商法 使用人について

今日は商法の続きを書いていきます。

前回は商号というものについて書きましたが、商号はその商号を定めた者しか使用できません。しかしその商号を定めた者が許可を与えた者については、その者の商号を使って営業をすることができます。これを「名板貸」といいます。

商号を貸した者を「名板貸人」と言い借りた者を「名板借人」と言いますが、お客さんや取引業者などが名板貸人の店と誤認して、その名板借人から不利益を被った者がいた場合は、名板貸人は名板借人と連帯して弁済する義務を負わなければなりません。

名板貸人の責任の成立要件としては次のとおりです。

①名板借人が名板人の商号を使用しているという外観があること

②名板貸人が許可をしたという帰責事由があること(許可は黙示でも認められます)

③善意無重過失である第三者が誤認したこと

です。なお、商号に付加された語句がある場合や商号が簡略化されている場合にも、第三者の誤認がある限り責任が発生します。ただこの場合には誤認された営業が、本来の商号である営業と同種であることが必要になります。

名板貸人に責任が及ぶ範囲としては、自分の商号を使って名板借人が行った、取引によって生じた債務になります。取引によって生じた債務については、名板貸人は名板借人と連帯して責任を負います。

この責任の範囲には、交通事故などの不法行為による損害賠償は原則として含まれません。しかし詐欺などの、取引行為と判断される不法行為については、責任の範囲に含まれるとされます。

では名板貸ではなく、営業を譲渡とした場合の責任についてはどうでしょうか。この場合は、譲渡される営業によって生じた債務は原則譲渡人が負いますが、譲受人が債務引受などをした場合については、譲受人も責任を負うことになります。また併せて譲渡人は、競業避止義務も負うこととなります。

次は「商業使用人」について見てみましょう。

「商業使用人」とは、雇用されて営業を補助する自然人を言います。商業使用人には、支配人や店舗の使用人などがあります。

「支配人」とは、商人や会社から営業所等の営業や事業を任された者を言います。支配人を選任した場合は、必ず登記をしなければなりません。

この支配人というものは商人等に代わる代理権を持ちますが、この代理権については営業や事業に関する一切の、裁判上または裁判外の行為に及びます。なお、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません。例えば支配人が行える業務を限定したとしても、通常に考えれば支配人の責任の範囲である、と考える善意の第三者には対抗できないということです。

では、支配人の義務についてはどうでしょうか。支配人は、雇用契約上の善管注意義務や報告義務などの責任を負っていますが、そのほか営業避止義務や競業避止義務というものも負っています。言い換えると、支配人は商人の許可を得なければ、次の4つをすることができないというものです。

①自ら営業を行うこと

②自己または第三者のためにその商人の営業範囲内の取引を行うこと

③他の商人や会社、外国会社の使用人になること

④会社の取締役や執行役または業務を執行する社員になること

です。以上支配人とは、商人から権限を付与された者になりますが、一方、表見支配人というものも存在します。表見という言葉は、民法の表見代理人の話に出てきましたね。それと同じようなものになります。

https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/date/2018/06/20

 

「表見支配人」とは、包括した代理権を与えられていない使用人であるにもかかわらず、支配人らしく思わせる名称を付けられた使用人のことを言います。例えば、責任権限を持っていない店員さんであるにもかかわらず、「お店責任者」などといった名札を付けられている場合がこれに当たります。

表見代理人は、裁判外の行為に関しては、善意の第三者に対しては支配人と同一の権限を有するとみなされます。権限がなくても、裁判上の行為を除き、善意の第三者に対しては支配人と同様の効力を有することとなります。責任権限がなくても、第三者に支配人と誤認させるような表示をさせている以上、裁判まで発展していない事案については、責任を持ちますよということになります。 

