相続に関する改正民法成立

本年平成30年7月6日の参院本会議で、相続分野に関する改正民法が可決成立しました。約40年ぶりの大幅見直しとなりますが、一部の条項を除き、1年を経過しない来年の7月までに施行される予定です。

今回の見直しについてはかねてより問題化されていた、超高齢社会における配偶者への居住権の確保等が主軸になっています。主な改正点は次のとおりです。

①配偶者の居住権を保護するための方策

②遺産分割等に関する見直し

③遺言制度に関する見直し

④遺留分制度に関する見直し

⑤相続の効力に関する見直し

⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

になります。

では具体的に各内容について見ていきましょう。

第1の配偶者の居住権保護については、短期的な保護と長期的な保護の両面から確保されることとなりました。

まず短期的な方策について見てみましょう。現行法における配偶者の居住権については判例から、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していれば、原則被相続人と相続人の間で使用貸借契約が成立していたと推認され、そのまま居住することができます。しかし第三者にその建物が遺贈されてしまったり、配偶者が居住することに被相続人が反対の意思表示をしていた場合には、使用貸借が推認されずに居住が保護されないことになってしまいます。

その事態を回避すべく、「配偶者短期居住権」というものが設けられました。これは配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合について、

①配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合は、居住建物の帰属が確定するまでの間の期間。ただし帰属が6ヶ月以内に確定した場合でも、最低6ヶ月は保障される

②居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄をした場合には、居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6ヶ月間、配偶者は居住建物を無償で使用する「配偶者短期居住権」を取得する

というものです。

被相続人の建物に無償で住んでいなかった場合にはこの権利は取得できないことになりますが、権利を取得すれば必ず最低6ヶ月間は居住が保護されることになります。

長期的な方策では、「配偶者居住権」というものが新設されました。これは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間の配偶者の建物使用権を認める内容となります。配偶者居住権は「物権」であり、「登記」することもできます。しかし売買することや譲渡をすることはできません。

現行制度では遺言書がない相続でその相続財産の多くが土地建物等の不動産だった場合など、法定相続分の規定によって、配偶者が建物以外の預貯金等を取得できなかったり、あるいは建物を売って共同相続人に金銭を渡さなければならないケースも出てきます。

配偶者とその子供が1人いた場合を例に挙げますと、法定相続分は配偶者1/2、子1/2(複数いる場合はその子らで等分します)になりますので、相続財産が自宅(土地建物)2000万円、預貯金が2000万円の場合では総額4000万円となり、配偶者が自宅を相続すると預貯金の2000万円はすべて子の相続分となります。

預貯金が1000万円だったとしますと相続合計は3,000万円になりますので、1/2ですと1500万円になり、配偶者が自宅を相続した場合で子から請求があった場合は、子に500万円を支払わなくてはなりません。これでは相続によって配偶者が住む自宅を失いかねません。

それを解決するために設けられた制度が「配偶者居住権」になります。これは相続された自宅を、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分け、配偶者の自宅の相続額を低く設定する効果が生じます。

先の相続総額4000万円の例で言いますと、配偶者居住権が1000万円とされればその居住権をもって住み続けることが可能となり、残りの負担付き所有権を子が相続した場合には、配偶者の相続額は2000万円ですので、1000万円分の預貯金を相続できるという仕組みになります。子には負担付き所有権1000万円と預貯金1000万円が相続されることとなります。

どういうことかと言いますと、相続が開始した年齢にもよりますが、配偶者はその先何十年も生きることはないと仮定し、平均余命から割り出した住み続けられる間の価値が配偶者居住権になります。あるいは何年か後には老人ホームに移るので、自宅にはそれまでしか住まない、という選択肢もあるかもしれません。配偶者が亡くなった場合は自宅は子のものとなりますので、それが負担付き所有権となります。

この規定によって、現在の自宅の価値がまるまる配偶者の相続分になってしまい、その他の財産を相続する権利を失ってしまうことから回避されることになります。

とはいえこの改正内容については、負担付き所有権が付いている建物の資産価値の低下や売買する際の市場性の問題(買い手がいない)、配偶者居住権と抵当権の問題など権利関係が複雑になっており、実際の運用面では非常にやっかいな問題をはらんでいるようです。

相続人間でこのような制度を用いざるを得ない関係性があるようでしたら、遺言を残しておくことが最善策だと思われます。

これらの算出は個別具体的になされるものですが、単純に式で表すと、建物敷地の現在価値-負担付き所有権=配偶者居住権の価値ということになります。よろしいでしょうか。

では第2の遺産分割に関する見直しについて見てみます。これについては次の3つの内容が含まれています。

①配偶者保護のための持戻し免除の意思表示推定規定の新設

②仮払い制度等の創設・要件明確化

③遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲

です。

①については、婚姻期間が20年以上であれば、配偶者に居住用の不動産を生前贈与または遺贈した場合でも、原則として計算上「特別受益」(遺産の先渡し)を受けたものとして取り扱わなくてよいという内容になります。

現行制度では、被相続人が配偶者のためを思って自宅を生前贈与していた場合でも、「持戻し制度」というものによってその自宅は「特別受益」とされ、遺言による「持戻し免除」の表示がない限り、相続財産に合算されてしまいます。

どういうことかと言うと、先ほどの総額4000万円の例で見ますと、現行法では生前贈与された2000万円の自宅も相続総額に含まれることとなります。配偶者の相続分はこの自宅のみとなってしまい、残りの預貯金2000万円はすべて子に相続されることになります。

