今日は民法における事務管理というものについて書いていきます。
「事務管理」というとピンときませんが、いわゆる人のためにする「おせっかい」のことです。良かれとおせっかいでしたことも、場合によっては費用や損害が発生してしまうこともありますので、民法では「事務管理」という用語で法律効果を与えています。
具体的にはAさんの旅行中に台風でAさん宅の窓が割れてしまった場合に、Bさんが見過ごすことができずに業者に頼んで窓を応急修理した場合などです。
ではあらためて見ていきます。「事務管理」とは、法律上の義務がないのに、他人のためにその事務を行う行為を言います。事務とは行った行為のことです。この行為は契約に基づくものでもありませんし私人間の行為なので、本来法律の立ち入る必要のないことではありますが、おせっかいをした者に一定の法的保護を与えるために設けられた規定になります。
その条項では、義務なく他人の事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い最も本人の利益に適合する方法によってその事務管理をしなければならない、としています。またその者が本人の意思を知っている場合や推し量れる場合は、その意思に従って事務管理をしなければならないとされています。要は一旦事務管理をした場合には、必ず適切な手段をもって対応しなさいということになります。
事務管理の成立要件として、次の4つが挙げられます。
①法律上の義務がないこと
②他人の事務を管理すること
③他人のためにする意思があること
④本人の意志や利益に反することが明らかでないこと
です。
これらの要件が満たされると事務管理の効力が発生しますが、この場合はその違法性や費用の発生などが問題になってきます。
まず違法性についてですが、事務管理については勝手に他人のことについてするものですので、ともすれば権利の侵害にあたる場合も出てきます。しかしこの場合は違法性が排除され、不法行為には当たりません。
事務管理が開始した場合には、管理するものは原則、遅滞なく本人にその旨を通知しなければなりません。次に事務管理について発生した費用が問題になる場合があります。管理する上で必要な費用が発生した場合には、本人に請求することができます。これは単なるかかった費用ということでなく、本人にとって必要な者であれば認められます。
なお事務の管理方法が不適切なために損害が発生した場合については、事務管理の不履行責任を問われる場合があります。事務管理をする者は、一旦管理を始めた場合は本人等が管理できるようになるまで原則、善管注意義務を負うこととなります。この義務に反した場合には損害賠償が発生することもありますが、危急の場合には悪意重過失の場合のみ賠償責任を負うこととなります。
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今日は民法家族法の、親権について書いていきます。
「親権」とは、父母である者の、「養育者としての地位」に由来する権利義務のことを言います。その親権に服する者は子供全般ではなく、「未成年の子」になります。子供が未成年であれば、親権が発生するということです。
親権を行うものは子の父母になります。原則父母が共同して親権を行いますが、一方が共同名義で代理行為をした場合は、仮に他方が反対していたとしても効力を生じます。しかしこの場合に相手方が悪意であった場合には効力は認められません。
次の場合は例外として父母の一方が単独で行うことができます。
①父母の一方が親権を行使できないとき
②父母が離婚したとき
③非嫡出子の親権を原則として母が行使するとき
です。
なお、子の利益のために必要と認められるときは、子の親族が家庭裁判所に請求することによって、親権者を他の一方に変更することができます。
では具体的に、「親権者」にはどのような権利義務があるのでしょうか。
「親権者」は子の利益のために、子の監護および教育をする権利を有し義務を負い、必要な範囲で居所指定権や懲戒権を有し、子が職業を営むことができるとされています。
身分上の行為においては、親権者はその子に代わって親権を行うことができます。これは民法上個別に規定されており、これは、
①嫡出否認の訴えの相手方
②認知の訴え
③子の氏の変更
④縁組の代諾
⑤未成年者の養子縁組取り消し請求
⑥相続の承認放棄
になります。
また財産上の行為の代理権もあり、親権者は法定代理人として、財産上の行為について一般的に代理権を有します。
この場合に親権者は、子の財産を管理しその財産に関する法律行為について代理することができますが、その子の何らかの行為を伴う時は、本人の同意が必要になります。
また民法の規定上、親権者に利益があって子に不利益が生じる場合や、子の一方に利益があって他方に不利益があるというような「利益相反行為」については、親権者は子に対する代理権も同意権も有しません。この場合は家庭裁判所に、「特別代理人」の選任を請求します。
これは相続の場合にもよくありますが、被相続人の子が未成年である場合には配偶者は法定代理人とはなれず、必ず特別代理人を請求することになります。
次に親権を喪失する場合について見てみましょう。