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民法 保証債務について
今日は保証債務について書いていきます。 「保証」とは他人が負った債務が履行されない場合に、これに代って債務を履行する契約を言います。他人の債務を保証した者を「保証人」といい、保証される他人の債務を「主たる債務」といいます。また保証人の負う債務は「保証債務」といいます。 保証債務は債権者と保証人との保証契約によって成立しますが、これは書面でしなければ効力は生じません。保証債務には次の3つの性質があります。 ①付従性 ②随伴性 ③補充性 になります。 「付従性」とはその債務に付加されている性質を言います。主債務がなければ保証債務は成立せず、主債務が消滅すればそれに応じて保証債務も消滅することになります。保証債務は、主たる債務より重くすることはできません。 「随伴性」とは付き従う性質であり、主たる債務が移転した際には保証債務も一緒に移転します。例えば債権譲渡などによって債権がAからBに移転した場合には、保証も移転するということです。 「補充性」とは足りないことを補う性質であり、主たる債務が履行されなかった時に初めて保証人の履行責任が発生することを言います。補充すべき責任とは言っても、保証人は無条件に責任を負うわけではなく、弁済する前に2つの権利を行使することができます。 これは催告の抗弁権と検索の抗弁権というものになります。 「催告の抗弁権」とは、保証人に請求する前に、まず主債務者に請求しなさいと言える権利です。あくまでもまず弁済すべきは主債務者であると主張できます。 「検索の抗弁権」とは、保証人が主債務者に弁済の資力がありかつその執行が容易であることを証明した場合に、主債務者に執行させる権利を言います。また主たる債務者が債権者に対する反対債務を有している場合には、保証人は相殺をもって債権者からの請求に対抗することができます。 次に保証債務の内容などを見てみましょう。 保証債務は、債権者と保証人との間での書面による保証契約によって成立します。ここに債務者自身は関与しません。 保証人になる資格に制限はありませんが、債務者が法律や契約によって立てる保証人の場合は、行為能力者であることと、弁済する資力があることが必要になります。 保証債務は主債務の元本だけでなく、利息や損害賠償金その他の、債務に従たるものすべてを含みます。ですので保証人が弁済する場合もこれらを含めるものとなります。 主債務と保証債務の関係性を見てみますと、主債務に生じた事由はすべて保証債務に影響を及ぼします。一方保証債務に生じた事由は、主債務を消滅させる行為(全額返済)以外は主債務に影響を及ぼしません。 では、主債務者が弁済を履行できずに保証人が弁済した場合には、主債務者の義務はなくなってしまうのでしょうか。この場合には債権者から保証人に請求する権利が移り、保証人が主たる債務者に対して「求償権」を有することとなります。 「保証債務」には「連帯保証」という制度があります。これは非常に怖い制度でありますが、実は保証契約の多くは連帯保証だったりしますので、保証人になる際にはくれぐれもその内容を精査する必要があります。 「連帯保証」とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担することを言いますが、連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権もなく、債権者から請求された場合には必ず、支払いの義務が生じることとなります。 連帯保証人の多くは、主たる債務者の経済状況を把握せずに安易に契約を結ぶ場合が多いことから、今回の改正民法においては情報提供の項目が多く付け加えられています。 https://www.gyosei-suzuki-office.com/category8/category10/entry38.html
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7月1日民法一部改正(相続分野)施行
相続分野の改正民法が、本年7月1日に施行となります。 すでに施行された「自筆遺言書の方式緩和」、2020年4月1日施行の「配偶者の居住権を保護するための方策(短期、長期)」、2020年7月10日施行の「自筆証書遺言の保管制度」を除き、2019年7月1日より施行されます。 あと1月ほどとなりましたが、これには「遺留分制度」や「相続人以外の者の貢献」に関する改正が含まれますので、下記リンクより一度ご確認下さい。 https://www.yuigon-souzoku-gunma.com/category13/entry69.html  
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民法上の委任契約について
