今日は弁済というものについて書いていきます。
弁済とは、債務の本旨に従って、債務の内容である一定の給付を実現する行為のことです。単純に言えば、借りたものを返すということになります。この弁済という行為は、債権の目的が達成されたという事実によって債権を消滅させる行為ですので、法律行為には当たりません。
以前別の記事で法律行為の意思主義について書きましたが、債務の給付者が自分の意思表示の効果として債権を消滅させるものではないので、法律行為に準拠する準法律行為に当たります。言い換えると準法律行為とは、意思表示によらないで法律上の効果を発生できる行為のことを言います。
https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/826
弁済とは実際に給付が実現されて達成されるものですが、民法では実際に債務者がそのもの自体を弁済しなくても、給付を実現するために必要な準備を行い、債権者側に協力を求めることによって法律上の効果を発生させることができます。これを「弁済の提供」と言います。
弁済の準備ができあとは弁済を実現するばかりとなっても、債権者側の都合や諸事情によって実際の弁済に至らないケースがあります。債務の履行については不履行責任が発生する場合もありますので、現実の弁済と区別して、弁済の提供という規定が設けられています。
弁済の提供は、債務の本旨に従って、現実または「口頭の提供」というものによって行われます。今述べたように、債務者は弁済の提供による法律効果によって、損害賠償や契約解除、遅延利息の支払いといったような債務不履行責任から免れることになります。
では弁済の提供について続けて見ていきましょう。
まず弁済の提供の方法ですが、今述べたとおりこれには「現実の提供」と「口頭の提供」という2つの方法があります。弁済の提供ではまずは原則として、現実の提供をしなければなりません。
現実の提供とは実際に弁済が完了するであろう状態であり、債務者が債権を消滅させるためにできる限りのことを行い、債権者側が受領などの協力をすれば弁済が完了するというような状況を言います。
これに対し「口頭の提供」とは、
①債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合
②債務の履行についての登記など、債権者の行為を必要とする場合
に認められます。
口頭の提供とは、債務者が債権者に口頭で行うものですが、これは、債務者が現実の提供をするのに必要な準備をしたことを債権者に通知し、受領を催告することで足りることとされています。
なお判例からは、債権者が契約自体を否定するなどして、弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供さえもしなくても、債務不履行責任から免れることとされています。
また物を引渡して給付を行う場合ですが、目的物が特定物である場合には現状のまま引き渡せば足りることとなりますが、不特定物の場合には瑕疵のない物を調達して引き渡さなくてはなりません。
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今日は詐害行為取消権について書いていきます。
「詐害行為取消権」とは、債務者がその責任財産を減少させる法律行為(詐害行為)をした場合に、債権者がその行為を取り消し、減少した財産を回復させる権利をいいます。これは強制執行を行う前の準備段階として、総債権者の責任財産の保全を目的とした制度になります。
「詐害行為取消権」の成立要件としては、次の6つが挙げられます。
①保全される財産が金銭債権であること
②保全される財産が、詐害行為前に成立していること
③債務者が詐害行為時および取消権行使時に無資力であること
④財産権を目的とした法律行為であること
⑤債務者に詐害の意思があること
⑥受益者や転得者が悪意であること
です。
では、詐害行為取消権の行使の方法や効果について見ていきましょう。
詐害行為取消権は、債権者が必ず「自己の名」で行ないます。また債権者代位権と異なり、必ず「裁判上」で行わなければなりません。
取り消しを行える範囲は、債権者の被保全債権額の範囲に限定されます。建物のように目的物が不可分の場合は、被保全債権額が建物価格に足りなくても、詐害行為の全部を取り消すことができます。
詐害行為取消権を行使できる期間は、債権者が取り消しの原因(詐害行為)を知った時から2年間(消滅時効)となります。知らない場合も詐害行為から20年で時効(除斥期間)となります。
詐害行為取消権の効力は全債権者の利益のために発生することとなり、受益者や転得者から取り戻された財産は、全債権者の共同担保となります。目的物の引渡しについては債権者代位権同様、原則は債務者への引渡しとなりますが、直接債権者への引渡しを請求することもできます。
とは言っても、詐害行為取消権には効果の及ぶ範囲が定められています。債務者であっても自分の財産を処分することは自由であるはずですが、詐害行為取消権はこの自由を制約するものとなりますので、その制約を最小限に抑える内容となっています。
これから、詐害行為取消権の被告は債務者ではなく、受益者または転得者にすべきとしています。
また取り消し判決がなされる場合でも、その効力の及ぶ範囲は取り消し債権者と相手方(受益者または転得者)の関係でのみ詐害行為の抗力を失わせるものであって、第三者の法律関係には影響は及ぼさないとされています。
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今日は時効について書いてみます。時効というと刑事ドラマなどでよく耳にする言葉ですが、法律では「ある一定の事実状態が一定の期間継続した場合に、その事実の法律上の根拠に合致するかどうかを問わずに、その事実状態を尊重して権利を認める」制度を言います。
時間の経過で証拠能力が希薄になる一方、その事実が継続している場合はそれ自体が重いということを尊重して制定された条項です。
では民法における「時効」について見てみましょう。時効完成の要件は、一定の事実状態が一定の期間継続することです。また時効が完成しその利益を得るためには、その意思表示をしなくてはなりません。「時効の援用(えんよう)」と呼ばれるものです。
時効の援用は時効の利益を受ける旨の意思表示であり、援用して時効の利益を受けるかどうかは個人の意思になります。時効を放棄することもできますが、時効が完成する前にあらかじめ放棄を行うことはできません。時効が完成してから放棄することになります。また放棄ではありませんが、時効が完成してもそれを知らずに債務を承認してしまった場合などは、もう援用をすることはできません。
時効の利益を受ける者は援用権者である当事者に限られますが、判例ではその者を「時効に因り直接に利益を受くべき者」としています。時効の効果は遡及効といって、最初の起算点にさかのぼって効果を発生することになります。
