今日は本題の普通方式の遺言について書いていきます。通常作成される遺言のほとんどはこの普通方式になります。
普通方式には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、公正証書遺言は平成29年には110,191件作成されており、年々増加しています。それに対し秘密証書遺言の作成は、わずか130件にとどまります。
一方、自筆証書遺言については裁判所が受理した「検認」数でしか確認することはできませんが(2年以内に法務局による保管制度が開始されます)、その数は16,708件にとどまります。
新規作成された件数と相続が開始した件数とで比較対象が異なりますが、昨今は遺言の役割が理解され始め、手近な自筆証書遺言が作成される機会が相当増加していると思われます。すでに公正証書遺言の作成数を上回っているとさえ言われている中で、自筆証書遺言による方式の不備や内容の偏りや不明確さによるトラブルも危惧されています。
先に触れてしまいましたが、それではそれぞれの種類について、作成方法やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
先に書きました、民法に規定される「普通方式」の遺言については、3種類の方式が定められています。各方式、厳密な作成ルールが規定されており、内容に不備があると法的効果が得られないことになります。3種類の方式は、①自筆証書遺言(民法968条)②公正証書遺言(同969条)③秘密証書遺言(同970条)になります。
まず①の自筆証書遺言について見ていきましょう。
「自筆証書遺言」の作成方法は、いたってシンプルです。遺言者本人が、遺言書の全文、日付および氏名を自書し、捺印して作成します。
全文には財産目録などすべてを含みますが、今回の民法改正によって、平成31年1月13日から目録については自書でなくても良いことになりました。財産が多い場合などは書く事が負担であった財産目録は、パソコンなどで作成しても良いことになります。時流に合わせた改正になりました。
ここで言う自書とは文字通り遺言者みずからが自分の手で記述することをいい、口述であったり他人が手を添えることも原則認められていません。
日付については、明確に作成した当日の日付を自書します。西暦であっても元号であっても構いませんが、日付印であったり特定されない日付、例えば9月吉日等の場合は無効となります。判例からは、遺言者自身の70歳の誕生日に書いたとか、11月末日に書いたという記載があれば、それは自書した日を特定できるということになります。
遺言は撤回することも書き直しすることも自由にできます。しかし法的効果を有する遺言が複数見つかった場合は、内容が矛盾する部分については必ず後の遺言が有効になります。ですので、遺言が書かれた日付というものが極めて重要になるのです。
次の氏名については、これも当然自書しなければなりません。しかし氏名は戸籍上の氏名である必要はなく、遺言者が誰であるか疑いのない程度の表示がなされていれば良いこととされ、ペンネーム等の通称でも問題ありません。また氏や名のどちらか一方のみであっても、他人との混同が生じない場合には有効とされます。これらは民法に直接の記載はありませんが、判例から確認されます。厳密な規定と言いながら腑に落ちない部分ではありますが、余計な問題を起こさないように、必ず自分の本名を自書するようにしましょう。
次は押印についてです。印を押す場合には捺印という言葉も使われますが、雑学として、一般的には自分で書いた名前(自書)に印を押す場合は「捺印」、自書以外に印を押す場合は「押印」と言うようです。「押捺」という場合には拇印も含むようです。ここでは名前に印を押す場合ばかりではないので、「押印」という言葉を使います。
押印する印については実印を押すという規定はないため、いわゆる認印や拇印でも良いとされています。しかしトラブルを防ぐ意味からも、実印や銀行印で押印することをお勧めします。
押印する場所も特に決まっていないので、どこに押しても構いませんが、やはり自書した上か横に押すのがセオリーでしょう。どちらにしても遺書本紙に押印することが必要で、封印した封筒のみへの押印は無効になります。
ここでもう一つ問題になることは、遺言が複数に渡った場合の押印は、各紙面に必要かどうかということです。通常契約書などの場合は、例えば1枚目と2枚目のあいだに後から作成された用紙が差し込まれないように、1枚目と2枚目のつなぎ目に「契印」というものを押します。「契印」は1枚目と同じ印を使用します。ここもトラブルがないように、契印を押しておきましょう。
次に訂正があった場合の方法について説明します。「加除訂正」と言いますが、遺言書の加除訂正の要件は、
①遺言者自身によりなされること
②変更の場所を指示して訂正した旨を付記すること
③付記部分に署名すること
④変更箇所に押印すること
です。
余白に文言を後から付け加えた場合もこの方法に則ります。この加除訂正の方式に間違いがあった場合は、その加除訂正自体が無効となりますが、遺言書全体は当然無効にはなりません。加除訂正される前の元の内容が判別できれば元の内容が生きることとなり、判別不能な場合はその部分が一切記載されていないものとして扱われます。