今日は民法における委任契約というものについて書いていきます。 「委任」とは当事者の一方が「法律行為」をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力が生じる諾成契約になります。 「諾成契約」とは、当事者の意思表示のみで成立する契約のことを言います。ちなみに当事者の合意のみでは足らず、物の引渡しや給付を成立要件とする契約は「要物契約」と言います。 委託する側を「委任者」、承諾する側を「受任者」と言います。ここで委任とは法律行為を委託すると言いましたが、法律行為以外の事務の委託も当然あるわけで、それは「準委任」と言い委任の規定が準用されます。 委任をするにあたっては、委任者側にも受任者側にも義務や責任が発生します。 ではまず委任者側の義務について見ていきましょう。委任者は原則、受任者に経済的に負担をかけないという義務を負い、具体的には次のような義務が発生します。 ①報酬支払い義務 ②費用前払い義務 ③立替費用償還義務 ④債務の弁済または担保供与義務 ⑤損害賠償義務 です。 まず①についてですが、民法においては委任というものは、原則無償委任になります。ですので、報酬の支払い義務が発生するためには報酬支払いの特約が必要になります。また特約があった場合でも、その報酬は原則後払いになります。 ②では、委任された事務を処理するについての必要な費用について、事前に受任者から請求があった場合には前払いをする必要があります。あくまでも遂行に必要な費用の場合です。 ③の立替費用とは、必要な費用が前払いされずに、受任者によって立替えられた費用のことです。この場合は立替えた費用を請求できるのみならず、支出以降の利息も請求することができます。 ④の債務とは、委任事務を行うについての費用的なものに収まりきらず、受任者が債務を負った場合のものを言います。この場合の債務は必要と認められる範囲に限られますが、その弁済を自分に代わってするようにと、受任者は委任者に対して請求することができます。まだ弁済期の到来していない債務については、委任者に担保を請求することもできます。 ⑤の損害賠償義務とは、受任者が自分に過失がないにもかかわらず損害を被った場合に、委任者に損害賠償を請求できる権利になります。この場合の委任者の責任は無過失責任(委任者に責任がなくても負う責任です)になります。 委任契約はその目的を完了したときに終了しますが、それ以外にも終了となる場合があります。 まず、理由がなくても当事者双方が一方的にいつでも解除が行える、「無理由解除」(告知と言います)というものがあります。もともと委任契約というものは無償契約が原則であるように、当事者間の信頼関係が基礎となるものになります。ですので、この信頼関係が崩れた時など、委任契約を継続することが難しいからです。 しかし関係が崩れたから一方的にというのも理不尽ではありますので、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方に不利な時期の解除については、損害賠償を条件に認められることとなります。 また告知以外でも、委任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたときや受任者が死亡したり破産手続開始の決定を受けたとき、あるいは後見開始の審判を受けた場合は、当然に終了します。
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民法における婚姻の効果
今日は婚姻の効果について書いていきます。婚姻は役所に届出をすることが形式上の要件となっており、届出をしない限りは法律上の夫婦とは認められません。 「婚姻の効果」については次のようなものがあります。 ①夫婦同氏 ②同居・協力・扶助義務 ③貞操の義務 ④成年擬制 ⑤契約取消権 です。 「夫婦同氏」については改正を求める声もありますが、現行民法においては夫婦は共通の氏を名乗らなければなりません。法律の婚姻効果を発生させるためには戸籍上同一の性にしなければなりませんが、ペンネームや職場で旧姓を名乗ることについて等は差し支えありません。 「同居・協力・扶助義務」については、婚姻を継続するにあたっての基本的な義務になります。 「貞操の義務」についても明文化されており、これについては裁判上の離婚原因にも当たります。 「成年擬制」とは、未成年でも婚姻によって成年に達したものとみなされ、成年と同様の権利義務を与えられることです。この効果によって通常未成年では行えない養子縁組行為や、登録なしで営業をすることができるようになります。なお一度婚姻をすれば、これが解消された場合であっても成年擬制の効果は消滅しません。 「契約取消権」とは、婚姻中に夫婦間でしたお互いの契約について、婚姻中はいつでも取り消すことができるというものです。夫婦間の問題については法による強制は立ち入らないということであり、履行後であっても取り消せます。