遺言における付言について

今日は付言について書いてみます。

「付言」は「ふげん」と読みます。付言とは遺言書に自分のメッセージとして付け加える言葉です。付言自体には法的効果はありませんので、遺言書の方式を満たす要件にはなっていません。しかし多くの方が文面に残されているようですし、行政書士としても基本的にはおすすめをすることにしています。

また書面への付言という形ではなく、別途手紙という形で残される場合もあります。しかしこの場合は公正証書遺言のように公証役場で保管がなされず、またその真偽も定かではないため信ぴょう性が疑われることもあり、お勧めはできません。

付という文字がつくと、付記や追記という言葉が思い浮かんでしまいますが、もちろんこれらのように、後から付け加える(意図的な場合もあるでしょうが)という性質のものではありません。むしろその遺言書を書かれた本来の動機や目的から発する言葉だと考えます。

遺言を残す動機はいろいろあると思いますが、ひとつには自分が苦労して残した財産を、自分の意思で自分の思う通りに配分したいという考えです。これは自分がいなくなっても、その財産を有効に活用することのできる子を中心に相続させたいというような合理的な理由もあるでしょうし、今まで自分にしてくれた行為や与えてくれた愛情への論功行賞的な理由の場合もあるかも知れません。

また例えば子供ごとに異なるそれまでの支援状況も加味した上で、それらを差し引いてそれぞれ平等な相続額にという場合もあるでしょうし、それぞれの暮らしぶりから行く末を案じてということもあるかも知れません。

もうひとつの動機は、自分が亡くなったあとも、相続でもめることの無いようにとの家族への配慮や愛情から発せられるものです。遺言書を書こうか悩まれている方の多くは、むしろこちらの動機が強いのではないかと思います。

でもそのような愛情から発した遺言書も、内要によっては感情的なしこりを残す場合も出てきます

多くの場合には相続財産は不動産など、簡単に分割できないものになります。また現に今どなたかが住まわれている家も相続財産(生前贈与されていても相続財産に加わります)になりますので、それを相続の段階で分割しようといってもなかなかできることではありません

遺言書がなかった場合の相続では必ずおこる問題ですが、そもそもそういうゴタゴタでご家族の方に心身の負担をかけたくないという思いで遺言書を書かれたはずです。かといって実際にはその住まわれている家や不動産などの財産を均等に分けることは非常に困難なことですし、多少なりとも偏りが出てしまいます。そこにどなたかの不満がでないとも限りません

遺言書というものは元来無味乾燥なものです。そこには相続人や相続財産などが淡々と記載されているだけで、ご本人の本来の意思など確認しようもありません。意思を読み取ったり推察することはできるでしょうが、誤解の生まれる余地も多分にありますましてや相続分に偏りがあった場合などは、相続分の少ない方からの不満はあって当然だと思います。

財産を偏りなく相続させることはとてもむつかしいことです。不動産が多い場合などはなおさらです。愛情の多い少ないで相続分を考えたのではなく、事情があってしたことであれば、その理由は伝えてあげた方が良いと思います。

付言はご自分の感情を伝える最後の方法であるとともにご遺族の方にとっても、あなたのご意思を知る最後の機会に違いありません。

最後にひとつ。くれぐれも愚痴や恨み言は残さないようにしましょう。

ご家族が円満に相続を終えていただくためにも、あなたが遺言書を書かれた動機や意図を伝えることが重要になります。付言とはそのときそこにいないあなたに代って、そのメッセージを伝える役割を担っています。

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農地転用における市街化区域や農振除外の対象地

今日は農地転用の際に出てくる、用語について書いてみます。

まず「市街化区域」とはどういうものでしょうか。先に書いた立地による許可基準は、農地法による転用許可のための基準です。これは別の法律である「都市計画法」によって定められた地域であり、「市街化調整区域」との2つに区分されました。

先に都市計画法について触れておきますと、これは都市の健全な発展を目的として制定された法律であり、農地法とは趣旨が異なりますが、両法の目的が市街化区域に当たる場所で重なったということです。都市計画法については知識として、別の記事で書いていきます。

「市街化区域」とは既に市街地を形成している区域、および概ね10年以内に優先的計画的に市街化を図るべき区域のことです。これは経済や産業の発展のために優先的に指定された区域であり、この区域にある農地については農地転用の許可を受ける必要はありません農業委員会への「届出」のみでよいことになります。ご自分の農地が市街化区域にあるかどうかは、役所等に確認ください。