民事上の時効には一定の期間を経ることによって権利を取得する「取得時効」と、一定の期間を経ることによって権利を失う「消滅時効」があります。ではまず取得時効から見てみましょう。
「取得時効」とは、物の占有の継続に対して真実の権利を認める制度になります。他人の物であっても一定の期間占有をしていれば、その事実を尊重して権利が移転するという制度です。取得時効の要件は次の5つになります。
①「他人の物」を占有していること(場合によっては自分の物でも可とした判例もあります)
②所有の意思を持って占有していること(自主占有といいます)
③平穏かつ公然と占有していること
④一定期間占有を継続していること
⑤時効援用の意思表示がされること
になります。なお④の期間は、条件によって変わってきます。その物(不動産も含みます)の占有を開始した時に善意無過失であった場合は10年です。善意無過失でない場合(悪意または有過失)は20年になります。
善意無過失の判定はあくまでも最初の占有者が占有を開始した時点が起算点になりますので、前の占有者から占有を引き継いだ場合も(占有の事実が重要となりますので、占有する者が変わっても問題ありません)、引き継いだ時の善意無過失が問題になるわけではありません。最初の占有者が善意無過失であれば、取得時効の条件は10年になります。
なお②③の所有の意思についてですが、これは「占有者は所有の意志をもって、善意で、平穏にかつ公然と占有をするものと推定する」(占有の推定)とされています。ですので占有の事実があれば、所有の意思は推定されるものとされています。
時効取得の対象は、「所有権」と「所有権以外の財産権」になります。所有権以外とは、地上権・永小作権・地役権などです。一般債権の時効取得はできませんが、不動産における賃貸借権は例外として、要件が揃えば時効取得できます。
では次にもうひとつの「消滅時効」について見てみましょう。消滅時効とは、一定期間の経過によって債権などの権利が消滅してしまう制度を言います。消滅時効の要件としては次の4つがあります。
①権利不行使が一定期間継続すること
②法定中断のないこと
③時効援用の意思表示をすること
です。①の期間については、債権については10年で消滅し、債権または所有権以外の財産権は20年で消滅します。商法などに規定されている商事債権などの場合はより短い期間で消滅します。なお所有権については取得時効の対象とはなりますが、消滅時効の対象にはなりません。
時効については「中断」という制度も設けられています。時効が継続している場合であっても、
①請求
②差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分
③承認(債権者に権利があることを認めること)
によって時効の進行が止まり、そこが起算点となってまた時効の進行が始まります。中断の効力は基本的には当事者およびその承継人に対してのみ生じますが、保証人や物上保証人に生じる場合もあります。
中断自由の請求については裁判上で行ないます。もしそこで却下や取り下げがあった場合は、中断の効力は失われます。なお裁判外で行う場合は「催告」と呼ばれ内容証明郵便等でされますが、その場合の効力は時効を停止させるにとどまり、中断の効果を得るためにはそこから6ヶ月以内に裁判上の請求を行う必要があります。消滅時効に関しては2020年施行の改正民法で見直しがなされていますので、確認ください。
https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html
https://kouseishousho-gunma.com/category7/entry18.html
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今日は民法の不当利得について書いていきます。
「不当利得」とは、法律上の原因がないにもかかわらず、他人の財産や労務によって利益をうけ、そのために他人に損失を及ぼすことを言います。不当利得を得た者は、その利益の存する限度(現存利益)においてこれを返還する義務を負います。また利得を得る際に悪意であった者については、利得の返還とともに損害賠償の責任も負います。
不当利得の成立要件は次の4つになります。
①利得が存在すること
②損失が存在すること
③利得と損失の間に因果関係が存在すること
④法律上の原因がないこと
です。
ちなみに「現存利益」とは、自分の利益として残っている利益を言いますが、単純に手元に残っている現金や預貯金ということではありません。現に利益として残っているものを言います。
わかりにくいですが、例えば不当利得が10万円あったとした場合、食費に2万円使ってしまったとします。この場合の2万円は自分の利益のために使ったのですから、お金は残っていなくても栄養を得たという効果が残っています。ですので残った8万円に2万円分の食費が足されて、10万円が現存利益となります。
一方、ギャンブルなどの遊興費に2万円を浪費してしまった場合は、利益としてはなんら残っていないことになります。この場合は浪費した2万円分は差し引かれて、現存利益は8万円となります。
不当利得の具体例としては次のようなものがあります。
AさんがBさんに有名画家の絵を100万円で売ったとします。契約が成立し、BさんはAさんから絵の引渡しを受け代金を支払いました。しかし後日この絵が偽物であったことが判明したので、BさんはAさんに「不当利得返還請求」をしました。しかもAさんはこの絵が偽物であることを知っていて(悪意)販売したので、損害賠償も請求しました。という形になります。
このような不当利得ですが、次の場合には特則が付されています。
①債務の不存在を知っていてした弁済
②期限前の弁済
③他人の債務の弁済
です。
どのようなことかと言うと、①は、自分に債務がないことを知っていながら弁済を行った場合です。不合理な行為ですが、このような不合理な行為をした者には保護を図る必要もないことから、その給付したものの返還を請求することはできません。ただし、強制執行を避けるために必要的にした場合や、その他の事由によってやむを得ず行った場合には返還請求を行うことができます。差し当って請求されている弁済を行わないと、差押がなされるなどの場合です。
②の期限前の弁済とはどのようなものでしょうか。通常の弁済には「期限の利益」があり期限までは弁済を行う義務はありませんが、この期限の利益を行使せずに、期限前に弁済を行った場合です。この場合はみずからが権利を行使しなかったのですから、不当利得(弁済から期限までの利息分)返還請求をすることはできません。ただし債務者が錯誤によってその給付を行った場合には、債権者は不当利得を返還する必要があります。
