同時履行の抗弁権について

今日は同時履行の抗弁権というものについて書いていきます。

契約の種類についてはいくつかありますが、ここでは2つの種類についてみてみます。ひとつ目はその契約が有償で行われるか、それとも無償でなされる契約かということです。契約の当事者同士が互いに経済的価値を得るものが「有償契約」であり、そうでないものが「無償契約」になります。

ふたつ目は、契約の当事者同士が互いに対価的な関係にある債務を負担する契約であるか、そういう性質を有しない契約であるかということで区分されるものです。前者を「双務契約」、後者を「片務契約」と言います。

双務契約というものは必ず有償契約の性質を持ちます。一方逆に、有償契約だからと言っても必ずしも双務契約とは限りません。消費貸借(お金を貸す場合など)は、一方が他方にする契約になりますので片務契約になります。ここで利息を付けない場合は無償契約になりますし、利息を付ける場合は有償契約になるからです。

前フリはそこまでにして本題の同時履行の抗弁権について見てみましょう。

「同時履行の抗弁権」とは、この「双務契約」における当事者の一方が、相手方が債務の履行を提供するまで、自分の債務の履行を拒絶することが出来る権利のことを言います。

たった今Aの代金を請求されても、Aという商品を配達してくれるまではその代金は支払いません、というようなことがこれに当たります。逆にAを配達したが支払いをしてくれない。代金を支払ってくれなければAは渡せませんという場合も同様になります。双務契約ですのでこの契約は当然有償契約ということになります。

同時履行の抗弁権は、次の内容を満たすことによって成立します。

①1つの双務契約から生じた対立する債務が存在していること

双方の債務がともに弁済期にあること

③相手方が自己の債務の履行またはその提供をしないで、他方の債務の履行を請求したこと

です。

②の弁済期については、それぞれの債務の弁済期がどちらが先であっても後であっても問題はありませんので、同時期に弁済期が到来するものである必要はありません。

同時履行の抗弁権を有している者は、履行期日を経過しても違法性はなく、履行遅滞の責任は負いません

これが訴訟になった場合についてですが、当事者の一方が債務の履行を請求し相手方が同時履行の抗弁権を主張した時は、双方の主張が堂々巡りになってしまいますので、裁判所からは、債務の履行を請求した側が債務の履行をし、それと引き換えに請求された側に履行を命じる、という「引換給付判決」がなされることとなります。

