今日は民法の中の物権変動というものについて書いてみます。
物権とは先日の記事に書きましたが、民法では債権並ぶ財産権です。「物」を支配する排他的な権利であり、代表的なものには所有権があります。
物権は先に対抗要件を具備したものが優先となります。また物権は債権に優先しますが、例外として対抗要件を備えた不動産賃借権は物権と同様の扱いになります。
物権には占有権が発生しますので、占有を阻害された場合にはこれを取り除く権利が発生します。これを物権的請求権と言いますが、具体的には次の3つがあります。
①返還請求権であり、占有回収の訴えにより目的物の返還を請求するもの
②妨害排除請求権であり、占有保持の訴えにより妨害の除去や妨害行為の禁止等を求めるもの
③妨害予防請求権であり、占有保全の訴えにより将来の妨害の原因を除去して未然に防ぐもの
です。物権変動とは、物権の発生や変更、消滅のことを言います。変動の原因は当事者の意思表示のみによるものであり、 契約等は必要ありません。また時効や相続によっても変動します。
変動の時期は当事者双方の意思表示が合致した時点であり、その時点をもって権利が移転します。
物には特定物(NO999のこの車)と不特定物(お店にあるレクサス)がありますが、特定物の売買における変動の時期は、特約がなければ契約と同時に所有権が移転し、特約があれば特約で定めた時期に移転します。不特定物の売買における変動の時期は、目的物が特定したときになります。
では次に不動産物件の変動を見てみましょう。不動産は物権変動をしても、登記がなければ第三者には対抗できません。登記とは不動産における公示のことです。公示とはそれをすることによって、その事実を公衆一般に知らしめることです。ですので不動産登記制度は、その土地の所有者や債権者を公にする制度になります。
不動産の所有権を主張するものが複数いる場合では(二重譲渡の場合等)、その優劣は登記の先後によります。不動産は登記を行わないと、完全に排他性のある物件を取得できないことになります。ここでこの不動産の物権変動の条項に出てくる用語について触れておきます。
まず「第三者」とは、これは本試験においても重要な事項ですが、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(けんけつ)を主張するにつき正当な利益を有する者」のことです。この場合の第三者には単純悪意者は含みますが、背信的悪意者は除外されます。
「背信的悪意者」とは物権変動の事実を知っており、かつ登記を備えていない者に対してその不存在を主張することが信義に反する者のことです。具体的な例としては、AさんがB土地を最初に購入しかつ未登記であった場合に、それをネタにAさんに高値で売る目的でB土地を二重に購入したCさんがこれに当たります、この者に対しては登記なくして対抗できます。
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今日は債務不履行が発生した場合の、債権者の権利について書いていきます。
債務不履行の際に債権者が債務者に請求する方法としては、
①履行されていない債務を強制的に行わせること
②更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する
この2通りが考えられます。
まず債務を強制的に行わせることについて見てみましょう。債務不履行とは債務者が履行を完全に行わない場合に発生しますので、これを強制的に行わせましょうということになります。これを「強制履行」といいます。強制履行の方法としては次の3つになります。
①直接強制
②代替執行
③間接強制
です。
直接強制とは、裁判所への請求などによって、国家権力(執行機関)が債務者の意思にかかわりなく、直接的に債務内容の実現を図る方法になります。
代替執行とは、債権者や第三者によって、債務者に代って債務内容を実現させることです。特にこの場合は、実現にかかった費用は債務者から強制的に取り立てることとなります。
間接強制とは、債務の履行をさせるために一定額の支払いを命じて、その心理的な圧迫によって履行をさせようという方法になります。例としては、一定期間内に目的物を渡さない場合に、一定額の支払いを命じる場合などがあります。
次に、更なる履行を請求せずに、損害賠償を請求する方法について見てみましょう。
損害賠償とは、履行されなかった契約で生じた損害分の埋め合わせをさせるものであり、これを目的として金銭を請求できる権利を「損害賠償請求権」といいます。損害賠償請求は、特に特定のものを指定する意思表示がない場合は、通常は金銭に換算して行われます。これを金銭賠償の原則といいます。
埋め合わせをする損害の範囲ですが、これは「通常生ずべき損害」とされています。債務不履行が原因で直接失われた損害分を指します。
例外としては、当事者が予見したりまたは予見することができた「特別な事情」から生じた損害も含めることができます。履行が行われていたら、土地の値上がりによってさらに利益が得られた場合などがこれに当たります。
なお特別な事情とはあくまで発生するであろう事実をいうものであって、その時点で特別な損害が発生している必要はありません。
債務不履行に関しては債権者に過失がある場合も考えられますが、債権者に過失があった場合はその過失分を賠償額から差し引くことができます。この制度は「過失相殺」といいます。
過失相殺の制度は交通事故などの不法行為の場合にも適用されますが(歩行者の飛び出し等)、不法行為の場合の過失相殺はこれが行われてもその行為自体が免責されるものではなく、責任が軽減されるに過ぎません。また過失割合についても必ず相殺されるものではなく、事案によって任意的に決められる性質のものとなります。