加除訂正は非常に面倒な手続きですし、誤りも発生しやすいものですので、変更等がある場合は新たに書き直された方が良いと考えます。またその際はトラブル防止のために、必ず前の遺言書は破棄しましょう。なお自筆証書遺言は日本語に限られず、外国語で作成することもできます。
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今日は養子縁組のうち、普通養子縁組について書いていきます。
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がありますが、通常行われる養子縁組が普通養子縁組になります。
「縁組」とは、養子とする行為を言います。「普通養子縁組」が成立する要件としては形式的要件と実質的要件がありますが、形式的要件は「届出」になります。婚姻などと同様に、養子縁組も「届出」を行わないと縁組は成立しません。
では実質的要件とはどのようなものでしょうか。実質的要件には次の2つがあります。
①縁組意思の合致
②縁組障害事由の不存在
です。
「縁組意思の合致」とは、養子縁組を行う当事者双方に、真に親子関係を形成して養子縁組を成立させようという意思があることを言います。この意思がなく、他の目的のために行う縁組は無効になります。他の目的とは、相続人になるためにすることなどが挙げられます。
次のような場合は縁組をすることができません。縁組をすることに障害となる事由があるということであり、「縁組障害事由の不存在」とは、縁組をすることに障害となる事由がない、つまり縁組をしても良いですよということになります。
①養親が未成年の場合は、縁組をすることができません。ただし未成年が婚姻をした場合には、「成年擬制」により養親となることができます。
②養子となる者が養親になる者より年長者の場合、または養親の尊属の場合は縁組をすることができません。
③後見人が被後見人を養子にする場合は、縁組をすることができません。ただし家庭裁判所の許可があれば認められます。
④配偶者のある者が未成年者を養子にする場合には、原則共同して縁組しなければなりません。ただし、配偶者の嫡出子を養子にする場合(再婚時の連れ子等)は共同でする必要はありません。
⑤配偶者のある者が養子になる場合、または配偶者のある者が成年者を養子にする場合は、配偶者の同意があれば単独で縁組をすることができます。
⑥養子となる子が15才未満の場合は、法定代理人が縁組の承諾をすることができます(代諾養子)。
⑦未成年者を養子とする場合には、自分や配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、原則家庭裁判所の許可が必要になります。
普通養子縁組が成立した場合には、次のような効果が発生します。
①養親の嫡出子たる身分
②法定血族関係
③養親の氏の取得
です。
「養親の嫡出子たる身分」は縁組の日から効果が生じます。養子が未成年者の場合は、養親が親権者になります。
養子となった者は嫡出子と同様の、相続権や養親の扶養義務が発生することとなりますが、縁組前の実親やその血族との親族関係は存続しますので、実親も相続することができます。「普通養子」となった者は、実親と養親の両方を相続することができます。
「法定血族関係の発生」について、養親やその血族との間の法定血族関係も、縁組の日から発生します。
「養親の氏の取得」についても同様の効果となります。ただし婚姻によってその氏を改めた場合は、夫婦同氏の原則が優先します。
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今日は相続の取りすすめ方について書いていきます。
相続は被相続者が亡くなった時点から、被相続人の自宅において開始します。相続を取りすすめていく者(執行人)については、配偶者や子などがいる場合はわかりやすいですが、通常は相続人の中で相続額の大きな、主だった者が中心となって相続を進めていきます。
相続が始まったら、まず遺言書を探します。遺言書が見つかった場合には、その遺言書の方式が自筆であるかそれとも公正証書によるものかを確認します。
遺言書が自筆証書遺言書であった場合は、必ず封を開けずにまず家庭裁判所に「検認」を申請しなければなりません。家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。身近な相続人であれば他意はなくとも中身を見たくなるのは人情でしょうが、勝手に封を開けてしまうと法による罰則が規定されており、5万円以下の過料に処せられることになります。
またこの時点でのうっかりで止まっていれば相続人としての資格に問題はありませんが、つい出来心であっても、遺言書を自分に有利なように書き加えたり廃棄してしまったりした場合は、その者は欠格者として法律上当然に相続人としての地位を失ってしまいます。決して見つけても開封してはいけません。