先に相殺の項で書いたように、同時履行の抗弁権が付着した債権を自働債権として相殺することはできないため、このような判決をすることになります。 

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商法 使用人について
今日は商法の続きを書いていきます。 前回は商号というものについて書きましたが、商号はその商号を定めた者しか使用できません。しかしその商号を定めた者が許可を与えた者については、その者の商号を使って営業をすることができます。これを「名板貸」といいます。 商号を貸した者を「名板貸人」と言い借りた者を「名板借人」と言いますが、お客さんや取引業者などが名板貸人の店と誤認して、その名板借人から不利益を被った者がいた場合は、名板貸人は名板借人と連帯して弁済する義務を負わなければなりません。 名板貸人の責任の成立要件としては次のとおりです。 ①名板借人が名板人の商号を使用しているという外観があること ②名板貸人が許可をしたという帰責事由があること(許可は黙示でも認められます) ③善意無重過失である第三者が誤認したこと です。なお、商号に付加された語句がある場合や商号が簡略化されている場合にも、第三者の誤認がある限り責任が発生します。ただこの場合には誤認された営業が、本来の商号である営業と同種であることが必要になります。 名板貸人に責任が及ぶ範囲としては、自分の商号を使って名板借人が行った、取引によって生じた債務になります。取引によって生じた債務については、名板貸人は名板借人と連帯して責任を負います。 この責任の範囲には、交通事故などの不法行為による損害賠償は原則として含まれません。しかし詐欺などの、取引行為と判断される不法行為については、責任の範囲に含まれるとされます。 では名板貸ではなく、営業を譲渡とした場合の責任についてはどうでしょうか。この場合は、譲渡される営業によって生じた債務は原則譲渡人が負いますが、譲受人が債務引受などをした場合については、譲受人も責任を負うことになります。また併せて譲渡人は、競業避止義務も負うこととなります。 次は「商業使用人」について見てみましょう。 「商業使用人」とは、雇用されて営業を補助する自然人を言います。商業使用人には、支配人や店舗の使用人などがあります。 「支配人」とは、商人や会社から営業所等の営業や事業を任された者を言います。支配人を選任した場合は、必ず登記をしなければなりません。 この支配人というものは商人等に代わる代理権を持ちますが、この代理権については営業や事業に関する一切の、裁判上または裁判外の行為に及びます。なお、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません。例えば支配人が行える業務を限定したとしても、通常に考えれば支配人の責任の範囲である、と考える善意の第三者には対抗できないということです。 では、支配人の義務についてはどうでしょうか。支配人は、雇用契約上の善管注意義務や報告義務などの責任を負っていますが、そのほか営業避止義務や競業避止義務というものも負っています。言い換えると、支配人は商人の許可を得なければ、次の4つをすることができないというものです。 ①自ら営業を行うこと ②自己または第三者のためにその商人の営業範囲内の取引を行うこと ③他の商人や会社、外国会社の使用人になること ④会社の取締役や執行役または業務を執行する社員になること です。以上支配人とは、商人から権限を付与された者になりますが、一方、表見支配人というものも存在します。表見という言葉は、民法の表見代理人の話に出てきましたね。それと同じようなものになります。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/date/2018/06/20   「表見支配人」とは、包括した代理権を与えられていない使用人であるにもかかわらず、支配人らしく思わせる名称を付けられた使用人のことを言います。例えば、責任権限を持っていない店員さんであるにもかかわらず、「お店責任者」などといった名札を付けられている場合がこれに当たります。 表見代理人は、裁判外の行為に関しては、善意の第三者に対しては支配人と同一の権限を有するとみなされます。権限がなくても、裁判上の行為を除き、善意の第三者に対しては支配人と同様の効力を有することとなります。責任権限がなくても、第三者に支配人と誤認させるような表示をさせている以上、裁判まで発展していない事案については、責任を持ちますよということになります。
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民法 債権者の権利について