一方この債務不履行に関する過失相殺については、債務者の損害賠償責任自体を免責することもでき、また過失割合についてはすべての事案について必要的に、必ず適用されます。
債務不履行による損害賠償については事後的に算出されるものだけでなく、「違約金」などの名目で契約によって、あらかじめ当事者間で金額を決めておくこともできます。これを「賠償額の予定」といいます。この額を定めていた場合は、債権者は損害額を証明する必要はなくなり、当事者はこの額に拘束されることとなります。
債務不履行における債務については、いろいろなものがあります。例えば家の建築を請け負った場合なども、この請負は「債務」になります。また特に債務が金銭によるものである場合は、特別なルールが定められています。
金銭は万能であり融通性が非常に高いために設けられたルールで、これを「金銭債務の特則」といいます。「金銭債務の特則」とは次の3つになります。
ひとつめは、金銭債務が不履行と言われる場合は常に「履行遅滞」の状態にあるとされ、「履行不能」の状態にはならないことです。この特則によって債務者は、弁済の義務から免れないこととなります。
2つめは、債権者側の損害の有無は問題とされず、債権者は債務不履行の事実さえ立証すれば良いとされることです。これによって損害額のみならず、その期間の利息も当然に賠償する義務が発生します。
3つめは債務者は、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」ということです。これは自分に過失がないことを証明しても、責任からは免れることは許されないという意味です。
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今日は同時履行の抗弁権というものについて書いていきます。
契約の種類についてはいくつかありますが、ここでは2つの種類についてみてみます。ひとつ目はその契約が有償で行われるか、それとも無償でなされる契約かということです。契約の当事者同士が互いに経済的価値を得るものが「有償契約」であり、そうでないものが「無償契約」になります。
ふたつ目は、契約の当事者同士が互いに対価的な関係にある債務を負担する契約であるか、そういう性質を有しない契約であるかということで区分されるものです。前者を「双務契約」、後者を「片務契約」と言います。
双務契約というものは必ず有償契約の性質を持ちます。一方逆に、有償契約だからと言っても必ずしも双務契約とは限りません。消費貸借(お金を貸す場合など)は、一方が他方にする契約になりますので片務契約になります。ここで利息を付けない場合は無償契約になりますし、利息を付ける場合は有償契約になるからです。
前フリはそこまでにして本題の同時履行の抗弁権について見てみましょう。
「同時履行の抗弁権」とは、この「双務契約」における当事者の一方が、相手方が債務の履行を提供するまで、自分の債務の履行を拒絶することが出来る権利のことを言います。
たった今Aの代金を請求されても、Aという商品を配達してくれるまではその代金は支払いません、というようなことがこれに当たります。逆にAを配達したが支払いをしてくれない。代金を支払ってくれなければAは渡せませんという場合も同様になります。双務契約ですのでこの契約は当然有償契約ということになります。
同時履行の抗弁権は、次の内容を満たすことによって成立します。
①1つの双務契約から生じた対立する債務が存在していること
②双方の債務がともに弁済期にあること
③相手方が自己の債務の履行またはその提供をしないで、他方の債務の履行を請求したこと
です。
②の弁済期については、それぞれの債務の弁済期がどちらが先であっても後であっても問題はありませんので、同時期に弁済期が到来するものである必要はありません。
同時履行の抗弁権を有している者は、履行期日を経過しても違法性はなく、履行遅滞の責任は負いません。
これが訴訟になった場合についてですが、当事者の一方が債務の履行を請求し相手方が同時履行の抗弁権を主張した時は、双方の主張が堂々巡りになってしまいますので、裁判所からは、債務の履行を請求した側が債務の履行をし、それと引き換えに請求された側に履行を命じる、という「引換給付判決」がなされることとなります。
先に相殺の項で書いたように、同時履行の抗弁権が付着した債権を自働債権として相殺することはできないため、このような判決をすることになります。
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今日は抵当権について書いていきます。
抵当権は相続の場合に現れることも多いものです。内容によっては相続放棄ということもあるかも知れません。一応の知識は身につけておきましょう。
抵当権の定義としては、「抵当権者が、債務者または第三者(物上保証人)が占有を移転しない で債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」です。抵当権の特徴としては、
①抵当不動産の占有を債務者から移転しないで、債務者に占有させたままにすること
②抵当不動産の交換価値を把握する権利
であることにあります。債務者の住んでいる自宅や営業している店舗、工場などの占有を移転せずに担保の目的物として設定し、営業を継続しながらそこから生み出された利益を返済に充てるという効果的な制度になります。