万が一開封してしまった場合にも、「検認」手続きは必ず受けましょう。検認手続きを受けて「検認済み証明書」を取得しておかないと、金融機関からの払い戻しや法務局での不動産の名義書換などが行えません。
では家庭裁判所における「検認」とはどのようなものでしょうか。
相続人から「検認」の申請が出された場合は、家庭裁判所はわかっている相続人全員に、期日を決めての出頭文書を送ります。そしてその期日に出頭した相続人全員立会のもと、遺言書の開封を行います。提出された遺言書について、検認日においての遺言書の形状や加除訂正の状態・日付・署名、内容等が確認されます。内容が正しければ相続人全員同意のもと検認の効果が確定します。そして当日立ち会えなかった相続人には、その旨の連絡がいきます。
しかし検認自体の効果については、その遺言書が適正に書かれたものであり、かつ相続人立会のもとに確認したものであるという証拠保全の手続きとしての性質を持つものであって、内容自体についての可否や整合性を保証するものではありません。
行政書士や公証人とのやりとりの中で調製されたものではないため、その内容が偏っていたりあるいは財産内容等があやふやである場合には、あらためての協議が必要になることもあります。また内容によっては被相続人自身の自筆であることの証明が必要になる場合や、あとに書かれた遺言書がないかの探索等が必要になる場合があります。
一方、遺言書が公正証書遺言であった場合には検認の手続きも必要なく、内容的にも妥当なものがほとんどであるため、概ね遺言書のとおりにスムーズに相続が進んでいきます。遺言書の内容の確認と事務的な段取が主体となり、分配内容による葛藤がないではないにせよ、比較的短期間で相続が完了することが通常です。
いずれにしても相続に関しては、法的に効果のある遺言書があった場合は、ほとんどは遺言者の意思に従って行われます。公序良俗に反したものであったり遺留分を侵害していたりする場合を除けば、遺言者の意思を尊重するということになります。
しかし遺言書の効力が100%であるかといえば、そうとばかりはいえません。たとえ遺言書があったにしても相続人全員の協議が整えば、そちらの協議を優先することも構いません。ただし遺言書に指定された、行政書士等の遺言執行人がいる場合は、その者との協議も必要になります。被相続人との契約を執行する義務がある者との調整をすることが、最終的な相続の方法を決める有効な方法かと考えます。
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今日は危険負担と言うものについて書いていきます。
「危険負担」とは、双務契約が成立した後どちらかの債務が完全に履行される前に、一方の債務(双務契約の場合は当事者双方がともに債権債務を有します)が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合に、どちらの当事者が責任を負うかというものです。
民法では「債務者主義」を採用し、どちらかの債務が完全に履行される前に一方の債務が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合でも、原則として債務者の負担になります。
例えば物の売買で見た場合、物を売る側は代金と引き換えに物を交付するという債務を負いますので、物の交付については売主側が債務者になります。ですので物が消滅してしまった場合は、売主側に責任はなくても、物の交付の履行不能によるリスクは、売主側が負うということになります。
これはあくまでも債務者の責によらない場合ですが、債務者に履行不能についての帰責事由がある場合は、危険負担の問題からは離れ、債務不履行に基づく損害賠償の問題になっていきます。またすでにどちらかの債務が履行された場合、今の例で行けば売主側が物を交付したかあるいは買主側が金銭を交付した場合は、同様に危険負担の問題とはなりません。賠償か解除かの問題になります。
話を戻します。債務者が危険負担を負う、リスクを負うとはどういうことでしょうか。
双務契約においては双方の債務がそれぞれ対価的意義を有しています。言い換えるとお互いに相手方に対する債権債務を有していることになります。一方の債務が消滅すれば他方の債務も消滅することになりますので、売主側の物が売主の責任によらずに消滅してしまった場合には、売主側は相手方に対して代金を請求できないということになります。売主の責任でなく物が消滅してしまっても相手方に対して代金を請求できないということは、物の消滅は売主自身で追わなくてはならない、という理屈になります。
つらつらと書きましたが、これが「債務者負担」というものになります。
債務者主義の例外として、「債権者主義」というものがあります。これは一方の債務が消滅しても、他方の債務が消滅しないという場合に採用されます。次の場合には債権者主義が取られています。
①特定物に関する物権の設定、または移転を目的とする双務契約の場合
②不特定物に関する契約についても、特定が生じた以降は債権者主義となります