これでは生前贈与した意図が相続に反映されないこととなってしまいます。今回の見直しでは、20年以上法律上の婚姻期間がある者については、その貢献に報い、老後の生活を保障すべきものとして、「持戻し免除」の表示がなくても表示があったと推定して(被相続人の意思の推定規定)、遺産の先渡しとして扱わずに相続財産総額に含めないことになります。

先の例で言いますと、遺産総額は自宅を含まない預貯金2000万円となり、配偶者と子がそれぞれ1000万円ずつ相続することになります。

次に②の仮払い制度について、現行法では判例から、遺産分割が終了するまでの間は、相続人単独では預貯金の払い戻しをすることができません。相続される預貯金債権は相続人全員の共有債権になりますので、それぞれの相続分が確定するまでは生活費や葬儀費用、相続債務の弁済などの必要性があっても払い戻しができず、相続人が立替える必要がありました。

今回の見直しにおいてはこれが緩和され、2つの仮払い制度が設けられることとなりました。

ひとつは預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮処分の要件が緩和されます。従来も訴えにより認められることはありましたが、見直しによって、仮払いの必要性があると認められる場合は他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断(手続き)で仮払いが認められるようになりました。

もうひとつは、家庭裁判所の判断を経なくても払い戻しが受けられる制度が新たに設けられました。これは相続人としての相続分であれば、そのうちの一定額について単独で払い戻しが認められるという制度です。具体的には、(相続開始時の預貯金総額×1/3×払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分)まで、払い戻しが認められることとなります。

③の相続開始後の共同相続人による財産処分についてですが、現行法では特別受益のある相続人が遺産分割前に遺産を処分してしまった場合には、他の共同相続人に不公平な結果が生じてしまいます。

例を挙げますと、配偶者がなく子が兄弟2人あったとします。相続される預貯金が2000万円で、長男に2000万円が生前贈与されていた場合には、この贈与分は持戻しとなり、相続総額は4000万円になります。長男にはすでに2000万円が渡されていますので、今回の預貯金2000万円はすべて次男に相続されることとなります。

しかしこの2000万円のうち1000万円分を長男がだまって引き出していた場合には、残りの預貯金が1000万円となってしまいます。すると相続預貯金総額はもち戻しを含めて3000万円となり、法定相続分にしたがって兄弟それぞれが1500万円ずつ相続します。ここでは長男はすでに2000万円を贈与されていますので相続分は0円となり、次男が預貯金総額の1000万円を相続することになります。

これでは長男が贈与分の2000万円と引き出し分の1000万円の合わせて3000万円を受け取ることになり、次男は1000万円しか受け取れず不公平な結果となってしまいます。この場合は裁判に訴えても、結論から言うと次男の受け取り分は本来の2000万円に届くことはありません。

その不公平を是正するために、遺産を処分した者以外の同意(この例では次男)があれば、処分したもの(長男)の同意を得なくても処分した預貯金(1000万円)を遺産分割の対象とすることができる、という法律上の規定が加えられることとなりました。

これによって、たとえ共同相続人の一人がこっそり分割前の預貯金を引き出してしまった場合でも不公平が起こらない制度となりました。今の例で言うと、相続財産の総額は4000万円とされ、次男は1/2の2000万円を相続することができます。

https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/

 

次に第3の遺言制度の見直しについて見てみましょう。これには次の3つの内容があります。

①自筆証書遺言の方式緩和

②遺言執行者の権限の明確化

③法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(民法ではなく遺言書保管法によります)

です。

①について、現行法で自筆遺言に法的効果を生じさせるには遺言書の全文を自書する必要があり、財産が多数ある場合には相当な負担が伴いました。

今回の見直しでは、自書によらないパソコンなどで作成した財産目録を添付することができ、合わせて銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を添付することでも法的効果が生じることとなります。

②の遺言執行者の権限の明確化については、遺言執行者の一般的な権限として、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずる、ということが明文化され、また特定遺贈又は特定財産承継遺言(遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における、遺言執行者の権限等が明確化されました。

③について、現行法では自筆証書遺言の管理は遺言者に任されていましたが、見直しによって法務局という公的機関に保管できる制度が創設されました。

この制度では相続開始後に相続人が遺言書の写しの請求や閲覧をすることが可能となり(その場合は他の相続人にも遺言書の保管の事実が通知されます)、紛失や改ざんの恐れがなくなることになります。

保管については申請者が撤回することもできます。なおこの制度では現行自筆証書遺言で負担になっている、「検認」の規定は適用されません。

第4の遺留分制度に関する見直しについて見てみましょう。これも2つの内容からなります。

①遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化する

②減殺請求がなされた場合に、請求された側が金銭を直ちに用意できないときは、請求された側である受遺者などが裁判所に請求することによって、金銭債務の全部または一部の支払いについて、相当の期限を与えられる

というものになります。

①の遺留分減殺請求の金銭債権化とは、現行法では請求がなされた際にその財産が金銭でなかった場合には、共有状態が生じてしまい事業承継などの支障になってしまいます。その状況を回避するために、減殺請求された債権は金銭で支払われることを明文化したものです。

②については遺贈などされた財産の額が大きい場合であっても、実際に別途金銭を用意できるとは限りませんので、この内容も加えられています。

第5の相続の効力等に関する見直しですが、これは”相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができる”、ことについての見直しとなります。

どういうことかと言いますと、登記なくして第三者に対抗できるという内容自体は問題ないのですが、相続人の債権者において債務回収の差し押さえなどが発生する場合は、通常法定相続分を想定して計算することになります。ここで遺言によって法定相続分を下回る内容でしか相続されなかった場合は、債権者等の第三者の取引の安全が確保されないことになります。