特別養子縁組(この場合は一定の年齢制限がありましたが)の記事にもありましたが、父母による虐待や悪意の遺棄があるとき、あるいは父母による親権の行使が著しく困難であったり不適当であることによって子の利益を著しく害する時は、2年以内にその原因が消滅する見込みがある時を除き、家庭裁判所は「親権喪失の審判」をすることができます。
この親権喪失の請求者は、子やその親族、未成年後見人、検察官等になります。また親権喪失には至りませんが、同様に2年以内の期間を定めて親権停止の審判を行う、「親権停止の審判」も創設されています。
親権とは別に、もう一つ相続にも関連する内容についても触れておきます。「扶養」についてです。「扶養」とはもちろん親権者が子に対する義務でもありますが、民法では「親族間の扶養」についても規定しています。
「扶養」とは自力で生活できない者に対して、一定の親族関係にある者が行う経済的給付とされています。扶養の内容については次のとおりになります。
①要扶養者(扶養される必要のある者)は、自分の財力等で生活できない者である必要があります。
②直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負担します。
③3親等以内の親族については、特別の事情があるときに家庭裁判所が扶養の義務を負わせることができます。
④扶養の内容等について当事者間で整わない場合は、家庭裁判所の判断に委ねることができます。
「扶養」については負担付き遺贈であったり、今回改正された相続における特別の貢献にも関係してくる事柄になります。
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今日は共有について見てみます。
これも相続分野で頻出する言葉となりますが、「共有」とは、数人の者が共同所有の割合である「持分」を併せて1つの物を所有することを言います。単純に言えば、数人で1つの物を所有することですね。
「持分」とは今述べたように、共有物に対する所有権の割合のことです。持分の割合はそれぞれの意思表示や法律の規定(法定相続分等)により決まりますが、その割合が不明な場合は各共有者平等の持分であると推定されることになります。
持分は各共有者が原則自由に処分できます。共有目的物の利用については各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
例えば1台の自動車を3人で共有しているとしますと、3人それぞれがその自動車を自由に使用することができます。しかし異なる目的を同時に行うことはできませんので、必要な場合は各自の持分に応じた使用時間配分を決められるということです。自動車を購入するのにAさんがその代金50%、BさんとCさんが25%を出資していたとすると、その割合で使用時間を決められるということになります。
相続に当てはめると、配偶者と子供が2人いる場合は配偶者が50%の持分であり、2人の子供はそれぞれ25%ずつの持分ということになりますね。
また持分は、使用する共有者の1人がその持分を放棄した場合や、共有者が死亡した際に相続人がいない場合はその持分は他の者に帰属することとなります。
共有物には日々の利用についても制約がありますので、それらについても見ていきましょう。
共有物の利用については、その内容や利用状況から次の3つに区分されています。
①保存行為
②管理行為
③変更行為
になります。「保存行為」とは修理や修繕など、共有物の現状を維持する行為であり、各自が単独で行うことができます。なお現状維持という観点からの妨害排除請求や消滅時効の中断なども共同で行われる必要はなく、各自が単独で行うことができます。
次の「管理行為」とは、共有物の性質を変えることなく利用したり改良する行為とされています。これには共有物の賃貸やそれに関する解除や取り消し行為などがありますが、この場合は単独で行うことはできず、共有の過半数の合意が必要になります。
過半数とは人数が基準になるものではなく、持分の価格を基準にしての過半数になります。Aが10でBが20の持分価格を有していても、Cが50を有する場合には必ずCの承諾が必要になります。
「変更行為」とは共有物の性質や形状を変更することを言います。具体的には共有物を売却したりその全部に抵当権等を設定する場合がこれに当たりますが、この場合は共有者全員の同意が必要になります。
最後に「共有物の分割」について見てみましょう。共有物については、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができます。分割の方法は現物分割、代金分割、価格賠償の3つがあります。
ここでの「現物分割」とは現物そのものを分割すること、「代金分割」とは共有物を売却してその代金を分割する方法です。「価格賠償」とは共有物を分割した際に持分に満たない者に、超過した者からその金額を補填することを言います。
共有分割の協議が整わない場合は遺産分割協議同様、裁判所に分割を請求することになります。なお遺言書による場合が多いですが、共有物を5年を超えない期間で分割を禁止する特約を付けることもできます。