③債権者の責に帰すべき事由によって、債務の履行が不能となった場合
です。
特定物とは、例えば世界に1本しかない、”この”ビンテージワインというようなものです。売買契約が締結された以降に売主の責任なくこのワインが消滅してしまった場合には、受け取るべきワインが存在していなくても、買主は代金を支払う義務があるということになります。
不特定物の特定とは、5本ある赤ワインの中から1本を選んだ場合などを言います。特定されていない5本のワインから、1本が特定されたということになります。また債権者側に理由があって債務が不履行になった場合には、債権者みずからが責任を負うということになります。
なお通常、契約の場合には危険負担を明記する場合が多くなりますが、今回書いてきたこの危険負担についての民法の規定は、義務ではなくあくまでも任意の規定になります。このような民法の規定によらず、当事者同士で別途決めることもできます。
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今日は民法に規定される契約というものについて書いていきます。
まず契約とはどのようなものを言うのでしょうか。契約とは、一定の債権関係の発生を目的として、互いに対立する複数の意思表示が合致することによって成立する法律行為のことを言います。
Aさんがある物を"買いたい"という意思表示をし、Bさんがこれに対して"売ります"という意思表示をすれば、対立する意思表示が合致したことによって契約が成立することになります。先にしたAさんの意思表示を「申込」と言い、Bさんの意思表示を「承諾」と言います。仮に立場が逆で、Aさんが先に"売りたい"という意思表示をした場合でもこれは「申込」となり、Bさんがそれに応じて"買います"という意思表示をしたならば、これは「承諾」をしたことになり契約が成立します。
先にする意思表示を「申込」、「後」にする意思表示を「承諾」と言います。ここでいう「申込」とは、一定の契約を締結しようとする意思表示のことです。気をつけなければいけないのは、この申込は単に申込をした場合と、承諾期間を定めて申込をした場合では扱いが異なってくることです。
承諾期間を定めて(返答の期限を切って)申込をした場合には、その定めた期間中はその申込の撤回をすることはできません。一方、期間を定めないでした申込であっても、相手が即答できない離れた場所にいる場合(隔地者といいます)には、"承諾を受けるのに相当な期間"を経過するまでは撤回することができないと規定されています。
相当ってこれまた曖昧な表現ですが、"かなり長い"というような意味ではなく、それをするのに通常要する期間とでも言いましょうか。また「承諾」とは申込を受けて、これに同意することによって契約を成立させるという意思表示になります。ではもう少し「承諾」というものについて見ていきましょう。
「承諾」をすると契約が成立するといいましたが、相手が目の前にいる場合は返事をしたときが契約の効力が発生する時点ですが、先ほどの隔地者間の場合ですと事情が変わってきます。電話で話をしている最中ならば寸分置かずに返答が帰ってきますが、例えば連絡がつかなかった場合はいつ返事が来るかわかりません。承諾期間をまたいだ場合などはトラブルのもとになりますので、法律で明確に効力の発生する時点を決めてあります。
隔地者間の意思表示は、原則論から言えば、その通知が相手方に到達した時に契約が成立するはずです。これを「到達主義」と言います。しかし取引においては、通知が到達していなくても契約の成立を認めることが迅速な取引に通じ取引界の要望にも合致するということで、民法では例外的に、隔地者間の契約については承諾の通知を発した時に成立すると規定されています。これを「発信主義」と言います。
なんだか余計に面倒な話になってきました。メールなどで発信すればすぐに到達しますよね。この話は最後にまたします。
ここでひとつ問題になるのは、申込に変更を加えた承諾をした場合です。例えばAさんがリンゴを3つ200円で買ってくださいと申込をしたとします。それにBさんが、1つおまけしてもらって4つ200円で買いますという承諾をしたとします。この場合は最初の申込と承諾と内容が変わってしまっているので、先の申し込みをBさんが拒絶をし、それとともに新たな申込をしたとみなされることになります。
本来承諾をすべきBさんが今度は新たに申込者となり、Aさんが承諾者になるというように立場が入れ替わります。到達主義と発信主義の違いは以上です。
次に承諾期間を定めてした申込に対して、その期間内に申込者に承諾の通知が届かなかった場合についてです。この場合の申込は抗力を失うとされ、契約は成立しないこととなります。しかし契約の場合は先ほどの「発信主義」となりますので、たとえ到達していなくても、その期間中に承諾の通知を発信をしていれば契約は成立することとなります。クイズなどでよく使われる、当日消印有効と同じようなものです。