抵当権は、債権者と抵当権設定者の合意のみで成立します(諾成契約といいます)。必ずしも債務者が抵当権設定者になるとは限らず、債務者以外の者が設定者になる場合もあります。この者を物上保証人といいます。
また抵当権の設定は債権発生の先でも後でも構いません。金銭貸借の場合に事前に手続きを行っても問題ありませんし、将来発生するであろう債権のために設定することも可能です。
抵当権は何にでも設定できるものではなく、不動産や地上権、永小作権といった、公示が可能なもの(登記)に限られます。抵当権は対抗要件(登記)を備えた場合は、第三者に対抗できます。
債務者は同じ目的物について、ひとつだけでなく複数の抵当権を設定することができます。この場合は抵当権に順位が付けられますが、その順位は登記の先後によります。第1順位の抵当権は1番抵当権、次位は2番抵当権といいます。
では抵当権の効力などについて見ていきましょう。抵当権を発生させる非担保債権は、金銭債権でもその他の債権でも構いません。既に発生している債権でも、将来発生する債権のも設定することができます。
元本の債権は全額担保されますが、当然そこで発生した利息も抵当権から得ることができます。しかし利息についてはすべてを充てられるわけではなく、後順位の者や順位の付いていない一般債権者がいる場合は、直近2年分しか認められません。
抵当権は主として不動産を目的物としますが、その不動産は単独という場合だけではなく、建物や家具類、あるいは庭木といったものまで付いている場合が多くあります。この場合には、抵当権が及ぶものと及ばないものが規定されています。抵当権の及ぶものとしては、次のものが挙げられます。
①付加物(付加一体物)
②従物
③従たる権利
④果実
⑤分離物
です。付加物とは庭に植えられている木や、増築された部屋といった、土地や建物に固定されて一体になっているもののことです。
従物とは必ずしも分離ができないものではありませんが、その目的物に従って用をなしているもののことです。例としてはガソリンスタンドのタンクが挙げられます。
次の従たる権利とは、建物を目的物とした場合の敷地利用権などがこれに当たります。
果実とは、その目的物が生み出すもののことであり、駐車場の賃貸料等がこれに当たります。弁済の不履行があった場合は、果実にも抵当権が及ぶこととなります。
分離物とは抵当権の目的物と切り離せることのできる動産になりますが、この動産が抵当権の目的物となっている場合には、もしその動産が不動産等から持ち出された場合には、返還を請求できることとなります。
最後にここで、当事者以外の第三者が抵当権の目的物を破損させた場合はどうなるのでしょうか。抵当権設定権者は債務者の場合と同様に、この第三者に対しても損害賠償請求や妨害排除請求を行うことができます。
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今日は権利能力・意思能力・行為能力というものについて書いてみます。
まず権利能力とはどういうものでしょうか。権利能力とは、権利や義務の主体となりうる地位や資格のことであり、自然人である人間はもちろんのこと、法人も含む概念です。生まれた時に取得し、死亡した時に失います。相続の記事でも触れましたが、胎児については権利能力は認められませんが、相続や遺贈を受ける権利、また不法行為による損害賠償権は例外として、生きて生まれた場合にさかのぼって認められることになります。
次の意志能力とは、自分の行為の結果を理解(弁識)できるだけの精神能力のことをいい、一般的には10才程度の者であれば有するとされています。よく犯罪などで鑑定が行われますが、通常は意思能力を有するものであっても、泥酔している場合などは意思能力を有していないとされます。
意思能力は私的自治の前提となりますので、意思無能力者の行為はすべて無効となります。
行為能力とは、単独で有効な法律行為を出来る能力のことです。これは法律でその地位や資格が定められており、法律によって行為能力が制限されている者を制限行為能力者といいます。それらの人たちの行動を抑制するという趣旨ではなく、物事を単独で行ってしまった場合にその結果から守るという趣旨で、民法に明記されています。
制限行為能力者は未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4つが定められています。未成年を除く3者については、保護の必要性が大きい順に並べましたが、それらについて順に見てみましょう。
まず未成年者ですが、定義としては、20歳に満たない者を未成年者といいます。20歳になると成年となります。しかし婚姻をすれば成年擬制という制度によって、成年とみなされます。これは離婚してもその後も有効になります。成年擬制は法律のいろいろな場面で出てきますので、覚えておいたほうがよいです。
例えば養子をするのは成年でないとできませんが、成年擬制の場合はできます。また商法においても未成年は登録をしないと営業ができませんが、これも必要なくなります。
未成年者が契約等の法律行為を行う場合には、親権者などの法定代理人の同意が必要になります。そしてこの規定に反して行った行為については、本人または法定代理人が取り消すことができます。
例外としてはむつかしい表現になりますが、「単に利益を得、義務を免れる法律行為」は単独でできます。贈与を受けたり債務を免除されたりがこれに当たります。成年になると様々な権利義務が発生しますが、成年擬制の場合にも権利も発生しますが、反面法律で守られる場面も減るということです。権利と義務は表裏一体です。