③の他人の債務の弁済とは、他人の債務を自分の債務と誤信して弁済してしまった場合です。この場合では、債権者が善意で債権証書を消失したり、担保を放棄したり、債権を時効で消滅させたりしてしまった時などは、弁済者は不当利得の返還請求をすることはできません。これは弁済者の過失より善意の債権者の保護が優先されるからです。
この場合の弁済者については、あくまでも債権者に対して返還請求できないのであって、本来の債務者に請求することはできます。誤ってした弁済を泣き寝入りするものではなく、本来の債務者に対して求償権を行使することができます。
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今日は請負契約について書いていきます。
「請負契約」とは当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって効力を生じる契約を言います。これは有償であり、当事者双方の合意によって成立する契約になります。
請負契約においては、「請負人」は仕事を完成する義務を負います。請負の目的が物の完成である場合には、物を完成させるだけでなく目的物を引き渡す義務も負うことになります。
なお請負人は自ら労務を提供しなくても、原則自由に補助者や下請負人に仕事をさせることができます。ただし下請負人等の責に帰すべき事由についても、請負人が責任を負うことになります。
一方双務契約ですので注文者にも義務は発生し、完成した仕事に同時に報酬を支払わなくてはなりません。同時履行の抗弁権については先に記事にしましたが、ここでいう同時履行とは目的物の完成ではなく目的物の引渡しになりますので、目的物の引渡しと同時に支払い義務が発生します。
引渡しが請負業務の完了となると、作成中あるいは完成した目的物の引渡しまでの所有権はどうなるのでしょうか。
民法にそれについての規定はありませんが、その所有権は判例から、材料の供給者が請負人である場合は、その所有権は引き渡すまでは請負人にあり、材料の供給者が注文者である場合には所有権は注文者にあるとされています。
では次に、請負人の「瑕疵担保責任」について見ていきましょう。
仕事の目的物に瑕疵があった場合は、注文者は請負人に対して「瑕疵の修補」を請求することができます。売買の際の瑕疵担保責任については「隠れた瑕疵」であることが要件とされましたが、請負については「隠れた瑕疵」でなくても請求することができます。
ただし目的物の瑕疵が重要なものではなく、かつ修補にかかる費用がそれ以上に掛かる場合には、注文者は修補を請求することはできず、それに代えて損害賠償を請求することになります。
前記の重要でない瑕疵以外の場合は、注文者は瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに損害賠償を請求することができます。請負人が損害賠償に応じない場合は、それが支払われるまで未払い報酬の支払いを拒絶することができます。
また注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬債権を相殺することもでき、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償を受けるまでは、その報酬全体の支払いを拒むこともできます。
目的物の瑕疵が重大であって契約の目的自体を果たすことができない場合は、注文者は契約の解除をすることができます。ただしこの場合でも建物等の土地の工作物については、額が非常に大きくなるため解除することはできません。
以上の瑕疵担保責任について、請求できる期間は原則引渡しから1年です。しかし土地工作物の場合は5年、堅固な工作物については10年になります。
最後に請負契約の終了について見ていきましょう。請負契約の終了は、法定解除や約定解除の他に次のような終了原因があります。
①仕事未完成の間における注文者の解除権
②注文者の破産による解除権
です。
①については、注文者は仕事が完成するまでは、「いつでも」損害を賠償して契約を解除することができます。完成した部分について利益があるときは、未完成部分のみ契約解除をすることもできます。
②について、注文者が破産手続開始の決定を受けた時点で、請負人または破産管財人が契約を解除することができます。
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今日朝の天気予報でGW後半の天気について話していました。1週間前には後半は荒れる見込みだと行っていたので、一安心ですね。土日休みの方は羽を伸ばして、サービス業や小売業の方は書き入れ時。世間全般、天気の効果は大きいですね。
ここのところ天気予報がよく当たるなと感じていますが、1週間程度先の予報では、雨予報が晴れに変わるケースが多いかなとも感じています。天気予報の精度の問題ではなく天候が落ち着いている年ということなんでしょうが、ここ3ヶ月では群馬の雨量も平年を若干下回っていますね。夏も暑いようですし、また館林の話題も多くなるでしょう。
GW後半は実家の静岡に帰ります。昔は子供4人とワイワイ帰っていましたが、世代も引き継がれてしまいましたね。日曜日にお土産のハラダのラスクを買い込んできます。
今日は2月に法制審議会より法務大臣に答申された、相続分野に関する民法改正について書いてみます。
民法については昨年120年ぶりに契約や債権関係の改正法が国会で成立し、2020年4月1日に施行されます。相続分野についてはこれまでも社会情勢の変化に即して改正が行われ、配偶者や非嫡出子の法定相続分の割合等が改められてきましたが、今回改正案のポイントは次のとおりです。
①配偶者の居住権を保護するための方策
②遺産分割に関する見直し等
③遺言制度に関する見直し
④遺留分制度に関する見直し
⑤相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し
⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
まず配偶者(以下妻とします)の居住権を保護するための方策についてみてみます。
現行法では被相続人の死亡後に被相続人名義の自宅に妻のみが居住していた場合でも、子がいた場合には妻の法定相続分は2分の1であり、仮に現金預金等の相続分が少なかった場合には、2分の1を超えた分の自宅の評価額分を子に渡さなくてはならないケースが出てきます。
妻と子の折り合いが悪かったりして子から請求された場合には、現実に妻が自宅を処分して相当分を子に渡すというケースもあるようです。