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今日は危険負担と言うものについて書いていきます。
「危険負担」とは、双務契約が成立した後どちらかの債務が完全に履行される前に、一方の債務(双務契約の場合は当事者双方がともに債権債務を有します)が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合に、どちらの当事者が責任を負うかというものです。
民法では「債務者主義」を採用し、どちらかの債務が完全に履行される前に一方の債務が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合でも、原則として債務者の負担になります。
例えば物の売買で見た場合、物を売る側は代金と引き換えに物を交付するという債務を負いますので、物の交付については売主側が債務者になります。ですので物が消滅してしまった場合は、売主側に責任はなくても、物の交付の履行不能によるリスクは、売主側が負うということになります。
これはあくまでも債務者の責によらない場合ですが、債務者に履行不能についての帰責事由がある場合は、危険負担の問題からは離れ、債務不履行に基づく損害賠償の問題になっていきます。またすでにどちらかの債務が履行された場合、今の例で行けば売主側が物を交付したかあるいは買主側が金銭を交付した場合は、同様に危険負担の問題とはなりません。賠償か解除かの問題になります。
話を戻します。債務者が危険負担を負う、リスクを負うとはどういうことでしょうか。
双務契約においては双方の債務がそれぞれ対価的意義を有しています。言い換えるとお互いに相手方に対する債権債務を有していることになります。一方の債務が消滅すれば他方の債務も消滅することになりますので、売主側の物が売主の責任によらずに消滅してしまった場合には、売主側は相手方に対して代金を請求できないということになります。売主の責任でなく物が消滅してしまっても相手方に対して代金を請求できないということは、物の消滅は売主自身で追わなくてはならない、という理屈になります。
つらつらと書きましたが、これが「債務者負担」というものになります。
債務者主義の例外として、「債権者主義」というものがあります。これは一方の債務が消滅しても、他方の債務が消滅しないという場合に採用されます。次の場合には債権者主義が取られています。
①特定物に関する物権の設定、または移転を目的とする双務契約の場合
②不特定物に関する契約についても、特定が生じた以降は債権者主義となります
③債権者の責に帰すべき事由によって、債務の履行が不能となった場合
です。
特定物とは、例えば世界に1本しかない、”この”ビンテージワインというようなものです。売買契約が締結された以降に売主の責任なくこのワインが消滅してしまった場合には、受け取るべきワインが存在していなくても、買主は代金を支払う義務があるということになります。
不特定物の特定とは、5本ある赤ワインの中から1本を選んだ場合などを言います。特定されていない5本のワインから、1本が特定されたということになります。また債権者側に理由があって債務が不履行になった場合には、債権者みずからが責任を負うということになります。
なお通常、契約の場合には危険負担を明記する場合が多くなりますが、今回書いてきたこの危険負担についての民法の規定は、義務ではなくあくまでも任意の規定になります。このような民法の規定によらず、当事者同士で別途決めることもできます。
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今日は民法の不当利得について書いていきます。
「不当利得」とは、法律上の原因がないにもかかわらず、他人の財産や労務によって利益をうけ、そのために他人に損失を及ぼすことを言います。不当利得を得た者は、その利益の存する限度(現存利益)においてこれを返還する義務を負います。また利得を得る際に悪意であった者については、利得の返還とともに損害賠償の責任も負います。
不当利得の成立要件は次の4つになります。
①利得が存在すること
②損失が存在すること
③利得と損失の間に因果関係が存在すること
④法律上の原因がないこと
です。
ちなみに「現存利益」とは、自分の利益として残っている利益を言いますが、単純に手元に残っている現金や預貯金ということではありません。現に利益として残っているものを言います。
わかりにくいですが、例えば不当利得が10万円あったとした場合、食費に2万円使ってしまったとします。この場合の2万円は自分の利益のために使ったのですから、お金は残っていなくても栄養を得たという効果が残っています。ですので残った8万円に2万円分の食費が足されて、10万円が現存利益となります。
一方、ギャンブルなどの遊興費に2万円を浪費してしまった場合は、利益としてはなんら残っていないことになります。この場合は浪費した2万円分は差し引かれて、現存利益は8万円となります。
不当利得の具体例としては次のようなものがあります。