一方の市街化調整区域」とはどのようなものでしょうか。これは市街化を抑制すべき区域であると定められています。原則として開発行為が抑制されており、既存の建築物を除いては田園地帯の区域のことです。既存の建築物のみが例外となりますので、この建物を建て替えようとする場合も例外を除いては許可が下りない可能性が高くなります。役所との事前協議は必須です。原則農地転用は申請できません

では「農振除外とはどのようなものでしょうか。前回書いたように農業振興のために農業地域を保全する地域が農業振興地域となりますが、農業振興地域の農用地区域に該当している場合は原則農地転用は許可されません。

それでも申請を行う場合には、転用許可を受ける前にまず農用地区域からの除外をする必要があります。これを農振除外申請といいます。農振除外についてはこれも許可の要件は非常に厳しいものとなりますので、事前に必ず役所に相談し、まず除外が受けられる可能性を確認してからそのために必要な証拠書類の内要を打合せしましょう。

「農振除外申請」では、前段としての次の4つの要件すべてを満たす必要があります。要件は、

①.農用地区以外に代替すべき土地がないこと。

②除外によって土地の農業上の効率的総合的な運用に支障を及ぼすおそれがないこと。

③除外によって土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと。

土地基盤整備事業完了後8年を経過していることです。

これらをクリアするためには、その内容を証明する必要があります。建物を建てる場合には事前に設計図等も用意し、その建物の必要性と建物による周囲の畑等への影響も証明しなければなりません。事前準備なくして農振除外は容易く許可されません

また他に代えられない必要性が要件となりますので緊急度も高く、開発に向けた段取りも整っており、許可が下りたら早期に開発がなされることが想定されております。ですので一度農用地区域から除外をした農地であっても、一定期間内に転用開発手続きを行わない農地については、当初除外目的の必然性・緊急性が低いと判断され、農用地区域へ再編入される場合もあります。

農地転用は毎月申請を受け付ける市町村が多いようですが、農振除外の場合は受付が年数回(高崎市や前橋市は年2回)しかなく、また申請しても許可が下りるまでには通常1年ほどかかります。農振除外が前提となる場合には、受け付け時期を逆算して準備することも必要となります。農振除外が認められたあとにはじめて農地転用申請を行うこととなります。

次に「青地地域」とはどのようなものでしょうか。これは農業振興地域内の農用地”区域内”農地のことです。略して「農振農用地」 または「青地」と呼ばれますが、今後10年以上にわたり農業利用を確保するため、農地以外の利用を厳しく制限している地域です。農地としての有用性が非常に高い農地ということであり、農振除外の対象地となります。

一方の「白地地域」とはどのようなものでしょうか。これは農業振興地域内の農用地”区域外”農地のことです。略して「白地」と呼ばれています。農業振興地域内に存在していても農地の集団性が低いため、土地改良事業を実施していない等の理由から青地の指定がされていない農地のことです。農業振興地域内にあっても農地としての有用性が低い農地ということです。青地 と比較すると農地以外への規制は比較的緩い地域です。農振除外は必要はありませんが農地転用は必要となります。

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農地転用の立地区分について

今日は農地転用する農地の立地区分について書いていきます。

農地転用許可を申請する場合は、その農地の存在する場所が非常に重要となります。届出だけでよい場合もあれば判断のむつかしい場所や、そもそも申請できない地域もあります。

農地転用の許可基準には「立地基準」と「一般基準(立地基準以外の基準)」があります。

「一般基準」は次のとおりです。

転用申請の目的用途として使用することが、確実であると認められない場合は許可されません。

②転用が周辺農家の営農に支障を及ぼすおそれがある場合は許可されません。

一時転用」(砂利の採取や建設残土などの埋め立てなどで、農地を一時的に農地以外に利用する場合)では、利用後に原状回復されることが確実と認められない場合は許可されません。

「立地基準」とは、農地をその優良性や周辺の土地利用状況等によって区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地へ誘導することとされています。

具体的な区分としては、

「農用地区域内農地」といい、農業振興地域内の農用地区域内にある農地のことです。原則許可されません。許可を申請する場合には事前に農用地区域からの除外(農振除外)または用途変更が必要となります。

甲種農地」といい、市外化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地のことです。原則許可されません

第1種農地」といい、10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象農地等良好な営農条件を備えている農地のことです。原則許可されません

ただし第一種農地の例外許可の1つに「集落接続」というものがあります。これは相当数の家屋が集合している集落に、間隔を置かないで接する状態(道1本程度なら接続とされるようです)とされ、認められる場合があります。