この観点から今回の見直しにおいては、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないと改正されました。登記されれば債権者もその内容について知ることができますので、取引の安全性が確保されることになります。

法定相続分までは現行法とおり、登記なくして第三者に対抗することができます。

第6の相続人以外の者の貢献を考慮する方策ですが、相続は相続人にしかすることができません。相続人以外の者には、例えば親身になって世話をしてくれた長男の妻にも相続はなされません。これらの者に財産を贈りたい場合には贈与によるか、遺言書による遺贈や死因贈与の方法をとります。

しかしこの遺言書がなかった場合には、どんなに被相続人に尽くした者であっても、遺産分割協議に加わることはできません。この不公平を見直すべく、特別の寄与の規定が設けられました。

これは相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合に、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払いを請求することができるという制度になります。請求できる親族とは6親等以内の血族および配偶者、3親等以内の姻族を言います。

遺産分割は現行とおり相続人だけで行われ、それとは別に特別の寄与があった者が相続人に請求を行ないます。これには算出式などありませんので、当事者同士の話し合いになります。

以上が改正の内容となりますが、現時点では改正法全体の具体的な施行日は決まっていませんが(公布の日から1年以内)、自筆証書遺言の方式緩和(自書以外の目録可)は平成31年1月13日に施行されます。また自筆証書遺言の保管制度は、公布の日から2年を超えない範囲内での施行とされました。