この期間後に到達した承諾について民法では、申込者が新たな申し込みをおこなったとみなされます。なお民法では、遅れて承諾が届いた場合には、申込者は遅滞なくその旨を承諾者に対して通知しなければならないとされています。もしその旨の通知をしなかった場合には、遅れて届かなかったものとみなされ、契約は通常に成立することになります。
承諾期間を定めないでした申込の場合は特に効力消滅の規定はないため、相当な期間内に承諾の通知を発信すれば契約は成立します。この場合も発信主義をとります。
とここまで書いてきましたが、どんでん返し。実はこの民法は約120年前に制定されていますが、通信の発達した現代においては発信主義を取る合理性が失われたとし、2020年4月1日施行の改正民法においては、発信主義の条項は削除され、契約の成立時期は「発信主義」から「到達主義」に変わることとなります。
併せて、発信主義の条文に付随していた、遅れて届いた通知の条文も削除されることとなりました。以前から発信主義については議論があったようですので、やっとスッキリと見直されたということになります。
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今日は民法の中の物権変動というものについて書いてみます。
物権とは先日の記事に書きましたが、民法では債権並ぶ財産権です。「物」を支配する排他的な権利であり、代表的なものには所有権があります。
物権は先に対抗要件を具備したものが優先となります。また物権は債権に優先しますが、例外として対抗要件を備えた不動産賃借権は物権と同様の扱いになります。
物権には占有権が発生しますので、占有を阻害された場合にはこれを取り除く権利が発生します。これを物権的請求権と言いますが、具体的には次の3つがあります。
①返還請求権であり、占有回収の訴えにより目的物の返還を請求するもの
②妨害排除請求権であり、占有保持の訴えにより妨害の除去や妨害行為の禁止等を求めるもの
③妨害予防請求権であり、占有保全の訴えにより将来の妨害の原因を除去して未然に防ぐもの
です。物権変動とは、物権の発生や変更、消滅のことを言います。変動の原因は当事者の意思表示のみによるものであり、 契約等は必要ありません。また時効や相続によっても変動します。
変動の時期は当事者双方の意思表示が合致した時点であり、その時点をもって権利が移転します。
物には特定物(NO999のこの車)と不特定物(お店にあるレクサス)がありますが、特定物の売買における変動の時期は、特約がなければ契約と同時に所有権が移転し、特約があれば特約で定めた時期に移転します。不特定物の売買における変動の時期は、目的物が特定したときになります。
では次に不動産物件の変動を見てみましょう。不動産は物権変動をしても、登記がなければ第三者には対抗できません。登記とは不動産における公示のことです。公示とはそれをすることによって、その事実を公衆一般に知らしめることです。ですので不動産登記制度は、その土地の所有者や債権者を公にする制度になります。
不動産の所有権を主張するものが複数いる場合では(二重譲渡の場合等)、その優劣は登記の先後によります。不動産は登記を行わないと、完全に排他性のある物件を取得できないことになります。ここでこの不動産の物権変動の条項に出てくる用語について触れておきます。
まず「第三者」とは、これは本試験においても重要な事項ですが、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(けんけつ)を主張するにつき正当な利益を有する者」のことです。この場合の第三者には単純悪意者は含みますが、背信的悪意者は除外されます。
「背信的悪意者」とは物権変動の事実を知っており、かつ登記を備えていない者に対してその不存在を主張することが信義に反する者のことです。具体的な例としては、AさんがB土地を最初に購入しかつ未登記であった場合に、それをネタにAさんに高値で売る目的でB土地を二重に購入したCさんがこれに当たります、この者に対しては登記なくして対抗できます。
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相続は突然にやってくる場合もあります。相続人の方にとっては亡くなられた方の財産を受けられるものですから、概ねメリットがあるものです。しかし一方では、ご家族や身内の方を失ったという、心身ともに非常に辛い時期になります。
そんな中にあって、相続は嫌でもやってきます。遺言書がなく、相続人が複数おられる場合には、決められた期限内に遺産分割協議というものを開き、相続人全員でそれぞれの相続分を決めなくてはなりません。
財産の多くを現金預金が占めれば良いのですが、不動産が多くを占める場合など、皆さんの不満なく分割するにはやっかいな問題が生じることも多いものです。また財産や相続人を調べ、いくつもの書類を作成する必要もあります。
普段は考えることもない遺言書ですが、そのような際は身にしみてその重要さがわかります。遺言書作成をお悩みの際は是非とも当事務所にご相談下さい。
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今日は婚姻の無効や解消について書いていきます。
