指しますので、そもそも利得の返還を請求することができないという内容になります。
「不法な原因」とは具体的には、違法賭博で負けた金銭の支払いや愛人への贈与などの、公序良俗違反のことを言います。「給付」とは相手方に、最終的な利益を与える行為を言います。これは金品を与えるといった事実上の利益であっても、財産権や財産的利益を与えるものであっても構いません。
動産の場合の給付は、「引渡し」が要件になります。不動産の場合では未登記不動産は「引渡し」のみで「給付」となりますが、登記された不動産の場合は「引渡し」に加えて「登記」がなされることが給付の成立要件になります。
この条項には内容的に不法原因給付ではあっても、不法な原因が受益者についてのみ存在した場合には不法原因給付ではないという但し書きが付されています。
判例では、給付者に多少の不法な点があっても受益者にも不法の点があり、給付者の不法が受益者の不法に比べて極めて微弱に過ぎない場合には、不法な原因が受益者のみに存したとしてこの但し書きが適用されています。
なお前述した違法賭博で負けた金銭の支払いに関して等では利得の返還請求はできませんが、勝った側が返還を約束した場合には、別の契約としての請求をすることはできます。
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今回は失踪宣告について書いてみます。
失踪は婚姻関係の整理や相続の分野にも関わってくる事柄です。失踪の宣告はその者の行方が不明になった場合に、利害関係人が家庭裁判所に申請することによって行ないます。家族の者でなくても構いません。
失踪宣告の請求はいつでもできますが、失踪宣告がなされた場合は、最後に生存が確認された時点から7年間の期間満了後に死亡したとみなされます。行方不明になってから8年後に請求をした場合は、1年前の期間満了時にさかのぼって死亡したとみなされます。これを普通失踪といいます。
一方飛行機や船の事故などで行方不明になった場合には、その危難が去ってから1年を経たあとに失踪宣告がなされますが、この場合は危難が去った時点にさかのぼって死亡したものとみなされます。これを特別失踪といいます。
しかし失踪宣告されたからといって失踪者本人の権利能力まで否定されるものではなく、本人が生きていた場合は他で法律行為を行うこともできます。その場合には失踪宣告の取り消しが行われますが、死亡時が異なる場合もその日付での宣告は取り消されることとなります。
では取り消しが行われた場合はどのようになるのでしょうか。失踪宣告の取り消しが行われた場合には、宣告によって財産を得た者はその権利を失うこととなり、現存利益の限度で返還義務を負うこととなります。民法では現存利益の限度(範囲)という言葉がよく出てきますが、手元に残ったお金があれば返還するということです。
手元に残ったお金が返還すべき額を下回っていたとしても、その使ったお金が家計費などの自分の利益になるものに使った場合は、その分は補填しなければいけないということです。一方ギャンブルなどで浪費してしまった場合は利益として残っていないのですから、その分は返還する必要はないですというものです。一見理不尽に思えますが、そういう内容です。
宣告によって財産を得た者が、第三者と既に取引を行っていた場合はどのようになるのでしょうか。この場合は、取引の当事者双方が善意であれば取引行為は有効となります。ちなみに善意という言葉が法律用語として使われる場合は、「その事実について知らない」ということを意味し、対義語である悪意は「その事実について知っている」ことを意味します。
夫の失踪宣告後に別の男性と結婚していた場合はどうなるのでしょうか。この場合は、妻と現在の夫の一方または双方が悪意(失踪した夫が生存していることを知っている)であれば、前婚が復活し重婚関係となります。重婚は認められませんので、現在の結婚を生かす場合には前婚の離婚届けを出し、前婚を生かす場合には現在の婚姻を取り消します。妻と現在の夫の双方が善意であれば、前婚は復活しません。
相続で行方不明の方が問題となる場面は、共同相続の場合です。共同相続に際しては、必ず相続人全員参加の遺産分割協議が必要になりますので、行方不明者がいる場合は失踪宣告を請求する必要も出てきます。この場合も協議との兼ね合いで時間的猶予のないこともありますので、実際はまず不在者財産管理人選任を請求することとなります。この請求は、行方不明者が最後にいたであろう場所を管轄する家庭裁判所に行ないます。
