民法上の使用者責任

今日は民法における監督者や使用者の責任について書いていきます。

今日確認するのは、

1.責任無能力者の監督義務者等の責任

2.使用者の責任

3.工作物責任

4.注文者の責任

5.動物占有者の責任

についてです。ではそれぞれ見ていきましょう。

まず1の「監督義務者の責任」についてです。前回の不法行為の記事でも触れました、①の未成年者等の責任無能力者ですが、これらの者は、他人に違法な行為で損害を与えても責任を負わない場合があります。しかしそれでは被害者の救済が図られませんので、被害者救済の手段として責任無能力者を監督すべき「法定義務」のある、監督義務者や代理監督者が責任を負う場合があります

監督義務者等は、監督を怠らなかったことを立証できない限り、責任を負うとされています。すぐ近くで万全の体制で監督をしていても不測の自体で損害が生じてしまった時などは、監督を怠らなかったことを証明すれば責任は問われないということになります。

ここで未成年である責任無能力者とはだいたい12才未満の者とされていますので、12才以上の責任能力を有する未成年の場合には、監督義務者は原則責任を負いません。しかし義務違反と未成年の不法行為に相当因果関係が認められる時は不法責任を負う場合があります。

次に2の「使用者責任」についてです。「使用者責任」とは、被用者(使用されている者)がその使用者の事業を執行する上で、他者に違法な損害を与えた場合の責任を言います。使用者責任成立の要件は次のとおりです。

使用者と被用者との間に、指揮監督などの使用関係があること

被用者の加害が事業の執行についてなされること

③被用者が不法行為の一般的成立要件を備えていること

使用者が専任・監督上の注意義務を尽くしていないこと

です。

②の事業執行についてとは、具体例を挙げますと、タクシーや運送業の運転手が仕事中に事故を起こした場合などです。ただここで問題となるのは、どこまでの範囲が業務執行に当たるのかということです。運行中によそ見をして事故を起こしたなどの場合がこれに当たりますが、そのような場合のみならずもう少し広い概念で、客観的に見て職務行為の範囲内だと認められる場合が該当するとされています。

なお業務中の被用者の暴力行為については、その損害が業務を行うことがきっかけとなり、またその業務と密接な関連性を有すると認められるか、によって判断されます。

今述べたように、使用者はその使用者責任によって被害者に賠償を行いますが、その場合に直接の加害者は蚊帳の外かというとそうではありません。賠償をした使用者は、今度は加害者である被用者に行った賠償について求償することができます。ただし求償する内容についてはすべてをできるわけではなく、所々の事情を鑑みて、信義則上相当と認められる範囲に限定されます。

被用者が第三者と共同で不法行為を行い、その賠償を使用者がした場合には、使用者は被用者のみならず第三者にも求償をすることができます。この場合は被用者と第三者の過失割合によって求償を行ないます。

3の「工作物責任」とは、土地の工作物の設置や保存(維持管理)について適正に行う責任を言います。この設置や保存に「瑕疵」があり、そのために他人に損害を与えた場合はまずその工作物の「占有者」が責任を負います

この占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明したときは、「所有者」が責任を負うこととなります

ここで言う「土地の工作物」とは、工事などによって土地に固定して作られたものをいい、建物や橋、鉄道などがこれに当たります。工作物の「瑕疵」とは、工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。その物自体の性能などが安全性を欠いている場合だけでなく、その物に係る安全設備を欠いているために危険な状態を生じさせている場合も瑕疵に該当します。

占有者は必要な注意を払ったことを証明すれば免責されると書きましたが、最終的な所有者の責任は免責が認められない「無過失責任」となります。

4の請負契約などの「注文者の責任」ですが、注文者がした指図や自己の過失がない限りは、原則注文者については第三者に損害を与えても賠償責任は負いません。

最後に「動物占有者の責任」についてです。ペットの買主などを言いますが、この動物を管理する者は、動物が他人に与えた損害については原則賠償する責任を負います。ただしこの場合も、占有者が相当の注意をもって管理したことを立証すれば免責される場合もあります。 