例として妻と子がひとりいるケースです。自宅の評価額が2000万円で預貯金が1000万円、相続額の合計が3000万円とします。この場合は妻も子も法定相続分は1500万円となります。預貯金を子がすべて相続しても500万円足りませんので、この場合は残りの500万円を子が妻に主張することができます。妻としてはやむをえず自宅を処分して、その分を子に渡すこととなります。これでは被相続人の死亡により妻が困窮する事態に陥ってしまいます。
今回の改正案では超高齢社会を見据えて、高齢の妻の生活や住居を確保するための内容が盛り込まれています。
まず要項に明記されたのが「配偶者居住権」です。文字通り妻が自宅に住み続けることのできる権利であり、所有権とは異なって売買や譲渡はできません。居住権の評価額は住む期間によって決まり、居住期間は一定期間または亡くなるまでのいずれかの期間で、子との協議で決めます。
前述のケースで妻の居住権の評価額が1000万円だったとしますと、妻は法定相続分1500万円のうち1000万円分の居住権と残り500万円分の預貯金を相続することとなります。子は自宅の評価額2000万円から居住権を引いた1000万円分の所有権と、預貯金500万円を相続することとなります。妻が住んでいるあいだの必要経費は妻が負担しますが、固定資産等の税制についてはまだ決まっていません。
次の遺産分割に関する見直し等についてですが、現行法では妻が自宅等を生前贈与されていたとしても、自宅も遺産分割の対象となってしまいます。ですので前述のケース同様となります。
要綱では結婚から20年以上の夫婦に限り、自宅が遺産分割の対象から除外されることになります。前述のケースでは遺産分割の対象となるのは預貯金1000万円のみとなり、妻と子にそれぞれ2分の1づつが相続されます。これも長年連れ添った妻への配慮であり、高齢で再婚した場合等と区別するものです。期間は延期間であって離婚を挟んでも問題はありませんが、事実婚や同性婚は対象となりません。
3つめは遺言制度に関する見直しです。昨今は自筆証書遺言への関心も高まってきているようですが、現行民法ではすべての文言が自署である必要があります。改正案では自筆証書遺言に関しすべてが自署である必要はなく、財産目録等はパソコン作成のものを添付することでも可能となります。ただし各ページへの署名押印は必要となります。
また自筆証書遺言の保管制度が新たに創設され、遺言者は自筆証書遺言を各地の法務局に保管するよう申請することができ、死亡後は相続人等が保管先法務局に対して遺言書の閲覧請求等をすることができます。その際法務局は、他の相続人等に対しては通知をだすこととなります。
法務局が保管していた自筆証書遺言は検認を要しません。ただ公正証書遺言と異なり、法務局保管の自筆証書遺言が必ずしも最終最新のものではないおそれは残りますので、探索や確認は必要となります。
4つめは遺留分制度に関する見直しです。遺留分減殺請求権の効力については、受遺者等に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになり、権利行使により遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生するという考え方が採用されます。
また遺留分減殺請求の対象となる遺贈・贈与が複数存在する場合については現行法の規定に加えて、減殺の割合についてはこれまで解釈によっていたものが、今回案では明文化されています。遺留分の算定方法については現行法の相続開始の1年前にした贈与に加え、相続人贈与は相続開始前の10年間にされたものが算入対象となります。
5つめは相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直しについてです。これは遺言などで法定相続分を超えて相続した不動産等は、登記をしなければ第三者に権利を主張できないというものです。
最後に相続人以外の者の貢献を考慮するための方策についてです。現行法では寄与分については相続人にのみ認められていましたが、改正案では相続人以外の被相続人の親族が被相続人の介護をしていた場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭請求できる こととなります。
被相続人の親族とは、6親等以内の血族および3親等以内の血族の配偶者が対象となります。
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今日は養子縁組のうち、普通養子縁組について書いていきます。
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がありますが、通常行われる養子縁組が普通養子縁組になります。
「縁組」とは、養子とする行為を言います。「普通養子縁組」が成立する要件としては形式的要件と実質的要件がありますが、形式的要件は「届出」になります。婚姻などと同様に、養子縁組も「届出」を行わないと縁組は成立しません。
では実質的要件とはどのようなものでしょうか。実質的要件には次の2つがあります。
①縁組意思の合致
②縁組障害事由の不存在
です。
「縁組意思の合致」とは、養子縁組を行う当事者双方に、真に親子関係を形成して養子縁組を成立させようという意思があることを言います。この意思がなく、他の目的のために行う縁組は無効になります。他の目的とは、相続人になるためにすることなどが挙げられます。
次のような場合は縁組をすることができません。縁組をすることに障害となる事由があるということであり、「縁組障害事由の不存在」とは、縁組をすることに障害となる事由がない、つまり縁組をしても良いですよということになります。
①養親が未成年の場合は、縁組をすることができません。ただし未成年が婚姻をした場合には、「成年擬制」により養親となることができます。
②養子となる者が養親になる者より年長者の場合、または養親の尊属の場合は縁組をすることができません。
③後見人が被後見人を養子にする場合は、縁組をすることができません。ただし家庭裁判所の許可があれば認められます。
④配偶者のある者が未成年者を養子にする場合には、原則共同して縁組しなければなりません。ただし、配偶者の嫡出子を養子にする場合(再婚時の連れ子等)は共同でする必要はありません。
⑤配偶者のある者が養子になる場合、または配偶者のある者が成年者を養子にする場合は、配偶者の同意があれば単独で縁組をすることができます。
⑥養子となる子が15才未満の場合は、法定代理人が縁組の承諾をすることができます(代諾養子)。
⑦未成年者を養子とする場合には、自分や配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、原則家庭裁判所の許可が必要になります。
普通養子縁組が成立した場合には、次のような効果が発生します。
①養親の嫡出子たる身分
②法定血族関係
③養親の氏の取得
です。
「養親の嫡出子たる身分」は縁組の日から効果が生じます。養子が未成年者の場合は、養親が親権者になります。