まず婚姻の解消についてです。「婚姻の解消」理由には、
①離婚
②死亡・失踪宣告による解消
があります。
「離婚」については「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」がありますが、まず協議上の離婚について見てみましょう。
「協議上の離婚」とは、夫婦お互いの協議によって成立する離婚になります。この場合には夫婦ともに離婚する意思があること(離婚意思の合致)と、離婚の届出を行うことが必要とされています。なお判例ではこの離婚意思の合致について、離婚そのものをする意思は必要とせず、届出をする意思のみで足りるとしています。
また離婚の際に未成年の子がいる場合は、必ず一方を「親権者」にしなければなりません。
離婚そのものをする意思であれ、届出をする意思のみであれ、それらを含む離婚意思のない者の離婚は当然に無効となります。「意思のない離婚」とは、詐欺または強迫によって協議離婚がなされる場合であり、この場合は取り消しを請求することができます。この取消権は、詐欺を見つけた時または強迫から免れた時点から3ヶ月で消滅します。また追認によっても消滅することになります。
協議上の離婚が成立しなかった場合は「裁判上の離婚」になります。離婚の場合は原則、訴訟を起こす前に家庭裁判所に調停の申し立てを行い、調停離婚が成立しない場合に裁判上の離婚に向かいます。
離婚の訴えを提起する場合には、次の理由が必要になります。
①配偶者の不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復の見込みのない強度の精神病
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
です。
裁判所はそれらの事情を考慮して、離婚の訴えを認めるか棄却します。なお②の悪意の遺棄とは、理由もないのに同居を拒んだり家計費を差し入れないなど、積極的な意思で夫婦関係を行わないことを言います。
以上、協議上であれ裁判上であれ、離婚が成立した場合には次の効果がもたらされます。
①身分上の効果
②子の処遇
③財産上の効果
です。
「身分上の効果」により、婚姻関係とそれに伴う姻族関係が消滅します。また姓(氏)を改めた者については、「婚氏続称の届出」をしない場合は、結婚前の姓に戻ります。
「子の処遇」についてはまず、その子の嫡出子たる身分には影響は及ぼしません。また未成年の子の場合は親権者が決められます。
「財産上の効果」としては、一方が他方に財産分与を請求することができます。その額や方法は当事者の協議によりますが、協議が成立しない場合は離婚から2年以内であれば家庭裁判所にも処分を請求できます。
次は婚姻の無効と取り消しについて見てみましょう。無効と取り消しはその効果や影響が異なりますので、婚姻の瑕疵の程度に応じて規定がなされています。
まず、より影響の大きい無効について見てみましょう。
「無効」とされた場合は、婚姻が最初から無効であるとされ、夫婦としての効果は何ら生じません。婚姻の無効は、次の場合に限りなされます。
①婚姻意思を欠く場合
②届出を欠く場合
です。
無効は請求がなされて成立しますが、無効を請求することができる者は当事者だけでなく、利害関係者は誰でも主張することができます。これは当事者が死亡していても主張することができます。
次の「取り消し」ですが、これは無効よりも限定的な効果であり、取り消しの効果は婚姻成立時までは遡及しません。取り消しまでの期間は婚姻が有効とされ、その期間は財産分与などの財産関係も適用されます。
婚姻の取り消しを請求できる者は、当事者およびその親族、また検察官になります。
無効は当事者の死亡後も請求できますが、取り消しでは当事者の死亡後の請求は当事者や親族のみが行え、検察官は請求をすることはできません。また重婚違反の場合は当事者の配偶者および前配偶者も請求できます。これも失踪宣告の記事で確認ください。
再婚禁止期間の違反については親子関係の証明も関わりますので、前夫についても取り消しを請求することができます。詐欺・強迫の場合は当事者のみの請求となります。
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今日は民法家族法の、親権について書いていきます。
「親権」とは、父母である者の、「養育者としての地位」に由来する権利義務のことを言います。その親権に服する者は子供全般ではなく、「未成年の子」になります。子供が未成年であれば、親権が発生するということです。
親権を行うものは子の父母になります。原則父母が共同して親権を行いますが、一方が共同名義で代理行為をした場合は、仮に他方が反対していたとしても効力を生じます。しかしこの場合に相手方が悪意であった場合には効力は認められません。
次の場合は例外として父母の一方が単独で行うことができます。
①父母の一方が親権を行使できないとき
②父母が離婚したとき
③非嫡出子の親権を原則として母が行使するとき
です。
