民法改正後の遺言について

今日は遺言について書いていきます。遺言については以前にも書きましたが、相続遺言に関する民法がこの7月に約40年ぶりに大幅改正されましたので、それも含めて見てみましょう。

遺言を残そうとされる目的の多くは、ご自分の作られた財産をきちんとご自分の手で、ご自分の意思で配分したいというところにあると思います。考えられるきっかけはちょっとしたことからかもしれませんが、その動機の多くは遺されるご家族のことを考え円満でスムーズに相続を終えてもらいたいという気持ちから発せられるようです。

中には家族親族がいがみあっていたり、複雑な関係性であったり、また相続人がいないなどの理由からトラブル防止のための遺言を書かれる場合もあると思います。また事業承継にあっては、自ら思い描く将来のために、きちんと整理した形で財産を相続させる場合もあろうかと思います。

いずれにせよ遺言を残される以上、法的に効果のある遺言にしなければなりませんでは法的に効果のある遺言とはどのようなものでしょうか。

遺言自体はどのような形でも残すことができます。口頭で伝える場合もあれば、録音やビデオで伝える場合もあります。また通常は皆さん考えられるところの書面で残すことが多くなります。しかし法的に効果のある遺言は、きちんと法律に従った形式で、書面として残さなくてはいけないものになります。

きちんとビデオに撮っていても、それがそれぞれの相続人が納得するものであれば問題ありませんが、争いになった場合は法的に根拠がないものとして認められないものになります。

昨日たまたまビデオで「激動の1750日」という映画を見ていて、三代目姐が「先代が言い残した」という一言で後継が決まってしまいました。実際に言い残してはいないので争いになった場合は法的根拠のないものとなりますが、特殊な世界であれ、「故人が言っていた」の一言で相続が決まってしまってはたまりません。そこかしこでトラブルが頻発するでしょう。そんなトラブルを起こさないためにも、法律が遺言の形式を定めています

ここでの法律は「民法」になります。民法は、私人間の生活関係を規律する「私法」の一般法(国家等の公権力と私人の関係を規律する法である法律を「公法」といい、これには憲法・行政法・民事手続法・刑法・刑事手続法があります)であり、その内容は「財産法」(ここには物件法と債権法があります)と「家族法」に分かれます。

「家族法」には家族や親族の範囲や関係性について規定する「親族法」の部分と、相続や遺言について規定している「相続法」の部分があり、ここで遺言についても明確に規定してます。

では民法に規定する遺言について見ていきましょう。遺言の方式について、民法では「普通方式」「特別方式」を定めています。我々が一般的に理解している遺言とは普通方式のものになりますが、簡単に特別方式の遺言について見てみます。

「特別方式」の遺言については滅多にお目にはかかれませんし、またそういう立場になっては困るのですが、緊急時に発する遺言になります。ここでは詳細は省きますが、災難がまさに降りかかっている際に発する「危急時遺言」と、世間から隔絶された場所にあるときに発する「隔絶地遺言」があります。

「危急時遺言」には「死亡危急者遺言」と「船舶避難者遺言」がありますが、前者は病気やけが、あるいは災害が差し迫っている際に発っするものであり、後者は船舶が遭難にあっている際に発するものになります。

また「隔絶地遺言」には、「伝染病隔離者遺言」と「在船者遺言」があります。前者は伝染病隔離施設や刑務所服役中などの場合、後者は遭難していない船舶の中で作成されます。

いずれも危難は迫ってはいませんので、本人が書く事になります。以上4種類が特別方式になりますが、それぞれ証人であったり検認であったり、その手続きは詳細に決められています。民法は約120年前に制定されましたので、情報の発達していない時代を背景としています。 