AさんがBさんに有名画家の絵を100万円で売ったとします。契約が成立し、BさんはAさんから絵の引渡しを受け代金を支払いました。しかし後日この絵が偽物であったことが判明したので、BさんはAさんに「不当利得返還請求」をしました。しかもAさんはこの絵が偽物であることを知っていて(悪意)販売したので、損害賠償も請求しました。という形になります。
このような不当利得ですが、次の場合には特則が付されています。
①債務の不存在を知っていてした弁済
②期限前の弁済
③他人の債務の弁済
です。
どのようなことかと言うと、①は、自分に債務がないことを知っていながら弁済を行った場合です。不合理な行為ですが、このような不合理な行為をした者には保護を図る必要もないことから、その給付したものの返還を請求することはできません。ただし、強制執行を避けるために必要的にした場合や、その他の事由によってやむを得ず行った場合には返還請求を行うことができます。差し当って請求されている弁済を行わないと、差押がなされるなどの場合です。
②の期限前の弁済とはどのようなものでしょうか。通常の弁済には「期限の利益」があり期限までは弁済を行う義務はありませんが、この期限の利益を行使せずに、期限前に弁済を行った場合です。この場合はみずからが権利を行使しなかったのですから、不当利得(弁済から期限までの利息分)返還請求をすることはできません。ただし債務者が錯誤によってその給付を行った場合には、債権者は不当利得を返還する必要があります。
③の他人の債務の弁済とは、他人の債務を自分の債務と誤信して弁済してしまった場合です。この場合では、債権者が善意で債権証書を消失したり、担保を放棄したり、債権を時効で消滅させたりしてしまった時などは、弁済者は不当利得の返還請求をすることはできません。これは弁済者の過失より善意の債権者の保護が優先されるからです。
この場合の弁済者については、あくまでも債権者に対して返還請求できないのであって、本来の債務者に請求することはできます。誤ってした弁済を泣き寝入りするものではなく、本来の債務者に対して求償権を行使することができます。
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相続分野の民法の一部改正が7月1日に施行されます。
それに先立ち、本年1月13日に自筆証書遺言書の方式緩和(自書以外の財産目録可)の改正民法が施行されました。これは、財産目録について、従来は手書きでないと認められていなかった要件を、銀行通帳等を添付すればパソコンや自分以外の他者の作成によるものでも認めるという内容になります。
ニュースでも流れたのでしょうか、当職のホームページの当該ページへのアクセスも、2-3ヶ月にわたって通常月の1.5倍ほどに上がっています。相続に比べると遺言ページへのアクセスは多くないのですが、普段意識していなくてもニュースになると興味がわくのでしょうか。そのままご依頼いただけると、なおありがたいのですが。。いつかご依頼いただけることをお待ちしております。
さて要件緩和によって自筆証書遺言の作成については多少ハードルは下がりましたが(財産の多い方はなおさら)、そのほかの自筆遺言の要件についての知識はまだまだ低いようです。もちろんご自身で時間をかけて勉強し、ご自分で書かれる方もいらっしゃると思いますが(最大のメリットは費用面ですが)、要件不備で遺言書としての法的効果がなかったり、相続人にかえって迷惑を掛ける自筆証書遺言の多いことも確かです。
もちろんご自身はよかれと思って書かれている訳ですが、中途半端な知識で書かれるため、法律要件を満たしている遺言書は必ずしも多くはないと思われます。日付間違いや誤記などのケアレスミスの場合、あるいは署名の不備等の場合は相続人の方々の合意があれば大きな問題はないと思いますが、これとて訴訟になった場合は認められない場合も多くなります。
一番困るのは、相続人や相続財産の特定が曖昧な場合です。例えば、「預貯金を子供3人に等分に」という記述であれば、単純に分割することは可能ですし、銀行もその記述をもって払い戻しに応じてくれると思います。しかし、「不動産を子供3人に平等に」という文言であれば、どの不動産をどのように分割するのか特定できませんので、不動産登記は難しくなります。この場合は遺産分割協議によって具体的に不動産を分割し(あるいは特定の相続人に単独に)、分割協議書に明記する必要が出てきます。
この遺言書の場合も相続人の皆さんが不仲でなく、遺言者に寛容であれば遺言書の文言に則した形で協議は行われるのでしょうが、えてしてその遺言によって利益を受ける者は拡大解釈でその文言を了とし、利益を害する者は断固反対する。そのような事態も決して少なくはないでしょう。
このような遺言書があった場合は意見が分かれる、あるいは協議の前段部分で時間を取られる弊害が大きくなります。また協議が成立しても後々までの遺恨の原因になります。
自筆証書遺言を書かれる場合でも必ず専門家に指導を仰ぐ、あるいは公正証書遺言にする。費用はかかりますが、本来の目的を達成するためには必要なことです。行政書士のような専門家は時間を掛けて勉強し、また数々の事例からベストのアドバイスを行っていきます。