この判断はむつかしいものですから、窓口での事前相談をしたほうが良いでしょう。判断は各農業委員会に委ねられていますが、主観的なものでもあるため明確な基準は無いようです。基準が甘い市町村もあれば、辛い市町村もあるようです。県としては甘い市町村に対する是正も求めているようです

「第2種農地」といい、鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地または生産性の低い小集団の農地のことです。農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可される場合があります。この場合は理由書が必要となり、窓口との事前相談も必要となります。

「第3種農地」といい、鉄道の駅が300m以内にある等の、市街地の区域または市街地化の傾向が著しい区域にある農地のことです。原則許可されます。特に市街化区域内の農地の場合は許可はいらず、「届出制」となっています。

農地転用の種類について

今日は農地転用の種類について書いてみます。

農地転用とは農地法に基づく制度ですが、食料自給の確保にあたって重要である農地を無計画に農地以外の用途に変えることを許可や届出によって規制していこうという制度です。

農地は一度開発したら基本的にもとには戻らないですが、他方では国土の限られた土地であっても、有効に開発していかないと産業は発展しません。農地転用制度農地として優良な土地は農地のまま残し、宅地に近かったりして開発のやむを得ない農地は宅地や商工業地として開発していくという目的で制定されました。

制度的にはその農地の「所有権の移転」と、「用途の変更」という2点から規制を行っています。

では主としてどのような許可や届出が必要なのでしょうか。我々が農地転用にあたって許可申請や届出を行う内容は、農地法の3条から5条の規定に基づいています。農地法第3条許可は農業者双方の間で、用途は農地のまま「権利移動」するものであり、農地法第4条許可は名義は変えずにその用途を「転用」するものです。農地法第5条許可、は3条の「権利移動」と4条の「転用」を同時に行うものです。ではそれぞれどのようなものか具体的に見てみましょう。

まず「農地法第3条許可」についてです。これは農地は農地のまま持ち主が変更になるものです。この際は所有権を取得する者は農家や農業法人であることが要件となります。

「農地法第4条許可」とはどのようなものでしょうか。これは土地の名義や持ち主はそのままに、農地を自分が使用するための宅地や駐車場、資材置き場等に「用途を変更」する場合の許可です。転用を行う者(農地所有者)が許可申請者となります。自分の土地であっても許可を受けないと罰せられる場合がありますので気をつけましょう。許可が必要な面積等については、別の記事で書きます。

「農地法第5条許可」とはどのようなものでしょうか。これは「権利移動」と「用途変更」を同時に行う場合の申請になります。自分の土地を宅地化や商工業目的で他の者に売ったりするということです。たとえば事業者等が農地を買って転売したり、農地を宅地にして自分の子供名義の家を建てる場合もこれにあたります。

5条許可では3条許可と異なり相手方は農業者等である必要はありませんが、許可申請を行う場合は売主(貸主)と買主(借主)の2者でする必要があります。ですので行政書士が代理で申請する場合も、2者の同意(同意書)を得る必要があります。なおこれも農地法許可書を取得した場合は、必ず法務局で土地の名義変更の「登記申請」を行いましょう。

どのような種類の農地転用であっても許可を得て「農地法許可書」を取得したら、その後には忘れずに必ず法務局で土地の名義変更の「登記申請」を行いましょう。また3条許可では取引の相手が農家等でない場合は許可が下りません。許可を受けずに売買すると罰則規定が適用されますので気をつけましょう。

農地転用の許可は各市町村の農業委員会で判断されますが、市町村で運用が異なったりケースにより対応が様々なので、必ず窓口に事前相談しましょう。その際には要件や申請必要な書類を聞きます。農業委員会の許可判断に有効な書類の書き方等も聞いてみましょう。

相続や時効取得の場合ですが、これらの場合には許可申請は必要ありません。ただし別途届出は必要となります。贈与の場合は農地転用の必要があります。

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建設業許可の新規取得、許可換え新規、般・特新規について

今日は建設業許可の新規取得について書いていきます。

新規取得とは文字通り新たに許可を取得することですが、これにはいくつかのパターンがあります。

①新規取得

②許可換え新規

③般・特新規

④業種追加

です。

以上4つについてもう少し詳しく見ていきましょう。

まず建設業許可の新規取得とはどのようなものでしょうか。第一義的には今まで建設業許可を取得していなかった建設業者が許可を取得する場合です。軽微な工事のみを行っていた建設業者が、軽微な工事の範囲を超える工事を請け負うようになった場合や、元請業者の要請を受けて取得する場合があります。