https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/ 

Related Posts
民法 物権変動について
今日は民法の中の物権変動というものについて書いてみます。 物権とは先日の記事に書きましたが、民法では債権並ぶ財産権です。「物」を支配する排他的な権利であり、代表的なものには所有権があります。 物権は先に対抗要件を具備したものが優先となります。また物権は債権に優先しますが、例外として対抗要件を備えた不動産賃借権は物権と同様の扱いになります。 物権には占有権が発生しますので、占有を阻害された場合にはこれを取り除く権利が発生します。これを物権的請求権と言いますが、具体的には次の3つがあります。 ①返還請求権であり、占有回収の訴えにより目的物の返還を請求するもの ②妨害排除請求権であり、占有保持の訴えにより妨害の除去や妨害行為の禁止等を求めるもの ③妨害予防請求権であり、占有保全の訴えにより将来の妨害の原因を除去して未然に防ぐもの です。物権変動とは、物権の発生や変更、消滅のことを言います。変動の原因は当事者の意思表示のみによるものであり、 契約等は必要ありません。また時効や相続によっても変動します。 変動の時期は当事者双方の意思表示が合致した時点であり、その時点をもって権利が移転します。 物には特定物(NO999のこの車)と不特定物(お店にあるレクサス)がありますが、特定物の売買における変動の時期は、特約がなければ契約と同時に所有権が移転し、特約があれば特約で定めた時期に移転します。不特定物の売買における変動の時期は、目的物が特定したときになります。 では次に不動産物件の変動を見てみましょう。不動産は物権変動をしても、登記がなければ第三者には対抗できません。登記とは不動産における公示のことです。公示とはそれをすることによって、その事実を公衆一般に知らしめることです。ですので不動産登記制度は、その土地の所有者や債権者を公にする制度になります。 不動産の所有権を主張するものが複数いる場合では(二重譲渡の場合等)、その優劣は登記の先後によります。不動産は登記を行わないと、完全に排他性のある物件を取得できないことになります。ここでこの不動産の物権変動の条項に出てくる用語について触れておきます。 まず「第三者」とは、これは本試験においても重要な事項ですが、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(けんけつ)を主張するにつき正当な利益を有する者」のことです。この場合の第三者には単純悪意者は含みますが、背信的悪意者は除外されます。 「背信的悪意者」とは物権変動の事実を知っており、かつ登記を備えていない者に対してその不存在を主張することが信義に反する者のことです。具体的な例としては、AさんがB土地を最初に購入しかつ未登記であった場合に、それをネタにAさんに高値で売る目的でB土地を二重に購入したCさんがこれに当たります、この者に対しては登記なくして対抗できます。
READ MORE
民法 債権譲渡について
今日は債権譲渡について書いていきます。 「債権」とは、特定の者が別の特定の者に、一定の給付を請求できる権利を言います。先に説明した物権と併せてこの2つを「財産権」と言います。 請求できる権利を持つ者を債権者といい、請求される側を債務者と言います。今回は債権の性質のうちのひとつ、譲渡について見ていきましょう。 債権というものは原則として、自由に譲り渡すことができる性質があります。これを債権の自由譲渡性と言いますが、目的としては次のことが挙げられます。 ①履行期日の来る前の債権を換金するため ②融資などを受けるときの担保とするため ③債務の弁済の手段とするため です。 また譲渡する際は、元の債権と同じ内容のまま移転されていきます。現行法では条文化はされていませんが、債権は過去に発生した権利に基づくものだけではなく、将来発生するであろう債権の譲渡もすることができます。例えば債務者に定期的に発生する、半年分の家賃収入債権を譲渡するなどということも可能になります。 このように譲渡可能な債権ですが、例外的に譲渡が制限される場合があります。それは次のような債権についてです。 ①債権の性質上譲渡を許さない債権 ②当事者同士が譲渡禁止の特約をした債権 ③法律上譲渡が禁止された債権 です。 ①の譲渡を許さない性質とは、例えば特定の人の肖像画を描いたり写真を撮ったりする権利です。これはその特定の人が、その債務者本人のみに許した権利の性質を持ちますので、債権者は他の者への譲渡はすることができません。 ②の禁止の特約についてですが、この特約に違反して第三者に譲渡した場合は、制限とおりにその債権譲渡は無効になります。しかし第三者が「善意無"重"過失」だった場合には、債務者はその第三者には対抗することはできません。 なお債務者が債権者に、あらかじめ"特定の者"に譲渡することを同意していた場合には、譲渡後に債務者の承諾を得なくても、債権者は債務者に債権譲渡を対抗することができます。 ところで、今書いてきた債権譲渡の内容は、現行の民法に基づくものです。しかし民法は2020年4月1日より改正法が施行され、この債権譲渡の部分も見直されることとなりました。以下改正部分について触れておきます。債権譲渡の主な改正点は次のとおりです。 ①譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられません(預貯金債権以外) ②債務者は譲渡人(元の債権者)への弁済をもって譲受人に対抗できます ③債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は譲受人に対して履行をしなければなりません ④将来債権の譲渡について明文化されました ⑤債務者があらかじめ譲渡に同意していた債権への抗弁権の条項は廃止されました ということです。 ①の譲渡制限特約債権の譲渡についてですが、現行法では善意の第三者に対しては有効ではありましたが、改正法では譲渡制限特約が付されていても、預貯金債権以外の債権譲渡についてはその効力は妨げられないこととなりました。つまり特約があっても、悪意・重過失の者に対する譲渡も有効であるということです。 これでは、弁済の相手方を固定化し無用なトラブルから債務者を守る、という現行法の意義を失ってしまいますが、それを②で補っています。どういうことかと言うと、譲渡制限付きの債権が他の第三者に譲渡されてしまっても、債務者はその第三者への弁済を拒絶し、元の債権者への弁済をすれば足りるということになるからです。
READ MORE
自筆証書遺言について追記