養子となった者は嫡出子と同様の、相続権や養親の扶養義務が発生することとなりますが、縁組前の実親やその血族との親族関係は存続しますので、実親も相続することができます。「普通養子」となった者は、実親と養親の両方を相続することができます。
「法定血族関係の発生」について、養親やその血族との間の法定血族関係も、縁組の日から発生します。
「養親の氏の取得」についても同様の効果となります。ただし婚姻によってその氏を改めた場合は、夫婦同氏の原則が優先します。
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今日は抵当権について書いていきます。
抵当権は相続の場合に現れることも多いものです。内容によっては相続放棄ということもあるかも知れません。一応の知識は身につけておきましょう。
抵当権の定義としては、「抵当権者が、債務者または第三者(物上保証人)が占有を移転しない で債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」です。抵当権の特徴としては、
①抵当不動産の占有を債務者から移転しないで、債務者に占有させたままにすること
②抵当不動産の交換価値を把握する権利
であることにあります。債務者の住んでいる自宅や営業している店舗、工場などの占有を移転せずに担保の目的物として設定し、営業を継続しながらそこから生み出された利益を返済に充てるという効果的な制度になります。
抵当権は、債権者と抵当権設定者の合意のみで成立します(諾成契約といいます)。必ずしも債務者が抵当権設定者になるとは限らず、債務者以外の者が設定者になる場合もあります。この者を物上保証人といいます。
また抵当権の設定は債権発生の先でも後でも構いません。金銭貸借の場合に事前に手続きを行っても問題ありませんし、将来発生するであろう債権のために設定することも可能です。
抵当権は何にでも設定できるものではなく、不動産や地上権、永小作権といった、公示が可能なもの(登記)に限られます。抵当権は対抗要件(登記)を備えた場合は、第三者に対抗できます。
債務者は同じ目的物について、ひとつだけでなく複数の抵当権を設定することができます。この場合は抵当権に順位が付けられますが、その順位は登記の先後によります。第1順位の抵当権は1番抵当権、次位は2番抵当権といいます。
では抵当権の効力などについて見ていきましょう。抵当権を発生させる非担保債権は、金銭債権でもその他の債権でも構いません。既に発生している債権でも、将来発生する債権のも設定することができます。
元本の債権は全額担保されますが、当然そこで発生した利息も抵当権から得ることができます。しかし利息についてはすべてを充てられるわけではなく、後順位の者や順位の付いていない一般債権者がいる場合は、直近2年分しか認められません。
抵当権は主として不動産を目的物としますが、その不動産は単独という場合だけではなく、建物や家具類、あるいは庭木といったものまで付いている場合が多くあります。この場合には、抵当権が及ぶものと及ばないものが規定されています。抵当権の及ぶものとしては、次のものが挙げられます。
①付加物(付加一体物)
②従物
③従たる権利
④果実
⑤分離物
です。付加物とは庭に植えられている木や、増築された部屋といった、土地や建物に固定されて一体になっているもののことです。
従物とは必ずしも分離ができないものではありませんが、その目的物に従って用をなしているもののことです。例としてはガソリンスタンドのタンクが挙げられます。
次の従たる権利とは、建物を目的物とした場合の敷地利用権などがこれに当たります。
果実とは、その目的物が生み出すもののことであり、駐車場の賃貸料等がこれに当たります。弁済の不履行があった場合は、果実にも抵当権が及ぶこととなります。
分離物とは抵当権の目的物と切り離せることのできる動産になりますが、この動産が抵当権の目的物となっている場合には、もしその動産が不動産等から持ち出された場合には、返還を請求できることとなります。
最後にここで、当事者以外の第三者が抵当権の目的物を破損させた場合はどうなるのでしょうか。抵当権設定権者は債務者の場合と同様に、この第三者に対しても損害賠償請求や妨害排除請求を行うことができます。
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今日は共同不法行為や正当防衛などについて書いていきます。
不法行為については先の記事に載せましたが、複数で行った不法行為を「共同不法行為」と言います。共同不法行為には、
①複数の者が共同で他人に損害を与えたとき(狭義の共同不法行為)
②共同行為者の中の誰が損害を与えたのかがわからない場合(加害者不明の共同不法行為)
があり、②の場合は直接損害を与えていなくても共同不法行為の責任を負います。
共同不法行為では、生じた損害全額について各自が連帯して責任を負います。
それぞれの共同不法行為の成立要件としては、狭義の場合は、
①各人の行為が不法行為の一般的要件を満たすこと
②共同行為者間に、社会的・客観的に見て数人の加害行為が一体と見られる関係にあること
であり、加害者不明の場合は、
①共同行為者であること
②各共同不法行為者が、因果関係以外の不法行為の一般的成立要件を満たしていること
③共同行為者のいずれかによって損害が発生したこと
になります。
次に「正当防衛」について見てみますが、同じ条項に同様の性質を有する「緊急避難」というものがありますので、対比して見てみましょう。
「正当防衛」とは刑事ドラマでも頻繁にでてくる言葉ですが、その定義は、他人の不法行為に対して自己または第三者の権利、または法律上保護される利益を防衛するために、やむを得ず行う加害行為を言います。
正当防衛が認められた場合は損害賠償の責任は負いません。ただしその被害者が損害賠償請求をすることはできます。
「緊急避難」では他人の不法行為は介在しませんが、他人の物から生じた差し迫っている危難を避けることを言い、それによって他人のその物を損傷した場合も正当防衛と同様の扱いになります。緊急避難の例としては、他人の飼い犬に襲われた際に、棒などでその犬に怪我を与えた場合などが考えられます。
民事上では法によらず自らの力で解決をはかる自力救済は禁止されていますが、正当防衛も緊急避難も自力救済ではありますが違法性は除かれ、不法行為には当たりません。
正当防衛の成立要件は次のとおりです、
①他人の不法行為が原因であること
②自己または第三者の権利または法律上保護される利益を守るためにすることであること
③やむを得ないものであること
④加害行為をしたこと
です。
緊急避難の成立要件は次のとおりです。
①他人の物から生じた急迫の危難が原因であること
②これを避けるためのものであること