一方、廃業届」を提出した建設業者が再度建設業許可を申請する場合もあります。以前に許可を有していた者が許可取得後に要件の一部でも欠いた場合は、廃業届を提出して廃業することとなります。

例えばひとつの営業所のみで建設業許可を取得していた建設業者で専任技術者がひとりしかいなかった場合に、その専任技術者が退社してしまい2週間以内に常勤の後任が採用できなかったときなどは、やむをえず「廃業届け」を提出して廃業しなければなりません。

しかしこのケースにおける廃業は法的罰などによる廃業とは異なるため、要件を欠いた要因が解決すれば、すぐにでも再度の許可申請をすることができます。再度許可を取得するために申請する場合もこの「新規」に該当します。

「許可換え新規」とはどのようなものでしょうか。許可換え新規とは次の場合をいいます。

①複数の県で営業所を設けている建設業者が、他の県の営業所をすべて閉鎖し、ひとつの都道府県の区域内のみに営業所を設けることとなったときです。この場合は残った営業所のある都道府県に知事許可の申請を行います。国交大臣許可が失効し知事許可となることです。

②都道府県知事の許可を受けた者がその都道府県の営業所をすべて廃止して、別のひとつの都道府県に営業所を設置することとなったときです。この場合は新たな営業所のある都道府県に申請を行います。許可は知事許可で変わりませんが、従前の県での知事許可が失効し、新たな県で知事許可を申請することになります。 

③都道府県知事の許可を受けた者が、別の都道府県にも営業所を有することとなったときです。この場合は国交大臣の許可申請をすることとなります。知事許可と大臣許可を両方受けることはありませんので、これらの場合は従前の知事許可は失効することになります。

「般・特新規」とはどのようなものでしょうか。般・特新規とは次の場合をいいます。

①一般建設業許可を、同じ業種の特定建設業許可に変えて許可申請することをいいます。逆に特定建設業許可を一般建設業許可に変えて申請する場合も同様です。一般許可と特定許可の両方は持てませんので、特定建設業の許可が下りた場合は一般建設業の許可は失効します。逆も同様です

②複数の業種について特定建設業のみの許可を受けている建設業者が、その一部の業種について特定の要件を満たせなくなった場合は、あらかじめその業種の特定建設業許可について廃業届を提出してからあらためて般・特新規の申請をしなければなりません

③複数の業種について特定建設業のみの許可を受けている建設業者が、その全部の業種について特定の要件を満たせなくなった場合は、あらかじめその全部の業種の特定建設業許可について廃業届を提出してから、あらためてすべての業種の一般建設業の申請をしなければなりません。この場合の申請は般・特新規とはならず、通常の新規許可申請となります

般・特新規申請の場合では元の許可番号は変更とはならずそのまま引き継がれることとなります。

最後に「業種追加」についてですが、業種を追加される場合も新規建設業許可申請が必要になります。当然この際には申請手数料や、行政書士への報酬が発生します。新規申請される際には、一般業種と特定業種を同時に申請される場合は二つの申請が必要になります。

しかし同じ一般業種(特定業種)内なら、一度に何業種でも申請することができ、手数料や報酬も1回分のみとなります。ですので、新規申請の際に既に複数業種申請の目処が立っているようでしたら、費用面からはまとめて申請されることをお勧めいたします

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相続 民法改正案について

今日朝の天気予報でGW後半の天気について話していました。1週間前には後半は荒れる見込みだと行っていたので、一安心ですね。土日休みの方は羽を伸ばして、サービス業や小売業の方は書き入れ時。世間全般、天気の効果は大きいですね。

ここのところ天気予報がよく当たるなと感じていますが、1週間程度先の予報では、雨予報が晴れに変わるケースが多いかなとも感じています。天気予報の精度の問題ではなく天候が落ち着いている年ということなんでしょうが、ここ3ヶ月では群馬の雨量も平年を若干下回っていますね。夏も暑いようですし、また館林の話題も多くなるでしょう。

GW後半は実家の静岡に帰ります。昔は子供4人とワイワイ帰っていましたが、世代も引き継がれてしまいましたね。日曜日にお土産のハラダのラスクを買い込んできます。

今日は2月に法制審議会より法務大臣に答申された、相続分野に関する民法改正について書いてみます。

民法については昨年120年ぶりに契約や債権関係の改正法が国会で成立し、2020年4月1日に施行されます。相続分野についてはこれまでも社会情勢の変化に即して改正が行われ、配偶者や非嫡出子の法定相続分の割合等が改められてきましたが、今回改正案のポイントは次のとおりです。