今日は本題の普通方式の遺言について書いていきます。通常作成される遺言のほとんどはこの普通方式になります。 普通方式には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、公正証書遺言は平成29年には110,191件作成されており、年々増加しています。それに対し秘密証書遺言の作成は、わずか130件にとどまります。 一方、自筆証書遺言については裁判所が受理した「検認」数でしか確認することはできませんが(2年以内に法務局による保管制度が開始されます)、その数は16,708件にとどまります。 新規作成された件数と相続が開始した件数とで比較対象が異なりますが、昨今は遺言の役割が理解され始め、手近な自筆証書遺言が作成される機会が相当増加していると思われます。すでに公正証書遺言の作成数を上回っているとさえ言われている中で、自筆証書遺言による方式の不備や内容の偏りや不明確さによるトラブルも危惧されています。 先に触れてしまいましたが、それではそれぞれの種類について、作成方法やメリット・デメリットについて見ていきましょう。 先に書きました、民法に規定される「普通方式」の遺言については、3種類の方式が定められています。各方式、厳密な作成ルールが規定されており、内容に不備があると法的効果が得られないことになります。3種類の方式は、①自筆証書遺言(民法968条)②公正証書遺言(同969条)③秘密証書遺言(同970条)になります。 まず①の自筆証書遺言について見ていきましょう。 「自筆証書遺言」の作成方法は、いたってシンプルです。遺言者本人が、遺言書の全文、日付および氏名を自書し、捺印して作成します。 全文には財産目録などすべてを含みますが、今回の民法改正によって、平成31年1月13日から目録については自書でなくても良いことになりました。財産が多い場合などは書く事が負担であった財産目録は、パソコンなどで作成しても良いことになります。時流に合わせた改正になりました。 ここで言う自書とは文字通り遺言者みずからが自分の手で記述することをいい、口述であったり他人が手を添えることも原則認められていません。 日付については、明確に作成した当日の日付を自書します。西暦であっても元号であっても構いませんが、日付印であったり特定されない日付、例えば9月吉日等の場合は無効となります。判例からは、遺言者自身の70歳の誕生日に書いたとか、11月末日に書いたという記載があれば、それは自書した日を特定できるということになります。 遺言は撤回することも書き直しすることも自由にできます。しかし法的効果を有する遺言が複数見つかった場合は、内容が矛盾する部分については必ず後の遺言が有効になります。ですので、遺言が書かれた日付というものが極めて重要になるのです。 次の氏名については、これも当然自書しなければなりません。しかし氏名は戸籍上の氏名である必要はなく、遺言者が誰であるか疑いのない程度の表示がなされていれば良いこととされ、ペンネーム等の通称でも問題ありません。また氏や名のどちらか一方のみであっても、他人との混同が生じない場合には有効とされます。これらは民法に直接の記載はありませんが、判例から確認されます。厳密な規定と言いながら腑に落ちない部分ではありますが、余計な問題を起こさないように、必ず自分の本名を自書するようにしましょう。 次は押印についてです。印を押す場合には捺印という言葉も使われますが、雑学として、一般的には自分で書いた名前(自書)に印を押す場合は「捺印」、自書以外に印を押す場合は「押印」と言うようです。「押捺」という場合には拇印も含むようです。ここでは名前に印を押す場合ばかりではないので、「押印」という言葉を使います。 押印する印については実印を押すという規定はないため、いわゆる認印や拇印でも良いとされています。しかしトラブルを防ぐ意味からも、実印や銀行印で押印することをお勧めします。 押印する場所も特に決まっていないので、どこに押しても構いませんが、やはり自書した上か横に押すのがセオリーでしょう。どちらにしても遺書本紙に押印することが必要で、封印した封筒のみへの押印は無効になります。 ここでもう一つ問題になることは、遺言が複数に渡った場合の押印は、各紙面に必要かどうかということです。通常契約書などの場合は、例えば1枚目と2枚目のあいだに後から作成された用紙が差し込まれないように、1枚目と2枚目のつなぎ目に「契印」というものを押します。「契印」は1枚目と同じ印を使用します。ここもトラブルがないように、契印を押しておきましょう。 次に訂正があった場合の方法について説明します。「加除訂正」と言いますが、遺言書の加除訂正の要件は、 ①遺言者自身によりなされること ②変更の場所を指示して訂正した旨を付記すること ③付記部分に署名すること ④変更箇所に押印すること です。 余白に文言を後から付け加えた場合もこの方法に則ります。この加除訂正の方式に間違いがあった場合は、その加除訂正自体が無効となりますが、遺言書全体は当然無効にはなりません。加除訂正される前の元の内容が判別できれば元の内容が生きることとなり、判別不能な場合はその部分が一切記載されていないものとして扱われます。 加除訂正は非常に面倒な手続きですし、誤りも発生しやすいものですので、変更等がある場合は新たに書き直された方が良いと考えます。またその際はトラブル防止のために、必ず前の遺言書は破棄しましょう。なお自筆証書遺言は日本語に限られず、外国語で作成することもできます。
READ MORE
相続における民法について
しばらく民法について書いていきたいと思います。相続や遺言については民法に規定されています。また私人間の契約関係や家族関係についても民法に規定されていますので、民法を学んでおくことは、相続の際にも役に立ちます。 民法は、私人間の生活関係を規律する私法の一般法であり、財産法と家族法からなります。全体は①総則②物権法③債権法④親族法⑤相続法の5つに分けて整理されています。 財産法である物権については、所有権絶対の原則が支配しています。私人は自己の所有物を自由に支配できるというものです。しかしこれにも唯一、公共の福祉の制約があります。 公共の福祉の制約は民法のみならず、憲法をはじめとしたあらゆる法律のベースにあるものです。その解釈についてはむつかしい争いがあるようですが、要はいくら自分が自由にできるといっても、公共(周りの人々)の権利や迷惑を冒してまでは認められませんよということですね。 自分の家の裏手の道路に障害物を置いて、住民の通行を妨害していたおじさんが捕まりましたが、公共の福祉の制約は知らなかったようですね。また自分の家の木の枝が境界線を道路に思い切りはみ出して、いくら危険であっても、頑として枝を切らないじいさんがいましたね。民法の規定では、近所の人がこの空中に突き出た枝を自ら切ることはできなくて、切ってくれと要請するしかありません。境界線をはみ出した根っこの場合は、住民自ら切ることができますが。行政の怠慢ではありますが、この場合は道路法で対処するか、万が一この枝によって負傷した場合に管理責任を問うて損害賠償を請求するかですかね。 話が脱線しましたが、もうひとつ財産法には債権があります。債権関係は私的自治の原則というものが支配しています。 私人間の私的法律関係は個人の自由意思で形成されるものであり、国家は介入できないとされています。しかしこれには様々な制約があります。 今回の民法改正にもありましたが、債権は特に法律が強く関与しているため、時代や経済の要請によって変化して然るべきものでもあります。現代では経済的弱者(賃借人等)救済のための制約が種々設けられています。 一方の家族法について現在の民法では、戦前までの旧民法とは考え方において根本から変更されたものとなっています。 家族法の基本原理は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基礎として、家族は夫婦を中心としたもの規律されています。戦前までの民法における家族の考え方は、夫婦ではなく親子を中心とした考え方でした。