③やむを得ないものであること
④その物を損傷したこと
になります。
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今日は不法行為について書いていきます。
「不法行為」とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害すること言い、これを侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責任を負います。交通事故も不法行為に当たります。
法学的には「不法行為」は、
①被害者の救済を図る損害補填的機能
②将来の不法行為を抑止する予防的機能
③加害者に制裁を加える制裁的機能
を有するとされています。
不法行為の成立要件は次のとおりです。
①加害者に故意または過失があること
②権利または法律上保護される利益の侵害があること
③損害が実際に発生していること
④権利や利益の侵害と損害との間に因果関係が存在すること
⑤加害者に責任能力があること
です。
①の「故意」とは、自分の行為によって権利や利益の侵害が発生することをわかっていながらすることであり、「過失」とは損害の発生を予測して、あらかじめ防止すべき義務を怠ることを言います。
②については加害行為の内容や程度を加味し、個別具体的な判断が必要になります。必ずしも法律上保護されていない利益であったとしても、救済の対象となる場合があります。
③の損害については、財産的な損害はもちろんですが、慰謝料などのような精神的な損害もあります。
④の因果関係については、先に記事にしました416条の「通常生ずべき損害」と「予見することができる特別の損害」の規定を類推適用して、「相当因果関係」が認められる範囲で損害賠償を請求することができます。
⑤の責任能力とは自己の行為の責任を弁識できる能力を言います。民法上の責任無能力者とは、12才未満の者や心神喪失者などを指します。ちなみに刑法上では14才未満の者や心神喪失者等を指します。
不法行為が成立した場合には、被害者に損害賠償請求権が発生します。相続との関係では、この損害賠償請求権は被害者の生前の意思表示にかかわらず相続の対象となります(判例)。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry44.html
賠償の方法は原則金銭賠償になります。例外として名誉毀損裁判の場合には、名誉回復措置となることもあります。
この損害賠償を請求する権利者についてですが、不法行為を受けた被害者は当然請求者になりますが、不法行為が生命を侵害した場合やそれに匹敵する内容の場合には、被害者の父母や配偶者および子は「慰謝料」を請求することができます。
なおこの不法行為に基づく請求権についても消滅時効があります。被害者等が損害及び加害者を知ってから3年で消滅時効にかかり、不法行為の時から20年で除斥期間とされ消滅します。
除斥期間とは時効のように中断や停止が認められず、期間の経過とともに当然に権利が消滅する期間を言います。なお2020年4月1日施行の債権関係の民法改正においては、20年は除斥期間ではなく時効期間であることが明記されました。
https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html
最後に不法行為における過失相殺について触れておきます。
過失相殺は債務不履行の記事でも書きましたが、債務不履行の相殺については発生すれば必ず必要的に行われる相殺であって、責任軽減だけでなく免責もすることができました。
一方不法行為における過失相殺については、損害賠償の額を減額できるだけであって不法行為の責任を免責することはできません。またその減額についても必ずなされるものではなく、過失の態様によって任意的に判断されます。
なお被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上一体をなすと見られる者の過失も含まれます。例えば子供が道路を飛び出して自動車にはねられた場合には、一緒にいた母親も監督不十分で過失責任も問われます。ここではあくまで身分上、生活関係上一体をなすことが要件になりますので、監督していた保母さんなどの責任は過失相殺されません。
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本年平成30年7月6日の参院本会議で、相続分野に関する改正民法が可決成立しました。約40年ぶりの大幅見直しとなりますが、一部の条項を除き、1年を経過しない来年の7月までに施行される予定です。
今回の見直しについてはかねてより問題化されていた、超高齢社会における配偶者への居住権の確保等が主軸になっています。主な改正点は次のとおりです。
①配偶者の居住権を保護するための方策
②遺産分割等に関する見直し
③遺言制度に関する見直し
④遺留分制度に関する見直し
⑤相続の効力に関する見直し
⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
になります。
では具体的に各内容について見ていきましょう。
第1の配偶者の居住権保護については、短期的な保護と長期的な保護の両面から確保されることとなりました。
まず短期的な方策について見てみましょう。現行法における配偶者の居住権については判例から、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していれば、原則被相続人と相続人の間で使用貸借契約が成立していたと推認され、そのまま居住することができます。しかし第三者にその建物が遺贈されてしまったり、配偶者が居住することに被相続人が反対の意思表示をしていた場合には、使用貸借が推認されずに居住が保護されないことになってしまいます。
その事態を回避すべく、「配偶者短期居住権」というものが設けられました。これは配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合について、
①配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合は、居住建物の帰属が確定するまでの間の期間。ただし帰属が6ヶ月以内に確定した場合でも、最低6ヶ月は保障される
②居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄をした場合には、居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6ヶ月間、配偶者は居住建物を無償で使用する「配偶者短期居住権」を取得する
というものです。
被相続人の建物に無償で住んでいなかった場合にはこの権利は取得できないことになりますが、権利を取得すれば必ず最低6ヶ月間は居住が保護されることになります。