配偶者の居住権を保護するための方策

遺産分割に関する見直し

遺言制度に関する見直し

遺留分制度に関する見直し

相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

まず配偶者(以下妻とします)の居住権を保護するための方策についてみてみます。

現行法では被相続人の死亡後に被相続人名義の自宅に妻のみが居住していた場合でも、子がいた場合には妻の法定相続分は2分の1であり、仮に現金預金等の相続分が少なかった場合には、2分の1を超えた分の自宅の評価額分を子に渡さなくてはならないケースが出てきます。

妻と子の折り合いが悪かったりして子から請求された場合には、現実に妻が自宅を処分して相当分を子に渡すというケースもあるようです。

例として妻と子がひとりいるケースです。自宅の評価額が2000万円で預貯金が1000万円、相続額の合計が3000万円とします。この場合は妻も子も法定相続分は1500万円となります。預貯金を子がすべて相続しても500万円足りませんので、この場合は残りの500万円を子が妻に主張することができます。妻としてはやむをえず自宅を処分して、その分を子に渡すこととなります。これでは被相続人の死亡により妻が困窮する事態に陥ってしまいます。

今回の改正案では超高齢社会を見据えて、高齢の妻の生活や住居を確保するための内容が盛り込まれています。

まず要項に明記されたのが「配偶者居住権」です。文字通り妻が自宅に住み続けることのできる権利であり、所有権とは異なって売買や譲渡はできません。居住権の評価額は住む期間によって決まり、居住期間は一定期間または亡くなるまでのいずれかの期間で、子との協議で決めます。

前述のケースで妻の居住権の評価額が1000万円だったとしますと、妻は法定相続分1500万円のうち1000万円分の居住権と残り500万円分の預貯金を相続することとなります。子は自宅の評価額2000万円から居住権を引いた1000万円分の所有権と、預貯金500万円を相続することとなります。妻が住んでいるあいだの必要経費は妻が負担しますが、固定資産等の税制についてはまだ決まっていません。

次の遺産分割に関する見直し等についてですが、現行法では妻が自宅等を生前贈与されていたとしても、自宅も遺産分割の対象となってしまいます。ですので前述のケース同様となります。

要綱では結婚から20年以上の夫婦に限り、自宅が遺産分割の対象から除外されることになります。前述のケースでは遺産分割の対象となるのは預貯金1000万円のみとなり、妻と子にそれぞれ2分の1づつが相続されます。これも長年連れ添った妻への配慮であり、高齢で再婚した場合等と区別するものです。期間は延期間であって離婚を挟んでも問題はありませんが、事実婚や同性婚は対象となりません

3つめは遺言制度に関する見直しです。昨今は自筆証書遺言への関心も高まってきているようですが、現行民法ではすべての文言が自署である必要があります。改正案では自筆証書遺言に関しすべてが自署である必要はなく、財産目録等はパソコン作成のものを添付することでも可能となります。ただし各ページへの署名押印は必要となります。

また自筆証書遺言の保管制度が新たに創設され、遺言者は自筆証書遺言を各地の法務局に保管するよう申請することができ、死亡後は相続人等が保管先法務局に対して遺言書の閲覧請求等をすることができます。その際法務局は、他の相続人等に対しては通知をだすこととなります。

法務局が保管していた自筆証書遺言は検認を要しません。ただ公正証書遺言と異なり、法務局保管の自筆証書遺言が必ずしも最終最新のものではないおそれは残りますので、探索や確認は必要となります。

4つめは遺留分制度に関する見直しです。遺留分減殺請求権の効力については、受遺者等に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになり、権利行使により遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生するという考え方が採用されます。

また遺留分減殺請求の対象となる遺贈・贈与が複数存在する場合については現行法の規定に加えて、減殺の割合についてはこれまで解釈によっていたものが、今回案では明文化されています。遺留分の算定方法については現行法の相続開始の1年前にした贈与に加え、相続人贈与は相続開始前の10年間にされたものが算入対象となります。

5つめは相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直しについてです。これは遺言などで法定相続分を超えて相続した不動産等は、登記をしなければ第三者に権利を主張できないというものです

最後に相続人以外の者の貢献を考慮するための方策についてです。現行法では寄与分については相続人にのみ認められていましたが、改正案では相続人以外の被相続人の親族が被相続人の介護をしていた場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭請求できる こととなります。