これが家長制度の裏付けともなっています。 家族法はあくまで夫婦二人を主な対象としていますので、前述の財産法における自由な個人の権利義務とは相容れない部分もあります。ですので一般的に財産法の基本原理は家族法には適合しないものとなっています。 さて、民法のような「私法」とはどのようなものでしょうか。 私法とは、国家と国民の基本的な関係について定めた憲法のような「公法」に対し、「私人と私人との法律関係」を規律する法をいいます。言い換えると、社会生活上当然に生ずる私人間相互の関係を規律する法ということです。 私法によって保護される権利を「私権」といいます。私法は、法律関係を充足すると法律効果が発生するというスタイルをとりますが、私権の行使に関しては「制約原理」というものがあります。私権は法律で認められはしても、そこには一定のルールがありますということです。 1つめは先ほどの公共の福祉の原則です。2つめは「信義誠実の原則」といって、よく「信義則」という言葉で使われます。今の国会では特によく出てきますが、相手の信頼を裏切らないように行動しましょうということです。 これに関連しては、「禁反言の法理」や「クリーンハンズの原則」といった言葉も使われます。前者は自らの行為と矛盾した態度は許されないということ、後者は法を尊重する者のみが法の尊重を要求できるというものです。 3つめは「権利濫用の禁止」です。たとえ認められた権利であっても、社会性に反しての濫用は認められないというものです。濫用の基準は、得る権利と失う利益を比較検討して判断するとされています。 これら信義則や権利濫用については、表立って出されるものではなく、他の条文で決着しない場合に適用されるものとなります。
READ MORE
民法における不法行為について
今日は不法行為について書いていきます。 「不法行為」とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害すること言い、これを侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責任を負います。交通事故も不法行為に当たります。 法学的には「不法行為」は、 ①被害者の救済を図る損害補填的機能 ②将来の不法行為を抑止する予防的機能 ③加害者に制裁を加える制裁的機能 を有するとされています。 不法行為の成立要件は次のとおりです。 ①加害者に故意または過失があること ②権利または法律上保護される利益の侵害があること ③損害が実際に発生していること ④権利や利益の侵害と損害との間に因果関係が存在すること ⑤加害者に責任能力があること です。 ①の「故意」とは、自分の行為によって権利や利益の侵害が発生することをわかっていながらすることであり、「過失」とは損害の発生を予測して、あらかじめ防止すべき義務を怠ることを言います。 ②については加害行為の内容や程度を加味し、個別具体的な判断が必要になります。必ずしも法律上保護されていない利益であったとしても、救済の対象となる場合があります。 ③の損害については、財産的な損害はもちろんですが、慰謝料などのような精神的な損害もあります。 ④の因果関係については、先に記事にしました416条の「通常生ずべき損害」と「予見することができる特別の損害」の規定を類推適用して、「相当因果関係」が認められる範囲で損害賠償を請求することができます。 ⑤の責任能力とは自己の行為の責任を弁識できる能力を言います。民法上の責任無能力者とは、12才未満の者や心神喪失者などを指します。ちなみに刑法上では14才未満の者や心神喪失者等を指します。 不法行為が成立した場合には、被害者に損害賠償請求権が発生します。相続との関係では、この損害賠償請求権は被害者の生前の意思表示にかかわらず相続の対象となります(判例)。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry44.html 賠償の方法は原則金銭賠償になります。例外として名誉毀損裁判の場合には、名誉回復措置となることもあります。 この損害賠償を請求する権利者についてですが、不法行為を受けた被害者は当然請求者になりますが、不法行為が生命を侵害した場合やそれに匹敵する内容の場合には、被害者の父母や配偶者および子は「慰謝料」を請求することができます。 なおこの不法行為に基づく請求権についても消滅時効があります。被害者等が損害及び加害者を知ってから3年で消滅時効にかかり、不法行為の時から20年で除斥期間とされ消滅します。 除斥期間とは時効のように中断や停止が認められず、期間の経過とともに当然に権利が消滅する期間を言います。なお2020年4月1日施行の債権関係の民法改正においては、20年は除斥期間ではなく時効期間であることが明記されました。 https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html 最後に不法行為における過失相殺について触れておきます。 過失相殺は債務不履行の記事でも書きましたが、債務不履行の相殺については発生すれば必ず必要的に行われる相殺であって、責任軽減だけでなく免責もすることができました。 一方不法行為における過失相殺については、損害賠償の額を減額できるだけであって不法行為の責任を免責することはできません。またその減額についても必ずなされるものではなく、過失の態様によって任意的に判断されます。 なお被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上一体をなすと見られる者の過失も含まれます。例えば子供が道路を飛び出して自動車にはねられた場合には、一緒にいた母親も監督不十分で過失責任も問われます。ここではあくまで身分上、生活関係上一体をなすことが要件になりますので、監督していた保母さんなどの責任は過失相殺されません。
READ MORE
民法における特別養子縁組について
今日は特別養子縁組について書いていきます。 「特別養子縁組」とは「普通養子縁組」の場合とは異なり、養子とする子に特別な事情が存在する場合の縁組になります。 その子が一定年齢に達しておらず、かつ実親による保護が事実上困難な場合に、家庭裁判所の審判により行われる縁組になります。では具体的に特別養子縁組の成立要件や効果について見ていきましょう。要件は次の3つになります。 ①養子の要件 ②養親の要件 ③父母の同意 です。 ①について、特別養子となる子は原則、縁組の申し立て時に6才未満であることが必要です。ただし例外として、養親となる者に6才前から看護養育を受けていた子は、8才未満まで認められます。 ②について、養親になるには配偶者がある必要があります。また夫婦の一方が他方の嫡出子(連れ子)の養親となる場合を除き、原則夫婦共同で養親となります。また養親となる者は原則として25才以上でなければなりません。この場合も夫婦の一方が25才以上であれば、他方は20才に達していれば認められます。 ③については、原則特別養子となる子の父母が同意していることが必要となります。この場合も後述の一定の理由がある場合は同意も不要になります。 縁組の方式は、養親となる者の申し立てに基づいて行われ、家庭裁判所の審判によって成立します。この際の審判の基準は次の2つになります。 ①父母の子に対する監護が著しく困難であり、あるいは不適当であること ②その他特別の事情がある場合において、子の利益のために特に必要があると認めるとき です。 これらの場合に、養親となる者が養子となる者を6ヶ月以上試験養育した内容で認められることとなります。 特別養子縁組の効果は次のとおりになります。 ①普通養子縁組同様、縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得し、その血族とも法定親族関係を有することとなります。 ②実の父母およびその血族との親族関係は終了します。これによって普通養子縁組とは異なり、実の父母方の相続権は消滅します。 ③特別養子縁組の離縁については、原則認められません。ただし例外として、養子の利益のために特に必要であると認められる場合は、家庭裁判所の審判による方法を取ることができます。