未成年者の法定代理人(親権者等)の権限としては、代理権、同意権、取消権、追認権があります。法定代理人は未成年が行なった法律行為について、同意をしたり後から認めることによって、行った法律行為を有効なものにすることができます。
次は成年被後見人です。これは精神上の障害によって、「事理弁識(じりべんしき)能力を欠く常況」にあり、他の者の後見が必要な者のことをいいます。事理弁識能力とは物事の結果などについて認識することができ、それに対して有効な判断が出来る能力のことです。常況とはいつでもそういう状態にあるということです。一時的な場合には使われません。成年被後見人は、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者がなることができます。
成年被後見人の行った法律行為は取り消せます。これは成年後見人が同意した行為でも取り消すことができます。裏を返せば、成年後見人には同意権はないということです。ただし日常品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せません。成年後見人の権限は、代理権、取消権、追認権です。
次は被保佐人について見てみます。被保佐人は、精神上の障害によって、事理弁識(じりべんしき)能力が「著しく不十分」な者で、家庭裁判所の補佐開始の審判を受けた者をいいます。原則として単独で法律行為を行うことはできますが、不動産などの重要な財産の処分などは保佐人の同意が必要になります。
同意を欠いた場合は取り消すことができます。日常品の取り扱いに関しては取り消せません。保佐人の権限は民法13条1項に書かれている項目(不動産の処分や訴訟行為、相続に関すること等)についての同意権、取消権、追認権、代理権があります。この場合の代理権についてのみ、家庭裁判所の審判を受けるかどうかは本人自身の請求か同意が必要になります。本人が拒否すれば代理権は付与されません。
最後の被補助人とはどのような者でしょうか。これは事理弁識能力が「不十分」であり、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます。本人自身が審判開始を請求するか、本人以外の者が請求をした場合は、本人の同意が必要になります。前2者と異なり、補助開始の審判をする場合は同時に同意見付与の審判と代理権付与の審判、この一方または両方の審判をしなければなりません。被補助人の権限ですが、代理権付与の審判を受けた特定の行為については代理権をもち、同意権付与の審判を受けた特定の行為については同意権、取消権、追認権をもちます。以上において各後見人はひとりでも複数でも構いません。法人でもなることができます。また必要な場合には後見人を監督する立場の監督人も付けることができます。また後見人は任意に契約する(任意後見人)することもできますが、任意後見の場合は代理権のみが付与され、同意権や取消権は付与することができません。
相続の場面では、共同相続人がいる場合には必ず遺産分割協議が行われます。この協議では相続人全員の参加と合意が必要となります。ですので、相続人の事理弁識能力に問題がある場合は代理人の選任が必須となる場合があります。その者がまだ代理人を有していない場合には、状況をみて家庭裁判所への選任請求をしなければなりません。また相続人に未成年がいる場合には、親との利益相反との関係から特別代理人の選任も請求しなければならないので、注意が必要です。特別代理人についてはあらためて別の記事で書いていきます。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry62.html
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今日は認知について書いていきます。認知は相続にも関係してくる分野になります。
配偶者を除き、相続人の第一順位は子になります。だんなさんが亡くなられていざ相続だという場合に、奥様と同居している成人のお子さんが3人いた場合には、通常はこの4人が相続人ということで相続の手続きを済ませることでしょう。
しかし相続を終えた後に、認知された非嫡出子が現れ、相続がやり直しになる場合があります。「嫡出子」とは法律上婚姻している夫婦間に生まれた子供を言い、「非嫡出子」とは法律上婚姻関係にない者の間で生まれた子になります。
この非嫡出子ですが、相続に際しては関わりを持ってくる場合があります。お子様たちとは血縁関係があることでしょうが、相続においては認知されているかいないかが重要な意味を持ってきます。認知されていなければ相続に関わりをもちませんが、「認知された非嫡出子」の場合は、相続権のある子になります。
「認知された非嫡出子」も他の子と同等の立場になりますので、遺言書のない相続の場合には、必ず戸籍をたどって相続関係を明らかにしておくことが重要になります。
では認知について見ていきましょう。前述した通り、「非嫡出子」とは婚姻関係にない男女間に生まれた子(婚外子)を言います。法的には婚姻関係にない内縁の妻との間に生まれた子も、家族が知らないいわゆる愛人との間に生まれた子もともに「非嫡出子」となります。
通常の婚姻関係にある男女間に生まれた子は「嫡出子」と言います。「非嫡出子」はその親との間に法律上の親子関係はありませんが、「認知」されると法律上の親子関係が生じます。
「認知」とは、非嫡出子の親が、その非嫡出子を自分の子として認める行為を言います。認知は生前に行うこともできますし、遺言で行うことも認められています(遺言認知)。また認知とは通常は父子関係における行為であり、母子関係においては分娩の事実により親子関係が当然に発生しますので、認知は不要になります。