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今日は民法に規定される契約というものについて書いていきます。
まず契約とはどのようなものを言うのでしょうか。契約とは、一定の債権関係の発生を目的として、互いに対立する複数の意思表示が合致することによって成立する法律行為のことを言います。
Aさんがある物を"買いたい"という意思表示をし、Bさんがこれに対して"売ります"という意思表示をすれば、対立する意思表示が合致したことによって契約が成立することになります。先にしたAさんの意思表示を「申込」と言い、Bさんの意思表示を「承諾」と言います。仮に立場が逆で、Aさんが先に"売りたい"という意思表示をした場合でもこれは「申込」となり、Bさんがそれに応じて"買います"という意思表示をしたならば、これは「承諾」をしたことになり契約が成立します。
先にする意思表示を「申込」、「後」にする意思表示を「承諾」と言います。ここでいう「申込」とは、一定の契約を締結しようとする意思表示のことです。気をつけなければいけないのは、この申込は単に申込をした場合と、承諾期間を定めて申込をした場合では扱いが異なってくることです。
承諾期間を定めて(返答の期限を切って)申込をした場合には、その定めた期間中はその申込の撤回をすることはできません。一方、期間を定めないでした申込であっても、相手が即答できない離れた場所にいる場合(隔地者といいます)には、"承諾を受けるのに相当な期間"を経過するまでは撤回することができないと規定されています。
相当ってこれまた曖昧な表現ですが、"かなり長い"というような意味ではなく、それをするのに通常要する期間とでも言いましょうか。また「承諾」とは申込を受けて、これに同意することによって契約を成立させるという意思表示になります。ではもう少し「承諾」というものについて見ていきましょう。
「承諾」をすると契約が成立するといいましたが、相手が目の前にいる場合は返事をしたときが契約の効力が発生する時点ですが、先ほどの隔地者間の場合ですと事情が変わってきます。電話で話をしている最中ならば寸分置かずに返答が帰ってきますが、例えば連絡がつかなかった場合はいつ返事が来るかわかりません。承諾期間をまたいだ場合などはトラブルのもとになりますので、法律で明確に効力の発生する時点を決めてあります。
隔地者間の意思表示は、原則論から言えば、その通知が相手方に到達した時に契約が成立するはずです。これを「到達主義」と言います。しかし取引においては、通知が到達していなくても契約の成立を認めることが迅速な取引に通じ取引界の要望にも合致するということで、民法では例外的に、隔地者間の契約については承諾の通知を発した時に成立すると規定されています。これを「発信主義」と言います。
なんだか余計に面倒な話になってきました。メールなどで発信すればすぐに到達しますよね。この話は最後にまたします。
ここでひとつ問題になるのは、申込に変更を加えた承諾をした場合です。例えばAさんがリンゴを3つ200円で買ってくださいと申込をしたとします。それにBさんが、1つおまけしてもらって4つ200円で買いますという承諾をしたとします。この場合は最初の申込と承諾と内容が変わってしまっているので、先の申し込みをBさんが拒絶をし、それとともに新たな申込をしたとみなされることになります。
本来承諾をすべきBさんが今度は新たに申込者となり、Aさんが承諾者になるというように立場が入れ替わります。到達主義と発信主義の違いは以上です。
次に承諾期間を定めてした申込に対して、その期間内に申込者に承諾の通知が届かなかった場合についてです。この場合の申込は抗力を失うとされ、契約は成立しないこととなります。しかし契約の場合は先ほどの「発信主義」となりますので、たとえ到達していなくても、その期間中に承諾の通知を発信をしていれば契約は成立することとなります。クイズなどでよく使われる、当日消印有効と同じようなものです。
この期間後に到達した承諾について民法では、申込者が新たな申し込みをおこなったとみなされます。なお民法では、遅れて承諾が届いた場合には、申込者は遅滞なくその旨を承諾者に対して通知しなければならないとされています。もしその旨の通知をしなかった場合には、遅れて届かなかったものとみなされ、契約は通常に成立することになります。
承諾期間を定めないでした申込の場合は特に効力消滅の規定はないため、相当な期間内に承諾の通知を発信すれば契約は成立します。この場合も発信主義をとります。
とここまで書いてきましたが、どんでん返し。実はこの民法は約120年前に制定されていますが、通信の発達した現代においては発信主義を取る合理性が失われたとし、2020年4月1日施行の改正民法においては、発信主義の条項は削除され、契約の成立時期は「発信主義」から「到達主義」に変わることとなります。
併せて、発信主義の条文に付随していた、遅れて届いた通知の条文も削除されることとなりました。以前から発信主義については議論があったようですので、やっとスッキリと見直されたということになります。
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今日は婚姻の無効や解消について書いていきます。