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相続分野の民法一部改正 7月1日施行
相続分野の民法の一部改正が7月1日に施行されます。 それに先立ち、本年1月13日に自筆証書遺言書の方式緩和(自書以外の財産目録可)の改正民法が施行されました。これは、財産目録について、従来は手書きでないと認められていなかった要件を、銀行通帳等を添付すればパソコンや自分以外の他者の作成によるものでも認めるという内容になります。 ニュースでも流れたのでしょうか、当職のホームページの当該ページへのアクセスも、2-3ヶ月にわたって通常月の1.5倍ほどに上がっています。相続に比べると遺言ページへのアクセスは多くないのですが、普段意識していなくてもニュースになると興味がわくのでしょうか。そのままご依頼いただけると、なおありがたいのですが。。いつかご依頼いただけることをお待ちしております。 さて要件緩和によって自筆証書遺言の作成については多少ハードルは下がりましたが(財産の多い方はなおさら)、そのほかの自筆遺言の要件についての知識はまだまだ低いようです。もちろんご自身で時間をかけて勉強し、ご自分で書かれる方もいらっしゃると思いますが(最大のメリットは費用面ですが)、要件不備で遺言書としての法的効果がなかったり、相続人にかえって迷惑を掛ける自筆証書遺言の多いことも確かです。 もちろんご自身はよかれと思って書かれている訳ですが、中途半端な知識で書かれるため、法律要件を満たしている遺言書は必ずしも多くはないと思われます。日付間違いや誤記などのケアレスミスの場合、あるいは署名の不備等の場合は相続人の方々の合意があれば大きな問題はないと思いますが、これとて訴訟になった場合は認められない場合も多くなります。 一番困るのは、相続人や相続財産の特定が曖昧な場合です。例えば、「預貯金を子供3人に等分に」という記述であれば、単純に分割することは可能ですし、銀行もその記述をもって払い戻しに応じてくれると思います。しかし、「不動産を子供3人に平等に」という文言であれば、どの不動産をどのように分割するのか特定できませんので、不動産登記は難しくなります。この場合は遺産分割協議によって具体的に不動産を分割し(あるいは特定の相続人に単独に)、分割協議書に明記する必要が出てきます。 この遺言書の場合も相続人の皆さんが不仲でなく、遺言者に寛容であれば遺言書の文言に則した形で協議は行われるのでしょうが、えてしてその遺言によって利益を受ける者は拡大解釈でその文言を了とし、利益を害する者は断固反対する。そのような事態も決して少なくはないでしょう。 このような遺言書があった場合は意見が分かれる、あるいは協議の前段部分で時間を取られる弊害が大きくなります。また協議が成立しても後々までの遺恨の原因になります。 自筆証書遺言を書かれる場合でも必ず専門家に指導を仰ぐ、あるいは公正証書遺言にする。費用はかかりますが、本来の目的を達成するためには必要なことです。行政書士のような専門家は時間を掛けて勉強し、また数々の事例からベストのアドバイスを行っていきます。
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遺言書の後継ぎ遺贈について
大瀧詠一さんはご存知でしょうか。ええもちろんあの大瀧詠一さんです。ちょっと古い話になるので年齢が分かってしまいますが。 子供の頃三ツ矢サイダーのCMの歌が新鮮でしたが、手塚さとみさんの記憶が強かったんですね。でも調べたら大瀧さんの歌が使われていた年は、風吹ジュンさんと秋吉久美子さんのようですね。どちらもとても可愛くて記憶に残っています。 大瀧詠一さんを本格的に好きになったのはやはり1981年3月21日発売の「A LONG VACATION」からですが、今でもよく聞いています。その時々の思い出もよみがえり、今でも新鮮ですしとても甘酸っぱい(古いですが)アルバムです。 2年前に「DEBUT AGAIN」が発売されたときはアマゾンで予約して買いましたが、この中の「風立ちぬ」も想い出深く、今でもカラオケでは歌います。言うまでもなく松田聖子さんの歌ですが(一番好きな歌です)、「DEBUT AGAIN」の音源は、大瀧さんが一度だけコンサートで歌ったライブでのものですね。YouTubeでは聞いていた幻の音源ですが、1981年12月3日に渋谷公会堂で行われたあの伝説の「ヘッドフォン・コンサート」からのライブ音源です。 実はこのコンサートは見に行きましたので、今でも記憶に残っています。大学1年の暮れでしたか。全体の記憶はあいまいなんですが、この曲のファンだったこともありよく覚えています。かなり照れながらのMCでした。 席はステージをやや右手に見る2階席でした。と、このあといろいろ書こうと思って何気なしに検索したら、私の記憶より詳しく書いてあるブログがありましので、そちらを貼っておきます。 https://blogs.yahoo.co.jp/tsus_h/55958754.html?__ysp=5aSn54Cn6Kmg5LiAIOODmOODg%2BODieODleOCqeODsw%3D%3D 前振りが長くなりましたが、今日は遺言書の「後継ぎ遺贈」について書きます。 