なお、子の利益のために必要と認められるときは、子の親族が家庭裁判所に請求することによって、親権者を他の一方に変更することができます。
では具体的に、「親権者」にはどのような権利義務があるのでしょうか。
「親権者」は子の利益のために、子の監護および教育をする権利を有し義務を負い、必要な範囲で居所指定権や懲戒権を有し、子が職業を営むことができるとされています。
身分上の行為においては、親権者はその子に代わって親権を行うことができます。これは民法上個別に規定されており、これは、
①嫡出否認の訴えの相手方
②認知の訴え
③子の氏の変更
④縁組の代諾
⑤未成年者の養子縁組取り消し請求
⑥相続の承認放棄
になります。
また財産上の行為の代理権もあり、親権者は法定代理人として、財産上の行為について一般的に代理権を有します。
この場合に親権者は、子の財産を管理しその財産に関する法律行為について代理することができますが、その子の何らかの行為を伴う時は、本人の同意が必要になります。
また民法の規定上、親権者に利益があって子に不利益が生じる場合や、子の一方に利益があって他方に不利益があるというような「利益相反行為」については、親権者は子に対する代理権も同意権も有しません。この場合は家庭裁判所に、「特別代理人」の選任を請求します。
これは相続の場合にもよくありますが、被相続人の子が未成年である場合には配偶者は法定代理人とはなれず、必ず特別代理人を請求することになります。
次に親権を喪失する場合について見てみましょう。
特別養子縁組(この場合は一定の年齢制限がありましたが)の記事にもありましたが、父母による虐待や悪意の遺棄があるとき、あるいは父母による親権の行使が著しく困難であったり不適当であることによって子の利益を著しく害する時は、2年以内にその原因が消滅する見込みがある時を除き、家庭裁判所は「親権喪失の審判」をすることができます。
この親権喪失の請求者は、子やその親族、未成年後見人、検察官等になります。また親権喪失には至りませんが、同様に2年以内の期間を定めて親権停止の審判を行う、「親権停止の審判」も創設されています。
親権とは別に、もう一つ相続にも関連する内容についても触れておきます。「扶養」についてです。「扶養」とはもちろん親権者が子に対する義務でもありますが、民法では「親族間の扶養」についても規定しています。
「扶養」とは自力で生活できない者に対して、一定の親族関係にある者が行う経済的給付とされています。扶養の内容については次のとおりになります。
①要扶養者(扶養される必要のある者)は、自分の財力等で生活できない者である必要があります。
②直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負担します。
③3親等以内の親族については、特別の事情があるときに家庭裁判所が扶養の義務を負わせることができます。
④扶養の内容等について当事者間で整わない場合は、家庭裁判所の判断に委ねることができます。
「扶養」については負担付き遺贈であったり、今回改正された相続における特別の貢献にも関係してくる事柄になります。
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遺産分割協議に請われて立ち会うことがあります。当然交渉に関与したり、協議自体に関わることはありませんが、相続人や財産関係等で差し支えない部分については、調査した内容などにお答えすることになります。公正証書遺言があればその内容にしたがって相続を行っていけばよいですし、遺留分が発生する場合は、問われれば遺留分減殺請求権(7月1日からは遺留分侵害額請求権)についてご説明することになります。
相続人が配偶者とその子たちであって、特段不仲でなければ代表相続人の方(通常は配偶者の方か高齢であれば長男等)がリードして、あうんでそれぞれの相続分を決めていかれることになると思います。通常は相続人がたとえ少人数であっても単独相続でない限りは、不動産登記や銀行の払い戻しに、「遺産分割協議書」「財産目録」「相続人関係説明図」を求められます。
まず相続財産をキチンと整理して財産目録を作成します。ここではプラスの資産だけでなく、負債などのマイナスの資産も明確に調査する必要があります。借金をしていた可能性があるのに単純に相続をしてしまいますと、負債の方が大きいマイナスの相続になってしまいます。
マイナスの相続の場合は、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをとれば、負債を含めた一切の遺産相続を放棄することができます。3ヶ月というのはここで重要な期間になってきます。もし安易に一部の財産を処分してしまったり、3ヶ月を過ぎてしまいますと、「単純承認」をしたことになり、もう相続放棄をすることができなくなり、負債の一切も相続人全員で返済する義務が生じてしまいます。遺産相続を受けるかどうかの判断材料とすることが、「財産目録」を作成することの目的のひとつになります。また相続人全員で合理的に遺産分割するための判断材料になる書類でもあります。