しかし第三者が関与するものについては、その権利を害しての取り消しはできません。 次に夫婦の財産制度について見ていきましょう。 夫婦は「夫婦財産契約」という契約で、自由に夫婦の財産関係を定めることができます。これは契約がない場合の民法の規定による「法定財産制」に対して、自らで取り決める契約になります。日本では民族性からかあまり普及していませんが、数年前に俳優さんと女性弁護士の結婚の際に話題になりました。 通常は公正証書で残したりしますが、この契約の形式は次のとおりかなり厳格なものになります。 ①婚姻届出前に締結しなくてはなりません ②婚姻届出までに登記を行ないます ③登記がなければ夫婦の承継人および第三者に対抗することができません ④婚姻届出後はその契約を変更することはできません 次は財産契約を結ばない場合の「法定財産制」についてです。 「法定財産制」は次の3つからなります。 ①婚姻費用の分担 ②日常家事債務の連帯責任 ③財産の帰属と管理における夫婦別産制 です。 ①の費用の分担については特に問題はありませんが、②の「日常家事債務の連帯責任」とは、日常発生する家事(特別でない行為)によって生じた債務については、一方が第三者に対して他方の免責を告げたときを除いて、夫婦ともに連帯責任を負うというものです。 ここでの日常家事の範囲については、客観的にその法律行為の内容等を十分考慮して判断するものとされています。 「夫婦別産制」とは、夫婦の一方が婚姻前から有している財産、および婚姻中であっても自分の名前で得た財産については、夫婦それぞれの個人的な財産とすることを言います。 これに対して夫婦どちらに属するか不明な財産については、夫婦共有のものと推定されます。
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婚姻の無効や解消について
今日は婚姻の無効や解消について書いていきます。 まず婚姻の解消についてです。「婚姻の解消」理由には、 ①離婚 ②死亡・失踪宣告による解消 があります。 「離婚」については「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」がありますが、まず協議上の離婚について見てみましょう。 「協議上の離婚」とは、夫婦お互いの協議によって成立する離婚になります。この場合には夫婦ともに離婚する意思があること(離婚意思の合致)と、離婚の届出を行うことが必要とされています。なお判例ではこの離婚意思の合致について、離婚そのものをする意思は必要とせず、届出をする意思のみで足りるとしています。 また離婚の際に未成年の子がいる場合は、必ず一方を「親権者」にしなければなりません。 離婚そのものをする意思であれ、届出をする意思のみであれ、それらを含む離婚意思のない者の離婚は当然に無効となります。「意思のない離婚」とは、詐欺または強迫によって協議離婚がなされる場合であり、この場合は取り消しを請求することができます。この取消権は、詐欺を見つけた時または強迫から免れた時点から3ヶ月で消滅します。また追認によっても消滅することになります。 協議上の離婚が成立しなかった場合は「裁判上の離婚」になります。離婚の場合は原則、訴訟を起こす前に家庭裁判所に調停の申し立てを行い、調停離婚が成立しない場合に裁判上の離婚に向かいます。 離婚の訴えを提起する場合には、次の理由が必要になります。 ①配偶者の不貞行為 ②悪意の遺棄 ③3年以上の生死不明 ④回復の見込みのない強度の精神病 ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由 です。 裁判所はそれらの事情を考慮して、離婚の訴えを認めるか棄却します。なお②の悪意の遺棄とは、理由もないのに同居を拒んだり家計費を差し入れないなど、積極的な意思で夫婦関係を行わないことを言います。 以上、協議上であれ裁判上であれ、離婚が成立した場合には次の効果がもたらされます。 ①身分上の効果 ②子の処遇 ③財産上の効果 です。 「身分上の効果」により、婚姻関係とそれに伴う姻族関係が消滅します。また姓(氏)を改めた者については、「婚氏続称の届出」をしない場合は、結婚前の姓に戻ります。 「子の処遇」についてはまず、その子の嫡出子たる身分には影響は及ぼしません。また未成年の子の場合は親権者が決められます。 「財産上の効果」としては、一方が他方に財産分与を請求することができます。その額や方法は当事者の協議によりますが、協議が成立しない場合は離婚から2年以内であれば家庭裁判所にも処分を請求できます。 次は婚姻の無効と取り消しについて見てみましょう。無効と取り消しはその効果や影響が異なりますので、婚姻の瑕疵の程度に応じて規定がなされています。 まず、より影響の大きい無効について見てみましょう。 「無効」とされた場合は、婚姻が最初から無効であるとされ、夫婦としての効果は何ら生じません。婚姻の無効は、次の場合に限りなされます。 ①婚姻意思を欠く場合 ②届出を欠く場合 です。 