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今日は普通養子縁組の解消について書いていきます。 縁組も婚姻同様、他人同士の意思の合致による行為になりますので、お互いの意思が合致しなくなった場合も、婚姻同様にその関係が解消されることとなります。 婚姻の場合の離婚に当たるものが、「離縁」になります。「離縁」には ①協議離縁 ②裁判離縁 があります。 「協議離縁」とは、当事者同士の協議によってするものを言います。離縁の成立要件は縁組の時と同様に、形式的要件と実質的要件になります。形式的要件はこれも届出になります。実質的要件は当事者間の、養親子関係を終了させる意思の合致になります。 未成年や成年被後見人の場合は通常単独で協議を行うことはできませんが、未成年であっても15才以上の者は単独で離縁をすることができ、成年被後見人の場合も本心に復している場合は単独ですることができます。 配偶者のある者が未成年者と縁組をするには、夫婦揃っての縁組が必要でしたが、離縁についても夫婦がともにしなければなりません。 縁組の当事者の一方が死亡した場合はどうでしょうか。この場合の一方の生存者は、家庭裁判所の許可を得て離縁することができます。これを「死後離縁」と言います。養親子関係自体は当事者の一方または双方が死亡すれば消滅しますが、法定関係は存続しますので、相続も発生します。 また配偶者死亡の時同様、縁組によって生じた法定血族関係は当然には消滅しませんので、これらの関係を消滅させるには、家庭裁判所の許可が必要になります。 離縁の無効や取り消しの場合も、婚姻の場合と同じです。離縁意思の合致を欠いたり、代諾権のない者が代諾した場合は無効になります。 また詐欺や強迫によって行われた離縁は取り消しをすることができます。この場合は詐欺を発見し、または脅迫から免れた時から6ヶ月以内に、家庭裁判所に請求をします。取り消しの効果は離縁の時点に遡及することとなり、離縁はなかったものとなります。 「裁判離縁」は、協議離縁が成立しなかった場合に、家庭裁判所への請求によってなされます。裁判離縁の成立する要件としては、 ①他の一方から悪意で遺棄されたとき ②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき ③縁組を継続し難い重大な事由があるとき になります。 離縁の効果によって、養親子関係および法定親族関係が、離縁の日から消滅することになります。 また養子は離縁前の氏に戻ることになり、原則として離縁前の戸籍に入ることになります。離婚の場合の氏については婚氏続称という制度がありますが、離縁にもあります。 離縁の場合に離縁前の氏を継続する時は離婚よりも要件は厳しいものとなり、縁組が7年以上継続されている必要があり、離縁の日から3ヶ月以内に届出を行う必要があります。
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7月1日民法一部改正(相続分野)施行
相続分野の改正民法が、本年7月1日に施行となります。 すでに施行された「自筆遺言書の方式緩和」、2020年4月1日施行の「配偶者の居住権を保護するための方策(短期、長期)」、2020年7月10日施行の「自筆証書遺言の保管制度」を除き、2019年7月1日より施行されます。 あと1月ほどとなりましたが、これには「遺留分制度」や「相続人以外の者の貢献」に関する改正が含まれますので、下記リンクより一度ご確認下さい。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html  
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認知の効果について
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相続の際の後見制度 制限行為能力者について
今日は権利能力・意思能力・行為能力というものについて書いてみます。 まず権利能力とはどういうものでしょうか。権利能力とは、権利や義務の主体となりうる地位や資格のことであり、自然人である人間はもちろんのこと、法人も含む概念です。生まれた時に取得し、死亡した時に失います。相続の記事でも触れましたが、胎児については権利能力は認められませんが、相続や遺贈を受ける権利、また不法行為による損害賠償権は例外として、生きて生まれた場合にさかのぼって認められることになります。 次の意志能力とは、自分の行為の結果を理解(弁識)できるだけの精神能力のことをいい、一般的には10才程度の者であれば有するとされています。よく犯罪などで鑑定が行われますが、通常は意思能力を有するものであっても、泥酔している場合などは意思能力を有していないとされます。 意思能力は私的自治の前提となりますので、意思無能力者の行為はすべて無効となります。 行為能力とは、単独で有効な法律行為を出来る能力のことです。これは法律でその地位や資格が定められており、法律によって行為能力が制限されている者を制限行為能力者といいます。