被相続人の親族とは、6親等以内の血族および3親等以内の血族の配偶者が対象となります。

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農地転用とはなんでしょうか

今日はすかっぱれですね。まだ気温は上がってきませんが、先週あたりからトマトやなすなどの苗も出始めましたので、家庭菜園にはもってこいの季節ですね。

昨日と前後しますが、今日は農地転用とは何かについて書いてみます。

「農地転用」とは街に住んでいる転勤族には耳慣れない言葉ですが、文字通り「農地を転用」する際に必要な許可申請や届出のことです。自分の土地をどのように使おうが勝手だろうと私でも思っていましたが、実は土地の立地する場所等によって、土地の利用法や、そもそも開発して良い土地かどうかも法律や条例等によって定められています。

農地転用は農地法という法律で定められた許可制度のことです。日本は農作が可能な国土も狭いため、無計画に農地が宅地や商工業地に変えられてしまうと農業生産力が維持できません。その農地本来の目的から転用することを、行政で管理していこうという制度が農地転用となります。

許可の運用は時代の要請によって緩和されたり強化されたりしてきていますが、従来は農地として最重要であり転用がほとんど許可されなかった第1種農地であっても、地域活性化促進のための法改正によって許可がおりるケースも出てきました。

一方食料自給率が年々低くなっていく状況を鑑み、優良な農地を守るために平成21年に農地法改正によっては農地転用規制がより強化されました。この時の改正では市街化区域を除いた農地転用の規制が厳しくなり、相続による農地の取得であっても、農業委員会への届出が義務付けられました。この際には農業産業の促進を図るために、一般法人が農業法人として農業参入することも認められました

農地転用ではその土地が農地であるときは、その利用法を変えたり(小屋を立てたり駐車場に変えたり等)名義を変えたり(売ったり買ったり等)する場合も、申請や届出をすれば単純に許可が下りるわけではありません。多数の書類や厳密な証拠を揃えて初めて許可が下りる(あるいは許可されない)ことを理解しなければいけません。

許可を取得しようとする場合はまずその土地がどのような「農地」であるのかを調べます。役所に問い合わせれば(窓口に電話して要件を伝えれば必要な部署につないでもらえます)許可が下りるかどうかの可能性も含めて教えてくれます。

まずその農地の立地区分を聞き、そもそも農地転用が可能な土地かも教えてもらいます。その農地が市街化区域にあれば届出だけですみますし、農地転用できないいわゆる「青地」である場合はできません。

うしても申請をしたい場合には農振除外という手続きを経る必要もあります。

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役所と打ち合わせをし「許可を取るための書類」を提出することとなります。すべての農地が農地転用できるわけではなく、地域によってはかなりハードルが高いものとなります。

農業振興地域の「農用地区域」に該当している場合は、農地転用許可を受ける前に更に農用地区域からの除外をする申請(農振除外)をし、その上で農地転用を申請することとなります。この場合は農振除外の証拠固めから始めて、農地転用許可まで数年を要することもあります。

もっとも農地転用の可能性が低いと言われても単純に引き下がるばかりではありません。お客さんの熱意次第となりますが、役所と交渉をし転用許可に持っていくのも行政書士の腕の見せどころでしょうか。

農地転用は書類の要件を満たせば許可がおりるという性質のものではなく、各市町村に置かれる農業委員会の判断においてなされます。市町村によって異なりますが、おおむね月1回開かれる農業委員会で申請された書類の内容を精査して許可が決まります。

書類はその外形だけではなく、書類の種類や内容をきちんと整えることが重要となります。これには事前準備として役所へ申請内容を相談し、転用許可の可能性とともに必要な書類やポイント等を打ち合わせることも重要になります。

これには交渉術や交渉能力も欠かせないものかなと考えます。

ちなみに高崎市における平成28年度の許可件数は、3条が198件、4条が44件、5条が600件でした。農地転用は区域によっては非常にわずらわしい申請となりますので、是非とも当事務所にご相談くださいませ。

農地転用の申請場所

さきほどまで強い雨が降っていましたが、一転強い日差しにかわりました。

今日は短めですが、農地転用が必要な農地の面積や申請場所について書いていきます。

農地転用が必要な場合はその農地の権利者や用途が変更になる場合ですが、ではその農地の広さや立地する場所によっての違いはないのでしょうか。農地転用の許可権者は都道府県知事になりますが、知事がその事務や許可の権限を移譲する市町村を指定した場合には、その市町村の農業委員会が許可を行うこととなります。