今日は債務不履行が発生した場合の、債権者の権利について書いていきます。 債務不履行の際に債権者が債務者に請求する方法としては、 ①履行されていない債務を強制的に行わせること ②更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する この2通りが考えられます。 まず債務を強制的に行わせることについて見てみましょう。債務不履行とは債務者が履行を完全に行わない場合に発生しますので、これを強制的に行わせましょうということになります。これを「強制履行」といいます。強制履行の方法としては次の3つになります。 ①直接強制 ②代替執行 ③間接強制 です。 直接強制とは、裁判所への請求などによって、国家権力(執行機関)が債務者の意思にかかわりなく、直接的に債務内容の実現を図る方法になります。 代替執行とは、債権者や第三者によって、債務者に代って債務内容を実現させることです。特にこの場合は、実現にかかった費用は債務者から強制的に取り立てることとなります。 間接強制とは、債務の履行をさせるために一定額の支払いを命じて、その心理的な圧迫によって履行をさせようという方法になります。例としては、一定期間内に目的物を渡さない場合に、一定額の支払いを命じる場合などがあります。 次に、更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する方法について見てみましょう。 損害賠償とは、履行されなかった契約で生じた損害分の埋め合わせをさせるものであり、これを目的として金銭を請求できる権利を「損害賠償請求権」といいます。損害賠償請求は、特に特定のものを指定する意思表示がない場合は、通常は金銭に換算して行われます。これを金銭賠償の原則といいます。 埋め合わせをする損害の範囲ですが、これは「通常生ずべき損害」とされています。債務不履行が原因で直接失われた損害分を指します。 例外としては、当事者が予見したりまたは予見することができた「特別な事情」から生じた損害も含めることができます。履行が行われていたら、土地の値上がりによってさらに利益が得られた場合などがこれに当たります。 なお特別な事情とはあくまで発生するであろう事実をいうものであって、その時点で特別な損害が発生している必要はありません。 債務不履行に関しては債権者に過失がある場合も考えられますが、債権者に過失があった場合はその過失分を賠償額から差し引くことができます。この制度は「過失相殺」といいます。 過失相殺の制度は交通事故などの不法行為の場合にも適用されますが(歩行者の飛び出し等)、不法行為の場合の過失相殺はこれが行われてもその行為自体が免責されるものではなく、責任が軽減されるに過ぎません。また過失割合についても必ず相殺されるものではなく、事案によって任意的に決められる性質のものとなります。 一方この債務不履行に関する過失相殺については、債務者の損害賠償責任自体を免責することもでき、また過失割合についてはすべての事案について必要的に、必ず適用されます。 債務不履行による損害賠償については事後的に算出されるものだけでなく、「違約金」などの名目で契約によって、あらかじめ当事者間で金額を決めておくこともできます。これを「賠償額の予定」といいます。この額を定めていた場合は、債権者は損害額を証明する必要はなくなり、当事者はこの額に拘束されることとなります。 債務不履行における債務については、いろいろなものがあります。例えば家の建築を請け負った場合なども、この請負は「債務」になります。また特に債務が金銭によるものである場合は、特別なルールが定められています。 金銭は万能であり融通性が非常に高いために設けられたルールで、これを「金銭債務の特則」といいます。「金銭債務の特則」とは次の3つになります。 ひとつめは、金銭債務が不履行と言われる場合は常に「履行遅滞」の状態にあるとされ、「履行不能」の状態にはならないことです。この特則によって債務者は、弁済の義務から免れないこととなります。 2つめは、債権者側の損害の有無は問題とされず、債権者は債務不履行の事実さえ立証すれば良いとされることです。これによって損害額のみならず、その期間の利息も当然に賠償する義務が発生します。 3つめは債務者は、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」ということです。これは自分に過失がないことを証明しても、責任からは免れることは許されないという意味です。
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民法における危険負担について
今日は危険負担と言うものについて書いていきます。 「危険負担」とは、双務契約が成立した後どちらかの債務が完全に履行される前に、一方の債務(双務契約の場合は当事者双方がともに債権債務を有します)が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合に、どちらの当事者が責任を負うかというものです。 民法では「債務者主義」を採用し、どちらかの債務が完全に履行される前に一方の債務が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合でも、原則として債務者の負担になります。 例えば物の売買で見た場合、物を売る側は代金と引き換えに物を交付するという債務を負いますので、物の交付については売主側が債務者になります。ですので物が消滅してしまった場合は、売主側に責任はなくても、物の交付の履行不能によるリスクは、売主側が負うということになります。 