長期的な方策では、「配偶者居住権」というものが新設されました。これは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間の配偶者の建物使用権を認める内容となります。配偶者居住権は「物権」であり、「登記」することもできます。しかし売買することや譲渡をすることはできません。
現行制度では遺言書がない相続でその相続財産の多くが土地建物等の不動産だった場合など、法定相続分の規定によって、配偶者が建物以外の預貯金等を取得できなかったり、あるいは建物を売って共同相続人に金銭を渡さなければならないケースも出てきます。
配偶者とその子供が1人いた場合を例に挙げますと、法定相続分は配偶者1/2、子1/2(複数いる場合はその子らで等分します)になりますので、相続財産が自宅(土地建物)2000万円、預貯金が2000万円の場合では総額4000万円となり、配偶者が自宅を相続すると預貯金の2000万円はすべて子の相続分となります。
預貯金が1000万円だったとしますと相続合計は3,000万円になりますので、1/2ですと1500万円になり、配偶者が自宅を相続した場合で子から請求があった場合は、子に500万円を支払わなくてはなりません。これでは相続によって配偶者が住む自宅を失いかねません。
それを解決するために設けられた制度が「配偶者居住権」になります。これは相続された自宅を、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分け、配偶者の自宅の相続額を低く設定する効果が生じます。
先の相続総額4000万円の例で言いますと、配偶者居住権が1000万円とされればその居住権をもって住み続けることが可能となり、残りの負担付き所有権を子が相続した場合には、配偶者の相続額は2000万円ですので、1000万円分の預貯金を相続できるという仕組みになります。子には負担付き所有権1000万円と預貯金1000万円が相続されることとなります。
どういうことかと言いますと、相続が開始した年齢にもよりますが、配偶者はその先何十年も生きることはないと仮定し、平均余命から割り出した住み続けられる間の価値が配偶者居住権になります。あるいは何年か後には老人ホームに移るので、自宅にはそれまでしか住まない、という選択肢もあるかもしれません。配偶者が亡くなった場合は自宅は子のものとなりますので、それが負担付き所有権となります。
この規定によって、現在の自宅の価値がまるまる配偶者の相続分になってしまい、その他の財産を相続する権利を失ってしまうことから回避されることになります。
とはいえこの改正内容については、負担付き所有権が付いている建物の資産価値の低下や売買する際の市場性の問題(買い手がいない)、配偶者居住権と抵当権の問題など権利関係が複雑になっており、実際の運用面では非常にやっかいな問題をはらんでいるようです。
相続人間でこのような制度を用いざるを得ない関係性があるようでしたら、遺言を残しておくことが最善策だと思われます。
これらの算出は個別具体的になされるものですが、単純に式で表すと、建物敷地の現在価値-負担付き所有権=配偶者居住権の価値ということになります。よろしいでしょうか。
では第2の遺産分割に関する見直しについて見てみます。これについては次の3つの内容が含まれています。
①配偶者保護のための持戻し免除の意思表示推定規定の新設
②仮払い制度等の創設・要件明確化
③遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
です。
①については、婚姻期間が20年以上であれば、配偶者に居住用の不動産を生前贈与または遺贈した場合でも、原則として計算上「特別受益」(遺産の先渡し)を受けたものとして取り扱わなくてよいという内容になります。
現行制度では、被相続人が配偶者のためを思って自宅を生前贈与していた場合でも、「持戻し制度」というものによってその自宅は「特別受益」とされ、遺言による「持戻し免除」の表示がない限り、相続財産に合算されてしまいます。
どういうことかと言うと、先ほどの総額4000万円の例で見ますと、現行法では生前贈与された2000万円の自宅も相続総額に含まれることとなります。配偶者の相続分はこの自宅のみとなってしまい、残りの預貯金2000万円はすべて子に相続されることになります。
これでは生前贈与した意図が相続に反映されないこととなってしまいます。今回の見直しでは、20年以上法律上の婚姻期間がある者については、その貢献に報い、老後の生活を保障すべきものとして、「持戻し免除」の表示がなくても表示があったと推定して(被相続人の意思の推定規定)、遺産の先渡しとして扱わずに相続財産総額に含めないことになります。
先の例で言いますと、遺産総額は自宅を含まない預貯金2000万円となり、配偶者と子がそれぞれ1000万円ずつ相続することになります。
次に②の仮払い制度について、現行法では判例から、遺産分割が終了するまでの間は、相続人単独では預貯金の払い戻しをすることができません。相続される預貯金債権は相続人全員の共有債権になりますので、それぞれの相続分が確定するまでは生活費や葬儀費用、相続債務の弁済などの必要性があっても払い戻しができず、相続人が立替える必要がありました。
今回の見直しにおいてはこれが緩和され、2つの仮払い制度が設けられることとなりました。
ひとつは預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮処分の要件が緩和されます。従来も訴えにより認められることはありましたが、見直しによって、仮払いの必要性があると認められる場合は他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断(手続き)で仮払いが認められるようになりました。
もうひとつは、家庭裁判所の判断を経なくても払い戻しが受けられる制度が新たに設けられました。これは相続人としての相続分であれば、そのうちの一定額について単独で払い戻しが認められるという制度です。具体的には、(相続開始時の預貯金総額×1/3×払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分)まで、払い戻しが認められることとなります。
③の相続開始後の共同相続人による財産処分についてですが、現行法では特別受益のある相続人が遺産分割前に遺産を処分してしまった場合には、他の共同相続人に不公平な結果が生じてしまいます。
例を挙げますと、配偶者がなく子が兄弟2人あったとします。相続される預貯金が2000万円で、長男に2000万円が生前贈与されていた場合には、この贈与分は持戻しとなり、相続総額は4000万円になります。長男にはすでに2000万円が渡されていますので、今回の預貯金2000万円はすべて次男に相続されることとなります。