無効は請求がなされて成立しますが、無効を請求することができる者は当事者だけでなく、利害関係者は誰でも主張することができます。これは当事者が死亡していても主張することができます。 次の「取り消し」ですが、これは無効よりも限定的な効果であり、取り消しの効果は婚姻成立時までは遡及しません。取り消しまでの期間は婚姻が有効とされ、その期間は財産分与などの財産関係も適用されます。 婚姻の取り消しを請求できる者は、当事者およびその親族、また検察官になります。 無効は当事者の死亡後も請求できますが、取り消しでは当事者の死亡後の請求は当事者や親族のみが行え、検察官は請求をすることはできません。また重婚違反の場合は当事者の配偶者および前配偶者も請求できます。これも失踪宣告の記事で確認ください。 再婚禁止期間の違反については親子関係の証明も関わりますので、前夫についても取り消しを請求することができます。詐欺・強迫の場合は当事者のみの請求となります。
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民法 債務不履行について
今回は債務不履行について書いていきます。 債務不履行とは債務者が、正当な理由がないにもかかわらず「債務の本旨」に従った履行を行わないことを言います。債務の本旨とは、契約で定められた債務の内容を言います。 債務不履行があった場合は、債権者は債務者に損害賠償請求をすることができます。債務不履行には、 ①履行遅滞 ②履行不能 ③不完全履行 がありますが、まず履行遅滞というものから見ていきましょう。 履行遅滞とは字のごとく、正当な理由がないのに履行が遅れることです。その要件としては次のものが挙げられます。 ①履行が可能な状況であること ②履行期を徒過(とか:何もしないで決められた期間が過ぎてしまうことです)したこと ③履行遅滞が債務者の責任で発生したものであること ④履行遅滞が違法(正当化する理由がないことです)であること です。③の債務者の責任についてですが、これは債務者本人だけでなく、履行補助者(同居する家族や業者の使用人等)の故意や過失も含まれます。例えば家族の者が重要な書類を受け取っていたのに債務者に渡し忘れ、履行が遅れた場合などです。 次の履行不能とはどのような状況を言うのでしょうか。履行不能の成立要件としては、 ①契約成立後に履行が不能になったこと ②債務者の責任によって履行が不能になったこと ③履行不能が違法であること です。不能であるかどうかは、社会通念上妥当と思われるもので判断されます。上記要件のとおり、債務者の責任で契約の内容が履行できなくなってしまった状態ということです。 では3つめの不完全履行とはどのようなものでしょうか。これも成立要件を挙げると、 ①履行はとりあえずなされているが、その状況が不完全であること ②債務者の責任によって履行が不完全になったこと ③不完全履行が違法であること です。不完全履行は、履行が途中で中断されてしまった状況になります。また履行はすべて終えたんだけれども、その内容に不備があって完全な履行とは言えない状況も不完全履行に当たります。 注文の品をすべて納品したんだけれど、その一部が不良品であった場合などがこれに当たります。 これら債務不履行があった場合の責任については次回書いていきます。
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民法における婚姻について
今日は民法のうち「家族法」の分野に定められた、「婚姻」について書いていきます。ここも相続の際には非常に大きく関わってきます。 民法では現行法や改正法においても「法律婚主義」を採用しています。ですので相続される権利のある配偶者は、「婚姻関係にある者」のみになります。どんなに長く一緒に生活をし事実上は夫婦の関係にあるにしても、婚姻の届出をしない限りは婚姻は成立せず、法律上は夫婦と認められないことになります。 「婚姻」が成立した場合は、基本的には離婚をしない限りは配偶者としての権利は保障されます。 なお「婚姻」は私法上の契約であり本人の意思が最大限尊重されますので、成年被後見人であっても「単独で」することができます。 婚姻の成立要件としては次の3つがあります。 1.婚姻意思の合致(実質的要件) 2.婚姻障害に該当しないこと(実質的要件) 3.婚姻の届出(形式的要件) です。 一つ目の要件である「婚姻の意思の合致」には、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思が必要である、とされています。つまり当事者お互いが自ら、夫婦の関係になることを望んでいることが要件になります。 本当に婚姻する意思があるわけではなく、相続などのためだけに形式的に婚姻届を出した場合はその届出は無効になります。 次の「婚姻障害」には、次のようなものが該当します。 ①婚姻適齢 ②重婚禁止 ③再婚禁止期間 ④近親婚の禁止 ⑤直系姻族間の婚姻禁止 ⑥養親子関係者間の婚姻禁止 ⑦未成年者の婚姻 になります。 「婚姻適齢」とは、男性は18歳、女性は16歳にならないと婚姻できないというものです。これに違反した場合は婚姻が取り消されます。なお女性が男性と異なるのは合理性を欠くとして、女性も18歳に引き上げる方向で民法改正が進められています。 「重婚禁止」とは、配偶者のある者は重ねて婚姻することができないというものです。日本においては「一夫一婦制度」が維持されています。 なお重婚については、行方不明者であった配偶者が現れた場合の対応に問題が残ります。これについては先に「失踪宣告」で記事に載せましたので、ご確認ください。 https://estima21-gunma-gyosei.com/archives/786 「再婚禁止期間」とは、女性が再婚するには、婚姻の解消又は取消しの日から起算して100日経過後でなければすることができないというものです。なおこの期間の例外として、女性が前婚の解消若しくは取消しの時に懐胎(妊娠)していなかった場合、または女性が前婚の解消若しくは取消しの後に出産した場合には、再婚禁止期間の規定を適用されません。 以前はこの期間が6ヶ月経過後とされていましたが、平成28年6月1日施行の改正民法により見直しが図られました。なおこの規定は、父親の特定を法律上可能にするために設けられています。 次の「近親婚の禁止」では、優生学上の理由から、直系血族または3親等以内の傍系血族の間では婚姻することはできないというものになります。前回の親族の記事で確認しますと、3親等の血族である叔母とは結婚できませんが、その子であるいとことは結婚できることになります。菅元首相の奥さんもいとこでしたっけ。 「直系姻族間の婚姻禁止」については優生学上の理由はありませんが、同義上の理由から設けられています。これについては姻族関係が終了した後も禁止が解除されません。 「養親子関係者間の婚姻禁止」についても直系姻族間と同様の取り扱いになります。 以上挙げた規定については、違反した場合はすべて婚姻が取り消しとなります。 最後の「未成年者の婚姻」については、最初の項の婚姻適齢に述べましたが、婚姻適齢に達しても未成年者である限りは、婚姻するためには父母の同意が必要になります(父母の一方が反対等しても、一方の同意で足ります)。これについては18歳成人の改正民法が2022年4月1日より施行されますので、規定が変わることになります。 なお実際は父母の反対があったとしても、婚姻自体は有効になります。
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今日は認知について書いていきます。認知は相続にも関係してくる分野になります。 配偶者を除き、相続人の第一順位は子になります。だんなさんが亡くなられていざ相続だという場合に、奥様と同居している成人のお子さんが3人いた場合には、通常はこの4人が相続人ということで相続の手続きを済ませることでしょう。 しかし相続を終えた後に、認知された非嫡出子が現れ、相続がやり直しになる場合があります。「嫡出子」とは法律上婚姻している夫婦間に生まれた子供を言い、「非嫡出子」とは法律上婚姻関係にない者の間で生まれた子になります。 この非嫡出子ですが、相続に際しては関わりを持ってくる場合があります。お子様たちとは血縁関係があることでしょうが、相続においては認知されているかいないかが重要な意味を持ってきます。認知されていなければ相続に関わりをもちませんが、「認知された非嫡出子」の場合は、相続権のある子になります。 「認知された非嫡出子」も他の子と同等の立場になりますので、遺言書のない相続の場合には、必ず戸籍をたどって相続関係を明らかにしておくことが重要になります。 では認知について見ていきましょう。前述した通り、「非嫡出子」とは婚姻関係にない男女間に生まれた子(婚外子)を言います。法的には婚姻関係にない内縁の妻との間に生まれた子も、家族が知らないいわゆる愛人との間に生まれた子もともに「非嫡出子」となります。 通常の婚姻関係にある男女間に生まれた子は「嫡出子」と言います。「非嫡出子」はその親との間に法律上の親子関係はありませんが、「認知」されると法律上の親子関係が生じます。 「認知」とは、非嫡出子の親が、その非嫡出子を自分の子として認める行為を言います。認知は生前に行うこともできますし、遺言で行うことも認められています(遺言認知)。また認知とは通常は父子関係における行為であり、母子関係においては分娩の事実により親子関係が当然に発生しますので、認知は不要になります。 認知により認知された非嫡出子は、父親との相続関係が認められることになります。法的に血族関係が認められ法定相続人になります。 たまにドラマなどで、愛人との間に生まれた子を、子供のない自分たちの実の子、非嫡出子として届け出るストーリーがあります。この場合はどうなるのでしょうか。 