これはあくまでも債務者の責によらない場合ですが、債務者に履行不能についての帰責事由がある場合は、危険負担の問題からは離れ、債務不履行に基づく損害賠償の問題になっていきます。またすでにどちらかの債務が履行された場合、今の例で行けば売主側が物を交付したかあるいは買主側が金銭を交付した場合は、同様に危険負担の問題とはなりません。賠償か解除かの問題になります。 話を戻します。債務者が危険負担を負う、リスクを負うとはどういうことでしょうか。 双務契約においては双方の債務がそれぞれ対価的意義を有しています。言い換えるとお互いに相手方に対する債権債務を有していることになります。一方の債務が消滅すれば他方の債務も消滅することになりますので、売主側の物が売主の責任によらずに消滅してしまった場合には、売主側は相手方に対して代金を請求できないということになります。売主の責任でなく物が消滅してしまっても相手方に対して代金を請求できないということは、物の消滅は売主自身で追わなくてはならない、という理屈になります。 つらつらと書きましたが、これが「債務者負担」というものになります。 債務者主義の例外として、「債権者主義」というものがあります。これは一方の債務が消滅しても、他方の債務が消滅しないという場合に採用されます。次の場合には債権者主義が取られています。 ①特定物に関する物権の設定、または移転を目的とする双務契約の場合 ②不特定物に関する契約についても、特定が生じた以降は債権者主義となります ③債権者の責に帰すべき事由によって、債務の履行が不能となった場合 です。 特定物とは、例えば世界に1本しかない、”この”ビンテージワインというようなものです。売買契約が締結された以降に売主の責任なくこのワインが消滅してしまった場合には、受け取るべきワインが存在していなくても、買主は代金を支払う義務があるということになります。 不特定物の特定とは、5本ある赤ワインの中から1本を選んだ場合などを言います。特定されていない5本のワインから、1本が特定されたということになります。また債権者側に理由があって債務が不履行になった場合には、債権者みずからが責任を負うということになります。 なお通常、契約の場合には危険負担を明記する場合が多くなりますが、今回書いてきたこの危険負担についての民法の規定は、義務ではなくあくまでも任意の規定になります。このような民法の規定によらず、当事者同士で別途決めることもできます。
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認知の効果について
今日は認知について書いていきます。認知は相続にも関係してくる分野になります。 配偶者を除き、相続人の第一順位は子になります。だんなさんが亡くなられていざ相続だという場合に、奥様と同居している成人のお子さんが3人いた場合には、通常はこの4人が相続人ということで相続の手続きを済ませることでしょう。 しかし相続を終えた後に、認知された非嫡出子が現れ、相続がやり直しになる場合があります。「嫡出子」とは法律上婚姻している夫婦間に生まれた子供を言い、「非嫡出子」とは法律上婚姻関係にない者の間で生まれた子になります。 この非嫡出子ですが、相続に際しては関わりを持ってくる場合があります。お子様たちとは血縁関係があることでしょうが、相続においては認知されているかいないかが重要な意味を持ってきます。認知されていなければ相続に関わりをもちませんが、「認知された非嫡出子」の場合は、相続権のある子になります。 「認知された非嫡出子」も他の子と同等の立場になりますので、遺言書のない相続の場合には、必ず戸籍をたどって相続関係を明らかにしておくことが重要になります。 では認知について見ていきましょう。前述した通り、「非嫡出子」とは婚姻関係にない男女間に生まれた子(婚外子)を言います。法的には婚姻関係にない内縁の妻との間に生まれた子も、家族が知らないいわゆる愛人との間に生まれた子もともに「非嫡出子」となります。 通常の婚姻関係にある男女間に生まれた子は「嫡出子」と言います。「非嫡出子」はその親との間に法律上の親子関係はありませんが、「認知」されると法律上の親子関係が生じます。 「認知」とは、非嫡出子の親が、その非嫡出子を自分の子として認める行為を言います。認知は生前に行うこともできますし、遺言で行うことも認められています(遺言認知)。また認知とは通常は父子関係における行為であり、母子関係においては分娩の事実により親子関係が当然に発生しますので、認知は不要になります。 認知により認知された非嫡出子は、父親との相続関係が認められることになります。法的に血族関係が認められ法定相続人になります。 たまにドラマなどで、愛人との間に生まれた子を、子供のない自分たちの実の子、非嫡出子として届け出るストーリーがあります。この場合はどうなるのでしょうか。 養子以外の子には血縁関係が必要となりますので、血縁関係のない戸籍上の妻の嫡出子となることはありません。不正の届出となり、事実が判明すれば嫡出子であることは否定されます。ただし判例からは「認知」の効果が認められ、認知された非嫡出子となります。 認知について話を戻します。「認知」には次のものがあります。 ①任意認知 ②強制認知 です。 では「任意認知」とはどのようなものを言うのでしょうか。 