認知により認知された非嫡出子は、父親との相続関係が認められることになります。法的に血族関係が認められ法定相続人になります。
たまにドラマなどで、愛人との間に生まれた子を、子供のない自分たちの実の子、非嫡出子として届け出るストーリーがあります。この場合はどうなるのでしょうか。
養子以外の子には血縁関係が必要となりますので、血縁関係のない戸籍上の妻の嫡出子となることはありません。不正の届出となり、事実が判明すれば嫡出子であることは否定されます。ただし判例からは「認知」の効果が認められ、認知された非嫡出子となります。
認知について話を戻します。「認知」には次のものがあります。
①任意認知
②強制認知
です。
では「任意認知」とはどのようなものを言うのでしょうか。
「任意認知」とは、父が自ら役所に「認知届」を提出して行う方法になり、遺言による方法も認められます。また認知は身分行為になりますので、未成年者や成年被後見人であっても、法定代理人の同意なしにすることができます。
なお任意認知は自らの意思ですることが必要になりますので、認知者の意思に基づかない認知届けは無効になります。
認知には次の例外を除き、子の承諾は不要です。認知に子の承諾を必要とする場合は次のとおりです。
①成年の子を認知する場合は、本人の承諾が必要になります
②胎児を認知する場合は、その母親の承諾が必要になります
③成年者の直系卑属(孫等)がいる、死亡した子を認知する場合は、その成年である直系卑属の承諾が必要になります
「強制認知」とは、父または母が認知をしないときに、その子や直系卑属が裁判により求めるものになります。ただしこれは父または母の死亡から3年以内にする必要があります。
任意認知も強制認知も、その効果は子の出生時にさかのぼって親子関係が生じます。この際も、第三者が既に何らかの権利を取得している場合には、その権利を害することはできません。
最後に「準正」について付け加えておきます。
「準正」とは、非嫡出子を嫡出子にする制度を言います。準正の要件は、「認知」+「婚姻」になります。認知により相続権が発生しますが、あくまでも「認知された非嫡出子」であることには変わりありません。これを嫡出子に変える制度になります。
「準正」には認知と婚姻の順序によって2つのパターンがあります。
①婚姻準正
②認知準正
です。
「婚姻準正」とは、認知が確定した後に父母が婚姻した場合で、婚姻の時から準正が発生します。
「認知準正」は婚姻をした父母が認知をした場合で、認知の時から準正が生じます(この場合も実務上は婚姻の時からとされています)。
順番はどちらであっても、準正が生じた子(準正子)は、嫡出子の身分を取得します。なお現在の民法では、相続においても嫡出子と認知された非嫡出子の相続分は変わりませんが、改正前は差がありましたので、この準正の手続きはより重要なものでした。
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今日は遺言について書いていきます。遺言については以前にも書きましたが、相続遺言に関する民法がこの7月に約40年ぶりに大幅改正されましたので、それも含めて見てみましょう。
遺言を残そうとされる目的の多くは、ご自分の作られた財産をきちんとご自分の手で、ご自分の意思で配分したいというところにあると思います。考えられるきっかけはちょっとしたことからかもしれませんが、その動機の多くは遺されるご家族のことを考え、円満でスムーズに相続を終えてもらいたいという気持ちから発せられるようです。
中には家族親族がいがみあっていたり、複雑な関係性であったり、また相続人がいないなどの理由からトラブル防止のための遺言を書かれる場合もあると思います。また事業承継にあっては、自ら思い描く将来のために、きちんと整理した形で財産を相続させる場合もあろうかと思います。
いずれにせよ遺言を残される以上、法的に効果のある遺言にしなければなりません。では法的に効果のある遺言とはどのようなものでしょうか。
遺言自体はどのような形でも残すことができます。口頭で伝える場合もあれば、録音やビデオで伝える場合もあります。また通常は皆さん考えられるところの書面で残すことが多くなります。しかし法的に効果のある遺言は、きちんと法律に従った形式で、書面として残さなくてはいけないものになります。
きちんとビデオに撮っていても、それがそれぞれの相続人が納得するものであれば問題ありませんが、争いになった場合は法的に根拠がないものとして認められないものになります。
昨日たまたまビデオで「激動の1750日」という映画を見ていて、三代目姐が「先代が言い残した」という一言で後継が決まってしまいました。実際に言い残してはいないので争いになった場合は法的根拠のないものとなりますが、特殊な世界であれ、「故人が言っていた」の一言で相続が決まってしまってはたまりません。そこかしこでトラブルが頻発するでしょう。そんなトラブルを起こさないためにも、法律が遺言の形式を定めています。
ここでの法律は「民法」になります。民法は、私人間の生活関係を規律する「私法」の一般法(国家等の公権力と私人の関係を規律する法である法律を「公法」といい、これには憲法・行政法・民事手続法・刑法・刑事手続法があります)であり、その内容は「財産法」(ここには物件法と債権法があります)と「家族法」に分かれます。
「家族法」には家族や親族の範囲や関係性について規定する「親族法」の部分と、相続や遺言について規定している「相続法」の部分があり、ここで遺言についても明確に規定してます。