養子以外の子には血縁関係が必要となりますので、血縁関係のない戸籍上の妻の嫡出子となることはありません。不正の届出となり、事実が判明すれば嫡出子であることは否定されます。ただし判例からは「認知」の効果が認められ、認知された非嫡出子となります。 認知について話を戻します。「認知」には次のものがあります。 ①任意認知 ②強制認知 です。 では「任意認知」とはどのようなものを言うのでしょうか。 「任意認知」とは、父が自ら役所に「認知届」を提出して行う方法になり、遺言による方法も認められます。また認知は身分行為になりますので、未成年者や成年被後見人であっても、法定代理人の同意なしにすることができます。 なお任意認知は自らの意思ですることが必要になりますので、認知者の意思に基づかない認知届けは無効になります。 認知には次の例外を除き、子の承諾は不要です。認知に子の承諾を必要とする場合は次のとおりです。 ①成年の子を認知する場合は、本人の承諾が必要になります ②胎児を認知する場合は、その母親の承諾が必要になります ③成年者の直系卑属(孫等)がいる、死亡した子を認知する場合は、その成年である直系卑属の承諾が必要になります 「強制認知」とは、父または母が認知をしないときに、その子や直系卑属が裁判により求めるものになります。ただしこれは父または母の死亡から3年以内にする必要があります。 任意認知も強制認知も、その効果は子の出生時にさかのぼって親子関係が生じます。この際も、第三者が既に何らかの権利を取得している場合には、その権利を害することはできません。 最後に「準正」について付け加えておきます。 「準正」とは、非嫡出子を嫡出子にする制度を言います。準正の要件は、「認知」+「婚姻」になります。認知により相続権が発生しますが、あくまでも「認知された非嫡出子」であることには変わりありません。これを嫡出子に変える制度になります。 「準正」には認知と婚姻の順序によって2つのパターンがあります。 ①婚姻準正 ②認知準正 です。 「婚姻準正」とは、認知が確定した後に父母が婚姻した場合で、婚姻の時から準正が発生します。 「認知準正」は婚姻をした父母が認知をした場合で、認知の時から準正が生じます(この場合も実務上は婚姻の時からとされています)。 順番はどちらであっても、準正が生じた子(準正子)は、嫡出子の身分を取得します。なお現在の民法では、相続においても嫡出子と認知された非嫡出子の相続分は変わりませんが、改正前は差がありましたので、この準正の手続きはより重要なものでした。
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民法における不当利得について
今日は民法の不当利得について書いていきます。 「不当利得」とは、法律上の原因がないにもかかわらず、他人の財産や労務によって利益をうけ、そのために他人に損失を及ぼすことを言います。不当利得を得た者は、その利益の存する限度(現存利益)においてこれを返還する義務を負います。また利得を得る際に悪意であった者については、利得の返還とともに損害賠償の責任も負います。 不当利得の成立要件は次の4つになります。 ①利得が存在すること ②損失が存在すること ③利得と損失の間に因果関係が存在すること ④法律上の原因がないこと です。 ちなみに「現存利益」とは、自分の利益として残っている利益を言いますが、単純に手元に残っている現金や預貯金ということではありません。現に利益として残っているものを言います。 わかりにくいですが、例えば不当利得が10万円あったとした場合、食費に2万円使ってしまったとします。この場合の2万円は自分の利益のために使ったのですから、お金は残っていなくても栄養を得たという効果が残っています。ですので残った8万円に2万円分の食費が足されて、10万円が現存利益となります。 一方、ギャンブルなどの遊興費に2万円を浪費してしまった場合は、利益としてはなんら残っていないことになります。この場合は浪費した2万円分は差し引かれて、現存利益は8万円となります。 不当利得の具体例としては次のようなものがあります。 AさんがBさんに有名画家の絵を100万円で売ったとします。契約が成立し、BさんはAさんから絵の引渡しを受け代金を支払いました。しかし後日この絵が偽物であったことが判明したので、BさんはAさんに「不当利得返還請求」をしました。しかもAさんはこの絵が偽物であることを知っていて(悪意)販売したので、損害賠償も請求しました。という形になります。 このような不当利得ですが、次の場合には特則が付されています。 ①債務の不存在を知っていてした弁済 ②期限前の弁済 ③他人の債務の弁済 です。 どのようなことかと言うと、①は、自分に債務がないことを知っていながら弁済を行った場合です。不合理な行為ですが、このような不合理な行為をした者には保護を図る必要もないことから、その給付したものの返還を請求することはできません。