「任意認知」とは、父が自ら役所に「認知届」を提出して行う方法になり、遺言による方法も認められます。また認知は身分行為になりますので、未成年者や成年被後見人であっても、法定代理人の同意なしにすることができます。 なお任意認知は自らの意思ですることが必要になりますので、認知者の意思に基づかない認知届けは無効になります。 認知には次の例外を除き、子の承諾は不要です。認知に子の承諾を必要とする場合は次のとおりです。 ①成年の子を認知する場合は、本人の承諾が必要になります ②胎児を認知する場合は、その母親の承諾が必要になります ③成年者の直系卑属(孫等)がいる、死亡した子を認知する場合は、その成年である直系卑属の承諾が必要になります 「強制認知」とは、父または母が認知をしないときに、その子や直系卑属が裁判により求めるものになります。ただしこれは父または母の死亡から3年以内にする必要があります。 任意認知も強制認知も、その効果は子の出生時にさかのぼって親子関係が生じます。この際も、第三者が既に何らかの権利を取得している場合には、その権利を害することはできません。 最後に「準正」について付け加えておきます。 「準正」とは、非嫡出子を嫡出子にする制度を言います。準正の要件は、「認知」+「婚姻」になります。認知により相続権が発生しますが、あくまでも「認知された非嫡出子」であることには変わりありません。これを嫡出子に変える制度になります。 「準正」には認知と婚姻の順序によって2つのパターンがあります。 ①婚姻準正 ②認知準正 です。 「婚姻準正」とは、認知が確定した後に父母が婚姻した場合で、婚姻の時から準正が発生します。 「認知準正」は婚姻をした父母が認知をした場合で、認知の時から準正が生じます(この場合も実務上は婚姻の時からとされています)。 順番はどちらであっても、準正が生じた子(準正子)は、嫡出子の身分を取得します。なお現在の民法では、相続においても嫡出子と認知された非嫡出子の相続分は変わりませんが、改正前は差がありましたので、この準正の手続きはより重要なものでした。
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民法における婚姻について
今日は民法のうち「家族法」の分野に定められた、「婚姻」について書いていきます。ここも相続の際には非常に大きく関わってきます。 民法では現行法や改正法においても「法律婚主義」を採用しています。ですので相続される権利のある配偶者は、「婚姻関係にある者」のみになります。どんなに長く一緒に生活をし事実上は夫婦の関係にあるにしても、婚姻の届出をしない限りは婚姻は成立せず、法律上は夫婦と認められないことになります。 「婚姻」が成立した場合は、基本的には離婚をしない限りは配偶者としての権利は保障されます。 なお「婚姻」は私法上の契約であり本人の意思が最大限尊重されますので、成年被後見人であっても「単独で」することができます。 婚姻の成立要件としては次の3つがあります。 1.婚姻意思の合致(実質的要件) 2.婚姻障害に該当しないこと(実質的要件) 3.婚姻の届出(形式的要件) です。 一つ目の要件である「婚姻の意思の合致」には、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思が必要である、とされています。つまり当事者お互いが自ら、夫婦の関係になることを望んでいることが要件になります。 本当に婚姻する意思があるわけではなく、相続などのためだけに形式的に婚姻届を出した場合はその届出は無効になります。 次の「婚姻障害」には、次のようなものが該当します。 ①婚姻適齢 ②重婚禁止 ③再婚禁止期間 ④近親婚の禁止 ⑤直系姻族間の婚姻禁止 ⑥養親子関係者間の婚姻禁止 ⑦未成年者の婚姻 になります。 「婚姻適齢」とは、男性は18歳、女性は16歳にならないと婚姻できないというものです。これに違反した場合は婚姻が取り消されます。なお女性が男性と異なるのは合理性を欠くとして、女性も18歳に引き上げる方向で民法改正が進められています。 「重婚禁止」とは、配偶者のある者は重ねて婚姻することができないというものです。日本においては「一夫一婦制度」が維持されています。 なお重婚については、行方不明者であった配偶者が現れた場合の対応に問題が残ります。これについては先に「失踪宣告」で記事に載せましたので、ご確認ください。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/786 「再婚禁止期間」とは、女性が再婚するには、婚姻の解消又は取消しの日から起算して100日経過後でなければすることができないというものです。なおこの期間の例外として、女性が前婚の解消若しくは取消しの時に懐胎(妊娠)していなかった場合、または女性が前婚の解消若しくは取消しの後に出産した場合には、再婚禁止期間の規定を適用されません。 以前はこの期間が6ヶ月経過後とされていましたが、平成28年6月1日施行の改正民法により見直しが図られました。なおこの規定は、父親の特定を法律上可能にするために設けられています。 