それらの人たちの行動を抑制するという趣旨ではなく、物事を単独で行ってしまった場合にその結果から守るという趣旨で、民法に明記されています。 制限行為能力者は未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4つが定められています。未成年を除く3者については、保護の必要性が大きい順に並べましたが、それらについて順に見てみましょう。 まず未成年者ですが、定義としては、20歳に満たない者を未成年者といいます。20歳になると成年となります。しかし婚姻をすれば成年擬制という制度によって、成年とみなされます。これは離婚してもその後も有効になります。成年擬制は法律のいろいろな場面で出てきますので、覚えておいたほうがよいです。 例えば養子をするのは成年でないとできませんが、成年擬制の場合はできます。また商法においても未成年は登録をしないと営業ができませんが、これも必要なくなります。 未成年者が契約等の法律行為を行う場合には、親権者などの法定代理人の同意が必要になります。そしてこの規定に反して行った行為については、本人または法定代理人が取り消すことができます。 例外としてはむつかしい表現になりますが、「単に利益を得、義務を免れる法律行為」は単独でできます。贈与を受けたり債務を免除されたりがこれに当たります。成年になると様々な権利義務が発生しますが、成年擬制の場合にも権利も発生しますが、反面法律で守られる場面も減るということです。権利と義務は表裏一体です。 未成年者の法定代理人(親権者等)の権限としては、代理権、同意権、取消権、追認権があります。法定代理人は未成年が行なった法律行為について、同意をしたり後から認めることによって、行った法律行為を有効なものにすることができます。 次は成年被後見人です。これは精神上の障害によって、「事理弁識(じりべんしき)能力を欠く常況」にあり、他の者の後見が必要な者のことをいいます。事理弁識能力とは物事の結果などについて認識することができ、それに対して有効な判断が出来る能力のことです。常況とはいつでもそういう状態にあるということです。一時的な場合には使われません。成年被後見人は、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者がなることができます。 成年被後見人の行った法律行為は取り消せます。これは成年後見人が同意した行為でも取り消すことができます。裏を返せば、成年後見人には同意権はないということです。ただし日常品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せません。成年後見人の権限は、代理権、取消権、追認権です。 次は被保佐人について見てみます。被保佐人は、精神上の障害によって、事理弁識(じりべんしき)能力が「著しく不十分」な者で、家庭裁判所の補佐開始の審判を受けた者をいいます。原則として単独で法律行為を行うことはできますが、不動産などの重要な財産の処分などは保佐人の同意が必要になります。 同意を欠いた場合は取り消すことができます。日常品の取り扱いに関しては取り消せません。保佐人の権限は民法13条1項に書かれている項目(不動産の処分や訴訟行為、相続に関すること等)についての同意権、取消権、追認権、代理権があります。この場合の代理権についてのみ、家庭裁判所の審判を受けるかどうかは本人自身の請求か同意が必要になります。本人が拒否すれば代理権は付与されません。 最後の被補助人とはどのような者でしょうか。これは事理弁識能力が「不十分」であり、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます。本人自身が審判開始を請求するか、本人以外の者が請求をした場合は、本人の同意が必要になります。前2者と異なり、補助開始の審判をする場合は同時に同意見付与の審判と代理権付与の審判、この一方または両方の審判をしなければなりません。被補助人の権限ですが、代理権付与の審判を受けた特定の行為については代理権をもち、同意権付与の審判を受けた特定の行為については同意権、取消権、追認権をもちます。以上において各後見人はひとりでも複数でも構いません。法人でもなることができます。また必要な場合には後見人を監督する立場の監督人も付けることができます。また後見人は任意に契約する(任意後見人)することもできますが、任意後見の場合は代理権のみが付与され、同意権や取消権は付与することができません。 相続の場面では、共同相続人がいる場合には必ず遺産分割協議が行われます。この協議では相続人全員の参加と合意が必要となります。ですので、相続人の事理弁識能力に問題がある場合は代理人の選任が必須となる場合があります。その者がまだ代理人を有していない場合には、状況をみて家庭裁判所への選任請求をしなければなりません。また相続人に未成年がいる場合には、親との利益相反との関係から特別代理人の選任も請求しなければならないので、注意が必要です。特別代理人についてはあらためて別の記事で書いていきます。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry62.html  