不在者財産管理人の立場としては、遺産分割で不在者に不利な配分を求めることもできませんので、実際は法定相続分での決着が多いようです。
https://www.gyosei-suzuki-office.com/category2/entry68.html
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今日は相続にも大きく関係してくる、親族というものについて書いていきます。
相続を受けることのできる者(相続人)は「相続人」である「配偶者」「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」になりますので、親族の範囲を見た上で、これらの者がどの位置にいるのかを見てみます。
また今回成立した相続関係の民法改正において、「相続人以外の親族の貢献を考慮する方策」が加えられましたので、今まで以上に「親族」という言葉が使われる機会が多くなると思います。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html
「親族」とはどのようなものを言うのでしょうか。民法における「親族」とは、次の者を言います。
①6親等以内の血族
②配偶者
③3親等以内の姻族
です。
まず「血族」とは、血縁関係のある者相互間(誰から見てもお互いに)および、法的に血縁があると制度上みなされる(擬制)者相互間を言います。前者を「自然血族」、後者を「法定血族」と言います。
「自然血族関係」は出生によって生じ、死亡によって終了します。「法定血族関係」は養子縁組によって生じ、離縁や縁組みの取り消しによって終了します。
次の「配偶者」は、婚姻によって戸籍上の地位を得た者になりますが、配偶者は血族にも姻族にも属さず親等もありません。
「姻族」とは「配偶者側の血族あるいは血族の配偶者相互間」を言います。例えば配偶者の父や、本人の父の兄弟(叔父)の配偶者は姻族になります。「姻族関係」は配偶者を通じての関係になりますので、配偶者の一方の血族と他方の血族は姻族にはなりません。具体的に言うと、本人の父と配偶者の父は姻族関係には当たりません。
また姻族関係は婚姻によって生じ、離婚によって終了することになります。離婚した元配偶者の親とは知り合いではあっても、法的つながりはなくなるということです。これは離婚の場合であり、死別の場合は届出を行わない限りは姻族関係は当然には消滅しません。
では先に出てきた「親等」とはどのようなものでしょうか。
「親等」とは親族間の遠近度を比較する尺度であり、親族間の「世代」によって決まります。本人から見て「世代」がひとつ変われば1親等という数え方をします。
相続人に当てはめて見ますと、配偶者に親等はありません。子と直系尊属(父母)が1親等、孫や祖父母は2親等になります。兄弟姉妹は親を経由して下がりますので、これも2親等と数えます。本人の叔父や叔母は祖父母を経由しますので3親等、その子であるいとこは4親等になります。
親族については世代をまたがる垂直の広がりと、直系から枝分かれをした横への広がりがあります。
縦への広がりで見てみますと、本人から世代が上の者たちを「尊属」、世代が下の者たちを「卑属」と言います。ですので父は尊属、子は卑属になります。兄弟姉妹やいとこは世代が同じですので、尊属にも卑属にも当たりません。
横への広がりで見てみますと、本人から垂直に遡ることのできる父母や祖父母や曽祖父母、あるいは垂直に下がることのできる子や孫やひ孫などは「直系」になります。
縦横併せてマトリックスで見ますと、上の世代を「直系尊属」、下の世代を「直系卑属」と言います。垂直から枝分かれをした叔父叔母などは「傍系」と言います。これも上の世代を「傍系尊属」、下の世代を「傍系卑属」と言います。
整理してみますと、血族には直系血族と傍系血族があり、直系血族には直系尊属と直系卑属があります。また傍系血族にも傍系存続と傍系卑属があることになります。姻族にも同様の、直系傍系、尊属卑属の関係があります。
改正民法の特別寄与に関しては、具体的に権利の範囲にあるかは事案ごとに確認を要するとことになります。
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