次の「近親婚の禁止」では、優生学上の理由から、直系血族または3親等以内の傍系血族の間では婚姻することはできないというものになります。前回の親族の記事で確認しますと、3親等の血族である叔母とは結婚できませんが、その子であるいとことは結婚できることになります。菅元首相の奥さんもいとこでしたっけ。 「直系姻族間の婚姻禁止」については優生学上の理由はありませんが、同義上の理由から設けられています。これについては姻族関係が終了した後も禁止が解除されません。 「養親子関係者間の婚姻禁止」についても直系姻族間と同様の取り扱いになります。 以上挙げた規定については、違反した場合はすべて婚姻が取り消しとなります。 最後の「未成年者の婚姻」については、最初の項の婚姻適齢に述べましたが、婚姻適齢に達しても未成年者である限りは、婚姻するためには父母の同意が必要になります(父母の一方が反対等しても、一方の同意で足ります)。これについては18歳成人の改正民法が2022年4月1日より施行されますので、規定が変わることになります。 なお実際は父母の反対があったとしても、婚姻自体は有効になります。
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贈与も契約の1種
今日は贈与というものについて書いていきます。 贈与は遺言相続の場面でも多く出てくる言葉であり、私のホームページでも説明を記載していますが、今回はそのもとになる民法の規定について見ていきます。 「贈与」とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを受諾することによってその効力が生じるものです。贈与も民法の定める典型契約(贈与契約)になりますが、契約と言っても贈与者が受贈者に無償で財産的利益を与えるという合意のみで成立する契約になります。 これは書面でなく口頭ですることもできますし、契約締結時に目的物を交付する必要もありません。また無償であげるのですから、贈与者はこれに瑕疵があっても担保責任を負うことはありません。最も瑕疵があることを知っていながらこれを受贈者に教えずに贈与した場合には、担保責任を負うことになります。 贈与は書面ですることを要しませんが、書面によらない贈与の場合は各当事者が自由に撤回することができます。書面によらないものならば、それほど重要な契約ではないでしょうということです。裏を返せば贈与も契約であるのだから軽々に口約束にせず、書面によって権利移転の意思を明確にし、トラブルを防止する措置が必要ですよということです。 しかし自由に撤回できると言っても、既に動産の引渡しが完了していたり不動産の引渡しや登記が完了しているといった、履行の完了している部分については撤回することはできません。 これは遺言の記事でも書いていますが、贈与には次の特殊なものもあります。 ①負担付き贈与 ②死因贈与 ③定期贈与 です。 「負担付き贈与」とは、受贈者に贈与の条件として一定の義務を負担させる贈与契約になります。例えば、私が生きているあいだは私の看護をする、ことを条件に贈与を行なう場合などです。贈与者は受贈者の負担の限度において担保責任を負うとされていますので、負担が履行された場合には必ずその贈与が行われることとなります。 「死因贈与」とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与契約になります。似たようなものに「遺贈」がありますが、遺贈は被相続人の一方的な単独の意思表示となりますので、贈与契約とは趣旨が異なります。 しかし性質自体は似ているものになりますので、遺贈に関する規定は準用され、贈与者はいつでも一方的に贈与契約を撤回することができます。対して受贈者はこれを放棄することはできません。 「定期贈与」とは、一定期間ごとに無償で財産を与えるという契約になります。定期贈与は当事者同士の個人間の関係性によるものですので相続はされず、当事者の一方の死亡によって効力が失われることとなります。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category2/entry65.html  
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今日は民法の不法原因給付と言うものについて書いていきます。 前回は不当利得返還請求について書きましたが、それは正当な理由で給付したものの返還を請求する権利でした。特則にもあったように、みずからが不合理な行為でした給付については、保護も図られないものです。 今回の「不法原因給付」とはその給付が不法な原因であるものを指しますので、そもそも利得の返還を請求することができないという内容になります。 「不法な原因」とは具体的には、違法賭博で負けた金銭の支払いや愛人への贈与などの、公序良俗違反のことを言います。「給付」とは相手方に、最終的な利益を与える行為を言います。これは金品を与えるといった事実上の利益であっても、財産権や財産的利益を与えるものであっても構いません。 動産の場合の給付は、「引渡し」が要件になります。不動産の場合では未登記不動産は「引渡し」のみで「給付」となりますが、登記された不動産の場合は「引渡し」に加えて「登記」がなされることが給付の成立要件になります。 この条項には内容的に不法原因給付ではあっても、不法な原因が受益者についてのみ存在した場合には不法原因給付ではないという但し書きが付されています。 判例では、給付者に多少の不法な点があっても受益者にも不法の点があり、給付者の不法が受益者の不法に比べて極めて微弱に過ぎない場合には、不法な原因が受益者のみに存したとしてこの但し書きが適用されています。 なお前述した違法賭博で負けた金銭の支払いに関して等では利得の返還請求はできませんが、勝った側が返還を約束した場合には、別の契約としての請求をすることはできます。