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民法における親族について
今日は相続にも大きく関係してくる、親族というものについて書いていきます。 相続を受けることのできる者(相続人)は「相続人」である「配偶者」「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」になりますので、親族の範囲を見た上で、これらの者がどの位置にいるのかを見てみます。 また今回成立した相続関係の民法改正において、「相続人以外の親族の貢献を考慮する方策」が加えられましたので、今まで以上に「親族」という言葉が使われる機会が多くなると思います。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html 「親族」とはどのようなものを言うのでしょうか。民法における「親族」とは、次の者を言います。 ①6親等以内の血族 ②配偶者 ③3親等以内の姻族 です。 まず「血族」とは、血縁関係のある者相互間(誰から見てもお互いに)および、法的に血縁があると制度上みなされる(擬制)者相互間を言います。前者を「自然血族」、後者を「法定血族」と言います。 「自然血族関係」は出生によって生じ、死亡によって終了します。「法定血族関係」は養子縁組によって生じ、離縁や縁組みの取り消しによって終了します。 次の「配偶者」は、婚姻によって戸籍上の地位を得た者になりますが、配偶者は血族にも姻族にも属さず親等もありません。 「姻族」とは「配偶者側の血族あるいは血族の配偶者相互間」を言います。例えば配偶者の父や、本人の父の兄弟(叔父)の配偶者は姻族になります。「姻族関係」は配偶者を通じての関係になりますので、配偶者の一方の血族と他方の血族は姻族にはなりません。具体的に言うと、本人の父と配偶者の父は姻族関係には当たりません。 また姻族関係は婚姻によって生じ、離婚によって終了することになります。離婚した元配偶者の親とは知り合いではあっても、法的つながりはなくなるということです。これは離婚の場合であり、死別の場合は届出を行わない限りは姻族関係は当然には消滅しません。 では先に出てきた「親等」とはどのようなものでしょうか。 「親等」とは親族間の遠近度を比較する尺度であり、親族間の「世代」によって決まります。本人から見て「世代」がひとつ変われば1親等という数え方をします。 相続人に当てはめて見ますと、配偶者に親等はありません。子と直系尊属(父母)が1親等、孫や祖父母は2親等になります。兄弟姉妹は親を経由して下がりますので、これも2親等と数えます。本人の叔父や叔母は祖父母を経由しますので3親等、その子であるいとこは4親等になります。 親族については世代をまたがる垂直の広がりと、直系から枝分かれをした横への広がりがあります。 縦への広がりで見てみますと、本人から世代が上の者たちを「尊属」、世代が下の者たちを「卑属」と言います。ですので父は尊属、子は卑属になります。兄弟姉妹やいとこは世代が同じですので、尊属にも卑属にも当たりません。 横への広がりで見てみますと、本人から垂直に遡ることのできる父母や祖父母や曽祖父母、あるいは垂直に下がることのできる子や孫やひ孫などは「直系」になります。 縦横併せてマトリックスで見ますと、上の世代を「直系尊属」、下の世代を「直系卑属」と言います。垂直から枝分かれをした叔父叔母などは「傍系」と言います。これも上の世代を「傍系尊属」、下の世代を「傍系卑属」と言います。 整理してみますと、血族には直系血族と傍系血族があり、直系血族には直系尊属と直系卑属があります。また傍系血族にも傍系存続と傍系卑属があることになります。姻族にも同様の、直系傍系、尊属卑属の関係があります。 改正民法の特別寄与に関しては、具体的に権利の範囲にあるかは事案ごとに確認を要するとことになります。  
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今日は民法の不法原因給付と言うものについて書いていきます。 前回は不当利得返還請求について書きましたが、それは正当な理由で給付したものの返還を請求する権利でした。特則にもあったように、みずからが不合理な行為でした給付については、保護も図られないものです。 今回の「不法原因給付」とはその給付が不法な原因であるものを指しますので、そもそも利得の返還を請求することができないという内容になります。 「不法な原因」とは具体的には、違法賭博で負けた金銭の支払いや愛人への贈与などの、公序良俗違反のことを言います。「給付」とは相手方に、最終的な利益を与える行為を言います。これは金品を与えるといった事実上の利益であっても、財産権や財産的利益を与えるものであっても構いません。 動産の場合の給付は、「引渡し」が要件になります。不動産の場合では未登記不動産は「引渡し」のみで「給付」となりますが、登記された不動産の場合は「引渡し」に加えて「登記」がなされることが給付の成立要件になります。 この条項には内容的に不法原因給付ではあっても、不法な原因が受益者についてのみ存在した場合には不法原因給付ではないという但し書きが付されています。 判例では、給付者に多少の不法な点があっても受益者にも不法の点があり、給付者の不法が受益者の不法に比べて極めて微弱に過ぎない場合には、不法な原因が受益者のみに存したとしてこの但し書きが適用されています。 なお前述した違法賭博で負けた金銭の支払いに関して等では利得の返還請求はできませんが、勝った側が返還を約束した場合には、別の契約としての請求をすることはできます。