ただし、強制執行を避けるために必要的にした場合や、その他の事由によってやむを得ず行った場合には返還請求を行うことができます。差し当って請求されている弁済を行わないと、差押がなされるなどの場合です。 ②の期限前の弁済とはどのようなものでしょうか。通常の弁済には「期限の利益」があり期限までは弁済を行う義務はありませんが、この期限の利益を行使せずに、期限前に弁済を行った場合です。この場合はみずからが権利を行使しなかったのですから、不当利得(弁済から期限までの利息分)返還請求をすることはできません。ただし債務者が錯誤によってその給付を行った場合には、債権者は不当利得を返還する必要があります。 ③の他人の債務の弁済とは、他人の債務を自分の債務と誤信して弁済してしまった場合です。この場合では、債権者が善意で債権証書を消失したり、担保を放棄したり、債権を時効で消滅させたりしてしまった時などは、弁済者は不当利得の返還請求をすることはできません。これは弁済者の過失より善意の債権者の保護が優先されるからです。 この場合の弁済者については、あくまでも債権者に対して返還請求できないのであって、本来の債務者に請求することはできます。誤ってした弁済を泣き寝入りするものではなく、本来の債務者に対して求償権を行使することができます。
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民法における危険負担について
今日は危険負担と言うものについて書いていきます。 「危険負担」とは、双務契約が成立した後どちらかの債務が完全に履行される前に、一方の債務(双務契約の場合は当事者双方がともに債権債務を有します)が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合に、どちらの当事者が責任を負うかというものです。 民法では「債務者主義」を採用し、どちらかの債務が完全に履行される前に一方の債務が"債務者の責に帰すべき事由によらず"に履行不能で消滅してしまった場合でも、原則として債務者の負担になります。 例えば物の売買で見た場合、物を売る側は代金と引き換えに物を交付するという債務を負いますので、物の交付については売主側が債務者になります。ですので物が消滅してしまった場合は、売主側に責任はなくても、物の交付の履行不能によるリスクは、売主側が負うということになります。 これはあくまでも債務者の責によらない場合ですが、債務者に履行不能についての帰責事由がある場合は、危険負担の問題からは離れ、債務不履行に基づく損害賠償の問題になっていきます。またすでにどちらかの債務が履行された場合、今の例で行けば売主側が物を交付したかあるいは買主側が金銭を交付した場合は、同様に危険負担の問題とはなりません。賠償か解除かの問題になります。 話を戻します。債務者が危険負担を負う、リスクを負うとはどういうことでしょうか。 双務契約においては双方の債務がそれぞれ対価的意義を有しています。言い換えるとお互いに相手方に対する債権債務を有していることになります。一方の債務が消滅すれば他方の債務も消滅することになりますので、売主側の物が売主の責任によらずに消滅してしまった場合には、売主側は相手方に対して代金を請求できないということになります。売主の責任でなく物が消滅してしまっても相手方に対して代金を請求できないということは、物の消滅は売主自身で追わなくてはならない、という理屈になります。 つらつらと書きましたが、これが「債務者負担」というものになります。 債務者主義の例外として、「債権者主義」というものがあります。これは一方の債務が消滅しても、他方の債務が消滅しないという場合に採用されます。次の場合には債権者主義が取られています。 ①特定物に関する物権の設定、または移転を目的とする双務契約の場合 ②不特定物に関する契約についても、特定が生じた以降は債権者主義となります ③債権者の責に帰すべき事由によって、債務の履行が不能となった場合 です。 特定物とは、例えば世界に1本しかない、”この”ビンテージワインというようなものです。売買契約が締結された以降に売主の責任なくこのワインが消滅してしまった場合には、受け取るべきワインが存在していなくても、買主は代金を支払う義務があるということになります。 不特定物の特定とは、5本ある赤ワインの中から1本を選んだ場合などを言います。特定されていない5本のワインから、1本が特定されたということになります。また債権者側に理由があって債務が不履行になった場合には、債権者みずからが責任を負うということになります。 なお通常、契約の場合には危険負担を明記する場合が多くなりますが、今回書いてきたこの危険負担についての民法の規定は、義務ではなくあくまでも任意の規定になります。このような民法の規定によらず、当事者同士で別途決めることもできます。
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