しかしこの2000万円のうち1000万円分を長男がだまって引き出していた場合には、残りの預貯金が1000万円となってしまいます。すると相続預貯金総額はもち戻しを含めて3000万円となり、法定相続分にしたがって兄弟それぞれが1500万円ずつ相続します。ここでは長男はすでに2000万円を贈与されていますので相続分は0円となり、次男が預貯金総額の1000万円を相続することになります。
これでは長男が贈与分の2000万円と引き出し分の1000万円の合わせて3000万円を受け取ることになり、次男は1000万円しか受け取れず不公平な結果となってしまいます。この場合は裁判に訴えても、結論から言うと次男の受け取り分は本来の2000万円に届くことはありません。
その不公平を是正するために、遺産を処分した者以外の同意(この例では次男)があれば、処分したもの(長男)の同意を得なくても処分した預貯金(1000万円)を遺産分割の対象とすることができる、という法律上の規定が加えられることとなりました。
これによって、たとえ共同相続人の一人がこっそり分割前の預貯金を引き出してしまった場合でも不公平が起こらない制度となりました。今の例で言うと、相続財産の総額は4000万円とされ、次男は1/2の2000万円を相続することができます。
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次に第3の遺言制度の見直しについて見てみましょう。これには次の3つの内容があります。
①自筆証書遺言の方式緩和
②遺言執行者の権限の明確化
③法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(民法ではなく遺言書保管法によります)
です。
①について、現行法で自筆遺言に法的効果を生じさせるには遺言書の全文を自書する必要があり、財産が多数ある場合には相当な負担が伴いました。
今回の見直しでは、自書によらないパソコンなどで作成した財産目録を添付することができ、合わせて銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を添付することでも法的効果が生じることとなります。
②の遺言執行者の権限の明確化については、遺言執行者の一般的な権限として、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずる、ということが明文化され、また特定遺贈又は特定財産承継遺言(遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における、遺言執行者の権限等が明確化されました。
③について、現行法では自筆証書遺言の管理は遺言者に任されていましたが、見直しによって法務局という公的機関に保管できる制度が創設されました。
この制度では相続開始後に相続人が遺言書の写しの請求や閲覧をすることが可能となり(その場合は他の相続人にも遺言書の保管の事実が通知されます)、紛失や改ざんの恐れがなくなることになります。
保管については申請者が撤回することもできます。なおこの制度では現行自筆証書遺言で負担になっている、「検認」の規定は適用されません。
第4の遺留分制度に関する見直しについて見てみましょう。これも2つの内容からなります。
①遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化する
②減殺請求がなされた場合に、請求された側が金銭を直ちに用意できないときは、請求された側である受遺者などが裁判所に請求することによって、金銭債務の全部または一部の支払いについて、相当の期限を与えられる
というものになります。
①の遺留分減殺請求の金銭債権化とは、現行法では請求がなされた際にその財産が金銭でなかった場合には、共有状態が生じてしまい事業承継などの支障になってしまいます。その状況を回避するために、減殺請求された債権は金銭で支払われることを明文化したものです。
②については遺贈などされた財産の額が大きい場合であっても、実際に別途金銭を用意できるとは限りませんので、この内容も加えられています。
第5の相続の効力等に関する見直しですが、これは"相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができる"、ことについての見直しとなります。
どういうことかと言いますと、登記なくして第三者に対抗できるという内容自体は問題ないのですが、相続人の債権者において債務回収の差し押さえなどが発生する場合は、通常法定相続分を想定して計算することになります。ここで遺言によって法定相続分を下回る内容でしか相続されなかった場合は、債権者等の第三者の取引の安全が確保されないことになります。
この観点から今回の見直しにおいては、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないと改正されました。登記されれば債権者もその内容について知ることができますので、取引の安全性が確保されることになります。
法定相続分までは現行法とおり、登記なくして第三者に対抗することができます。
第6の相続人以外の者の貢献を考慮する方策ですが、相続は相続人にしかすることができません。相続人以外の者には、例えば親身になって世話をしてくれた長男の妻にも相続はなされません。これらの者に財産を贈りたい場合には贈与によるか、遺言書による遺贈や死因贈与の方法をとります。
しかしこの遺言書がなかった場合には、どんなに被相続人に尽くした者であっても、遺産分割協議に加わることはできません。この不公平を見直すべく、特別の寄与の規定が設けられました。
これは相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合に、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払いを請求することができるという制度になります。請求できる親族とは6親等以内の血族および配偶者、3親等以内の姻族を言います。
遺産分割は現行とおり相続人だけで行われ、それとは別に特別の寄与があった者が相続人に請求を行ないます。これには算出式などありませんので、当事者同士の話し合いになります。
以上が改正の内容となりますが、現時点では改正法全体の具体的な施行日は決まっていませんが(公布の日から1年以内)、自筆証書遺言の方式緩和(自書以外の目録可)は平成31年1月13日に施行されます。また自筆証書遺言の保管制度は、公布の日から2年を超えない範囲内での施行とされました。
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