READ MORE
相続の承認について
今日は相続の承認について書いていきます。 相続は被相続人の死亡によって開始されますが、その時点で相続人が決まります。法定相続人は被相続人の配偶者や子、直系尊属および兄弟姉妹に限られますが、その中の配偶者と最優先順位の者が相続を受けることになります。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/412  相続人が決まれば次は相続する財産を確定させます。あらかじめ公正証書遺言などで財産目録を作成してあれば良いのですが、ない場合は不動産登記簿や金融機関への調査を行うことになります。どちらにしても不動産は名義を変えなければいけないですし故人の口座も閉鎖しなくてはなりませんので、相続人が複数いる場合は必要な書類を整えなくてはなりません。相続人関係図や遺産分割協議書と同様に、財産目録も作成しておきましょう。 不動産や現金預金を調べて、プラスの財産がマイナスの財産より多ければ普通は相続することになりますし、明らかに借金の方が多ければ相続についても考えなくてはならなくなります。そういう場合を想定して民法では相続を受ける方法を規定し、選択の余地を残しています。 ただ選択するのには3ヶ月という期間が定められており、その期間内に決定をしなければいけません。その期間を「熟慮期間」といいます。ではその選択内容について見ていきましょう。 相続を受ける承諾することを、「承認」といいます。「承認」には「単純承認」と「限定承認」があり、これに「相続放棄」を加えて、相続の方法には3種類が規定されています。 「単純承認」とは文字通り単純に相続を受けることをいいます。マイナスの財産も含めた相続財産を、相続人全員がそのまま受け入れるものです。ですので万が一マイナスの財産の方が多かった場合でも、単純承認を選択した場合にはその負債等も無限に負わなければいけません。 自ら選択した場合はもちろん、自ら単純承認を選択しない場合でも、承認の意思表示をしないまま3ヶ月を経過してしまった場合や、相続財産の全部または一部を処分してしまった場合も単純承認をしたとみなされてしまいます。これらは法定単純承認と呼ばれます。大きな債務等のあることがわかっている場合には、くれぐれも熟慮期間を意識し、早めに財産目録を作成しましょう。 「限定承認」とは、マイナスの財産が多かった場合でも相続財産の限度内において債務を弁済すればよいというものです。債務が相続したプラスの財産を超えた場合には、支払いの義務はありません。ただ限定承認の場合は手続きが非常に面倒なものとなります。 まず財産目録を用意し、これを家庭裁判所に提出して申請することになります。申請する場合には共同相続人全員一緒にしなければなりません。ひとりでも反対をしたり単純承認をしてしまった場合にはすることができません。ですので、一人が財産を処分してしまった場合には、残りの共同相続人も申請することはできなくなってしまいます。なお共同相続人のうちの誰かが相続放棄をした場合には、残りの相続人全員で限定承認を申請することができます。 「相続放棄」とはマイナス財産が超過している等の理由で、相続を受けない選択をすることです。相続放棄をした場合は、最初から相続人ではなかったものとみなされます。ですので欠格や廃除の場合と異なり、代襲相続も認められません。 ただ相続放棄がなされた場合でも、その債務等が当然になくなるわけではありません。他の相続人に相続されていきます。プラスの財産は遺言等によっては法定相続分通りには配分されませんが、マイナスの財産は法定相続分通りに配分されます。ですので残った債務や連帯保証人の立場などは、他の相続人間で法定相続分通りに相続されることとなります。 相続放棄をしても単純に債務から逃れられるという性質のものではありませんので、放棄する際には事前に他の相続人と相談をし、のちのちの関係を壊さないようにしたほうが賢明だと思われます。 http://yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry46.html
READ MORE
民法における婚姻の効果
今日は婚姻の効果について書いていきます。婚姻は役所に届出をすることが形式上の要件となっており、届出をしない限りは法律上の夫婦とは認められません。 「婚姻の効果」については次のようなものがあります。 ①夫婦同氏 ②同居・協力・扶助義務 ③貞操の義務 ④成年擬制 ⑤契約取消権 です。 「夫婦同氏」については改正を求める声もありますが、現行民法においては夫婦は共通の氏を名乗らなければなりません。法律の婚姻効果を発生させるためには戸籍上同一の性にしなければなりませんが、ペンネームや職場で旧姓を名乗ることについて等は差し支えありません。 「同居・協力・扶助義務」については、婚姻を継続するにあたっての基本的な義務になります。 「貞操の義務」についても明文化されており、これについては裁判上の離婚原因にも当たります。 「成年擬制」とは、未成年でも婚姻によって成年に達したものとみなされ、成年と同様の権利義務を与えられることです。この効果によって通常未成年では行えない養子縁組行為や、登録なしで営業をすることができるようになります。なお一度婚姻をすれば、これが解消された場合であっても成年擬制の効果は消滅しません。 「契約取消権」とは、婚姻中に夫婦間でしたお互いの契約について、婚姻中はいつでも取り消すことができるというものです。夫婦間の問題については法による強制は立ち入らないということであり、履行後であっても取り消せます。しかし第三者が関与するものについては、その権利を害しての取り消しはできません。 次に夫婦の財産制度について見ていきましょう。 夫婦は「夫婦財産契約」という契約で、自由に夫婦の財産関係を定めることができます。これは契約がない場合の民法の規定による「法定財産制」に対して、自らで取り決める契約になります。日本では民族性からかあまり普及していませんが、数年前に俳優さんと女性弁護士の結婚の際に話題になりました。 通常は公正証書で残したりしますが、この契約の形式は次のとおりかなり厳格なものになります。 ①婚姻届出前に締結しなくてはなりません ②婚姻届出までに登記を行ないます ③登記がなければ夫婦の承継人および第三者に対抗することができません ④婚姻届出後はその契約を変更することはできません 次は財産契約を結ばない場合の「法定財産制」についてです。 「法定財産制」は次の3つからなります。 ①婚姻費用の分担 ②日常家事債務の連帯責任 ③財産の帰属と管理における夫婦別産制 です。 ①の費用の分担については特に問題はありませんが、②の「日常家事債務の連帯責任」とは、日常発生する家事(特別でない行為)によって生じた債務については、一方が第三者に対して他方の免責を告げたときを除いて、夫婦ともに連帯責任を負うというものです。 ここでの日常家事の範囲については、客観的にその法律行為の内容等を十分考慮して判断するものとされています。 「夫婦別産制」とは、夫婦の一方が婚姻前から有している財産、および婚姻中であっても自分の名前で得た財産については、夫婦それぞれの個人的な財産とすることを言います。 これに対して夫婦どちらに属するか不明な財産については、夫婦共有のものと推定されます。