後継ぎ遺贈とは、「ある資産をAさんに遺贈するが、Aさんがもし亡くなった場合はAさんの相続人ではなく、第二次的に他のBさんに遺贈させる」というものです。 心情的にも実務的にもありがちだと思いますが、例えば、Aさんは普段からとても親しい間柄だし優秀なので資産を引き継がせたいが、もしもの場合にはその息子には引き継がせず、その資産を活かせる別のBさんに贈りたいという趣旨のものです。 この種の遺言の効力については諸説ありますが、結論からいうとその有効性をめぐって争いになる可能性が高く、できれば避けたほうが良いと思われます。理由として後継ぎ遺贈については、民法には法定相続のような規定がなく、是非の判断はその解釈に委ねられるからです。 どうしてもご自分で筋道を付けておきたい場合には、後継ぎ遺贈によって不確実なものやトラブルの種を残すより、信託等の別の方法を検討されることをアドバイスいたします。  
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相続の際の戸籍の追跡
遺言書がない相続が発生した場合、相続関係を確定させるために関係するすべての戸籍謄本を取得しなければなりません。 被相続人に存命の配偶者とお子さんがいらっしゃれば、1/2の遺産は配偶者の方に権利がありますが、残りの1/2はお子さんで等分します。お子さんといっても現在の配偶者の方のお子様だけではなく、離婚歴がある場合はその方との間にできたお子さん、また非嫡出子でも認知しているお子さんがあればその方、また離縁されていない養子の方も同権利になります。 相続が発生した時点ですでに亡くなられているお子さんがいらっしゃれば、そのまたお子さん(孫)が代襲相続しますので、その方々の戸籍や住民票が必要になります。戸籍を取得する際に併せて「戸籍の附票」というものも取得し、その方が引っ越された履歴を追い、現在ご存命で相続の権利があることを証明していきます。 さて、相続人が被相続人のご兄弟のみの場合は、難易度が一段上がっていきます。前述の場合同様、ご兄弟に知れていない兄弟が存命か確認していく作業が必要になります。これは被相続人のご両親の出生時に遡った(銀行等によっては出産一定年齢等の場合があります)戸籍謄本を取得し、知れていないご兄弟が存命か確認しなければなりません。 その方を含めたご兄弟が亡くなられていた場合は、同様に代襲相続が発生します。ただしお子さんの相続の場合は、代襲者の死亡による再代襲制度がありますが、兄弟姉妹の場合は再代襲は認められていませんので、それ以下の方は調べる必要はありません。 戸籍取得は場合によっては数10枚に及び、またご兄弟の場合は戸籍を取得し追跡していく権限はありませんので、行政書士にご依頼をいただければと存じます。
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今日は代理について書いてみます。 民法の規定における「代理」とは、代理人が本人(代理される者)のためにすることを示して(「顕名」といいます)、相手方に対して意思表示をし、その法律効果を本人に帰属させる制度を言います。代理には「任意代理」と「法定代理」があります。では代理について見ていきましょう。 まず代理の要件ですが、 ①代理人に有効な代理権があること ②本人のためにすることを示すこと(顕名) ③代理権の範囲内で意思表示をする ことです。顕名は口頭でも署名でも問題ありません。口頭というのは、「Aさんの代理のB」ですと相手に告げる場合などです。 顕名がない場合の代理行為は代理人自身のためのものだとみなされますが、顕名がなかった場合でも、相手方がその事情を知りまたは知ることができれば代理の効果は認められます。代理行為のすべてが代理される本人に帰属します。 代理の禁止事項が2つあります。一つは「自己契約」であり、代理人が本人の相手方になることをいいます。もうひとつは「双方代理」であり、当事者双方の代理人になることをいいます。これらは債務を履行する場合や本人があらかじめ了承した場合を除き原則無効となりますが、事後に本人が追認した場合は有効となります。 代理人の権限を代理権と言いますが、代理権があっても認められない行為に「代理人の権限乱用」があります。これは代理人が代理人自身や第三者の利益を図る意図を持って、代理の形式のまま本来の権限の範囲内の行為をすることをいいます。この場合の行為も本人に帰属する(この場合の本人は、その代償を代理人に求めることになります)ことになりますが、相手方が代理人の意図を知りまたは知ることができたときに限っては、本人の責めにはならないとされています。ここもポイントです。 代理人が代理人を設けることを「復代理」といいます。間違えやすいですが、複数の複ではありません。 復代理とは、代理人が自己の権限内の行為を行わせるために、代理人自身の名でさらに代理人を選任し、本人を代理させる行為をいいます。代理人の代理人ではなく、あくまでも本人直接の代理人となります。 これには法定代理と任意代理がありますが、法定代理の場合は常に復代理を選任できるのに対して、任意代理の場合は本人の許諾がある場合や、やむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任できません。 代理人は誰にでもすることができ、本人が承知の上であれば成年被後見人のような制限行為能力者であっても代理人となれます。 代理人に似た概念に「使者」というものがありますが、代理人が意思決定ができるのに対し、使者の場合は意思決定はあくまでも本人がします。使者は本人の意思を完成させるだけの者になります。 代理に関しては無権代理と表見代理というものがありますが、次回これについて書いていきます。