まず婚姻の解消についてです。「婚姻の解消」理由には、
①離婚
②死亡・失踪宣告による解消
があります。
「離婚」については「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」がありますが、まず協議上の離婚について見てみましょう。
「協議上の離婚」とは、夫婦お互いの協議によって成立する離婚になります。この場合には夫婦ともに離婚する意思があること(離婚意思の合致)と、離婚の届出を行うことが必要とされています。なお判例ではこの離婚意思の合致について、離婚そのものをする意思は必要とせず、届出をする意思のみで足りるとしています。
また離婚の際に未成年の子がいる場合は、必ず一方を「親権者」にしなければなりません。
離婚そのものをする意思であれ、届出をする意思のみであれ、それらを含む離婚意思のない者の離婚は当然に無効となります。「意思のない離婚」とは、詐欺または強迫によって協議離婚がなされる場合であり、この場合は取り消しを請求することができます。この取消権は、詐欺を見つけた時または強迫から免れた時点から3ヶ月で消滅します。また追認によっても消滅することになります。
協議上の離婚が成立しなかった場合は「裁判上の離婚」になります。離婚の場合は原則、訴訟を起こす前に家庭裁判所に調停の申し立てを行い、調停離婚が成立しない場合に裁判上の離婚に向かいます。
離婚の訴えを提起する場合には、次の理由が必要になります。
①配偶者の不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復の見込みのない強度の精神病
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
です。
裁判所はそれらの事情を考慮して、離婚の訴えを認めるか棄却します。なお②の悪意の遺棄とは、理由もないのに同居を拒んだり家計費を差し入れないなど、積極的な意思で夫婦関係を行わないことを言います。
以上、協議上であれ裁判上であれ、離婚が成立した場合には次の効果がもたらされます。
①身分上の効果
②子の処遇
③財産上の効果
です。
「身分上の効果」により、婚姻関係とそれに伴う姻族関係が消滅します。また姓(氏)を改めた者については、「婚氏続称の届出」をしない場合は、結婚前の姓に戻ります。
「子の処遇」についてはまず、その子の嫡出子たる身分には影響は及ぼしません。また未成年の子の場合は親権者が決められます。
「財産上の効果」としては、一方が他方に財産分与を請求することができます。その額や方法は当事者の協議によりますが、協議が成立しない場合は離婚から2年以内であれば家庭裁判所にも処分を請求できます。
次は婚姻の無効と取り消しについて見てみましょう。無効と取り消しはその効果や影響が異なりますので、婚姻の瑕疵の程度に応じて規定がなされています。
まず、より影響の大きい無効について見てみましょう。
「無効」とされた場合は、婚姻が最初から無効であるとされ、夫婦としての効果は何ら生じません。婚姻の無効は、次の場合に限りなされます。
①婚姻意思を欠く場合
②届出を欠く場合
です。
無効は請求がなされて成立しますが、無効を請求することができる者は当事者だけでなく、利害関係者は誰でも主張することができます。これは当事者が死亡していても主張することができます。
次の「取り消し」ですが、これは無効よりも限定的な効果であり、取り消しの効果は婚姻成立時までは遡及しません。取り消しまでの期間は婚姻が有効とされ、その期間は財産分与などの財産関係も適用されます。
婚姻の取り消しを請求できる者は、当事者およびその親族、また検察官になります。
無効は当事者の死亡後も請求できますが、取り消しでは当事者の死亡後の請求は当事者や親族のみが行え、検察官は請求をすることはできません。また重婚違反の場合は当事者の配偶者および前配偶者も請求できます。これも失踪宣告の記事で確認ください。
再婚禁止期間の違反については親子関係の証明も関わりますので、前夫についても取り消しを請求することができます。詐欺・強迫の場合は当事者のみの請求となります。
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今日は請負契約について書いていきます。
「請負契約」とは当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって効力を生じる契約を言います。これは有償であり、当事者双方の合意によって成立する契約になります。
請負契約においては、「請負人」は仕事を完成する義務を負います。請負の目的が物の完成である場合には、物を完成させるだけでなく目的物を引き渡す義務も負うことになります。
なお請負人は自ら労務を提供しなくても、原則自由に補助者や下請負人に仕事をさせることができます。ただし下請負人等の責に帰すべき事由についても、請負人が責任を負うことになります。
一方双務契約ですので注文者にも義務は発生し、完成した仕事に同時に報酬を支払わなくてはなりません。同時履行の抗弁権については先に記事にしましたが、ここでいう同時履行とは目的物の完成ではなく目的物の引渡しになりますので、目的物の引渡しと同時に支払い義務が発生します。