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今日は民法における監督者や使用者の責任について書いていきます。 今日確認するのは、 1.責任無能力者の監督義務者等の責任 2.使用者の責任 3.工作物責任 4.注文者の責任 5.動物占有者の責任 についてです。ではそれぞれ見ていきましょう。 まず1の「監督義務者の責任」についてです。前回の不法行為の記事でも触れました、①の未成年者等の責任無能力者ですが、これらの者は、他人に違法な行為で損害を与えても責任を負わない場合があります。しかしそれでは被害者の救済が図られませんので、被害者救済の手段として責任無能力者を監督すべき「法定義務」のある、監督義務者や代理監督者が責任を負う場合があります。 監督義務者等は、監督を怠らなかったことを立証できない限り、責任を負うとされています。すぐ近くで万全の体制で監督をしていても不測の自体で損害が生じてしまった時などは、監督を怠らなかったことを証明すれば責任は問われないということになります。 ここで未成年である責任無能力者とはだいたい12才未満の者とされていますので、12才以上の責任能力を有する未成年の場合には、監督義務者は原則責任を負いません。しかし義務違反と未成年の不法行為に相当因果関係が認められる時は不法責任を負う場合があります。 次に2の「使用者責任」についてです。「使用者責任」とは、被用者(使用されている者)がその使用者の事業を執行する上で、他者に違法な損害を与えた場合の責任を言います。使用者責任成立の要件は次のとおりです。 ①使用者と被用者との間に、指揮監督などの使用関係があること ②被用者の加害が事業の執行についてなされること ③被用者が不法行為の一般的成立要件を備えていること ④使用者が専任・監督上の注意義務を尽くしていないこと です。 ②の事業執行についてとは、具体例を挙げますと、タクシーや運送業の運転手が仕事中に事故を起こした場合などです。ただここで問題となるのは、どこまでの範囲が業務執行に当たるのかということです。運行中によそ見をして事故を起こしたなどの場合がこれに当たりますが、そのような場合のみならずもう少し広い概念で、客観的に見て職務行為の範囲内だと認められる場合が該当するとされています。 なお業務中の被用者の暴力行為については、その損害が業務を行うことがきっかけとなり、またその業務と密接な関連性を有すると認められるか、によって判断されます。 今述べたように、使用者はその使用者責任によって被害者に賠償を行いますが、その場合に直接の加害者は蚊帳の外かというとそうではありません。賠償をした使用者は、今度は加害者である被用者に行った賠償について求償することができます。ただし求償する内容についてはすべてをできるわけではなく、所々の事情を鑑みて、信義則上相当と認められる範囲に限定されます。 被用者が第三者と共同で不法行為を行い、その賠償を使用者がした場合には、使用者は被用者のみならず第三者にも求償をすることができます。この場合は被用者と第三者の過失割合によって求償を行ないます。 3の「工作物責任」とは、土地の工作物の設置や保存(維持管理)について適正に行う責任を言います。この設置や保存に「瑕疵」があり、そのために他人に損害を与えた場合はまずその工作物の「占有者」が責任を負います。 この占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明したときは、「所有者」が責任を負うこととなります。 ここで言う「土地の工作物」とは、工事などによって土地に固定して作られたものをいい、建物や橋、鉄道などがこれに当たります。工作物の「瑕疵」とは、工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。その物自体の性能などが安全性を欠いている場合だけでなく、その物に係る安全設備を欠いているために危険な状態を生じさせている場合も瑕疵に該当します。 占有者は必要な注意を払ったことを証明すれば免責されると書きましたが、最終的な所有者の責任は免責が認められない「無過失責任」となります。 4の請負契約などの「注文者の責任」ですが、注文者がした指図や自己の過失がない限りは、原則注文者については第三者に損害を与えても賠償責任は負いません。 最後に「動物占有者の責任」についてです。ペットの買主などを言いますが、この動物を管理する者は、動物が他人に与えた損害については原則賠償する責任を負います。ただしこの場合も、占有者が相当の注意をもって管理したことを立証すれば免責される場合もあります。