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民法 物権変動について
今日は民法の中の物権変動というものについて書いてみます。 物権とは先日の記事に書きましたが、民法では債権並ぶ財産権です。「物」を支配する排他的な権利であり、代表的なものには所有権があります。 物権は先に対抗要件を具備したものが優先となります。また物権は債権に優先しますが、例外として対抗要件を備えた不動産賃借権は物権と同様の扱いになります。 物権には占有権が発生しますので、占有を阻害された場合にはこれを取り除く権利が発生します。これを物権的請求権と言いますが、具体的には次の3つがあります。 ①返還請求権であり、占有回収の訴えにより目的物の返還を請求するもの ②妨害排除請求権であり、占有保持の訴えにより妨害の除去や妨害行為の禁止等を求めるもの ③妨害予防請求権であり、占有保全の訴えにより将来の妨害の原因を除去して未然に防ぐもの です。物権変動とは、物権の発生や変更、消滅のことを言います。変動の原因は当事者の意思表示のみによるものであり、 契約等は必要ありません。また時効や相続によっても変動します。 変動の時期は当事者双方の意思表示が合致した時点であり、その時点をもって権利が移転します。 物には特定物(NO999のこの車)と不特定物(お店にあるレクサス)がありますが、特定物の売買における変動の時期は、特約がなければ契約と同時に所有権が移転し、特約があれば特約で定めた時期に移転します。不特定物の売買における変動の時期は、目的物が特定したときになります。 では次に不動産物件の変動を見てみましょう。不動産は物権変動をしても、登記がなければ第三者には対抗できません。登記とは不動産における公示のことです。公示とはそれをすることによって、その事実を公衆一般に知らしめることです。ですので不動産登記制度は、その土地の所有者や債権者を公にする制度になります。 不動産の所有権を主張するものが複数いる場合では(二重譲渡の場合等)、その優劣は登記の先後によります。不動産は登記を行わないと、完全に排他性のある物件を取得できないことになります。ここでこの不動産の物権変動の条項に出てくる用語について触れておきます。 まず「第三者」とは、これは本試験においても重要な事項ですが、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(けんけつ)を主張するにつき正当な利益を有する者」のことです。この場合の第三者には単純悪意者は含みますが、背信的悪意者は除外されます。 「背信的悪意者」とは物権変動の事実を知っており、かつ登記を備えていない者に対してその不存在を主張することが信義に反する者のことです。具体的な例としては、AさんがB土地を最初に購入しかつ未登記であった場合に、それをネタにAさんに高値で売る目的でB土地を二重に購入したCさんがこれに当たります、この者に対しては登記なくして対抗できます。
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相続 民法改正案について
今日朝の天気予報でGW後半の天気について話していました。1週間前には後半は荒れる見込みだと行っていたので、一安心ですね。土日休みの方は羽を伸ばして、サービス業や小売業の方は書き入れ時。世間全般、天気の効果は大きいですね。 ここのところ天気予報がよく当たるなと感じていますが、1週間程度先の予報では、雨予報が晴れに変わるケースが多いかなとも感じています。天気予報の精度の問題ではなく天候が落ち着いている年ということなんでしょうが、ここ3ヶ月では群馬の雨量も平年を若干下回っていますね。夏も暑いようですし、また館林の話題も多くなるでしょう。 GW後半は実家の静岡に帰ります。昔は子供4人とワイワイ帰っていましたが、世代も引き継がれてしまいましたね。日曜日にお土産のハラダのラスクを買い込んできます。 今日は2月に法制審議会より法務大臣に答申された、相続分野に関する民法改正について書いてみます。 民法については昨年120年ぶりに契約や債権関係の改正法が国会で成立し、2020年4月1日に施行されます。相続分野についてはこれまでも社会情勢の変化に即して改正が行われ、配偶者や非嫡出子の法定相続分の割合等が改められてきましたが、今回改正案のポイントは次のとおりです。 ①配偶者の居住権を保護するための方策 ②遺産分割に関する見直し等 ③遺言制度に関する見直し ④遺留分制度に関する見直し ⑤相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し ⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策 まず配偶者(以下妻とします)の居住権を保護するための方策についてみてみます。 