では民法に規定する遺言について見ていきましょう。遺言の方式について、民法では「普通方式」と「特別方式」を定めています。我々が一般的に理解している遺言とは普通方式のものになりますが、簡単に特別方式の遺言について見てみます。
「特別方式」の遺言については滅多にお目にはかかれませんし、またそういう立場になっては困るのですが、緊急時に発する遺言になります。ここでは詳細は省きますが、災難がまさに降りかかっている際に発する「危急時遺言」と、世間から隔絶された場所にあるときに発する「隔絶地遺言」があります。
「危急時遺言」には「死亡危急者遺言」と「船舶避難者遺言」がありますが、前者は病気やけが、あるいは災害が差し迫っている際に発っするものであり、後者は船舶が遭難にあっている際に発するものになります。
また「隔絶地遺言」には、「伝染病隔離者遺言」と「在船者遺言」があります。前者は伝染病隔離施設や刑務所服役中などの場合、後者は遭難していない船舶の中で作成されます。
いずれも危難は迫ってはいませんので、本人が書く事になります。以上4種類が特別方式になりますが、それぞれ証人であったり検認であったり、その手続きは詳細に決められています。民法は約120年前に制定されましたので、情報の発達していない時代を背景としています。
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今日は請負契約について書いていきます。
「請負契約」とは当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって効力を生じる契約を言います。これは有償であり、当事者双方の合意によって成立する契約になります。
請負契約においては、「請負人」は仕事を完成する義務を負います。請負の目的が物の完成である場合には、物を完成させるだけでなく目的物を引き渡す義務も負うことになります。
なお請負人は自ら労務を提供しなくても、原則自由に補助者や下請負人に仕事をさせることができます。ただし下請負人等の責に帰すべき事由についても、請負人が責任を負うことになります。
一方双務契約ですので注文者にも義務は発生し、完成した仕事に同時に報酬を支払わなくてはなりません。同時履行の抗弁権については先に記事にしましたが、ここでいう同時履行とは目的物の完成ではなく目的物の引渡しになりますので、目的物の引渡しと同時に支払い義務が発生します。
引渡しが請負業務の完了となると、作成中あるいは完成した目的物の引渡しまでの所有権はどうなるのでしょうか。
民法にそれについての規定はありませんが、その所有権は判例から、材料の供給者が請負人である場合は、その所有権は引き渡すまでは請負人にあり、材料の供給者が注文者である場合には所有権は注文者にあるとされています。
では次に、請負人の「瑕疵担保責任」について見ていきましょう。
仕事の目的物に瑕疵があった場合は、注文者は請負人に対して「瑕疵の修補」を請求することができます。売買の際の瑕疵担保責任については「隠れた瑕疵」であることが要件とされましたが、請負については「隠れた瑕疵」でなくても請求することができます。
ただし目的物の瑕疵が重要なものではなく、かつ修補にかかる費用がそれ以上に掛かる場合には、注文者は修補を請求することはできず、それに代えて損害賠償を請求することになります。
前記の重要でない瑕疵以外の場合は、注文者は瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに損害賠償を請求することができます。請負人が損害賠償に応じない場合は、それが支払われるまで未払い報酬の支払いを拒絶することができます。
また注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬債権を相殺することもでき、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償を受けるまでは、その報酬全体の支払いを拒むこともできます。
目的物の瑕疵が重大であって契約の目的自体を果たすことができない場合は、注文者は契約の解除をすることができます。ただしこの場合でも建物等の土地の工作物については、額が非常に大きくなるため解除することはできません。
以上の瑕疵担保責任について、請求できる期間は原則引渡しから1年です。しかし土地工作物の場合は5年、堅固な工作物については10年になります。
最後に請負契約の終了について見ていきましょう。請負契約の終了は、法定解除や約定解除の他に次のような終了原因があります。
①仕事未完成の間における注文者の解除権
②注文者の破産による解除権
です。
①については、注文者は仕事が完成するまでは、「いつでも」損害を賠償して契約を解除することができます。完成した部分について利益があるときは、未完成部分のみ契約解除をすることもできます。
②について、注文者が破産手続開始の決定を受けた時点で、請負人または破産管財人が契約を解除することができます。
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今日は時効について書いてみます。時効というと刑事ドラマなどでよく耳にする言葉ですが、法律では「ある一定の事実状態が一定の期間継続した場合に、その事実の法律上の根拠に合致するかどうかを問わずに、その事実状態を尊重して権利を認める」制度を言います。
時間の経過で証拠能力が希薄になる一方、その事実が継続している場合はそれ自体が重いということを尊重して制定された条項です。