群馬県の場合は12市1町(前橋市、高崎市、桐生市、伊勢崎市、太田市、沼田市、館林市、渋川市、藤岡市、富岡市、安中市、みどり市、甘楽町)が指定されています。4ヘクタール以下で、その農地がほかの市町村にまたがない場合は、その事務及び権限が各市町村の農業委員会に移譲され、各農業委員会が許可をすることになります。

4ヘクタール以下の農地については各農業委員会が通常の許可を行いますが、市町村をまたいだり4ヘクタール超の農地については、知事があらかじめ農林水産大臣に協議を行った上で、都道府県が許可をすることになります。

4ヘクタール超の農地については審査期間も長く慎重となり、許可書の発行も遅くなります。

土地は大きいほど許可基準が厳しくなるため、土地の一部を転用したい場合はその部分をあらかじめ分筆(測量して番地を分けることです)して申請する場合があります。相続や権利移転の際には将来の農地転用を見込んで、その時点で分筆しておくこともよく見られます。

分筆して農地転用をする場合は必ず分筆を先にしてから、そののちに許可申請をしましょう。土地によっては土地改良区等の意見が必要になる場合もあります。

 

建設業許可の種類について

週末の暑さとは打って変わって、昨日今日は雨模様で少し肌寒い天気ですね。でもあさってからGW前半にかけては暑いくらいの好天が続くようですね。GW後半の天気が少し気がかりですが、今年は日の並びも良いし、景気には良い影響を与えるでしょう。

私もメーカーに努めていた頃はここが前半最大の山場であり、仕掛けていた企画の成果が気になるところでした。新人行政書士として迎えた今年は、のんびり旅行を楽しむ余裕がありますが、来年からは遊ぶ暇もないことを期待しています。

今日は建設業許可の種類について書いてみます。

まず営業所の所在地によって申請先が異なる、知事許可と国土交通大臣許可の2種類があります。

知事許可とは、1つの都道府県でのみ建設業法に基づく営業所を設ける場合の許可となります。この場合の許可は都道府県知事が行い、申請先は各都道府県知事となります。

国交大臣許可とは、2つ以上の都道府県にまたがって営業所を設ける場合の許可となります。この場合の許可は国土交通大臣が行い、申請先は主たる営業所を管轄する地方整備局等になります。実務的には知事許可と同様に都道府県の窓口に申請することになります(手数料の収め方や受付日等が異なる場合があります)。

知事許可と大臣許可の違いは、契約を行える営業所が他県にも置かれているかどうかだけの問題であり、基本的には許可内容にそのほかの違いはありません。

また同一業者が知事許可と大臣許可の両方を受けることはありません。どちらか一方の許可だけです。知事許可を取得していても他県に営業所を開設した場合は大臣許可に変更をし、大臣許可の場合であっても一つの県以外の営業所を閉鎖した場合は、残った県の知事許可に変更します。

なおこの2つの許可区分はあくまでも営業所の所在地に基づくものであって、施行する工事現場はどこでも構いません。知事許可を受けた者が他県で工事を施行することにはまったく問題ありません。

申請先による区分のほか、下請に出す工事金額の総額によっても2つの許可に区分されます。ひとつは一般建設業許可であり、もうひとつは特定建設業許可です。

まず一般建設業許可とはどのようなものでしょうか。次のいずれかが該当します。

①発注者から直接受注した工事について、下請に出す工事金額が4000万円未満の工事のみを行う建設業者

②建築一式工事においては、下請に出す工事金額が6000万円未満の工事のみを行う建設業者

では特定建設業許可とはどのようなものでしょうか。次のいずれかが該当します。

①発注者から直接受注した工事について、下請に出す工事金額が4000万円以上の工事を行う建設業者

②建築一式工事においては、下請に出す工事金額が6000万円以上の工事を行う建設業者

ひとつの業種については一般建設業許可と特定建設業許可の両方は取得できず、業種ごとにちらか一方のみの許可となります。金額についてはいずれも消費税等込の金額です。

なお注意しなければいけない点は、この一般建設業か特定建設業かの区分については直接請負う金額に制限はなく、あくまでも下請けに発注する金額によって決まるという点です。大規模な工事を請負ってもそのほとんどを自社施工で行い、下請けへの発注金額が4000万円に満たなければ、一般建設業の許可でも大丈夫ということになります。