現行法では被相続人の死亡後に被相続人名義の自宅に妻のみが居住していた場合でも、子がいた場合には妻の法定相続分は2分の1であり、仮に現金預金等の相続分が少なかった場合には、2分の1を超えた分の自宅の評価額分を子に渡さなくてはならないケースが出てきます。 妻と子の折り合いが悪かったりして子から請求された場合には、現実に妻が自宅を処分して相当分を子に渡すというケースもあるようです。 例として妻と子がひとりいるケースです。自宅の評価額が2000万円で預貯金が1000万円、相続額の合計が3000万円とします。この場合は妻も子も法定相続分は1500万円となります。預貯金を子がすべて相続しても500万円足りませんので、この場合は残りの500万円を子が妻に主張することができます。妻としてはやむをえず自宅を処分して、その分を子に渡すこととなります。これでは被相続人の死亡により妻が困窮する事態に陥ってしまいます。 今回の改正案では超高齢社会を見据えて、高齢の妻の生活や住居を確保するための内容が盛り込まれています。 まず要項に明記されたのが「配偶者居住権」です。文字通り妻が自宅に住み続けることのできる権利であり、所有権とは異なって売買や譲渡はできません。居住権の評価額は住む期間によって決まり、居住期間は一定期間または亡くなるまでのいずれかの期間で、子との協議で決めます。 前述のケースで妻の居住権の評価額が1000万円だったとしますと、妻は法定相続分1500万円のうち1000万円分の居住権と残り500万円分の預貯金を相続することとなります。子は自宅の評価額2000万円から居住権を引いた1000万円分の所有権と、預貯金500万円を相続することとなります。妻が住んでいるあいだの必要経費は妻が負担しますが、固定資産等の税制についてはまだ決まっていません。 次の遺産分割に関する見直し等についてですが、現行法では妻が自宅等を生前贈与されていたとしても、自宅も遺産分割の対象となってしまいます。ですので前述のケース同様となります。 要綱では結婚から20年以上の夫婦に限り、自宅が遺産分割の対象から除外されることになります。前述のケースでは遺産分割の対象となるのは預貯金1000万円のみとなり、妻と子にそれぞれ2分の1づつが相続されます。これも長年連れ添った妻への配慮であり、高齢で再婚した場合等と区別するものです。期間は延期間であって離婚を挟んでも問題はありませんが、事実婚や同性婚は対象となりません。 3つめは遺言制度に関する見直しです。昨今は自筆証書遺言への関心も高まってきているようですが、現行民法ではすべての文言が自署である必要があります。改正案では自筆証書遺言に関しすべてが自署である必要はなく、財産目録等はパソコン作成のものを添付することでも可能となります。ただし各ページへの署名押印は必要となります。 また自筆証書遺言の保管制度が新たに創設され、遺言者は自筆証書遺言を各地の法務局に保管するよう申請することができ、死亡後は相続人等が保管先法務局に対して遺言書の閲覧請求等をすることができます。その際法務局は、他の相続人等に対しては通知をだすこととなります。 法務局が保管していた自筆証書遺言は検認を要しません。ただ公正証書遺言と異なり、法務局保管の自筆証書遺言が必ずしも最終最新のものではないおそれは残りますので、探索や確認は必要となります。 4つめは遺留分制度に関する見直しです。遺留分減殺請求権の効力については、受遺者等に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになり、権利行使により遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生するという考え方が採用されます。 また遺留分減殺請求の対象となる遺贈・贈与が複数存在する場合については現行法の規定に加えて、減殺の割合についてはこれまで解釈によっていたものが、今回案では明文化されています。遺留分の算定方法については現行法の相続開始の1年前にした贈与に加え、相続人贈与は相続開始前の10年間にされたものが算入対象となります。 5つめは相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直しについてです。これは遺言などで法定相続分を超えて相続した不動産等は、登記をしなければ第三者に権利を主張できないというものです。 最後に相続人以外の者の貢献を考慮するための方策についてです。現行法では寄与分については相続人にのみ認められていましたが、改正案では相続人以外の被相続人の親族が被相続人の介護をしていた場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭請求できる こととなります。 被相続人の親族とは、6親等以内の血族および3親等以内の血族の配偶者が対象となります。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/
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