READ MORE
贈与も契約の1種
今日は贈与というものについて書いていきます。 贈与は遺言相続の場面でも多く出てくる言葉であり、私のホームページでも説明を記載していますが、今回はそのもとになる民法の規定について見ていきます。 「贈与」とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを受諾することによってその効力が生じるものです。贈与も民法の定める典型契約(贈与契約)になりますが、契約と言っても贈与者が受贈者に無償で財産的利益を与えるという合意のみで成立する契約になります。 これは書面でなく口頭ですることもできますし、契約締結時に目的物を交付する必要もありません。また無償であげるのですから、贈与者はこれに瑕疵があっても担保責任を負うことはありません。最も瑕疵があることを知っていながらこれを受贈者に教えずに贈与した場合には、担保責任を負うことになります。 贈与は書面ですることを要しませんが、書面によらない贈与の場合は各当事者が自由に撤回することができます。書面によらないものならば、それほど重要な契約ではないでしょうということです。裏を返せば贈与も契約であるのだから軽々に口約束にせず、書面によって権利移転の意思を明確にし、トラブルを防止する措置が必要ですよということです。 しかし自由に撤回できると言っても、既に動産の引渡しが完了していたり不動産の引渡しや登記が完了しているといった、履行の完了している部分については撤回することはできません。 これは遺言の記事でも書いていますが、贈与には次の特殊なものもあります。 ①負担付き贈与 ②死因贈与 ③定期贈与 です。 「負担付き贈与」とは、受贈者に贈与の条件として一定の義務を負担させる贈与契約になります。例えば、私が生きているあいだは私の看護をする、ことを条件に贈与を行なう場合などです。贈与者は受贈者の負担の限度において担保責任を負うとされていますので、負担が履行された場合には必ずその贈与が行われることとなります。 「死因贈与」とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与契約になります。似たようなものに「遺贈」がありますが、遺贈は被相続人の一方的な単独の意思表示となりますので、贈与契約とは趣旨が異なります。 しかし性質自体は似ているものになりますので、遺贈に関する規定は準用され、贈与者はいつでも一方的に贈与契約を撤回することができます。対して受贈者はこれを放棄することはできません。 「定期贈与」とは、一定期間ごとに無償で財産を与えるという契約になります。定期贈与は当事者同士の個人間の関係性によるものですので相続はされず、当事者の一方の死亡によって効力が失われることとなります。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category2/entry65.html  
READ MORE
民法 弁済というものについて
今日は弁済というものについて書いていきます。 弁済とは、債務の本旨に従って、債務の内容である一定の給付を実現する行為のことです。単純に言えば、借りたものを返すということになります。この弁済という行為は、債権の目的が達成されたという事実によって債権を消滅させる行為ですので、法律行為には当たりません。 以前別の記事で法律行為の意思主義について書きましたが、債務の給付者が自分の意思表示の効果として債権を消滅させるものではないので、法律行為に準拠する準法律行為に当たります。言い換えると準法律行為とは、意思表示によらないで法律上の効果を発生できる行為のことを言います。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/826 弁済とは実際に給付が実現されて達成されるものですが、民法では実際に債務者がそのもの自体を弁済しなくても、給付を実現するために必要な準備を行い、債権者側に協力を求めることによって法律上の効果を発生させることができます。これを「弁済の提供」と言います。 弁済の準備ができあとは弁済を実現するばかりとなっても、債権者側の都合や諸事情によって実際の弁済に至らないケースがあります。債務の履行については不履行責任が発生する場合もありますので、現実の弁済と区別して、弁済の提供という規定が設けられています。 弁済の提供は、債務の本旨に従って、現実または「口頭の提供」というものによって行われます。今述べたように、債務者は弁済の提供による法律効果によって、損害賠償や契約解除、遅延利息の支払いといったような債務不履行責任から免れることになります。 では弁済の提供について続けて見ていきましょう。 まず弁済の提供の方法ですが、今述べたとおりこれには「現実の提供」と「口頭の提供」という2つの方法があります。弁済の提供ではまずは原則として、現実の提供をしなければなりません。 現実の提供とは実際に弁済が完了するであろう状態であり、債務者が債権を消滅させるためにできる限りのことを行い、債権者側が受領などの協力をすれば弁済が完了するというような状況を言います。 これに対し「口頭の提供」とは、 ①債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合 ②債務の履行についての登記など、債権者の行為を必要とする場合 に認められます。 口頭の提供とは、債務者が債権者に口頭で行うものですが、これは、債務者が現実の提供をするのに必要な準備をしたことを債権者に通知し、受領を催告することで足りることとされています。 なお判例からは、債権者が契約自体を否定するなどして、弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供さえもしなくても、債務不履行責任から免れることとされています。 また物を引渡して給付を行う場合ですが、目的物が特定物である場合には現状のまま引き渡せば足りることとなりますが、不特定物の場合には瑕疵のない物を調達して引き渡さなくてはなりません。
READ MORE
民法 物権変動について
民法 債権譲渡について
自筆証書遺言について追記
相続における民法について
民法における不法行為について
民法における特別養子縁組について
相続の承認について
民法における婚姻の効果
贈与も契約の1種
民法 弁済というものについて

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です