引渡しが請負業務の完了となると、作成中あるいは完成した目的物の引渡しまでの所有権はどうなるのでしょうか。
民法にそれについての規定はありませんが、その所有権は判例から、材料の供給者が請負人である場合は、その所有権は引き渡すまでは請負人にあり、材料の供給者が注文者である場合には所有権は注文者にあるとされています。
では次に、請負人の「瑕疵担保責任」について見ていきましょう。
仕事の目的物に瑕疵があった場合は、注文者は請負人に対して「瑕疵の修補」を請求することができます。売買の際の瑕疵担保責任については「隠れた瑕疵」であることが要件とされましたが、請負については「隠れた瑕疵」でなくても請求することができます。
ただし目的物の瑕疵が重要なものではなく、かつ修補にかかる費用がそれ以上に掛かる場合には、注文者は修補を請求することはできず、それに代えて損害賠償を請求することになります。
前記の重要でない瑕疵以外の場合は、注文者は瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに損害賠償を請求することができます。請負人が損害賠償に応じない場合は、それが支払われるまで未払い報酬の支払いを拒絶することができます。
また注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬債権を相殺することもでき、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償を受けるまでは、その報酬全体の支払いを拒むこともできます。
目的物の瑕疵が重大であって契約の目的自体を果たすことができない場合は、注文者は契約の解除をすることができます。ただしこの場合でも建物等の土地の工作物については、額が非常に大きくなるため解除することはできません。
以上の瑕疵担保責任について、請求できる期間は原則引渡しから1年です。しかし土地工作物の場合は5年、堅固な工作物については10年になります。
最後に請負契約の終了について見ていきましょう。請負契約の終了は、法定解除や約定解除の他に次のような終了原因があります。
①仕事未完成の間における注文者の解除権
②注文者の破産による解除権
です。
①については、注文者は仕事が完成するまでは、「いつでも」損害を賠償して契約を解除することができます。完成した部分について利益があるときは、未完成部分のみ契約解除をすることもできます。
②について、注文者が破産手続開始の決定を受けた時点で、請負人または破産管財人が契約を解除することができます。
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今日は不法行為について書いていきます。
「不法行為」とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害すること言い、これを侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責任を負います。交通事故も不法行為に当たります。
法学的には「不法行為」は、
①被害者の救済を図る損害補填的機能
②将来の不法行為を抑止する予防的機能
③加害者に制裁を加える制裁的機能
を有するとされています。
不法行為の成立要件は次のとおりです。
①加害者に故意または過失があること
②権利または法律上保護される利益の侵害があること
③損害が実際に発生していること
④権利や利益の侵害と損害との間に因果関係が存在すること
⑤加害者に責任能力があること
です。
①の「故意」とは、自分の行為によって権利や利益の侵害が発生することをわかっていながらすることであり、「過失」とは損害の発生を予測して、あらかじめ防止すべき義務を怠ることを言います。
②については加害行為の内容や程度を加味し、個別具体的な判断が必要になります。必ずしも法律上保護されていない利益であったとしても、救済の対象となる場合があります。
③の損害については、財産的な損害はもちろんですが、慰謝料などのような精神的な損害もあります。
④の因果関係については、先に記事にしました416条の「通常生ずべき損害」と「予見することができる特別の損害」の規定を類推適用して、「相当因果関係」が認められる範囲で損害賠償を請求することができます。
⑤の責任能力とは自己の行為の責任を弁識できる能力を言います。民法上の責任無能力者とは、12才未満の者や心神喪失者などを指します。ちなみに刑法上では14才未満の者や心神喪失者等を指します。
不法行為が成立した場合には、被害者に損害賠償請求権が発生します。相続との関係では、この損害賠償請求権は被害者の生前の意思表示にかかわらず相続の対象となります(判例)。
https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry44.html
賠償の方法は原則金銭賠償になります。例外として名誉毀損裁判の場合には、名誉回復措置となることもあります。