では民法における「時効」について見てみましょう。時効完成の要件は、一定の事実状態が一定の期間継続することです。また時効が完成しその利益を得るためには、その意思表示をしなくてはなりません。「時効の援用(えんよう)」と呼ばれるものです。
時効の援用は時効の利益を受ける旨の意思表示であり、援用して時効の利益を受けるかどうかは個人の意思になります。時効を放棄することもできますが、時効が完成する前にあらかじめ放棄を行うことはできません。時効が完成してから放棄することになります。また放棄ではありませんが、時効が完成してもそれを知らずに債務を承認してしまった場合などは、もう援用をすることはできません。
時効の利益を受ける者は援用権者である当事者に限られますが、判例ではその者を「時効に因り直接に利益を受くべき者」としています。時効の効果は遡及効といって、最初の起算点にさかのぼって効果を発生することになります。
民事上の時効には一定の期間を経ることによって権利を取得する「取得時効」と、一定の期間を経ることによって権利を失う「消滅時効」があります。ではまず取得時効から見てみましょう。
「取得時効」とは、物の占有の継続に対して真実の権利を認める制度になります。他人の物であっても一定の期間占有をしていれば、その事実を尊重して権利が移転するという制度です。取得時効の要件は次の5つになります。
①「他人の物」を占有していること(場合によっては自分の物でも可とした判例もあります)
②所有の意思を持って占有していること(自主占有といいます)
③平穏かつ公然と占有していること
④一定期間占有を継続していること
⑤時効援用の意思表示がされること
になります。なお④の期間は、条件によって変わってきます。その物(不動産も含みます)の占有を開始した時に善意無過失であった場合は10年です。善意無過失でない場合(悪意または有過失)は20年になります。
善意無過失の判定はあくまでも最初の占有者が占有を開始した時点が起算点になりますので、前の占有者から占有を引き継いだ場合も(占有の事実が重要となりますので、占有する者が変わっても問題ありません)、引き継いだ時の善意無過失が問題になるわけではありません。最初の占有者が善意無過失であれば、取得時効の条件は10年になります。
なお②③の所有の意思についてですが、これは「占有者は所有の意志をもって、善意で、平穏にかつ公然と占有をするものと推定する」(占有の推定)とされています。ですので占有の事実があれば、所有の意思は推定されるものとされています。
時効取得の対象は、「所有権」と「所有権以外の財産権」になります。所有権以外とは、地上権・永小作権・地役権などです。一般債権の時効取得はできませんが、不動産における賃貸借権は例外として、要件が揃えば時効取得できます。
では次にもうひとつの「消滅時効」について見てみましょう。消滅時効とは、一定期間の経過によって債権などの権利が消滅してしまう制度を言います。消滅時効の要件としては次の4つがあります。
①権利不行使が一定期間継続すること
②法定中断のないこと
③時効援用の意思表示をすること
です。①の期間については、債権については10年で消滅し、債権または所有権以外の財産権は20年で消滅します。商法などに規定されている商事債権などの場合はより短い期間で消滅します。なお所有権については取得時効の対象とはなりますが、消滅時効の対象にはなりません。
時効については「中断」という制度も設けられています。時効が継続している場合であっても、
①請求
②差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分
③承認(債権者に権利があることを認めること)
によって時効の進行が止まり、そこが起算点となってまた時効の進行が始まります。中断の効力は基本的には当事者およびその承継人に対してのみ生じますが、保証人や物上保証人に生じる場合もあります。
中断自由の請求については裁判上で行ないます。もしそこで却下や取り下げがあった場合は、中断の効力は失われます。なお裁判外で行う場合は「催告」と呼ばれ内容証明郵便等でされますが、その場合の効力は時効を停止させるにとどまり、中断の効果を得るためにはそこから6ヶ月以内に裁判上の請求を行う必要があります。消滅時効に関しては2020年施行の改正民法で見直しがなされていますので、確認ください。
https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html
https://kouseishousho-gunma.com/category7/entry18.html
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今日は債権譲渡について書いていきます。
「債権」とは、特定の者が別の特定の者に、一定の給付を請求できる権利を言います。先に説明した物権と併せてこの2つを「財産権」と言います。
請求できる権利を持つ者を債権者といい、請求される側を債務者と言います。今回は債権の性質のうちのひとつ、譲渡について見ていきましょう。
債権というものは原則として、自由に譲り渡すことができる性質があります。これを債権の自由譲渡性と言いますが、目的としては次のことが挙げられます。
①履行期日の来る前の債権を換金するため
②融資などを受けるときの担保とするため
③債務の弁済の手段とするため
です。
また譲渡する際は、元の債権と同じ内容のまま移転されていきます。現行法では条文化はされていませんが、債権は過去に発生した権利に基づくものだけではなく、将来発生するであろう債権の譲渡もすることができます。例えば債務者に定期的に発生する、半年分の家賃収入債権を譲渡するなどということも可能になります。