次の「相続関係説明図」とは、法定相続人全員の相続関係を証明した一覧になります。遺言書がなければこれを基に各自の相続分を調整していきますし、遺言書があれば遺留分算定の基礎となります。相続税には基礎控除というものがありますが、ここで法定相続人の人数を確定しませんと、控除額を確定することもできません。
また調べなくても明らかに法定相続人が確定できる場合は大きな問題はないですが、被相続人が離婚をしていた場合や人間関係が複雑な場合には、戸籍を厳格にたどって相続人を確定しておきませんと、後からあたふたする事態となります。
普段わかっている相続人以外に相続人がいる場合(離婚した妻との間にできた子や認知した子など)は、相続人の特定をしっかりしておかないとトラブルの原因になります。いいわいいわで現在生活している親子だけで相続をしてしまうと、後からそれらの相続人が現れた場合には相続のやり直しになってしまいますので注意が必要です。もっとも登記や払い戻しの際もすべての戸籍謄本も求められますので、相続人の確定は必須になります。「遺産分割協議書」と併せ、過去ブログやホームページで確認下さい。あとは後編に記載します。
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今日は相続にも大きく関係してくる、親族というものについて書いていきます。
相続を受けることのできる者(相続人)は「相続人」である「配偶者」「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」になりますので、親族の範囲を見た上で、これらの者がどの位置にいるのかを見てみます。
また今回成立した相続関係の民法改正において、「相続人以外の親族の貢献を考慮する方策」が加えられましたので、今まで以上に「親族」という言葉が使われる機会が多くなると思います。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html
「親族」とはどのようなものを言うのでしょうか。民法における「親族」とは、次の者を言います。
①6親等以内の血族
②配偶者
③3親等以内の姻族
です。
まず「血族」とは、血縁関係のある者相互間(誰から見てもお互いに)および、法的に血縁があると制度上みなされる(擬制)者相互間を言います。前者を「自然血族」、後者を「法定血族」と言います。
「自然血族関係」は出生によって生じ、死亡によって終了します。「法定血族関係」は養子縁組によって生じ、離縁や縁組みの取り消しによって終了します。
次の「配偶者」は、婚姻によって戸籍上の地位を得た者になりますが、配偶者は血族にも姻族にも属さず親等もありません。
「姻族」とは「配偶者側の血族あるいは血族の配偶者相互間」を言います。例えば配偶者の父や、本人の父の兄弟(叔父)の配偶者は姻族になります。「姻族関係」は配偶者を通じての関係になりますので、配偶者の一方の血族と他方の血族は姻族にはなりません。具体的に言うと、本人の父と配偶者の父は姻族関係には当たりません。
また姻族関係は婚姻によって生じ、離婚によって終了することになります。離婚した元配偶者の親とは知り合いではあっても、法的つながりはなくなるということです。これは離婚の場合であり、死別の場合は届出を行わない限りは姻族関係は当然には消滅しません。
では先に出てきた「親等」とはどのようなものでしょうか。
「親等」とは親族間の遠近度を比較する尺度であり、親族間の「世代」によって決まります。本人から見て「世代」がひとつ変われば1親等という数え方をします。
相続人に当てはめて見ますと、配偶者に親等はありません。子と直系尊属(父母)が1親等、孫や祖父母は2親等になります。兄弟姉妹は親を経由して下がりますので、これも2親等と数えます。本人の叔父や叔母は祖父母を経由しますので3親等、その子であるいとこは4親等になります。
親族については世代をまたがる垂直の広がりと、直系から枝分かれをした横への広がりがあります。
縦への広がりで見てみますと、本人から世代が上の者たちを「尊属」、世代が下の者たちを「卑属」と言います。ですので父は尊属、子は卑属になります。兄弟姉妹やいとこは世代が同じですので、尊属にも卑属にも当たりません。
横への広がりで見てみますと、本人から垂直に遡ることのできる父母や祖父母や曽祖父母、あるいは垂直に下がることのできる子や孫やひ孫などは「直系」になります。
縦横併せてマトリックスで見ますと、上の世代を「直系尊属」、下の世代を「直系卑属」と言います。垂直から枝分かれをした叔父叔母などは「傍系」と言います。これも上の世代を「傍系尊属」、下の世代を「傍系卑属」と言います。
整理してみますと、血族には直系血族と傍系血族があり、直系血族には直系尊属と直系卑属があります。また傍系血族にも傍系存続と傍系卑属があることになります。姻族にも同様の、直系傍系、尊属卑属の関係があります。
改正民法の特別寄与に関しては、具体的に権利の範囲にあるかは事案ごとに確認を要するとことになります。
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