この損害賠償を請求する権利者についてですが、不法行為を受けた被害者は当然請求者になりますが、不法行為が生命を侵害した場合やそれに匹敵する内容の場合には、被害者の父母や配偶者および子は「慰謝料」を請求することができます。
なおこの不法行為に基づく請求権についても消滅時効があります。被害者等が損害及び加害者を知ってから3年で消滅時効にかかり、不法行為の時から20年で除斥期間とされ消滅します。
除斥期間とは時効のように中断や停止が認められず、期間の経過とともに当然に権利が消滅する期間を言います。なお2020年4月1日施行の債権関係の民法改正においては、20年は除斥期間ではなく時効期間であることが明記されました。
https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry36.html
最後に不法行為における過失相殺について触れておきます。
過失相殺は債務不履行の記事でも書きましたが、債務不履行の相殺については発生すれば必ず必要的に行われる相殺であって、責任軽減だけでなく免責もすることができました。
一方不法行為における過失相殺については、損害賠償の額を減額できるだけであって不法行為の責任を免責することはできません。またその減額についても必ずなされるものではなく、過失の態様によって任意的に判断されます。
なお被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上一体をなすと見られる者の過失も含まれます。例えば子供が道路を飛び出して自動車にはねられた場合には、一緒にいた母親も監督不十分で過失責任も問われます。ここではあくまで身分上、生活関係上一体をなすことが要件になりますので、監督していた保母さんなどの責任は過失相殺されません。
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今日は婚姻の効果について書いていきます。婚姻は役所に届出をすることが形式上の要件となっており、届出をしない限りは法律上の夫婦とは認められません。
「婚姻の効果」については次のようなものがあります。
①夫婦同氏
②同居・協力・扶助義務
③貞操の義務
④成年擬制
⑤契約取消権
です。
「夫婦同氏」については改正を求める声もありますが、現行民法においては夫婦は共通の氏を名乗らなければなりません。法律の婚姻効果を発生させるためには戸籍上同一の性にしなければなりませんが、ペンネームや職場で旧姓を名乗ることについて等は差し支えありません。
「同居・協力・扶助義務」については、婚姻を継続するにあたっての基本的な義務になります。
「貞操の義務」についても明文化されており、これについては裁判上の離婚原因にも当たります。
「成年擬制」とは、未成年でも婚姻によって成年に達したものとみなされ、成年と同様の権利義務を与えられることです。この効果によって通常未成年では行えない養子縁組行為や、登録なしで営業をすることができるようになります。なお一度婚姻をすれば、これが解消された場合であっても成年擬制の効果は消滅しません。
「契約取消権」とは、婚姻中に夫婦間でしたお互いの契約について、婚姻中はいつでも取り消すことができるというものです。夫婦間の問題については法による強制は立ち入らないということであり、履行後であっても取り消せます。しかし第三者が関与するものについては、その権利を害しての取り消しはできません。
次に夫婦の財産制度について見ていきましょう。
夫婦は「夫婦財産契約」という契約で、自由に夫婦の財産関係を定めることができます。これは契約がない場合の民法の規定による「法定財産制」に対して、自らで取り決める契約になります。日本では民族性からかあまり普及していませんが、数年前に俳優さんと女性弁護士の結婚の際に話題になりました。
通常は公正証書で残したりしますが、この契約の形式は次のとおりかなり厳格なものになります。
①婚姻届出前に締結しなくてはなりません
②婚姻届出までに登記を行ないます
③登記がなければ夫婦の承継人および第三者に対抗することができません
④婚姻届出後はその契約を変更することはできません
次は財産契約を結ばない場合の「法定財産制」についてです。
「法定財産制」は次の3つからなります。
①婚姻費用の分担
②日常家事債務の連帯責任
③財産の帰属と管理における夫婦別産制
です。
①の費用の分担については特に問題はありませんが、②の「日常家事債務の連帯責任」とは、日常発生する家事(特別でない行為)によって生じた債務については、一方が第三者に対して他方の免責を告げたときを除いて、夫婦ともに連帯責任を負うというものです。
ここでの日常家事の範囲については、客観的にその法律行為の内容等を十分考慮して判断するものとされています。
「夫婦別産制」とは、夫婦の一方が婚姻前から有している財産、および婚姻中であっても自分の名前で得た財産については、夫婦それぞれの個人的な財産とすることを言います。
これに対して夫婦どちらに属するか不明な財産については、夫婦共有のものと推定されます。
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