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遺言書 自筆証書遺言について
今日は遺言についてお話をしてみます。最近よく「終活」という言葉を耳にします。ある程度の年齢になられた方が、いざという時に周りの家族の方たちに迷惑をかけたくないとの思いから身の回りの品々を整理することのようですが、広辞苑にも記載されていないようですので、比較的新しい造語なのでしょうか。 ちなみにデジタル大辞泉によると終活とは"「《「就活」のもじり。「終末活動」の略か》人生の終末を迎えるにあたり、延命治療や介護、葬儀、相続などについての希望をまとめ、準備を整えること。"と書いてありました。そのような風潮のなかで、ご自分で実際に遺言書を書かれる方も増えてきたようです。 ただ遺言書は方式を整えないと逆にトラブルのもとにもなりかねません。ではどんな遺言書ならよくて、どんな遺言書はダメなのでしょうか。言い換えると、遺言書はどのように書けば良いのでしょうか。 こちらは広辞苑に記載がありました。広辞苑では「人が自分の死亡によって効力を発生させる目的で、一定の方式に従ってなす単独の意思表示」とあります。ここでは「効力を発生させる目的」で「一定の方式に従って」というところが重要となります。 遺言書は契約などと同じように、民法という「法律」によって規定されています。従って民法の規定とおりの遺言書でないと法的効果をもたないということです。ですので法的効果をもたない遺言書であった場合は、ご自身の意思も多少は考慮されるかもしれないけど、実現される可能性は非常に低いものになってしまいます。 遺言書を書くにはいくつか方式がありますが、今回はご自分で遺言書を書かれる場合の「自筆証書遺言」について書きます。「自筆証書遺言」とはその名のとおり、ご自分で書かれた遺言書のことです。 ルールはいたってシンプルです。 ①その遺言書の中身はすべてご自分で書かれること  ②その遺言書を書いた日の日付をご自分で書かれること ③その遺言所にご自分の氏名を書くこと  ④その遺言所に印鑑を押すこと。この4つです。 遺言所に自書する日付は吉日等の不特定な日ではなく、基本は何年何月何日と書きます。印鑑は拇印でも認印でもよいのですが、トラブルを避けるためにも、実印や銀行印等の確認が容易なものをおすすめします。あわせて印鑑証明も取得しておきましょう。 ただこの「自筆証書遺言」には長所短所があります。 長所は、 ①基本、作成費用がかからないこと。 ②手軽に書けること。 ③家族にも秘密にしておけることです。 また内容を変更したい場合には、前のものを破棄して新しい遺言書をも同様に書くことができます ひとつ注意しておくことは、遺言書の内容を一部変更したい場合などは必ず前の遺言書は破棄して、作成しなおした方が良いということです。ご自分で遺言書を書くとはいっても、法的に通用するためには誤字脱字や訂正等には厳しい要件が課せられます。その手間や方式間違いの可能性をなくすためにも、作成しなおすことをおすすめします。 では自筆証書遺言書の短所はどうでしょうか。手軽で費用がかからない反面、短所は多くあります。 短所は、 ①前述とおり要件が厳格ですので、方式不備でその遺言書が無効となるおそれがあります。 ②遺言者を自分ひとりで作成するため、本人の意思で作成したことを立証することが困難であり、信ぴょう性がかなり低くなります。 ③自筆であることを証明することも難しく、筆跡鑑定なども信ぴょう性が低いことです。事実裁判によって遺言書の筆跡が無効となった判例もあります。 ④相続開始後に家庭裁判所にその遺言書の「検認」の申し立てをしなければならず、かかる時間も含め家族に負担をかけることです。「検認」とは証拠保全の手続きですので、内容の信ぴょう性等には関与しません。ですので検認がなされたからといって、遺言の内容の有効性等が担保されるわけではありません。 ⑤遺言書の紛失や改ざんの恐れがあることです。保管場所を忘れてしまったり、ご自身の死後、その遺言書が発見されず終いだった場合です。逆に相続がつつがなく終わったあとに遺言書が発見された場合もトラブルの原因になります。 「自筆証書遺言」を検討されている方は以上のこともご注意ください。明日は行政書士に依頼される場合で一番多い「公正証書遺言」について書きます。 http://gyosei-suzuki-office.com/category2/entry19.html
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商法というもの