このように譲渡可能な債権ですが、例外的に譲渡が制限される場合があります。それは次のような債権についてです。
①債権の性質上譲渡を許さない債権
②当事者同士が譲渡禁止の特約をした債権
③法律上譲渡が禁止された債権
です。
①の譲渡を許さない性質とは、例えば特定の人の肖像画を描いたり写真を撮ったりする権利です。これはその特定の人が、その債務者本人のみに許した権利の性質を持ちますので、債権者は他の者への譲渡はすることができません。
②の禁止の特約についてですが、この特約に違反して第三者に譲渡した場合は、制限とおりにその債権譲渡は無効になります。しかし第三者が「善意無"重"過失」だった場合には、債務者はその第三者には対抗することはできません。
なお債務者が債権者に、あらかじめ"特定の者"に譲渡することを同意していた場合には、譲渡後に債務者の承諾を得なくても、債権者は債務者に債権譲渡を対抗することができます。
ところで、今書いてきた債権譲渡の内容は、現行の民法に基づくものです。しかし民法は2020年4月1日より改正法が施行され、この債権譲渡の部分も見直されることとなりました。以下改正部分について触れておきます。債権譲渡の主な改正点は次のとおりです。
①譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられません(預貯金債権以外)
②債務者は譲渡人(元の債権者)への弁済をもって譲受人に対抗できます
③債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は譲受人に対して履行をしなければなりません
④将来債権の譲渡について明文化されました
⑤債務者があらかじめ譲渡に同意していた債権への抗弁権の条項は廃止されました
ということです。
①の譲渡制限特約債権の譲渡についてですが、現行法では善意の第三者に対しては有効ではありましたが、改正法では譲渡制限特約が付されていても、預貯金債権以外の債権譲渡についてはその効力は妨げられないこととなりました。つまり特約があっても、悪意・重過失の者に対する譲渡も有効であるということです。
これでは、弁済の相手方を固定化し無用なトラブルから債務者を守る、という現行法の意義を失ってしまいますが、それを②で補っています。どういうことかと言うと、譲渡制限付きの債権が他の第三者に譲渡されてしまっても、債務者はその第三者への弁済を拒絶し、元の債権者への弁済をすれば足りるということになるからです。
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今日は民法における事務管理というものについて書いていきます。
「事務管理」というとピンときませんが、いわゆる人のためにする「おせっかい」のことです。良かれとおせっかいでしたことも、場合によっては費用や損害が発生してしまうこともありますので、民法では「事務管理」という用語で法律効果を与えています。
具体的にはAさんの旅行中に台風でAさん宅の窓が割れてしまった場合に、Bさんが見過ごすことができずに業者に頼んで窓を応急修理した場合などです。
ではあらためて見ていきます。「事務管理」とは、法律上の義務がないのに、他人のためにその事務を行う行為を言います。事務とは行った行為のことです。この行為は契約に基づくものでもありませんし私人間の行為なので、本来法律の立ち入る必要のないことではありますが、おせっかいをした者に一定の法的保護を与えるために設けられた規定になります。
その条項では、義務なく他人の事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い最も本人の利益に適合する方法によってその事務管理をしなければならない、としています。またその者が本人の意思を知っている場合や推し量れる場合は、その意思に従って事務管理をしなければならないとされています。要は一旦事務管理をした場合には、必ず適切な手段をもって対応しなさいということになります。
事務管理の成立要件として、次の4つが挙げられます。
①法律上の義務がないこと
②他人の事務を管理すること
③他人のためにする意思があること
④本人の意志や利益に反することが明らかでないこと
です。
これらの要件が満たされると事務管理の効力が発生しますが、この場合はその違法性や費用の発生などが問題になってきます。
まず違法性についてですが、事務管理については勝手に他人のことについてするものですので、ともすれば権利の侵害にあたる場合も出てきます。しかしこの場合は違法性が排除され、不法行為には当たりません。
事務管理が開始した場合には、管理するものは原則、遅滞なく本人にその旨を通知しなければなりません。次に事務管理について発生した費用が問題になる場合があります。管理する上で必要な費用が発生した場合には、本人に請求することができます。これは単なるかかった費用ということでなく、本人にとって必要な者であれば認められます。
なお事務の管理方法が不適切なために損害が発生した場合については、事務管理の不履行責任を問われる場合があります。事務管理をする者は、一旦管理を始めた場合は本人等が管理できるようになるまで原則、善管注意義務を負うこととなります。この義務に反した場合には損害賠償が発生することもありますが、危急の場合には悪意重過失の場合のみ賠償責任を負うこととなります。
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