ただしひとつでも特定に該当する工事を請け負う場合は、やはり特定建設業許可が必要であることは言うまでもありません。

なお別記事でも書きますが、特定建設業許可は一般建設業許可と比べてその責任範囲が増すため、取得要件も厳しくなり技術者の要件や財務要件のハードルが高くなります。

http://gyosei-suzuki-office.com/category1/entry6.html

建設業許可の許可要件について

今日は建設業許可の許可要件について書きます。

建設業許可には営業所の場所によって県知事許可国交大臣許可があり、また元請が下請けに発注する金額によって一般建設業許可特定建設業許可があります。その組み合わせによって要件も変わってきますが、今回は一番申請の多い一般建設業許可の知事許可での許可要件を見てみます。

建設業許可を取得するには「人」「施設」「財力」を備えていることが条件となり、これらすべてを満たさなければなりません。

まず「人材要件」。これが一番重要ですが、

経営業務管理責任者がいること

専任技術者がいること

③欠格要件に該当しないこと

④誠実性があること

これらのすべてを満たす必要があります。

「施設要件」は建設業の営業を行う「営業所」を有することです。

営業所とは経営業務管理責任者や専任技術者が常勤する、請負契約を締結する事務所のことです。作業員とかが常駐する支店等であっても、契約を締結しない場所は建設業許可における営業所とはなりません。また契約を直接締結する場所でなくても、実質的にそれらを統括する場所は営業所となります。

「財産要件」は、財産的基礎や金銭的信用を有することです。具体的には、

①直前の決算において自己資本額500万円以上あること

②500万円以上の資金調達能力を有すること(直前1ヶ月以内の預金残高証明書等で証明)

③許可申請直前の過去5年間に、許可を受けて継続して営業した実績を有すること

このうちいずれかに該当することが必要となります。

ちなみに特定建設業許可の場合は特に健全な経営が要請されるため要件は非常に厳しくなっており、

①欠損の額が資本金の20%を超えていないこと

②流動比率が75%以上であること

③資本金の額が2,000万円以上かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

この3つのすべてに該当する必要があります。

では人材要件について更に見てみましょう。

まず経営業務管理責任者の要件はどのようなものでしょうか。

法人の場合は常勤役員のうち少なくとも1人が、また個人事業者の場合は個人事業主本人またはその支配人のうちのひとりが、次の要件を満たした常勤の経営業務管理責任者である必要があります。

要件は資格ではなく建設業の経営経験のみを問うものであり、言い換えると経営者としての実務経験年のみとなります。具体的には、

①許可を受けようとする建設業について、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者(法人の役員または個人事業主の経験)

②許可を受けようとする建設業について、5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、執行役員等として建設業の経営業務を総合的に管理した経験を有する者(特別な証明資料等が必要)

③許可を受けようとする建設業について、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務を補佐した経験を有する者。個人事業主の場合は、事業主の配偶者や子などが補佐する立場にあった経験も含まれます

④許可を受けようとする建設業以外の建設業について、6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

⑤許可を受けようとする建設業以外の建設業について、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって執行役員等として建設業の経営業務を総合的に管理した経験を有する者

これらのいずれかを満たす必要があります。許可を受けようとする建設業以外の建設業については、補佐した経験を有する者は対象となりません。

平成29年6月の建設業許可基準の改正によって上記年数基準の7年が6年に短縮され、経営業務管理責任者の申請は有利になりましたが、依然その地位を証明する特別な証明資料の提出は必要事項であるため、この部分のハードルの高さ解消されていません。

では専任技術者の要件はどのようなものでしょうか。専任技術者はすべての営業所にひとり以上常勤しなければなりません。具体的な要件は、

①取得したい許可業種の国家資格を有していること

②大学の指定学科卒業後3年以上の実務経験を有することや、高等専門学校の指定学科卒業後3年以上の実務経験を有することですが、この専門学校卒業の場合は専門士(文科省指定の専門学校および課程で2年を修了した者)や高度専門士(同じく4年)の資格が必要

③高等学校の指定学科卒業後5年以上の実務経験を有することや、専門学校卒業後(専門士や高度専門士の資格をもたない物)5年以上の実務経験を有すること 

④学歴の有無を問わない場合は10年以上の常勤実務経験が必要

以上のいずれかを満たすことが必要となります。国家資格を有していれば実務経験は必要ありませんが、実務経験で専任技術者となる場合は、学歴証明と実務経験の証明書類が必要となります。これらの実務経験はすべて、常勤でなければなりません。

④の場合などは2つ以上の業種で取得する場合はそれぞれに10年以上、合計で20年以上の経験が必要となるため、国家資格を有する専任技術者の採用が有利ではあります。

なお電気工事業と消防施設工事業については原則国家資格が必要となります。また一般建設業の場合は2級資格でも大丈夫ですが、特定建設業の場合は必ず1級資格が必要となります。

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