今日は商法のあれこれについて書いてみます。 商法は私法の一般法である、民法の特別法に位置づけられます。法律の場合は特別法が一般法に優先しますので、商法に記載のある項目は、基本的に民法に優先します。一方、商法に記載のない項目については、民法が準用されることになります。では商法で使われる用語を見ていきましょう。 まず「商人」とはどのようなものでしょうか。商法における商人とは、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」です。業(ぎょう)とするがポイントですが、これは営利目的で同種の業務を反復的・継続的に行うものになります。目的自体が実現されるかどうかは問われるものではなく、同種の業務を反復的・継続的に行っている事実があれば、業として行っているということになります。 商人は、自分自身が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体となりますが、必ずしも自身が現実に営業活動を行う必要はありません。他の者に命じて行わせても構いません。一方、営業主のために商行為を代理する者は、権利義務の帰属主体ではありませんので、商人には当たりません。 この商人という資格を得るための要件は、特定の営業を開始する「準備行為」をした者になります。営業自体を開始していなくても、準備行為をした時点で商人の資格は得られるものとなります。準備行為については相手方のみならず、それ以外の者にも客観的に開業準備と認められるものでなくてはなりません。 未成年者や成年後見人の代理の者が商人になる場合については、登記が必要になります。しかし未成年の場合でもその者が結婚をしている場合は、「成年擬制」といって成年と同等の立場とみなされ、登記は必要ありません。成年擬制については、婚姻が解消されても擬制が解かれることはありません。 個人の場合の商人の資格取得については以上の通りですが、会社の場合については、設立された時に商人資格を取得することとなります。商人資格を喪失する場合は、自然人は残務処理が終了した段階で商人資格を失い、会社は清算が終わった時に商人でなくなります。 次に「商行為」というものについて見てみましょう。商行為には、 ①絶対的商行為 ②営業的商行為 ③付属的商行為 があります。絶対的商行為とは営利性が強く、1回限りでも商行為として商法の適用を受けるものを言います。内容としては投機購買(1号)、投機売却(2号)、取引所においてする取引(3号)、手形その他商業証券に関する行為(4号)があります。 営業的商行為とはいわゆる一般的な商売や取引であり、営利目的で反復継続して行うものを言います。 付属的商行為とは営業のための補助的行為を言います。営業用の機器設備を購入するといった、開業のための準備行為などがこれに当たります。 では、「商業登記」について見てみましょう。 商業登記には次の9種類があります。 ①商号登記             ②未成年者登記 ③後見人登記 ④支配人登記 ⑤株式会社登記 ⑥合名会社登記 ⑦合資会社登記 ⑧合同会社登記 ⑨外国会社登記 商業登記の効力として、登記された後でなければ善意の第三者には対抗することができません。また登記の後でも第三者に正当な理由がある場合は対抗できません。なお故意または過失によるものについては不実登記といい、第三者に対抗することはできません。 次は「商号」というものについて見てみましょう。 商号とは商人が営業をするに際し、自己を表示するために用いる名称を言います。商号は商標やマークとは異なるものです。 商号には原則や制約がありますが、まず「商号選定自由の原則」というものがあります。商号は自由に決めてもいいですよという原則になりますが、会社法(もとは商法の一部でした)からは、会社の種類によって株式会社等の文字を用いなければならないとか、会社でないものは商号中に会社と誤認させる文字を使用してはならない、ということも規定されています。 また「商号単一の原則」というものもあり、ひとつの会社にはひとつの商号しか使用することはできません。個人商人の場合については「一営業一商号の原則」とされ、営業種ごとにひとつの商号が許されます。営業種を変えれば、別の商号をつけても良いよということになります。 商号の効力として、登記の有無にかかわらず、商号を選定した者に商号使用権と商号専用権を与えます。これらの効力によって、他の者が同一または類似した商号を不正に使用することは禁止され、この権利を侵害したり侵害するおそれのある者に対しては、侵害の停止または予防を請求することができます。この禁止に違反した者は100万円以下の過料に処されることとなります。 なお商号は商法だけでなく、不正競争防止法によっても守られています。 商号は譲渡することもできます。これは営業とともに譲渡するとき、または営業を廃止するときに限りすることができるものです。この譲渡については、当事者間では意思表示のみで効力が生じますが、登記をしなければ善意悪意を問わず、第三者には対抗できません。
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