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7月1日民法一部改正(相続分野)施行
相続分野の改正民法が、本年7月1日に施行となります。 すでに施行された「自筆遺言書の方式緩和」、2020年4月1日施行の「配偶者の居住権を保護するための方策(短期、長期)」、2020年7月10日施行の「自筆証書遺言の保管制度」を除き、2019年7月1日より施行されます。 あと1月ほどとなりましたが、これには「遺留分制度」や「相続人以外の者の貢献」に関する改正が含まれますので、下記リンクより一度ご確認下さい。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html  
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民法における不法行為について
今日は不法行為について書いていきます。 「不法行為」とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害すること言い、これを侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責任を負います。交通事故も不法行為に当たります。 法学的には「不法行為」は、 ①被害者の救済を図る損害補填的機能 ②将来の不法行為を抑止する予防的機能 ③加害者に制裁を加える制裁的機能 を有するとされています。 不法行為の成立要件は次のとおりです。 ①加害者に故意または過失があること ②権利または法律上保護される利益の侵害があること ③損害が実際に発生していること ④権利や利益の侵害と損害との間に因果関係が存在すること ⑤加害者に責任能力があること です。 ①の「故意」とは、自分の行為によって権利や利益の侵害が発生することをわかっていながらすることであり、「過失」とは損害の発生を予測して、あらかじめ防止すべき義務を怠ることを言います。 ②については加害行為の内容や程度を加味し、個別具体的な判断が必要になります。必ずしも法律上保護されていない利益であったとしても、救済の対象となる場合があります。 ③の損害については、財産的な損害はもちろんですが、慰謝料などのような精神的な損害もあります。 ④の因果関係については、先に記事にしました416条の「通常生ずべき損害」と「予見することができる特別の損害」の規定を類推適用して、「相当因果関係」が認められる範囲で損害賠償を請求することができます。 ⑤の責任能力とは自己の行為の責任を弁識できる能力を言います。民法上の責任無能力者とは、12才未満の者や心神喪失者などを指します。ちなみに刑法上では14才未満の者や心神喪失者等を指します。 不法行為が成立した場合には、被害者に損害賠償請求権が発生します。相続との関係では、この損害賠償請求権は被害者の生前の意思表示にかかわらず相続の対象となります(判例)。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry44.html 賠償の方法は原則金銭賠償になります。例外として名誉毀損裁判の場合には、名誉回復措置となることもあります。 この損害賠償を請求する権利者についてですが、不法行為を受けた被害者は当然請求者になりますが、不法行為が生命を侵害した場合やそれに匹敵する内容の場合には、被害者の父母や配偶者および子は「慰謝料」を請求することができます。 なおこの不法行為に基づく請求権についても消滅時効があります。被害者等が損害及び加害者を知ってから3年で消滅時効にかかり、不法行為の時から20年で除斥期間とされ消滅します。 除斥期間とは時効のように中断や停止が認められず、期間の経過とともに当然に権利が消滅する期間を言います。なお2020年4月1日施行の債権関係の民法改正においては、20年は除斥期間ではなく時効期間であることが明記されました。 https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html 最後に不法行為における過失相殺について触れておきます。 過失相殺は債務不履行の記事でも書きましたが、債務不履行の相殺については発生すれば必ず必要的に行われる相殺であって、責任軽減だけでなく免責もすることができました。 一方不法行為における過失相殺については、損害賠償の額を減額できるだけであって不法行為の責任を免責することはできません。またその減額についても必ずなされるものではなく、過失の態様によって任意的に判断されます。 なお被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上一体をなすと見られる者の過失も含まれます。例えば子供が道路を飛び出して自動車にはねられた場合には、一緒にいた母親も監督不十分で過失責任も問われます。ここではあくまで身分上、生活関係上一体をなすことが要件になりますので、監督していた保母さんなどの責任は過失相殺されません。
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